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さよなら……そういうらへんのやつ!!  ~映画『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』~  資料編

2014年11月09日 09時37分27秒 | アニメらへん
『少女革命ウテナ』とは……

 『少女革命ウテナ(しょうじょかくめいウテナ)』は、J.C.STAFF制作のアニメ作品。TV アニメシリーズとして1997年4~12月にテレビ東京系列で放送された。全39話。

 アニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズのシリーズディレクターなどを務めたアニメ演出家の幾原邦彦が、少数精鋭のスタッフと少女マンガ家さいとうちほを集めて制作集団「ビーパパス(Bepapas)」を結成し、世に放った異色作。
 男装の麗人、書き割りの様な背景、影絵のようなデザインの少女たちによる不可思議な劇中劇など、宝塚歌劇と前衛舞台劇を折衷したような徹底したアバンギャルドな演出が特徴。また、学園の姿を借りた閉鎖世界や「薔薇」や「王子様」といった少女マンガ的モチーフを中心に、おとぎ話や西洋の貴族のような決闘、同性愛や近親愛まで多くの要素を扱い、かつ哲学的な言辞と象徴や図式を大小、首尾一貫してちりばめている。合唱曲『絶対運命黙示録』など、かつて寺山修司の「演劇実験室・天井桟敷」で舞台音楽を担当していた J・A・シーザーのアンダーグラウンドな楽曲を採用したことも、独特の世界観を作り上げる大きな要因となった。

企画
 ビーパパスは幾原邦彦がオリジナルアニメ作品の制作のために作ったチームで、その名前は「大人になろう」の意。従来は著作者として認められることがほとんどなかったアニメーションの制作スタッフが、原作者の立場で表に立つということも目的としていた。
 当初の企画として最初に形になったものは、大人のコアターゲットを狙った OVAだったが、幾原がさいとうちほのマンガ作品と出会ったことで、より一般向けの TVシリーズを志向するようになる。さいとうにキャラクター原案を依頼した時点では、主人公が誰かとキスすることで男装の美少女に変身するという、玩具メーカーをスポンサーに想定した子ども向けアニメに設定されていた。
 幾原は、主人公格のウテナとアンシーを親密な仲にする構想を持っていたが、さいとうは主な視聴者である少女が望むものではないとその構想を強く否定していた。ただし、『少女革命ウテナ』の TV放送終了後にさいとうは、ビーパパスの影響で同性愛的なものを肯定するようになったと心境の変化を語っている。
 その後、キングレコードの大月俊倫プロデューサーの目に留まることで企画はより本格的な制作体制に移り、大幅な変更が行なわれて完成した。

演出・美術
 作品には幾原監督の作家性が色濃く出ているが、他のスタッフもまた自発的に様々なアイディアを投入している。例えば、影絵少女は幾原ではなく、シリーズ構成の榎戸洋司の発案だった。
 美術監督を務めた小林七郎は当時64歳の大ベテランだった。小林によれば、幾原監督は理詰めでなくイメージを重視した指示を出し、そのような発想の飛躍は自分にはないものであり、いい刺激になったと語っている。また、建物の大半をデザインした長濱博史についても、その重力や力学を無視した自由な発想に小林はショックを受け、その良い部分を生かすようにしたという。

メディアミックス
 TV アニメ放送時にさまざまなメディアミックス展開が行われ、マンガ、ゲームの他、ミュージカル、演劇公演やノベライゼーションなども発表された。また、さいとうちほによるマンガ版『少女革命ウテナ』が TV放送に先んじて世に出ている(1996年5月~99年8月連載)が、TV シリーズの制作が決定したことを受けての連載だったため、原作ではなくコミカライズと位置づけられており、原作者もさいとう個人ではなくビーパパスである。
 TV アニメ版、マンガ版、小説版、劇場版ではそれぞれ、物語の展開や設定が異なっている。


主なスタッフ
企画・原作      …… ビーパパス(幾原邦彦、さいとうちほ、榎戸洋司、長谷川眞也、小黒祐一郎)
監督         …… 幾原 邦彦(32歳)
コミカライズ     …… さいとう ちほ
シリーズ構成     …… 榎戸 洋司(33歳)
キャラクターデザイン …… 長谷川 眞也(28歳)
コンセプトデザイン  …… 長濱 博史(27歳)
美術監督       …… 小林 七郎(64歳)
音響監督       …… 田中 英行(55歳)
音楽         …… 光宗 信吉(33歳)
合唱楽曲       …… J.A.シーザー(48歳)
合唱         …… 杉並児童合唱団、東京混声合唱団、演劇実験室・万有引力
プランニング     …… 小黒 祐一郎(32歳)
アニメーション制作  …… J.C.STAFF

主題歌
オープニング
『輪舞 revolution 』(歌・奥井雅美)
エンディング
『 truth 』(第1~24話 歌・裕未瑠華)
『バーチャルスター発生学』(第25~38話 歌・上谷麻紀)
『 Rose&release 』(最終話) (作曲・編曲 - 矢吹俊郎 / コーラス - 奥井雅美)
挿入歌
合唱曲『絶対運命黙示録』、『 when, where who which 』、『肉体の中の古生代』、『スピラ・ミラビリス劇場』、『天使創造すなわち光』、『ゲルツェンの首』、『さかさまボクとボクの部屋』、『ラスト・エヴォルーション 進化革命前夜』、『封印呪縛』、『何人も語ることなし』、『不人幻魂合体術』、『架空過去型《禁厭》まじない』、『地球は人物陳列室』、『円錘形絶対卵アルシブラ』、『幻燈蝶蛾十六世紀』、『成熟年齢透明期』、『ワタシ空想生命体』、『平俗宇宙に不滅の皇帝』、『天使アンドロギュヌス』、『わたし万物百不思議』、『天然同胞宮殿遠近法の書』、『寓意・寓話・寓エスト』、『体内時計都市オルロイ』、『ミッシング・リンク』など(全作曲・J.A.シーザー)


あらすじ
 幼い頃に助けてくれた王子様に憧れ、王子様になりたいと願うようになった少女・天上ウテナは、入学した鳳学園で「薔薇の花嫁」と呼ばれる少女・姫宮アンシーと出会う。エンゲージした者に「永遠」に至る「世界を革命する力」を与えるという「薔薇の花嫁」をかけて戦い続ける生徒会役員(デュエリスト)たちは、ウテナがかつて王子様からもらった指輪と同じ「薔薇の刻印」と呼ばれる指輪を持っていた。そしてウテナもまたこの決闘ゲームに巻き込まれ、その背後にある「世界の果て」へと迫っていく……
 TV シリーズでは第1~13話が「生徒会編」、第14~23話が「黒薔薇会編」、第24~33話が「鳳暁生編」、第34~39話が「黙示録編」となっている。


劇場版『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』(1999年8月公開 87分 東映)
 完全新作の長編アニメーション映画として、劇場版のオリジナル35ミリフィルムを使用して、TV シリーズ版よりも過激かつ華麗にリニューアルしたオリジナル作品。さいとうちほによるコミカライズ版もある。

あらすじ
 全寮制の名門学校・鳳学園に転校してきた天上ウテナは、「薔薇の花嫁」と呼ばれる謎の美少女・姫宮アンシーに出会い、生徒達との決闘ゲームに巻き込まれる。ウテナは徐々にアンシーと親しくなるが、その中でアンシーに隠された秘密を知り、彼女を連れて「外の世界」への脱出を試みようとする。

主なスタッフ
企画・原作      …… ビーパパス
監督         …… 幾原 邦彦
コミカライズ     …… さいとう ちほ
製作         …… 大月 俊倫(37歳)
プランニング     …… 小黒 祐一郎
脚本         …… 榎戸 洋司
キャラクターデザイン …… 長谷川 眞也
絵コンテ       …… 五十嵐卓哉、金子伸吾、細田守、高橋亨、長濱博史、長谷川眞也、幾原邦彦
演出         …… 金子伸吾、高橋亨、桜美かつし
作画監督       …… 林明美、武内宣之、長谷川眞也、川嶋恵子、相澤昌弘
メカニックデザイン  …… 長濱 博史
美術監督       …… 小林 七郎
音響監督       …… 田中 英行
音楽         …… 光宗信吉、J.A.シーザー、天利英跡
アニメーション制作  …… J.C.STAFF
配給         …… 東映

オープニングテーマ
『薔薇卵蘇生録』(作曲・J.A.シーザー)
挿入歌
『輪舞 revolution 』(歌・奥井雅美)
『時に愛は』(歌・奥井雅美)
合唱曲『甦れ!無窮の歴史「中世」よ』、『シュラ 肉体星座αψζ星雲』、『絶対運命黙示録』(全作曲・J.A.シーザー)
エンディングテーマ
『フィアンセになりたい Adolescence Mix 』(歌・及川光博)
 ※及川光博の6thシングル(1997年12月10日リリース)で、もともと本作とは無関係だった曲を映画用にアレンジしている。


主な登場キャラクター
 鳳学園の生徒会執行部のメンバーは、気高さを持つ者として「世界の果て」から選ばれたデュエリストである。合い言葉は「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。雛は我らだ、卵は世界だ。世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。世界の殻を破壊せよ、世界を革命するために」。これは、ドイツの文豪ヘルマン=ヘッセの代表的小説『デミアン』(1919年)がモチーフになっているものと思われる。なお、学園を舞台とした同性愛的な描写も『デミアン』と共通している。
 デュエリストの名前には、全てに植物と関係のある文字や単語が入っている。

天上 ウテナ(てんじょう ウテナ)…… 川上 とも子(27歳 2011年没)
 本作の主人公。鳳学園中等部二年の14歳。12月29日生まれのやぎ座。血液型はB型。
 幼い頃に両親と死別した際に白馬に乗った「王子様」に救われ、彼に憧れるあまり自身も王子様になろうとする男装の少女。一人称は「僕」。中等部では主に女子生徒たちの人気の的。「王子様のように気高くかっこよく」生きることを信条としており、スポーツ万能で正義感が強い。幼い頃出会った王子様にもう一度会いたいと願っている。親友・若葉の恋心を踏みにじった西園寺莢一の言動を非難したことを機にデュエリストたちの決闘ゲームに巻き込まれていく。決闘の際の武器は、主に「ディオスの剣」。服装は基本的に、鳳学園の女子制服ではなく上のみ黒い学ランに下は赤いスパッツという出で立ちである。劇場版では、序盤は白と黒の学ラン上下に白い帽子をかぶっているが、後に TV版に似た上のみ白と黒の学ランに下は白いスパッツになる。
 後に同じデュエリストとして戦うことになる西園寺莢一や桐生冬芽とは幼い頃に会ったことがあるのだが、本人は覚えていない。
 名前の「ウテナ」は、花の「がく」のことを指す。ピンク色の髪に水色の瞳。TV 版では長いストレートヘアだが、劇場版ではウェーブがかったロングヘアをショートカットに編みこんで男子の短髪のようにしている。デュエリストの衣装に変身するとズボンはスパッツになり、衣装の白と黒の基色には赤のさし色が入り、ロングヘアにほどく。
 劇場版では他校からの転校生、冬芽とは幼なじみという設定になっており、「王子様になりたい」と願うのではなく、王子様を失った傷心を抱えながらも志高く生きようとする少女として登場する。また、冬芽に好意を持っていることが明確になっている。物語の終盤でアンシーを連れて「外の世界」へ脱出しようとした際にピンク色のスポーツカーに変身し、アンシーを乗せて旅立っていった(ラストで元の姿に戻る)。

姫宮 アンシー(ひめみや アンシー)…… 渕崎 ゆり子(28歳)
 鳳学園における決闘の勝者に「世界を革命する力」を授ける「薔薇の花嫁」として、デュエリストたちに争われる少女。中等部二年の14歳。2月29日生まれのうお座。血液型は AB型。
 日々、温室のバラ園の管理をしており独自の人付き合いが無いなど、所有者(エンゲージした決闘勝者)に従属して主体性を感じさせない存在だが、ウテナとの関わりによってのちに精神的な変化が見られるようになる。チュチュという猿のようなペットを飼っており、自然や動物をこよなく愛する。ウテナとエンゲージしてからはウテナのルームメイトになる。丸メガネをかけている。
 TV シリーズ中盤の「黒薔薇会編」で、鳳学園理事長代行・鳳暁生の妹であることが明かされる。さらに物語後半では、暁生の過去の姿であるディオス(王子様)の妹でもあり、かつて人々の願いを叶えすぎて疲弊し傷ついたディオスを封印したが、その代償として彼女は「魔女」と見なされ、ディオスに救ってもらうはずだった人々によって無数の剣で刺し貫かれ、それ以降、人々の憎しみから成る「憎悪に光る百万本の剣」を受け止め続ける運命を背負っている。
 兄であるディオス(暁生の前身)の「理想」の化身である「ディオスの剣」を心に封印している。この剣は、エンゲージしたデュエリストのみがアンシーの心から引き抜くことができる。
 「抑圧された自我」の象徴であり、この「自我の解放」すなわちアンシーの精神的革命が、本作のテーマとなっている。
 名前の「アンシー」はギリシャ語で「花ひらく」という意味。紫色の髪に緑色の瞳、褐色の肌という容貌で、額にヒンドゥー教徒のビンディーのような赤い印がある。ウェーブがかったロングヘアをショートカットに編みこんで短髪のようにしている。
 劇場版ではメガネをかけておらず、髪も長いストレートヘアで、TV 版のウテナと似たデザインとなった。また、TV 版とは異なり、ウテナとは名前を呼び捨てにして話し方も敬語を使わないといった対等な友人関係になっており、行動力もある。兄の暁生を「私の王子様」として強く慕っており、彼との肉体関係についてさえも「王子様だから好きにしていい。」と言い切るほどだったが、その過剰な想いが結果的に暁生を自殺に追いやることになる。それ以来、アンシーは暁生の幻影に支配され続けている。物語終盤でウテナが姿を変えた車に乗って「外の世界」への脱出を試みた際に兄の幻影を振り切ることに成功し、ウテナと共に「外の世界」へと旅立っていった。

チュチュ …… こおろぎ さとみ(34歳)
 アンシーのペットであり、友達。キーホルダー付きぬいぐるみ程度の大きさで、耳の大きな猿に似ている。オス。鳳暁生とお揃いのネクタイとイヤリングをつけている。アンシーの心のメタファーとしての役割も持っている。
 劇場版には「牛のナナミ」が登場するシーンにわずかに登場するだけで、本筋に関わることは無かった。

桐生 冬芽(きりゅう とうが)…… 子安 武人(29歳)
 鳳学園の高等部二年で生徒会長。6月4日生まれの双子座。血液型は A型。
 鳳学園一のプレイボーイ。桐生七実の兄。西園寺莢一とは幼なじみで、同じ剣道部に所属している。生徒会メンバーで唯一「世界の果て」と呼ばれる人物と通じ合っており、更にウテナに決闘で勝利したことのある唯一の人物でもある。前髪に朱色のメッシュを入れた赤いストレートの長髪に青紫の瞳。決闘の際は日本刀も騎士剣もどちらも使用できる。
 養子として育った過去があり、劇場版では養父に性的虐待を受けていたと思われる描写があった。TV 版では、上昇志向で周囲の者を利用し、陰謀によって勝利し、「薔薇の花嫁」も形式的にしか尊重しない徹底した利己主義者であり、「本当に友達がいると思ってるやつは、バカだよ。」とまで言い放つ。
 子供の頃に西園寺と共にウテナに出会った経験があるのだが、本人はその事実に物語の終盤になるまで気づかなかった。
 劇場版ではキャラクター設定が TV版と大きく異なっており、ウテナとも幼なじみになっている。裏表がありつつも高い志をもつ人物として描かれ、TV 版における御影草時や土谷瑠果、そしてディオスの役割を兼任している。物語の後半で、実は過去に、溺れた幼少期の有栖川樹璃を助けようとしてウテナの目の前で死んだ人物であったことが明かされる。そのため、ウテナ以外の学園の生徒たちは冬芽の存在を感知できないと思われる示唆も劇中で描写されていた。

桐生 七実(きりゅう ななみ)…… 白鳥 由里(28歳)
 冬芽の妹。13歳で中等部一年生。8月8日生まれの獅子座。血液型はB型。
 気が強く高飛車、非常にプライドの高い性格でお世辞にも人間が出来ているとは言い難い人物だが、心優しい一面も持っている。所謂極度のブラコンであり絶対的な存在である兄に近づく女は誰であろうと許せず、特にウテナとアンシーを事ある毎に目の敵にするが、その度に酷い災難に遭うというギャグキャラ的な側面も担っている。彼女がメインとなるエピソードでは、物語の本筋とまったく関係のない、シュールかつコメディタッチのものも見られる。
 実は彼女もデュエリストであり、兄にそそのかされる形でウテナに二度決闘を申し込む。武器は主に曲刀と隠し持っている短刀の二刀流で、兄に仕込まれた剣術の腕は侮れないものがある。薄いブラウンのウェーブがかった前髪を編み込んだセミロングの髪に黒目がちな紫色の瞳をしており、中学一年ながらも身長はアンシーよりも高い。当初は鳳学園の女子生徒の制服を着ていたが、冬芽がウテナに敗北してからは兄に代わって生徒会をまとめるようになり、決闘のときに着用する黄色い上着に黒ズボンの制服を常に着用するようになった。
 劇場版には「桐生七実」というキャラクターは登場せず、本筋にまったく関係のないお遊び映像に「牛のナナミ」が登場するのみだった。

西園寺 莢一(さいおんじ きょういち)…… 草尾 毅(31歳)
 鳳学園高等部二年で生徒会副会長にして剣道部の主将。8月25日生まれの乙女座。血液型は O型。
 ウテナの前の「薔薇の花嫁」所有者。冬芽とは幼なじみで、同じ剣道部に所属している。硬派として女子に非常にもてるが、実は間の抜けた部分もあることを知る友人からは影で「生徒会のピエロ」や「道化」と馬鹿にされている。不器用で単純、粗暴な性格で、女性に対しても純情と横暴の交錯するさまが描写されている。名前の「莢」は豆などの「さや」のこと。ウェーブがかかった緑の長髪に薄紫色の瞳。決闘に使用する武器は日本刀。
 子供の頃に冬芽と共にウテナに出会った経験があるのだが、本人はその事実に物語の終盤になるまで気づかなかった。冬芽とは旧知の間柄であり親友であると同時にライバルとしても意識していたが、次第に彼の表裏が激しい人間性を信頼しきれなくなり、現に幾度も彼の謀略によって貶められ関係が悪化したが、そういった徹底した利己主義こそが彼の強さであることを知る冬芽の数少ない理解者であり、後半以降は歪ながらもお互いに歩み寄り関係を修復しようとする姿勢が見られ、冬芽の心境の変化もあり、かつての少年時代の信頼関係を取り戻していった。
 劇場版でも最初に登場したアンシーの所有者であり、彼女への暴力からウテナは怒りを爆発させ、決闘を行った。終盤ではジープに乗って樹璃や幹と共に「外の世界」へ脱出しようとするウテナとアンシーを助け、別れ際にアンシーに「外で会えたら今度は堂々と口説き落としてみせる。」と言い残した。

有栖川 樹璃(ありすがわ じゅり)…… 三石 琴乃(29歳)
 生徒会メンバーでフェンシング部長代行(部長である土谷瑠果が病気休学中のため)。高等部一年の16歳。12月1日生まれの射手座。血液型は A型。
 高級ブランドのモデルに抜擢されるほどの美貌を持つ男装の麗人であり、彼女に逆らえば教師すら学園にいられなくなるという噂も流れる、誰もが恐れる不良としての一面も持ち合わせている。しかし、その美貌と男性的かつ凛然とした佇まいで、学園内での女子人気はあの冬芽にも匹敵するほどだった。幼なじみで親友の高槻枝織を長年に渡り密かに意識し、彼女の写真をペンダントに入れている。枝織に自分の本心を伝え、結ばれることを願いつつも、それを自ら否定する葛藤の中で決闘ゲームに参加している。オレンジ色の縦ロールの髪に青い瞳。決闘に使用する武器は主にフェンシングのエペ。
 TV 版では二度ウテナと決闘するが、偶然の事故や自分からの決闘放棄で敗北したため、剣の実力で敗北したことはない。
 劇場版では枝織との関係が TV版と大きく異なっており、束縛と服従を強要する枝織を振り払いたがっている。過去に重要な接点があったために冬芽のことは知っているが、彼女自身の発言から、冬芽が彼女にとって会うことの叶わない人物であることが伺える。終盤で西園寺や幹の乗るジープを運転して現れ、「外の世界」へ脱出しようとするウテナとアンシーを助けた。ジープには「 WAKABA 」というロゴとともに若葉マークのステッカーが付けられていたが、彼女が運転の初心者かどうかは不明である。なお、日本の公道でジープを運転できる年齢制限は18歳以上である。

薫 幹(かおる みき)…… 久川 綾(28歳)
 生徒会の役員で、13歳にして大学生のカリキュラムを受ける秀才の少年。中等部一年生。5月28日生まれの双子座。血液型は O型。
 フェンシング部に在籍する優秀な選手で、優れたピアノ演奏者でもある。中性的で整った外見をしており素直で人当たりの良い性格から、上級生のファンも多い。「薔薇の花嫁」としてのアンシーを求め、同時に彼女を一人の女性としても愛する。青い髪に青い瞳。物語の終盤で決闘ゲームに不信感を抱くようになり、決闘から手を引くことを決意する。その後、生徒会の集まりで決闘制度を取りやめようと提案する。
 劇場版でも TV版と同様に決闘者ではあったが、ウテナと決闘をすることは無かった。また、冬芽のことを知らないという発言があり、この場面は冬芽がすでに死亡していることを暗示していた。終盤で西園寺や樹璃と共にジープに乗って現れ、「外の世界」へ脱出しようとするウテナとアンシーを助けて、自分達もいずれは後に続くつもりだと伝え、「外の世界で会おう。」と言い残し別れた。

薫 梢(かおる こずえ)…… 本多 知恵子(34歳 2013年没)
 薫幹の双子の妹。13歳の中等部一年。5月28日生まれの双子座。血液型は O型。
 幹との現在の仲はよくない。毛先が外にはねた青い髪に青い瞳。幹に対して非常に屈折した愛情を抱いており、幹の心が常に自分のことで傷ついているように、幹の嫌がるような節操のない恋愛を繰り広げて傷ついた自分自身を幹に見せつける毎日を送っていた。その一方で、幹に親しく接する人物を攻撃することもいとわない。
 親と不仲らしく、学生寮に手紙が来ても読まずに捨ててしまう。「鳳暁生編」で、世界の果てからの手紙や親の再婚など、大人の都合に振り回される幹に「周りが汚れていたら、自分も汚れてほしいものを手に入れるしかない。」と、アンシーを手に入れるために二度目の決闘をするようにそそのかす。
 男性から人気があるらしく、友人からまた彼氏を変えたのかと問われると「変えてないよ、増やしただけ。」と返した。
 劇場版では、自分から離れようとする幹を刃物を持ち出してまで引き留めようとする。その後は登場しなかったが、学園の車庫に格納されていてクライマックスでウテナとアンシーを追い詰める大量の黒い車のひとつのナンバープレートに、梢の名前が書かれているという描写があった。

鳳 暁生(おおとり あきお)…… 及川 光博(29歳)
 鳳学園の理事長代行にして、アンシーの兄。9月15日生まれの乙女座。血液型は A型。
学園理事長の娘・香苗と婚約し、鳳家の養子となっている。理事長が病気で臥せっているため代行を務めているが、後にこれは暁生の策略の一環であったことが判明する。「黒薔薇会編」から登場する。
 「ディオスの剣」を委ねる決闘ゲームを仕組んだ「世界の果て」の正体であり、ディオス(王子様)の現在の姿である。いつからデュエリストたちが鳳学園に集まるように仕向け、鳳学園を実質的に支配していたのかは不明である。また決闘ゲームだけでなく、物語中盤の黒薔薇会による決闘を仕組んだ黒幕でもあった。当初は自分の後継者を選ぼうとしていたが、物語の後半でアンシーがウテナの身体からディオスの剣を引き抜く場面を目撃し、計画を変更して「王子様」に近い力を持つデュエリストの剣を用いて過去の能力を復活させようと企む。そのために自らウテナに近付き、彼女と恋愛関係に発展するという行動に出た。年齢に関しては不明な点が多く、数十年前から現在と変わらぬ容姿で学園の理事会関係者と会っている。
 ウェーブがかった長い銀髪に緑の瞳、褐色の肌。決闘に使用する武器は、ディオスの剣に似た黒いサーベル。
 「理想(本物のディオスの剣)」を失った王子様(ディオス)の「成れの果て」であり、「理想」に代わり「野望」を追い求めるという、ディオスとは対極的な存在となっている。野望の達成のためには犠牲もいとわず、鳳香苗を始めとする数々の女性を手篭めにして懐柔、従属させるなど異性を篭絡する術に非常に長けており、その結果として学園で最高の地位と権力を掌握している。
 劇場版では TV版と違って短髪になっているほか、体つきも痩身。妹であるアンシーに密かに想いを寄せ、眠る彼女を抱いていたが、ある時アンシーが自分を「王子様」として見ていたことを知り、それによって「外の世界」へ出るための「車の鍵」を失くして錯乱し、自殺してしまう。それ以降は冬芽と同様に「死んだ王子様」として登場し、アンシーを支配し続けていた。物語の終盤でウテナとアンシーが「外の世界」へ脱出しようとした際に巨大な車と化した「城」と共にアンシーの前に立ちはだかり、アンシーを永遠に縛り続けて二人の脱出を阻もうとしたが、二人に撃破され消滅した。
 当初の設定では、ウテナを影から見守るさわやかなキャラクターであったが、TV 版で暁生の声を担当した小杉十郎太(当時39歳)の演技によって性格が大幅に変更され、ストーリー全体にも影響を与えることとなった。

鳳 香苗(おおとり かなえ)…… 折笠 愛(33歳)
 鳳学園理事長の娘にして鳳暁生の妻。高等部三年。優しく女性らしい丸みを持った美人だが、内心ではいつまでも自分になつかず不可解な行動をとるアンシーに対して強い恐怖と嫌悪を抱いている。当初、暁生とは仲が良かったが、「鳳暁生編」では二人の仲が微妙なものになりつつあることを示す描写が出てくる。薄緑の髪に緑の瞳。
 劇場版では、暁生と婚約した当時の記録映像の中で暁生のスポーツカーに無言で微笑みながら乗っているカットと、発見された暁生の死体を見て泣き叫ぶシーンのみでの登場だった。

篠原 若葉(しのはら わかば)…… 今井 由香(26歳)
 ウテナの親友でクラスメイト。中等部二年生。3月14日生まれの魚座。血液型は O型。
 憧れていた西園寺に出した手紙が、ウテナが決闘ゲームに巻き込まれる発端となる。明るく人懐っこい明朗快活な性格でミーハーでもあるが、好きな人には尽くすタイプ。
 「黒薔薇会編」では、退学処分になった西園寺を匿う形で同居生活が始まり、密やかな幸せを得るが御影の策略によって破局。決闘ゲームに参戦することになり、親友ウテナと戦うことになってしまい彼女への羨望やアンシーへの嫉妬心を吐露するが、敗北することによって救われた。その後は何事もなかったかのように日常へ戻ったが、アンシーへの複雑な感情は完全に消えることはなかった。決闘に使用した武器は日本刀。
 劇場版では、序盤に転校生であるウテナに鳳学園の案内をするが、それ以降は活躍しなかった。終盤でウテナとアンシーを助ける樹璃たちの乗るジープに「 WAKABA 」のロゴと若葉マークが付けられていたが、このジープが車に変身した若葉かどうかは明言されていない。ラストシーンで1カットだけ、ウテナとアンシーのいなくなった学園で風見達也と一緒に歩く姿が映った。

風見 達也(かざみ たつや)
 若葉の小学校以来の幼なじみ。中等部二年生。「黒薔薇会編」から登場する。
 若葉が好きで、彼女の親友のウテナにラブレターを渡すように頼む。ウテナの助言により達也は若葉に想いを告げようとするが、若葉には意中の人(寮に居候させている西園寺)が他にいると知り、悩む。
 劇場版では若葉のボーイフレンドという設定だが、セリフはなく画面を横切る姿でしか登場しない。

高槻 枝織(たかつき しおり)…… 西原 久美子(32歳)
 樹璃の幼馴染み。高等部一年生。2月2日生まれの水瓶座。血液型はB型。
 おとなしく繊細なように見える外面とは裏腹に、彼女を知る者からは「花を腐らせる毒虫」と呼ばれるほど卑屈かつ狡猾、自己中心的な性格。幼なじみである樹璃に対して、劣等感から生まれた愛憎入り混じった感情を抱いており、彼女が自分に庇護的かつ優しく接するのは見下し馬鹿にしているからだと被害妄想を持っていた。樹璃と自分の関係を「光と影」と表現する。中等部までは鳳学園に在籍していたが一時転校し、その後「黒薔薇会編」で学園に再転入してくる。決闘に使用する武器はエペ。身長は幹と同じ。
 再転入後、かつてのような樹璃との交友関係を取り戻そうと接近していったんは拒絶されるが、樹璃の自分へのひそかな愛を知り、精神的優位に立てると喜びながらもそれを受け入れることができないことに悩む。
 劇場版では TV版の桐生七実や薫梢の役割を兼任し、幼少期に樹璃とともに冬芽を慕っていたという設定が加えられている。そのため、水難事故によって結果的に「私の王子様(冬芽)」を死なせてしまった樹璃をいまだに赦さず、一生「王子様」の代役を務めさせ続けようとして暗躍する。劇中で冬芽と会話していた数少ない人物のひとりだが、彼女と冬芽がいる空間には必ず他に誰もいない。終盤で攻撃的なデザインの紫色の車に変身して「外の世界」に脱出しようとするウテナとアンシーを追って妨害するが、最後は防音壁に激突して大破した。車になったときは時速500km で走行できる。

影絵少女 E子 …… 川村 万梨阿(35歳)
影絵少女 F子 …… こおろぎ さとみ
影絵少女 C子 …… 渡辺 久美子(31歳)
 夕方になると現れ、珍妙な、しかし意味深な影絵芝居を繰り広げる謎の存在。鳳学園中等部の演劇部に所属する生徒らしいが、学園内の看護士やラジオ番組の DJとしても登場している。TV 版では当初は A子と B子のみの登場で、C子は「黒薔薇会編」から登場した。
 劇場版では放送部員という役割で E子と F子が登場。C子はそのまま登場し、更にクライマックスでは、ウテナとアンシーの脱出劇の解説ナビゲーターとして無数の影絵少女が登場した(髪型は各自異なる)。ラストでウテナとアンシーが「外の世界」へ出た後、影絵少女たちは藁の人形となって消滅するが、藁人形になった E子と F子の胸にウテナとアンシーの名前が書かれた名札がつけられているという描写があった。

御影 草時(みかげ そうじ)
 鳳学園高等部三年生の生徒で、御影ゼミ(通称「黒薔薇会」)を主宰する天才。11月30日生まれの射手座。血液型は AB型。
 自らもデュエリストの一人だが、自身のいる根室記念館へ面会にやってきた悩める生徒たちの心の闇にカウンセリングを通して深く入り込み、心の闇を解放させ、黒薔薇のデュエリストに仕立てあげて決闘ゲームに介入した。
 実は肉体・精神ともに、数十年に渡って成長が停止している。かつては「根室教授」と呼ばれ、100人の少年たちと学園中心の「永遠」を手に入れるための研究を行っていた。後に学園理事会から派遣されてきた監察官・千唾時子(ちだ ときこ)に心を奪われ、不治の病を持つ彼女の弟・馬宮(まみや)に「永遠」を与えるために研究を完成させ、「城」を出現させることに成功した。しかし、その後に理事長・鳳暁生と時子が密会している所を目撃したことがきっかけで「永遠」に対する執着を失って「世界の果て」と契約し、利用されることになった。
 ピンク色の髪に茶色の瞳。「御影草時」という名前は根室記念館が焼け落ちた後に自らつけた偽名で、根室教授時代は紫のサングラスをかけていた。
 劇場版に御影草時と黒薔薇会は登場しないが、下降するエレベーターの中での対話を通して心の奥底へ「降りていき」、そして本音へ「到着する」という演出は再現されている。クライマックスでアンシーたちの脱出を阻止しようとする棺桶型の車の大群は、黒薔薇のデュエリストたちのイメージを踏襲している。


作中用語
暁の明星(あけのみょうじょう)
 夜明けの東の空に輝く金星のこと。金星は「暁の明星」、「宵の明星」とも呼ばれる。鳳暁生の名前のモチーフとなった星で、堕天使ルシファーの象徴でもある。

エンゲージ
 「婚約」の意味。アンシーを巡る決闘の勝者はアンシーと「エンゲージした」と称され、アンシーは勝者に服従する。

鳳学園(おおとりがくえん)
 物語の舞台。幼等部から高等部まである一貫校で、学生寮を備える全寮制。男子の制服は詰襟学ラン、女子の制服はセーラー服。
 TV シリーズでは海に面した小高い丘の上に建つ校舎だったが、劇場版では常に白亜の回廊や棟が一定の位置間を移動する空中要塞のようなゴシック建築の集合体にデザインされており、基部も全景もまったく推し量ることができない巨大な異空間と化していた。

世界の果て
 「薔薇の花嫁」を巡る決闘を仕組んだ黒幕。その正体はかつて「王子様」だったディオスの成れの果て・鳳暁生。

世界を革命する力
 薔薇の花嫁とエンゲージした者が手に入れるとされている力。作中でその具体的な内容が語られることはほとんどないが、デュエリストたちはそれぞれ異なる理由でこの力を欲し、ウテナに決闘を挑む。

ディオス
 決闘の際に、どちらか一方の決闘者に舞い降りて無敵の力を与える存在。その正体は鳳暁生の過去の姿であり、世界を救おうとした「王子様」。かつて人々の願いを叶えすぎたために傷つき、妹のアンシーによって封印された。そのため現在では無力な存在となっている。幼いウテナの元に現れて「薔薇の花嫁」と逢わせており、その時にウテナに「薔薇の刻印の指輪」を贈った。元々彼が持っていたとされる「ディオスの剣」は、彼自身の「理想」が具現化したもの。

ディオスの剣
 かつてディオスが持っていたことから名づけられた。見た目は薔薇をモチーフとしたサーベルで、王子様が持つにふさわしい気品あふれる形をしている。決闘の時には薔薇の花嫁であるアンシーの詠唱とともに胸から出現する。

デュエリスト
 「決闘者」の意味。薔薇の刻印の指輪を持ち、薔薇の花嫁とエンゲージしている者に挑戦する権利がある。

薔薇の花嫁
 姫宮アンシーのこと。決闘の勝者とエンゲージする。実は、真の薔薇の花嫁を引き出すための影武者「魔女」だった。 

薔薇の刻印の指輪
 天上ウテナと鳳学園生徒会のメンバーが持っている薔薇のしるしが刻まれた指輪。これを持つ者のみが決闘に参加することができる。世界の果てから選ばれた者のみに送られる指輪だが、実は真の薔薇の花嫁を探し当てるという目的があった。

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