長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

民放の金田一さんはジャニーズじゃなきゃあかんのか!? ~『犬神家の一族』2018エディション~

2018年12月24日 23時21分22秒 | ミステリーまわり
 ハイど~も~、こんばんは! そうだいでございまする。
 いや~めっきり寒くなりましたね。寒くはなってるんですが、今年の山形はずいぶんと暖かいほうらしくて、山形市は雪が積もる気配もございません! 家の雪かきや車ののろのろ運転渋滞のことを考えると大歓迎な話ではあるのですが、やっぱり年末だっていうのにここまで降らないとなると、なんだかさすがに気持ち悪いやねぇ。

 先日、私が千葉時代に大変お世話になっていた女優さんのお芝居を観に、久しぶりに東京にも行ったのですが、東京も暑かったな。
 東京に行ったついでに、前日になにげに新聞を見てて、たまたまその広告が目に入ったので行ってみた展示会『特撮のDNA 』(蒲田・日本工学院専門学校ギャラリー鴻)がよかったよかった。内心、『巨神兵東京に現わる』を上映していた『特撮博物館』展(2012年)の焼き直しの範囲かとたかをくくっていたのですが、確かに展示スペース自体は小さくはあったものの、怪獣の着ぐるみが非常に充実していて、正直言って私は『特撮博物館』よりもこっちの方がいいと思いました。子どもの反応もすこぶる良かったし、手塚昌明監督とおぼしき紳士も見かけられたし!
 なんといっても、エクシフ以上のおギドラ様信者を自認する(もちろん宗派は昭和おギドラ様派)わたくしといたしましては、1コだけとはいえ、目が充血しまくりのおギドラさまのおかしらが復元展示されていたのが最高でした。いや~、これが、イメージよりもでっかいんだよねぇ。感動したなぁ。メカゴジラ2号機のかんばせもそうですけど、ほんとに昭和の名怪獣の表情って、神社の社殿に祀られていてもぜんぜん違和感のない威厳があるよねぇ。『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)にちらっと出てた初代ゴジラの復元スーツ(上半身のみ)と全身骨格が間近で拝めたのもうれしかった!

 ととっととっと~、まるで違う方向に話が盛り上がりそうなあんばいになってきましたので、とっとと今回の本題に入りたいと存じます。
 よりによって、クリスマスイブにこんなの!? やってしまいましたね~!


ドラマ『犬神家の一族』(2018年12月放送 フジテレビ『金田一耕助シリーズ』)
 36代目・金田一耕助 …… 加藤 シゲアキ(31歳)
 7代目・橘警察署長 …… 生瀬 勝久(58歳)

 『犬神家の一族(いぬがみけのいちぞく)』は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一作で、1949年12月~51年4月に連載された。
 本作を原作として、これまで映画3本・TVドラマ6本(2018年版を含む)・舞台2作が制作された。また、コミカライズもされている。
 作者自身は本作を、「金田一もの自選ベスト10」の第3位に推している(第1位『獄門島』、第2位『本陣殺人事件』、第4位『悪魔の手毬唄』、第5位『八つ墓村』)。


主なキャスティング
犬神 佐清  …… 賀来 賢人(29歳)
野々宮 珠世 …… 高梨 臨(30歳)
犬神 松子  …… 黒木 瞳(58歳)
犬神 竹子  …… 松田 美由紀(57歳)
犬神 梅子  …… りょう(45歳)
犬神 寅之助 …… 佐戸井 けん太(61歳)
犬神 幸吉  …… 板尾 創路(55歳)
犬神 佐武  …… 笠原 秀幸(35歳)
犬神 佐智  …… 坂口 涼太郎(28歳)
猿蔵     …… 大倉 孝二(44歳)
宮川 香琴  …… 梶 芽衣子(71歳)
青沼 菊乃  …… 安藤 聖(34歳)
大山神主   …… 品川 徹(82歳)
若林 豊一郎 …… 少路 勇介(39歳)
女中のお美代 …… 平 祐奈(20歳)
藤崎鑑識課員 …… 梶原 善(52歳)
多田刑事   …… 薮 宏太(28歳)
古館 恭三  …… 小野 武彦(76歳)
犬神 佐兵衛 …… 里見 浩太朗(82歳)

主なスタッフ
演出 …… 沢田 鎌作(50歳)


 いや~、定番中の定番がやってまいりました。
 今年は、夏の7月に吉岡秀隆金田一による『悪魔が来りて笛を吹く』が放送されているので、かな~りひさかたぶりに「1年のうちに複数の TV局でそれぞれ別の俳優さんが金田一耕助を演じる」状況が復活したわけなのですが、まだまだ「活況」とはいいがたいし、吉岡版はなんだかんだ言っても BS放送ですからねぇ。地上波放送で復活というのならば、実に約10年ぶりの金田一先生のご帰還ということになります。『金田一耕助 VS なんちゃら』とかいう二次作品のたぐいは、この際きれいさっぱり黙殺しますよ、ええ。
 もひとつ重要なのは、今回のスペシャルドラマ化によって、『犬神家の一族』というタイトルが、数ある金田一ものの中でも、「映像化回数」において、あの『八つ墓村』に並んで最高記録の「9回」に達したということです。ちなみに、『八つ墓村』も同じく、「映画3本にドラマ6本」ですね。
 ただ、ほんとにやるかどうかはわかんないけど、『八つ墓村』はすでに吉岡金田一さんのほうが次回作として指名している演出もありましたので、近いうちに「映像化10回!」という大台に達するかも知れませんが。早くそうなってほしいなぁ~。『八つ墓村ディケイド』!!

 さぁ、お話を今回の『犬神家の一族』に戻しますが、ちゃっちゃと感想いっちゃいますか。


 ……まさに「教科書的」な『犬神家の一族』でしたね。わかりやす~。


 脚本はおおむねシンプルかつよどみのない流れといった印象で文句はなかったのですが、演出に関する冒険と、キャラクター造形の深みの双方がまったく感じられなかったので、全体的にはかなり食い足りない印象が残りました。なんか……あさい!
 新機軸がどこにあるのか、さっぱりわかんないというか。比較するのならば、NHKBSプレミアム版の金田一シリーズって、吉田照幸さんによるロマンさを徹底的に排除した演出があったから、まぁ賛否両論はあるにしても、観ていて「骨」のようなものが感じられて良かったのですが、シゲアキ金田一の『犬神家の一族』は……印象の残らない、中の上の成績の子、って感じですよね。

 う~ん……そんなに市川崑の忠実な息子になってなにがいいの?って話でしょうか。那須ホテルの女中さんとのやり取りとか。
 確かに、あの超有名な「逆さの死体」に込められた意味とか、犬神佐兵衛の遺言に込められた珠世助命の深謀遠慮とか、具体的に「共犯者」が誰でどう立ち回っていたのか、という点で、なんとなく説明不足な感じもあった市川版をフォローするようなオリジナリティもあったのですが、全体的にシーンの流れとかキービジュアルの配置が市川版に似すぎなんですよね。

 そのくせ、じゃあ市川版に対してそんなにリスペクトしてるのかといえば、うわっつらは確かにそのようにも見えるけど、実はそ~でもないんですよね、今回のバージョンって。
 だって、野々宮大弐夫婦と犬神佐兵衛との歪んだ愛憎関係とか、犬神小夜子の哀しすぎる存在とか、佐兵衛の愛人でしかなかった松竹梅姉妹の母親たちのみじめさとかがまるっきりカットされてたじゃないですか。え! そこカットすんの!? みたいな。犬神家という血族の「異常性」の原因となる要素がことごとく欠けているんです。
 つまり、市川版が強調していた、原作における「えぐみ」みたいなものがぜ~んぶ排除されているんです。それはちょっと……いいとこどりすぎじゃありませんか!?

 なんで、市川版であんなにいい味を出していた「犬神小夜子」と「お園」がいなくなってんだよ! それはなんか、演じられる力量のある女優さんが今現在はいないみたいに感じられて、哀しくなってきました。原泉さんくらいに怪しいお婆さんって、今なら誰が演じられるんだ!? もういないよねぇ、ああいう「イタコできますよね。」みたいなオーラのある方。

 あくまで主観なのですが、わたくしは、市川崑監督の『犬神家の一族』の中で最もスタイリッシュで怖い演出は、文句なしで、「完全に狂ってしまった小夜子のつぶやきに、食い気味に機関車の汽笛がおっかぶさる」ところの音響センスだと思います。あそこの唐突なインサートこそが、市川演出の真骨頂なんじゃなかろうかと。
 そういうところを完全にスルーしてしまう以上、今回の『犬神家の一族』はしょせん「その程度」としか言えないんじゃないかと。先達を超えるものにはならんわな。


 ところで話はそれますが、強いて挙げればシゲアキ金田一のオリジナリティとなるかもしれない「くさい」っていう要素……それ、原作小説読んで思いつけるかな? だって、金田一耕助はシンプルさと機能性から粗末な和装を選んでるんでしょ? 周囲に不快感を与えるほど不衛生っていうのは、それ完全に市川版のフケ演出からしか連想してないような気がするんですが。

 でもまぁ、とにかく見やすいは見やすいんですよね。その点、今回の『犬神家の一族』を観たのが「人生初横溝」で、「おもしろい! 原作小説も読みたい!」と感じてくれた少年少女がいっぱい生まれてくれたのならば、いち横溝正史ファンとして、それはそれでわたくしは、うだうだ言いたい不満をまるっと引っこめて充分に満足いたします。そのための大事なファクターとして、主演がジャニーズのかっこいいお兄さんである点にも、感謝するべき利点は大いにあるでしょう。
 ちなみに、わたくしめの「人生初横溝」は、片岡鶴太郎金田一の『獄門島』(1990年)でした。あれもわかりやすくて、素直に感嘆しちゃったなぁ! かなりロマンチックだったし。


 とにかくね、今回の『犬神家の一族』に関して気になるのは、のっけからタイトルに『金田一耕助シリーズ』!!と気を吐いているにも関わらず、この先シゲアキ金田一の事件簿を続けていく「よって立つところ」がまるで見えないという点なんです。他の金田一シリーズにない新しさが、ついに見えなかった。
 片岡金田一だって稲垣金田一だって、いちおうそれなりのセールスポイントが(好き嫌いはあるにしても)あったのですが、なんかぼんやりしてたんだよねぁ、今回の『犬神家の一族』は。

 各俳優さんの演技については……そりゃね、わかる! シゲアキ金田一に意見が集中するのもわかりますよ! でもそれって、シゲアキ金田一の限界を露呈させてしまった演出のフォロー力の無さに病巣があるような気がして仕方がない。
 だってさぁ、ジャニーズの人に「風采の上がらない」金田一耕助を演じさせるって時点で、もうムリでしょ!? 「アイドルだから勘弁してネ☆」っていう言い訳は……加藤さんも30歳超えてるしなかなか難しいとこがありますけれども、まぁ、長谷川金田一や吉岡金田一みたいな実力派俳優でもないし、稲垣金田一みたいな陰性の魅力も出せませんしね。そりゃ、なんやかや期待するのは野暮ってもんですよ。

 しかも、なんとも運の悪いことに、シゲアキ金田一の今回の相方は、「あの」生瀬勝久さんなんですよ! これはいくらなんでも相手が悪すぎる。
 「逆になんで今まで金田一のサポートしてなかったの!?」とビックラこくぐらいに安定感バツグンのコメディリリーフっぷりを発揮してくれた生瀬署長だったわけですが、思えば生瀬さんって、横溝作品は初めてだとしても、あの『トリック』シリーズで10年以上ダメ刑事の役を演じ続けてましたもんね。シゲアキ金田一とは、まさしく「アップ期間の長さ」において、土俵に立つ前から差がつき過ぎていたわけです。鎧袖一触! 宇宙恐竜ゼットンとカプセル怪獣ウインダムくらいの差でしょうか。キサマデハ、ハナシニナラン。

 でもね、わたくしが本当に危惧してるのって、そんなシゲアキ金田一を支えてあげるべき他の俳優さんの「色の無さ」なんですよね。
 うまいのかな……うまいとは感じないんだけど、まずソツのない演技はするでしょ。でも、「このひと、おもしろいなぁ!」って目をみはっちゃうカラーがないんですよね。
 これって、いわゆるベテラン俳優と呼ばれる年代になればなるほど深刻なような気がしました。

 だって、配役で比較しても、昭和版の俳優さんに勝てそうな人、今回の『犬神家の一族』に、いた!?
 大滝秀治、小沢栄太郎、小林昭二、金田龍之介、そして三国連太郎……う~ん、おもしろすぎるよね。ギトギト感が違う!
 犬神佐兵衛に里見浩太朗……なんか、いいおじいちゃんにしか見えない。これは里見さんの実力云々じゃなくてキャスティングの采配に問題ありのような。

 珠世さんも……ねぇ。悪くはないんだけど、そこは多少演技力に難があったとしても、フレッシュさを優先して欲しかったような気はします。高梨さんは危なげがなさすぎる! そこに安定感はいらないかな!

 せっかく真冬の12月に放送するんですから、思いきって「金田一先生のスキー☆大捜査線」シーンくらいは映像化するような気概が欲しかったなぁ。そのくらいの根性が感じられたら、多少の難はあっても100点満点だったんだけど。
 だいたい、十数年前に作られた稲垣金田一版よりも演出が古臭くなってるって、それ、どうなんだろう!? 負けてどうすんだって話ですよ。具体的なことは言えないけど、はっきり言って「主犯」を演じていたお方の演技力というか、鬼気迫るオーラは稲垣版の圧勝……というか、勝負にすらなってませんよね。
 いや、今作の弁護をあえてするのなら、演出は主犯の狂気よりも、むしろ悲しみを強調したかったのかな。「抗いようのない運命が犯罪の道に走らせてしまった」みたいな。だからわざと主犯のスケールを縮小させたのかも知れません。


 でも……何の事情も知らない田舎モンのわたくしが勝手に邪推してるだけなんですが、このシゲアキ金田一シリーズって、たぶん稲垣金田一シリーズを「上書きしたいな。」っていう、大いなる意思が働いて立ち上がったものなんじゃないっすか? いや、しらんけど。
 じゃあ~さぁ……もっとがんばんないといけないんじゃないかなぁ。
 わたくしだって、ちょっとケレン味のあり過ぎた稲垣金田一シリーズを全面的に支持する気にはならないんですが、小日向文世さん演じる横溝正史がグイグイ前に出てくる脚色とか、いろんな味つけの努力があった分、毎回楽しみにはしてましたもんね。
 いろんな事情があるとはいえ、稲垣金田一シリーズ5作品のソフト商品化がいっさいなされていないのは、あまりにももったいないことだと思います。人によって合う合わないはあるとしても、少なくとも一見の価値はあると思うんだけどなぁ。『女王蜂』なんか、けっこういい線いってたよねぇ。


 さてさて、このシゲアキ金田一シリーズ……次回があったら、観たいと思うかな……う~ん。
 生瀬さんが等々力警部役とかでしれっと出てきたら観るだろうけど、ど~かな~。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あんまりおだてられんのも考... | トップ | 過分のしあわせ!!そうだい... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いや、本文まだだけど。 (mobile)
2018-12-25 17:31:57
加藤シゲアキの金田一耕助はいかにも役不足。生瀬勝久と丁々発止のやりとりをすると見劣りがすること著しい。黒木瞳は迫力がやや不足か、2日前の土曜日に観たNHK『ぬけまいる』で迫力の演技だった大地真央(先輩)の方が芸はやっぱり上だなあ。りょうはなかなかイイ味出して健闘していた。
返信する
先におっしゃっちゃった! (そうだい)
2018-12-25 21:29:47
 mobile さま、コメントまことにありがとうございます!!
 いや~、わかります、わかります! すぐ誰かに話したくなる出来でしたよね。
 「ジャニーズの方の演技力は語るなかれ」というご意見もあるのかも知れませんが、共通点の多い稲垣金田一シリーズと比較しても、ちょ~っと分が悪い点の多いシゲアキ金田一さんだったかな~、という印象です。いや、私はどちらかといえば、演出にモノ申したいことがたくさんあります。

 端的に申せば、「天才性が鼻につく」という点で、シゲアキ金田一は、あの「豊川金田一」の正統な直系の子孫という印象がありました……呪われた血だ~!!

 でも、「金田一耕助シリーズ」なんていうカンムリがついてますよ、これ……う~ん。
返信する

コメントを投稿

ミステリーまわり」カテゴリの最新記事