長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

宇宙からきた変なヤツ!! ~映画『シン・ウルトラマン』の感想 前編~

2022年05月14日 22時47分07秒 | 特撮あたり
≪本ブログは、2022年5月現在公開中の映画『シン・ウルトラマン』の感想を好き勝手につづるものですが、いち特撮ファンとしてど~しても譲れない異常なこだわりから、一部の登場人物や用語の表記を意図的に改変しています。どうしようもねぇ昭和野郎だとどうか哀れに思し召し、ご了承くださいませ。≫


 ど~もみなさま、こんばんは! そうだいでございます~。
 いや~、あっというまに終わっちゃいましたね、今年のゴールデンウィークも。みなさまはいかがお過ごしでしたか?
 今年はなんだか、私の場合は平日出勤がちょいちょい差しはさまれちゃって、お得感の少ない連休だったのですが、それはそれなりに充分に満喫しましたねぇ、ハイ。

 できればちゃんと独立した記事にしたいのですが、私はこのゴールデンウィークを利用して、長年やりたかった夢をかなえまして。
 今年、3年ぶりに開催された山形県米沢市の「上杉まつり」(4月29日~5月3日)の最終日のイベント「川中島合戦再現」に、上杉軍の足軽として従軍してきたんですよ。コロナ対策の関係で上杉・武田両軍の動員兵数は少なかったのですが、戦場の迫力はすごかったですよ。みごとに日焼けしちゃったけど、楽しかったなぁ。
 甲冑オール赤備えの武田軍は、遠目の陣容こそ非常に怖かったですが、抜刀して実際に接近してみると、ピッチピチの女子高生やハイテンションな外国の方で構成されている部隊が多かったので、意外と若々しくておもしろかったですよ。でも足軽具足とはいえ、何百メートルも走るとそうとう息が上がりますね! わらじ履きはクッション性ゼロなので、股関節がガッタガタになりました。

 ああいう歴史イベントは、話せる人と一緒にいたほうが楽しいやねぇ! 関東からいらっしゃったという上杉謙信ファンの色白美人な娘さん、初対面にもかかわらず、正体不明な私との気さくなトークにのってくれて、どうもありがとう! 約束どおり、来年にも必ずまた戦場で逢いましょう!!
 その方、ゲームの『戦国無双』シリーズで上杉謙信のファンになったとおっしゃってたんだけど、そんな娘さんに私、岩明均の『雪の峠』をぜひ読むようにと薦めちゃったよ……少々びっくりするかも知れないけど、好きな人のことはなるべくいろんな面を知っておいた方がいいやねぇ。『信長の野望』シリーズでさんざんひどい目に遭わされてきた私にとっての上杉謙信のイメージは、まさにそっち寄りですよ。こわすぎ!! ベルセルク!!

 そんな感じの川中島レポートを、えっちらおっちら空いた時間につづろうかと思っていたのですが、そんな久闊を叙するヒマもなく、我が『長岡京エイリアン』としては決して無視するわけにはいかない映画がついに公開! これはちょっとスルーできないなということで、今回はこの映画を観た感想を問わず語りにくっちゃべっていきたいなと思います。来週末には『ハケンアニメ!』の公開もあるしね。忙しいな!!


映画『シン・ウルトラマン』(2022年5月13日公開 113分 東宝)

 1966~67年に放送された特撮 TVドラマ『ウルトラマン』を現代に置き換えたリブート映画であり、タイトルには「空想特撮映画」と表記される。円谷プロダクション、東宝、カラーが共同で製作し、企画・脚本の庵野秀明、監督の樋口真嗣など『シン・ゴジラ』(2016年)の主要製作陣が参加する。キャッチコピーは「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」、「空想と浪漫。そして、友情。」。
 ゆるめの世界観にしたかったことから、政府系組織内外の設定などは『シン・ゴジラ』に比べてかなりフィクション寄りとなっている。

 本作でのウルトラマンのデザインコンセプトは、初代ウルトラマンをデザインした成田亨が1983年に描いた油彩画作品『真実と正義と美の化身』が元になっている。成田と彫刻家の佐々木明によるオリジナルデザインへの回帰を図った結果、カラータイマーや目の下部の覗き穴、スーツ着脱用ファスナーに伴う背ビレ部分が排され、マスクからボディ、グローブ、ブーツまでシームレスに繋がっている。
 長い手足と痩身の身体は、初代ウルトラマンのスーツアクターを担当した古谷敏のスタイルを色濃く投影し、当時の塗料では表現しきれなかった金属のようなメタル感が意識された皮膚感となっているなど、宇宙人の雰囲気を強くしている。3DCG描写であるからこそ可能な表現として、基本動作などは初代ウルトラマンの映像をトレースしたり、古谷のモーションキャプチャーのデータを元にしている。ウルトラマンの CGモデルは、古谷の体型データから作成された。
 ウルトラマンの体表のラインは、成田が描いた様々な絵画やイラストからのシャープなイメージを融合させている。初代ウルトラマンの胸にあったカラータイマーは、後から制作の都合で付けられた経緯があったことから無くなっている。初代でも活動制限時間は明確に描かれていないため、本作でも制限時間は明言されていないが、エネルギー残量が乏しくなると体色の赤い部分が緑に変化するものとなった。ウルトラマンを CGアニメーションで作った後に、ウエットスーツを上から着せたような歪みやしわを加えている。
 本作でのウルトラマンの地球飛来時の顔は、初代ウルトラマン Aタイプ(第1~13話で使用されたマスク)のものに近づけられ、体色は全身銀色が採用された。

おもなキャスティング、用語
怪獣特設対策室
 通称「科特隊」。日本に次々と出現する巨大不明生物「怪獣」に対抗するために防災庁とともに設立された専従組織。
 制服は特にないが、オレンジ色の腕章をしている。
カミナガ隊員 …… 斎藤 工(40歳)
 本作の主人公。警察庁公安部から科特隊に出向した作戦立案担当官。
 専用デスクの上には消波ブロックのミニチュアを並べている。
アサミ隊員 …… 長澤 まさみ(34歳)
 公安調査庁から科特隊に出向した分析官。
 専用デスクの上には余計な物を何も置かないようにしている。
タキ隊員 …… 有岡 大貴(31歳)
 科特隊に所属する、城北大学理学研究科非粒子物理学専攻の非粒子物理学者。
 専用デスクの上にはエンタープライズや『サンダーバード』など、怪獣がメインで登場しない特撮作品の模型が置かれている。
フナベリ隊員 …… 早見 あかり(27歳)
 文部科学省から科特隊に出向した汎用生物学者。
 専用デスクの上には生物学関連の書籍やグッズが置かれている。
タムラキャップ …… 西島 秀俊(51歳)
 防衛省防衛政策局より出向した科特隊隊長。
 専用デスクの上には科特隊のマスコットキャラ「 KATO太くん」のぬいぐるみが置かれている。
ムナカタ参謀 …… 田中 哲司(56歳)
 科特隊の室長。
加賀美 …… 和田 聰宏(そうこう 45歳)
 警察庁警備局公安課所属。カミナガ隊員の元同僚。
小室防災大臣 …… 岩松 了(70歳)
大隈総理大臣 …… 嶋田 久作(67歳)
狩場防衛大臣 …… 益岡 徹(65歳)
中西外務大臣 …… 山崎 一(64歳)
内閣官房長官 …… 堀内 正美(72歳)
首相補佐官  …… 利重 剛(59歳)
早坂陸自戦闘団長 …… 長塚 圭史(47歳)
政府の男   …… 竹野内 豊(51歳)
ザラブ星人  …… 津田 健次郎(声の出演 50歳)
メフィラス星人 …… 山本 耕史(45歳)

おもなスタッフ
監督 …… 樋口 真嗣(56歳)
脚本・総監修 …… 庵野 秀明(61歳)
監督補 …… 摩砂雪(61歳)
副監督 …… 轟木 一騎(53歳)
准監督 …… 尾上 克郎(62歳)
VFXスーパーバイザー …… 佐藤 敦紀(61歳)
デザイン …… 前田 真宏(59歳)、山下 いくと(57歳)、竹谷 隆之(58歳)
ウルトラマン・怪獣・宇宙人オリジナルデザイン …… 成田 亨(2002年没)
ウルトラマン CG原型モデル …… 古谷 敏(78歳)
音楽 …… 宮内 國郎(2006年没)、鷺巣 詩郎(64歳)
 ※『エヴァンゲリオン』シリーズや『シン・ゴジラ』での候補曲から、未使用に終わっていた音楽も使用されている。
主題歌『 M八七』(作詞・作曲・歌 - 米津玄師)
配給  …… 東宝


 いや~、ついに公開されてしまいましたね。まさか、ほんとに庵野秀明さんが制作にかかわった『ウルトラマン』の公式作品が、しかも「円谷プロ」と「東宝」の奇跡のタッグで世に出てしまうとは! 作品の内容云々を言う前に、まずその時点で感慨深い。
 思えば6年前、『シン・ゴジラ』の感想をつづった時に私は、作中における日本政府とフランスとのミョ~な蜜月関係から、『シン・ゴジラ』の直接的な続編の形で『シン・ウルトラQ』を経由した『シン・ウルトラマン』が、庵野さんの手で必ず制作されるはずだと予想していたのですが、まぁこれは、半分当たって半分外れたという結果になったでしょうか。ちゃんと『シン・ウルトラQ』やってましたよね! 30秒もしないで終わっちゃったけど。
 あれ、権利やなんかの理由もあるんでしょうが、直接の続編じゃなくてモヤッとしたパラレルな処理になってるのが惜しいなぁ! 謎の政府要人役の竹野内さんとか総理役の嶋田久作さんとか、出オチで笑っちゃう「シン・ゴメス」とかのサービスはありましたが、あくまでも2016年の「巨大不明生物ゴジラ災害」のあった日本とは別の世界という扱いになっているのが、いかにももったいない。でも、シリーズ作同士どころか、同じタイトルの中でもエピソード同士で設定のつながりに整合性がないのが「ウルトラシリーズ」の伝統ですからね。『ウルトラマンレオ』になった瞬間に、『ウルトラマンタロウ』の防衛チームZAT の超絶科学どこいっちゃった!?みたいな。そりゃMAC も壊滅しますわ。組織間の引き継ぎって大切!!

 あっ、申し遅れました。この記事では、いわゆる「ネタバレ回避」はせずに好き勝手に感想を進めていきますので、映画を観る前だから真相に迫ることは知りたくないという方は、読まずにお戻りください。
 ていうか、私つらつらと思いまするに、映画はなんてったって映像作品なのですから、「あれが登場する」とか「あれが実はこれ」とかいうネタを文章でバラしたところで、映画の魅力を減らすことにはならないと思うんですよ。『シン・ウルトラマン』を観るか観ないかの判断にネタバレは関係ないんじゃなかろうかと。これが同じ文章の世界、特に推理小説(とその映像化作品)だったら問題は致命的になるかも知れませんが、大事なのは制作陣があれやこれを「どう映像化しているか」ってことなんじゃなかろうかと。だとしたら、予備知識に何が入ろうが、結局は作品そのものを観なきゃ話は始まらないのです。ソフト商品化を待てない人は、ともかく映画館へ行くっきゃない!

 私も、座席の込み具合やネット上のレビューが落ち着いてきたころにのんびり観ようかなんて思っていたのですが、特撮ファンの宿命といいますか、いざ公開日の13日金曜日になると居ても立ってもいられなくなり、仕事が終わるやいなや、景気づけに一人焼肉をした後に意気揚々と21時30分からの最終回を観に行きました次第です。いや~、盛況なのは当然でしたが、お客さんが見事に男ばっかりでしたよ! それでも、私みたいなオッサンというよりも大学生みたいな若者がメインだったのはちょっぴり安心しました。やっぱりなんだかんだ言っても、「ウルトラシリーズ」は現役最新作がコンスタントに出ているだけあって、ファン層が若いね! そこが「ゴジラシリーズ」ファンから見ると、ちょっとうらやましい。

 んでまぁ、『シン・ウルトラマン』を観てきたわけなんですが、ともかく、いち特撮ファンとしてまず1回だけ観た段階で印象に残った点を羅列していきたいと思います。まぁ、少なくともあと1回は観に行くだろうな。

 『シン・ゴジラ』は誰に対しても「おもしろいよ!」と言い張る自信はあるのですが、今回の『シン・ウルトラマン』に関しては、「まぁ観てみてよ!」とは言えても、おもしろいとは、ちと言えないものがあったかしら。

 おもしろいと思えるかどうかは、ほんとに人によりけり。ただ作り手の「世界」はかっちり出来上がっている作品なので、それを観ることによって湧き上がった感情を、こじゃれたカフェかどっかでエスプレッソでもすすりながらじっくりと自己分析することによって、自分の「好きなもの」や「許せないもの」を認識する格好のリトマス試験紙にはなるのではないでしょうか。これって、映画にしろ演劇にしろ小説にしろ、エンタテインメントのしごくまっとうな楽しみ方ですよね。そういう意味で、この『シン・ウルトラマン』はまず及第点はいっているのではなかろうかと。

 『シン・ウルトラマン』が、少なくとも私にとってはおもしろくなかった理由は、大別すると3つほどあったように思えました。

1、オリジナル『ウルトラマン』の魅力に勝っている点がほぼない。
2、監督の演出バランスが悪い。
3、脚本がおもしろさを狙っていない。

 う~ん、どれも致命的~!!
 でも、それでも私は、この作品を観ることを人に薦めたいとは思うのです。それは、「3、」において、脚本がおもしろさを捨ててまで訴えたかったことに、ちょっとだけながら感動してしまったからなのです。その話は最後にとっときましょう。
 まずは、いつもの流れにのっとりまして、おもしろくなかった3点をひとつずつ詳しくさぐっていきましょう。


1、オリジナル『ウルトラマン』の魅力に勝っている点がほぼない。

 これはすごいね~! なにがすごいって、55年後に作られたエンタメ作品に余裕で完勝できている『ウルトラマン』がものすごいんですよ。
 メフィラス星人も「天体制圧用最終兵器」ゼットンも、半世紀前の造形の方がカッコイくない!? そりゃあ、オリジナルのメフィラス星人は子ども相手にすぐキレるボテ腹体型のおじさんですし、ゼットンも科特隊ビルの窓ガラスを割ってぼやを起こすくらいの火球しか吐きません。でも、中に人間が入らなけらばならないという制約の中で作られ、その上で、同じように中に生身の人間の古谷さんが入っているウルトラマンと泥臭い格闘を繰り広げるからこそ、敵としての「手強さ」がひしひしと伝わってくるのです。ウルトラマンと対峙してじりじりと間を詰める悪質宇宙人メフィラス星人の指先のわななき、抵抗するウルトラマンの腕をしつこく払って目も鼻も口もない顔を「ぐぐぐっ」と近づけてくる宇宙恐竜ゼットンの無言の圧力。これらに限らず、幾多の大怪獣・宇宙人たちとの命のやりとりを克明に描写した『ウルトラマン』の映像の力に、一瞬でも勝てたカットが、果たして『シン・ウルトラマン』における5体の精鋭怪獣&宇宙人との戦いの中にあったでしょうか。シン・ガボラのドリル頭&しっぽとか「花びら超回転ビーム」とかは、いかにもぬいぐるみでは実現が難しいギミックで「おっ。」とは思いましたが、しょせんは前座怪獣の立場なので、大御所でありながらも身体を張って大奮発の5変化を見せたシン・ゴジラはおろか、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版・序』の第6の使徒(ラミエル)の足元にも及ばないかと思いました。
 怪獣の怖さって、一瞬で太陽系を滅ぼせる破壊力とか、巨大化したはずのウルトラマンさえ米粒のように見える大きさとかいう「強さのインフレ」で言えるものではないことは、『シン・ウルトラマン』制作陣のどなたもご存じのはずなのですが……
 唯一、敵としての「怖さ」を語れる存在だったのはメフィラス星人の人間態を演じた山本耕史さんの不気味な紳士的演技だったのですが、それが正体を現したとたんに、おしゃれなユーロカーみたいな威厳のかけらもない姿になっちゃうんだもんねぇ。居酒屋でらっきょうなんかつまんでないで、もっとメシ食って貫禄だせ!! でも、2代目くらいまでは太らないでね。ゼットンだって、私は「ブモー。」な2代目の方がシン・ゼットンの1兆倍は魅力があると思います。

 もうひとつ、オリジナル『ウルトラマン』の魅力を思い出させるだけで、『シン・ウルトラマン』のオリジナリティをかすませる効果しかなかった重大な要因として、『シン・ゴジラ』における伊福部昭サウンド以上にフル活用されていた宮内國郎サウンドと、それに対して耳に残るところがまったくなかった鷺巣音楽のしけっぷりがあったかと思います。
 いや、もちろんいい音楽なんですから宮内さんの BGMはどんどん再活用していいわけなんですが、それに対抗して奮起するはずの鷺巣詩郎さんの音楽、どこで使われてました!? いつもの絶望感をあおる合唱ばっかりで、もうぜんっぜん印象に残ってない!
 その点、どこをとっても重インパクトの塊といっていい強敵・伊福部先生を相手にしても、『シン・ゴジラ』における鷺巣音楽は、少なくともゴジラ VS 陸上自衛隊の緊迫感あふれる戦闘シーンや、あの「内閣総辞職ビーム」発射シーンにおいて、素晴らしい仕事をしていたと思います。ああいった感じの、『シン・ウルトラマン』といえばこれ!というオリジナルな BGMがあったのかといえば……みごとに無かったですよね。
 ただこれは、メフィラス星人戦からゼットンとの最終決戦に向かうまでが顕著なのですが、今回の『シン・ウルトラマン』は「盛り上げるところこそ重苦しい音楽を」という挑戦もあったようですので、鷺巣さんの調子が悪かったとばかりいうのも酷なのでしょうけど……結局、テンションの上がる「宮内サウンド無法地帯」にしてしまった現状に、いいことはなかったのではないでしょうか。じゃあ『ウルトラマン』観ようよって話になっちゃいますもんね。

 話が脱線しますが、私は奇しくもいま、使用される音楽に関して『シン・ウルトラマン』とまったく同じ不満を、現在放映中の『金田一少年の事件簿』最新シリーズに対しても強くいだいています。初代・堂本少年の事件簿に夢中になって、見岳章さんのサントラまで購入した私としましては、そんなに過去の音源をバンバン使うんだったら、音楽担当者に見岳さん以外の名前をクレジットするなと言いたい。使うならがっつり使う、使わないなら新しい道枝少年にぴったりのオール新曲で勝負する! そういういいとこどりで中途半端なの、お母さんいちばんダイッキライ!!

 やたら先達『ウルトラマン』の良さを際立たせるだけで、まるで「自分がない」超謙虚映画。それが『シン・ウルトラマン』なのです。ウルトラマン単体だけじゃなく、この映画全体が「異常にいいひと。」なんだよなぁ! おもしろさを過去作品に譲るとは……それ、ひとつの独立した娯楽映画と言えるのか!?


2、監督の演出バランスが悪い。

 こりゃも~、今に始まったことじゃないですよね。
 この作品は、ちまたでも多少物議をかもしているように、監督がおもしろがって提示しているギャグ展開が、お客さんの多くにとってそんなにおもしろくないというセンスの齟齬が生まれています。『シン・ゴジラ』では、せいぜいルー語を話す石原さとみさんくらいにしか見受けられなかった、「アニメではすっと入るけど、実写で役者さんがやるとなんかこっぱずかしくて見てられない」やり取りが妙に目立つんですよね。
 アサミ隊員が自分のデジタルタトゥーに一喜一憂した末に「よっしゃー!!」と絶叫するシーン、フナベリ隊員がテーブルいっぱいに広げられた駄菓子をむさぼるシーン、タキ隊員が VRゴーグルをかけて一人トークをしているシーン。それらは、アニメでやると違和感なくニヤリとしてしまうようなちょっとしたキャラクターの味付けシーンなのですが、ああいう風にいちいちカット割りしてじっくりやられると、いかにもトゥーマッチになってしまうんですよね。こういうの、実写で絶対にやるなっていう話じゃなくて、岡本喜八監督とかがやるともっとスマートで、ちゃんとおもしろくなるはずなんですけれどね。

 そしてそれ自体は、監督がギャグパート以上にシリアスパートをじっくり描いているのならば、バランスが取れて目立たなくなるはずなんですが、この監督、こういうアニメ仕込みの得意なディフォルメ展開はしっかり撮るのに、脚本の本質に迫る「カミナガ隊員(の中のウルトラマン)の地球人としての成長」とか、「ウルトラマンが地球に残ることを決めたきっかけ」周辺の描写はめちゃくちゃおざなりにしてませんか? その後の展開にかなり重要な関わりを持つはずの「現場に子どもが!」のあたりの雑な展開なんか、まるでコントみたいな飛ばし演出になっちゃってるじゃないですか。『シン・ゴジラ』の「現場におばあちゃんが!」とは雲泥の差の、緊張感の欠如。子どもも救助されたあとはいっさいお話にからんでこないし。昭和ウルトラシリーズへのリスペクトを込めた作品とは思えない粗雑な扱い。ホシノ少年的な展開、そんなに嫌いなんですか!? 「フィクション寄り」って標榜してるんだったら、思いきってそこまでいけばいいのに。

 あと、ギャグセンスが『ウルトラマン』での飯島監督や実相寺監督のそれと違って、いかにも品がないような気がします。
 「巨大アサミ隊員」のくだりとか、「ニオイで探索」のくだりとか、自分と他人の区別もつけずにおしりをパーン!と叩くアサミ隊員のクセとか。それ自体、別にあってもいいとは思うんですが、描き方がしつっこいから鼻につくんじゃないでしょうか。
 なんか「昨今のコンプライアンス的にアウト。セクハラだ!」みたいな批判もあるようなのですが、いやいや、そんなこと以前に撮り方が品もテクニックもないからダメなんじゃないですか? ニオイだからといって、カミナガ隊員がアサミ隊員の身体に鼻を近づけるさまをそのまんま映してなにがおもしろいんだよう!!
 そこ、飯島監督だったらたぶん、ニオイをかぐ様子なんか直接には撮らないかカミナガ隊員の背中越しのショットだけにして、あとはタムラキャップが空咳をしながら他の2人を肘でこづいて、3人仲良く視線をそらすという演出にするのではないでしょうか。あとはアサミ隊員の「えっ、ちょっ……」、「そんなに嗅がないで!」みたいなセリフだけを言ってもらっときゃいいのです。秘すればこそ花! そっちのほうが断然イイじゃないですか!! どうイイのか?って話は、それこそ真のセクハラなのでなしだ! ともかく、半世紀以上前の『ウルトラマン』よりも、現在の樋口演出の方が単純でひねりがないのは間違いないでしょう。あきれるほどに子どもっぽい。
 だいたい、そこに帰結させるためだけに、天下の長澤まさみさんにその前のシーンから「シャワー浴びてない」ってセリフをしつこく言わせるのが、無粋というか、気持ち悪いにも程があるのでは? そんなの伏線とは言わねぇよ。

 唯一、タイトスカート姿のまんまの巨大アサミ隊員の足元からの仰角カットを受けて、真剣な表情のタムラキャップが「もっと近くに行ってみよう!」と言う映像のつながりに私はクスリときましたが、それ以外のあれやこれやは……第一、身体を張ってる長澤さんがそんなに魅力的に見えないというのはダメなんじゃないだろうか。実相寺監督の桜井浩子さんとか、飯島監督のひし美ゆり子さんくらいにちゃんとキレイに撮らなかったら、女優さんがかわいそうじゃないですか!! 2時間近くある本作の中で、長澤さんがきれいに見えたのはほんとのラストの1カットだけでしたよ。

 ほんと、樋口監督は、あの金子修介監督と一緒に「平成ガメラ3部作」を撮っておいて、いったい何を学んできたのだろうか。金子監督はすごいよ~。『ガメラ3』では、あんな不憫な役だった仲間由紀恵さんでさえもちゃんと美人でしたからね。あっそうか、だからムナカタ参謀は、仲間さんのかたき討ちで科特隊室長となって怪獣退治に心血を注いでいるのか! なんという夫婦愛!!
 ムナカタ参謀といえば、平成版の『怪奇大作戦』で牧史郎父子役だった西島さんと田中さんが仲良く共演しているのはうれしいですね。お2人とも、押しも押されもせぬ大俳優におなりんさって……

 お話を本筋に戻しましょう。私の勝手な印象なんですが、今回の脚本のテイストって、もしかしたら本質的に樋口監督のセンスとは合わないのかもしんない。でも、だからといって監督演出も100%庵野さんでいったらかなり重たい作品になってしまい、しまいにゃ完結しなかったかもしれず。ともかく、『シン・ウルトラマン』として作品が完成したのは樋口監督の良くも悪くも「売り物としていちおう仕上げる」フットワークのおかげなのではないでしょうか。いいコンビ……なのか?


3、脚本がおもしろさを狙っていない。

 ここが、こここそが! 『シン・ウルトラマン』の不思議な魅力の本質だと思うんですが……
 字数がかさんできちゃいましたんで、続きはまた次回にいたしましょうか。ごめんなさ~い!!

 庵野秀明さんって、ほんとに不思議な作家さんですよね~。私の中では、アンディ=ウォーホルに通じるものが大いにある方だと思います。
 周囲はいっつも天地を揺るがす大騒ぎ。でも、騒ぎを起こすご本人はいつでも醒めていて、台風の目のように静謐&うつろ……

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2 コメント

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Unknown (mobilis-in-mobili)
2022-06-01 22:47:06
遅ればせながら観てきましたよ~。
コロナが怖いので密を避けてたら今日になってしまいました。

流れとしてはウルトラQから初代ウルトラマンのシリーズを通しでやったカンジなので、得した感じではあったのですが、本来あるべき細かい『遊び』がなく、ちょっと雑だったのかな~。庵野監督ならもっと目を凝らして探せば色んなものが画面の端っこに写り込んでいるような演出に満ち満ちた作品に仕上げて欲しかった気がします。

出だしはテンポ良く『画面の文字を読むヒマがないっ❗』ってカンジだったのですがね~。細部にコダワリが少なかったせいで『2~3度繰り返して観たい』とは思わない作品になってました。

駄作ってワケではないのですが、たとえば初期のスター・ウォーズだったら『あっ❗あんなところに見たことのない宇宙人がいる‼️』なんて楽しみがあり、私はオールナイトで11回観た経験があります(当時は入替制じゃなかったので💦)。そう『神は細部に宿る』のですから。

あと、やっぱり怪獣のデザインは初代ウルトラマンは素晴らしかった。ゼットンもぜひ地上を歩かせて欲しかった~。

文句ばかり書きましたが愛するゆえの苦言とお許しください。ではまた。
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『ジョーズ』と『ジョーズ'87 復讐篇』みたいな関係!? (そうだい)
2022-06-01 23:44:11
 mobilis-in-mobili さま、コメントをまことにありがとうございます!! いつも、あなたさまの応援が生きるよすがになっております……

 ご覧になりましたか! 私も、遅ればせながらやっと感想記事の後半をつづる余裕が出てきました。もう6月……

 このへんのことは後半記事で言いたいのですが、結局、『シン・ウルトラマン』はあくまでも樋口監督の作品なのであって、監修は受けても庵野監督作品ではない、という違いなのだと思います。両者の「特撮愛」の質の違いが如実に表れているのではないのでしょうか。
 例えとして適切ではないかもしれませんが、自分のやりたいことを最優先する「芸術家肌」の高畑勲監督と、なんだかんだいっても作品を待っている消費者を意識する「職人気質」の宮崎駿監督くらいの違いがあるのではないでしょうか。そして、だからこそ2人はプリキュア(初代)のようにつかず離れずの関係にあるのでしょう。

 そうは言っても、『ジョーズ'87 復讐篇』の側に置くのが失礼なくらいには大ヒットしてるのが『シン・ウルトラマン』のすごいところなんでしょうが……記録、どこまで伸びるんでしょうかね~。『ゴジラ VS ビオランテ』の200万人、超えられますかね? あたしゃもう、生誕50周年のアニバーサリーイヤーに観客動員数を超えられてしまったガイガンさんが不憫で不憫で……でも、そこがガイガンらしいですよね~! ウルトラマン全然関係ありませんが。
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