長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

おまえなんか……大っ嫌いだけど大好きだっ  ~映画『ゴジラ VS キングギドラ』~

2014年08月27日 22時56分37秒 | 特撮あたり
映画『ゴジラ VS キングギドラ』(1991年12月14日公開 103分 東宝)


 『ゴジラ VS キングギドラ』は、ゴジラシリーズ第18作、東宝創立60周年記念作品。制作費15億円、配給収入14億5千万円。観客動員数は約270万人。
 キャッチコピーは、「世紀末、最大の戦いが始まった。」「お前だけには絶対負けない!」。

 前作『ゴジラ VS ビオランテ』(1989年)の成功を受けて、昭和ゴジラシリーズの人気怪獣で子どもたちのリクエストが多かったキングギドラが登場することとなった。ゴジラとキングギドラの対決は、シリーズ第12作『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972年)以来19年ぶりで、1対1の対決は本作のみである。オリジナル作品のタイトルとして初めて「キングギドラ」が冠されている。ゴジラは本作で、前作の身長80メートルから100メートルに巨大化した。
 特撮撮影ではミニチェア・フルセットではなく各シーン、各セットでの切り替えに合わせたミニチェア・セットとなった。東宝第9スタジオで新宿副都心、福岡市街、札幌、綱走原野のセット、第7ステージでは海底、本編の MOTHER内部の撮影と厚みを増す撮影となった。特に新宿での最終決戦は、撮影用カメラを3台使用し、当時完成したばかりの東京都庁を舞台にバトルを展開し破壊、造られた都庁ミニチェアは完成に1カ月かかり、その高さは5メートルを超え東宝特撮史上最高の石膏ビルとして大きな話題となった。
 前々作、前作ではシリーズ刷新の意味合いも込めて当時の人気作曲家が映画音楽を担当したが、「やはり最も有名なテーマを超えるものを造るのは難しい」という意向から、本作では『メカゴジラの逆襲』(1975年)以来16年ぶりに音楽を伊福部昭が担当、ゴジラのテーマ曲が前面に押し出された他、キングギドラのテーマ曲や『宇宙大戦争』(1959年)、『キングコング対ゴジラ』(1962年)、『怪獣総進撃』(1968年)で用いられた映画音楽が伊福部自らによる編曲を経て再び用いられている。この映画のために当時すでに廃れていた、大型ステージを貸しきってオーケストラの録音を再度実行するという非常に手間のかかるレコーディング作業が行われた。
 東宝特撮映画の顔ともいえる俳優の土屋嘉男がゴジラシリーズでは『怪獣総進撃』以来23年ぶりに、佐原健二が『メカゴジラの逆襲』以来16年ぶりに出演している。さらに、『ウルトラマン』シリーズや『仮面ライダー』シリーズで著名な小林昭二がゴジラシリーズに初出演した。その他には特別ゲストとして、『ノストラダムスの大予言』(1974年)以来17年ぶりに山村聰が内閣総理大臣役で出演している。
 DVD版での監督・大森一樹のコメントによれば、23世紀の日本の増長や一企業の原子力潜水艦の所有などは、当時バブル経済真っ只中の日本がどこまで肥大化するかわからないことに対する不安と警鐘の意味合いがあったという。ただし、ちょうど公開の時期を境にして日本はバブル崩壊により長期の不況に突入したので、現実と内容とのずれが生じている。また、セリフで23世紀でもソヴィエト連邦が存在していることになっているが、本作が劇場公開された直後の1991年12月25日にソヴィエト連邦は崩壊した。
 物語は、タイムトラベルをして過去のゴジラ誕生の歴史を変えようとするなど、ゴジラシリーズの中でも意外性に満ちている。また、ゴジラが放射能を浴びて怪獣になる前の「ゴジラザウルス」という恐竜も登場し、ゴジラ誕生の秘密が明らかになっている。ただし、タイムパラドックスに関する矛盾も多く、批判もある。タイムトラベルの設定は、当時大ヒットした映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズからアイディアを流用したと関係者は語っており、本作はこの他にも、「人間そっくりのアンドロイド」(『ターミネーター』シリーズ)や「巨大ロボットを操作して戦うヒロイン」(『エイリアン2』)、「スピルバーグという名前の登場人物」など、アメリカの SF映画からヒントを得た要素も多く見受けられる。

 大森の当初の構想では、「日本が実は核兵器を保有しており、日本の核で恐竜がゴジラになる。」という筋書きだった。しかし、これを知った製作の田中友幸が、「被爆国である日本が核兵器を持つとは何事だ。」と反対したため、国家でなく一企業が日本国外に核を保有しているという設定に変更された。これに田中は、「日本国内には無いんだな。」と確認した上で同意したという。
 本作のラゴス島でのアメリカ軍の描写について、アメリカの退役軍人団体からクレームがついたほか、ゴジラ誕生の理由をアメリカの水爆実験と明言している点、さらに当時、貿易摩擦で悪化していた対日感情からアメリカの配給会社も難色を示し、本作はアメリカで劇場公開されないどころか英語版すら製作されなかった。本作がアメリカで公開・ソフト化されたのは1998年になってからである。

 本作の公開当時に出版された、田中文雄によるノベライズ版(朝日ソノラマ)は、物語は映画版にほぼ準じるが、冒頭には未来人が金星で「宇宙大怪獣キングギドラ」の死骸から体組織を回収して愛玩用ペット「ドラット」を開発するというシーンが追加されていた。


あらすじ
 1992年7月。突如として東京上空に巨大な UFOが飛来した。後日、富士山麓に着陸した UFOの中から、ウィルソン、グレンチコ、エミーと名乗る3人が姿を現す。彼らの言い分によると、自分達は23世紀の「地球連邦機関」の使者であり、21世紀に復活したゴジラによって日本が壊滅的打撃を被る前に、ゴジラを抹殺する目的でやって来たのだという。
 彼らは、ノンフィクションライターである寺沢健一郎が著書『ゴジラ誕生』の中で記した、「ラゴス島に生息していた恐竜が、1954年にビキニ環礁で行われた核実験によりゴジラへと変異した。」という仮説に基づき、そこから恐竜を別の場所に移動させてゴジラを誕生させないようにするという計画を立てた。
 そこで、未来人のエミー、護衛のアンドロイド「 M11」と共に寺沢、国立超科学研究センター・ゴジラ対策チームの三枝未希、古生物学者の真崎教授らは1944年のマーシャル諸島・ラゴス島へと赴き、太平洋戦争中の日本軍ラゴス島守備隊をアメリカ軍から救った1頭の恐竜「ゴジラザウルス」を目撃する。恐竜は計画通りに未来人の手によってベーリング海へと転送され、これによりゴジラは歴史から完全に抹殺されたものと思われた。
 しかし、寺沢たちが1992年現在に戻ってくると、ゴジラの消滅と同時に、太平洋上には新たな怪獣キングギドラが出現していた。その裏には、後に地球一の超大国へと肥大化し、世界経済を一手に支配することとなる日本の国力を消耗させんとする、未来人の策略があったのだった。


おもな登場人物
寺沢 健一郎 …… 豊原 功補(26歳)
 本作の主人公。超常現象専門のノンフィクションライター。「太平洋戦争時代に日本軍の兵士が恐竜を見た」というネタを追っていくうちに、ゴジラ誕生の仮説を立て『ゴジラ誕生』という本を出版しようとしたことから、今回の一件に深く関わっていく。
 都心郊外に自らの著書の収入で建てた一軒家に住んでいるクールな青年ライターだが、ウィルソンを殴り合いで倒すほど、血気盛んで喧嘩の腕っ節も強い。

エミー=カノー …… 中川 安奈(26歳)
 本作のもう一人の主人公。23世紀の「地球均等環境会議」の穏健派メンバー。日本人女性で、1992年に MOTHER でウィルソンやグレンチコらと共にタイムワープしてやって来た。当初は現代人への警告のためにウィルソンたちに同行し、ゴジラを抹殺する作戦に協力した。しかし、新たに出現させたキングギドラで、現代の日本を攻撃して国力を消耗させようとするウィルソンたちに反発し、寺沢たちに協力する。
 自分を力ずくで連れ戻そうとしたアンドロイド M11に野次をぶつけまくりながら追い払おうとしたり、メカキングギドラに乗り込んでゴジラに戦いを挑むなど、気丈でアクティブな女性である。実は、寺沢の子孫にあたる。
 エミーを演じた中川安奈は、演技に関して『エイリアン』シリーズのシガニー=ウィーバーも意識したという。

土橋 竜三 …… 小林 昭二(61歳 1996年没)
 内閣安全保障室室長。保障室内に再編成されたゴジラ対策本部「 Gルーム」の中心人物で、想像を超える2大怪獣の対策に就く。キングギドラに対抗するため、ゴジラを再び誕生させてはと提案してしまう一幕もあったが、自身で決行することはなかった。

真崎 洋典 …… 佐々木 勝彦(47歳)
 東都大学古生物学教授。穏やかな人柄で、恐竜の研究を専門とし、一部の恐竜は6550万年前の大量絶滅を生き延びたとする「恐竜生存説」を提唱している。寺沢の取材を受けたことから、寺沢や未希と共に未来人のゴジラ抹殺作戦に参加することとなる。その後も、国立超科学研究センターに出向して協力した。

ウィルソン …… チャック=ウィルソン(45歳)
 23世紀から来た未来人で「地球均等環境会議」の過激派メンバー。20世紀の日本の国力を消耗させる作戦を遂行するため、地球連邦機関の MOTHER を奪い、1992年にグレンチコたちと共にやってきた。日本の将来を救うためと偽ってゴジラを歴史から抹殺した後、自分たちが操るキングギドラで日本を攻撃する。

グレンチコ …… リチャード=バーガー(28歳)
 23世紀から来た未来人で「地球均等環境会議」の過激派メンバー。ウィルソンの相棒で、共にキングギドラを操る。20世紀の人類を「救いようのない原始人ども」と評する。

M11 …… ロバート=スコットフィールド
 アンドロイド。見た目は笑顔も見せる普通の白人男性だが、機械の操作、戦闘などで人間を大きく超えた能力を発揮する。英語と日本語で会話できる。表皮は焼けるが、炎の中でも活動できる。

新堂 靖明 …… 土屋 嘉男(64歳)
 帝洋グループ会長。太平洋戦争中は日本陸軍少佐・ラゴス島守備隊隊長だった。その際はアメリカ軍の猛攻の前に玉砕寸前となったが、戦闘中に現れたゴジラザウルスがアメリカ軍を蹴散らしたために事実上救われ、ラゴス島撤退直前には傷ついたゴジラザウルスに涙を流しながら謝罪と感謝の言葉を送る。日本に帰国後は帝洋グループを創設して日本を経済大国として復興させたが、自らの企業で原子力潜水艦を所有するなど、企業としての行動は暴走してしまっていた。

池畑 益吉 …… 上田 耕一(50歳)
 福岡県・博多で焼き鳥屋台を営む老人。太平洋戦争中は新堂の部下で、ラゴス島にてゴジラザウルスに遭遇した。その時の経験から「恐竜ワールド」博覧会に抗議する演説をしたことを機に、寺沢の取材を受ける。

藤尾 猛彦 …… 西岡 徳馬(45歳)
 物理学者で国立超科学研究センター所長。45歳。突如出現した MOTHER に対する会議に参加し、内閣安全保障室に協力する。常識人で、新堂がベーリング海へ原子力潜水艦を向かわせたと知った際には彼を強く非難している。


登場する兵器・用語
F-15J
 航空自衛隊の制空戦闘機。キングギドラと襟裳岬の上空で戦う。ゴジラシリーズの中では、本作で初めて対怪獣戦を行った。

92式メーサー戦車
 前作『ゴジラ VS ビオランテ』で初登場。所属は陸上自衛隊特殊武器科部隊だが、のちに国際連合 Gフォースも保有することとなる。車体に8輪駆動8輪操舵のタイヤを装備した完全自走式の装輪戦車で、牽引式のトレーラータイプだったかつての66式メーサー車とは大きく印象が異なる。亀を思わせる外観の大きな砲塔上部に、メーサー光線を照射するパラボラ型砲身を搭載している。その他、運転席上部には怪獣出現時の緊急走行を考慮してパトライトを装備し、前照灯とは別に、砲身基部に大型のサーチライトが2基ある。
 武装は500万ボルトメーサー砲(射程12キロメートル)1基だが、のちに超低温レーザー砲1基と8連装ミサイルランチャー2基に換装された改造型も活躍している(『ゴジラ VS デストロイア』)。全長16メートル、全幅9.5メートル、全高4.8メートル、重量85トン、最高時速70キロ。
 対怪獣迎撃の中核として配備されるが、『ゴジラ VS キングギドラ』では札幌市でゴジラと交戦して壊滅的な損害を受けた。

むさし2号
 帝洋グループが、日本が何らかの理由で核汚染した際に核シェルター代わりにするために極秘建造した原子力潜水艦。核ミサイルを搭載している。平時は東南アジアの軍事施設に保管され、乗組員は軍事訓練を受けた帝洋社員。未来人の策謀により、ベーリング海に転送されたゴジラザウルスをゴジラとして復活させようとしたが、同海域で起きた原子力潜水艦の核燃料漏れによりすでに怪獣化していたゴジラに遭遇し撃沈され、ゴジラはこの核エネルギーを吸収し、さらに強大化した。
 製作当初はミニチュアが新造される予定だったが、予算の都合により1984年版『ゴジラ』で使用されたソ連原子力潜水艦のミニチュアが再利用された。

MOTHER(マザー)
 23世紀の地球連邦機関が開発した巨大円盤型タイムマシン。外観はキノコ雲に似た円盤型で、現代人には UFOとして認識された。元々は地球連邦機関が所有していたものを、ウィルソンら「地球均等環境会議」が強奪して使用した。船内には白人型の武装アンドロイドが多数警備にあたり、KIDS やスカイモビル、フライングスクーター(本編には未登場)などが収容できるパーキングドームをはじめ、3次元映像投影装置、上階の通路へ乗員を上昇させる光を照射する装置など、現代の科学力を遥かに超えた設備を持つ。防御用のバリアも備えている。また、緊急時には20分後に23世紀に戻ることができる緊急避難装置がある。全高100メートル。

KIDS(キッズ)
 地球連邦機関が開発した3次元映像投影装置を搭載した小型タイムマシン。乗員定員5名。普段は MOTHERのパーキングドームに収容されている。
 潜望鏡のようなテレビカメラにより艇外を偵察し、機体前部には他の物体を別の時代・場所にワープさせるテレポートビームが発射されるパラボラヘッドが内蔵されている。ワープは生物も可能だが、動かない状態であることが必要とされる。後にメカキングギドラのコクピットに改造された。

BABY(ベイビー)
 バックパック型の飛行ユニット。使用者はこれを背負いヘルメットをかぶり、手にした専用リモコンを操作することで、空中浮遊し低速移動できる。劇中ではエミー、M11、寺沢が使用した。
 脚本では、この他に一人乗り飛行マシーンのフライングスクーターが登場予定だったが、本編では使用されなかった。

国立超科学研究センター
 藤尾猛彦が所長を務める民間組織。ゴジラを監視・研究する「ゴジラチーム」を編成し、防衛庁と連携して対ゴジラ兵器の研究開発も行っている。
 後に人員の多くが国際連合 G対策センターに統合され、対ゴジラ専門機関として発展する。

内閣安全保証室・Gルーム
 土橋竜三が中心となって再建された日本政府のゴジラ対策のための総本部。前作『ゴジラ VS ビオランテ』の同名の部署より規模が拡大したため専用の司令室を持つようになり、有事の際には防衛庁長官や幕僚長らもここの席に着き、指揮を執る。

ラゴス島
 太平洋マーシャル諸島のルオット島とクェゼリン島に挟まれた小さな島(本作の架空設定)。太平洋戦争中にはゴジラの前身であるゴジラザウルスが棲んでおり、攻め込んで来たアメリカ軍や、本島の日本軍守備隊だった新堂と池畑たちに目撃された。

23世紀の地球
 エミーの話によると、ゴジラは23世紀まで出現しておらず、21世紀に日本は経済大国となり、南アメリカやアフリカといった赤字国の国土を買収して領土を拡張。22世紀末には地球一の大国となった。また、核兵器は21世紀末に地球上から全て破棄され、各国は武力でも日本の暴走を抑えることは不可能になったという。

地球連邦機関
 英語表記は EUO(Earth Union Organization)。23世紀の地球統合機関。しかし、この組織ですら日本の肥大化は止められなかった。20世紀の日本の国力を消耗させる作戦を計画したウィルソンらに MOTHERを強奪されている。のちにキングギドラをサイボーグ化させた。

地球均等環境会議
 23世紀の国家間の力の格差を無くすことを目的とする運動グループ。世界中から穏健派・過激派までさまざまなメンバーが参加している。


おもなスタッフ
製作      …… 田中 友幸(当時の東宝映画会長 82歳 1997年没)
脚本・監督   …… 大森 一樹(40歳)
特技監督    …… 川北 紘一(50歳)
音楽監督    …… 伊福部 昭(78歳 2006年没)
プロデューサー …… 富山 省吾(40歳)
撮影      …… 関口 芳則(45歳)
助監督     …… 米田 興弘(38歳)
特技助監督   …… 鈴木 健二(35歳)

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