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長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

これはバットマンの新作ではない、『シン・キャットウーマン』だ!! ~映画『 THE BATMAN』~

2022年03月19日 18時05分59秒 | 特撮あたり
 ハイど~もみなさんこんばんは! そうだいでございます。
 しぶとい、しぶとすぎる……山形、雪また降っちゃったよ! これが雪国の真の力だと言うのか。
 ま、そんなこと言っても、今日のお天気のよさであっという間に解けてしまったんですけどね。昨日はまた積もるのかと思いましたよ……みぞれみたいなじめじめ雪、重たくて嫌ですよね!
 雪のことはどうでもいいんですが、先日のおっきな地震で、スープをこぼしてうちのノートパソコンをぶっこわしちゃってさぁ! 昨日は大雪の中、あちこちを駆けずり回って新しいパソコンを買ったんですよ。新しいったってその場しのぎの中古なんで、年式が古くて安くはあるんですが、プライベートでは生まれて初めて使う国産メーカーのやつで、しかも初の SSD搭載なんですよ。いや~、素晴らしいですね! 今度は大切に使っていこう……水気厳禁!! いまさらになってそんな教訓を得た私なのでありました。おそすぎ!! 

 さてさて、そんな事情により、新しいパソコンになって初の我が『長岡京エイリアン』への投稿となるのでありますが、今回はもう、待ちに待った映画の鑑賞記でございます! いや~、待ってた待ってた。そして、その期待に応えてくれた応えてくれた!!


映画『 THE BATMAN』(2022年3月11日公開 175分 ワーナー・ブラザース)


 思いのほか面白かったよ!! あのクールすぎる予告編のおかげで期待値がかなり上がっていたのですが、なんのなんの。
 わたくし、面白い映画は劇場で何回か観ることもあるのですが、今のところ最多の記録は、かの『ダークナイト』(2008年)の4回なんですよね。ベッタベタで恥ずかしいのですが、やっぱりヒース=レジャーのジョーカーにメロメロでした。
 それで今回の『 THE BATMAN』なのですが、今のところ、昨日2D 字幕版を、今日は2D 日本語吹替え版を鑑賞しました。いや~、やっぱり映画なので出費もバカにならないのですが、2回観てやっと意味が飲み込めてくる人物の表情や小道具もあるんでね。かといって、ソフト商品がリリースされるのをのんびり待っているほど呑気なファンでもないのです。2回目もちゃんと面白いのが、さすがマット=リーヴス監督入魂の一作という気合の入りようですよね。
 チケット代が高いは高いんですが、やっぱり映画は映画館で観るのがいちばんですよね。特に今回は、バットモービルとペンギンカーとのカーチェイスのシーンがすごかったなぁ! 音響の大迫力がんまぁ~ズンズン伝わってきます。
 ちなみに、私は基本的に洋画は原語で観る派なのですが、バットマン世界における有名キャラやヴィランたちの日本語版声優キャスティングに関しては、もはや大河ドラマにおいて足利義昭公や織田信長を誰が演じるかとかいう大問題に匹敵する重要事ですので、しっかり確認させていただくことにしております。
 特に今回は、日本の声優陣の配置が話題性抜群なのではないでしょうか。

バットマン / ブルース=ウェイン   …… 櫻井 孝宏(47歳)
アルフレッド=ペニーワース     …… 相沢 まさき(57歳)
ジェイムズ=ゴードン警部補     …… 辻 親八(65歳)
セリーナ=カイル          …… ファイルーズ あい(28歳)
リドラー              …… 石田 彰(54歳)
オズワルド=コブルポット / ペンギン …… 金田 明夫(67歳)
カーマイン=ファルコーネ      …… 千葉 繁(68歳)
トーマス=ウェイン         …… 森久保 祥太郎(48歳)
リドラーのとなりの囚人       …… 内山 昂輝(31歳)

 いや~、この陣容よ。1980年代に少年時代を過ごした自分といたしましては、年を追うごとに大塚周夫さんや永井一郎さんといったレジェンドの方々が去って行かれるのは非常に寂しいことなのですが、ああ、我らが千葉アニキが最年長でいちばんの黒幕を演じる時代になったのか……と、感慨深い気持ちになってしまいます。世紀末にはあんなに下っ端のモヒカンだったのに、こんなに立派になったのねぇ……ほんと、目頭が熱くなります。
 あと、『鬼滅の刃』好きの視点から見てみましても、思いっきり水柱と上弦の参の対決になっているのが最高ですね。原作のアニメ版のほうではまだまだ先のはずなのに、すでにこっちで実現させているとは、なかなかやるな! そして終盤、傷心の上弦の参をなぐさめるのが下弦の陸という、この下剋上っぷりよ! ということは、次回作では富岡さんとルイくんの再戦となるのか!? 前回は文字通りの瞬殺だったけど次はそうはいかねぇゼ!ということなんですね。燃えるなぁ~!
 それにしましても、今回の吹替え版で最も輝いていたのは、やっぱりセリーナ=カイルを演じたファイルーズあいさんだったのではないでしょうか。プリキュア主演にジョジョ主演ときて、今度はついにキャットウーマンというわけか! ノリにノッてるなぁ。今回のファイルーズさんの人選はなにが良かったって、容易に人は信じないとうそぶく夜の女性でありながらも、身内のことを思うと危険も顧みず即決行動するアツさも垣間見えるという二面性を演じることができるからなんですよね。人前でいくらいきがっていてもクールに徹しきれない「キャットウーマン前夜」の幼さがある。そこらへんの情熱に関しては、つい最近まで一年間トロピカっていた経験が活きているのではないでしょうか。非常にタイミングがよろしい。
 ところで、いつも賛否両論が激しい声優以外の有名人の起用についてなのですが、千鳥のノブさんは良かったんじゃないですか? まさに正真正銘の一言だけで、しかも他の登場人物の誰ともからまないという扱いはむしろかわいそうになるくらいだったのですが、ご自分の分というものをわきまえた好演だったと思います。ちょっと、佐藤隆太さんのゴッサム市長は声が幼かったかなぁ。それにしても一瞬の出番でしたけど。

 1989~97年のティム=バートン&ジョエル=シュマッカー4部作、2005~12年のクリストファー=ノーラン3部作に続く、新たなバットマンサーガの始まりを告げる今回の『 THE BATMAN』、具体的にどこがそんなに素晴らしいのか? これを説明することは非常に難しい……っていうか、どこからホメたらいいのかわかんないくらいホメるとこがいっぱい! ファンにとって、こんな幸せなこともないやねぇ。
 いつもの手段になってしまうのですが、とりあえず項目ごとに分けて、気づいた点からくっちゃべっていきましょうかね。


1、「始まりの物語」なのに「2年目」という、この絶妙な取捨選択のセンス

 映画が思いっきりコケない限り、続編が作られることがほぼ疑いのない義務となっているのが、バットマンのような世界的有名ヒーローの映像化にあたっての大変さだと思うのですが、続きがある以上、かなり本腰を入れて作品世界の設定を作り込み、さらにそれを観客に説明しなければならないというめんどくささがあると思います。それが、昨今おおはやりのトリロジー形式の1作目にまとわりついてくる難問だと思うんですよね。
 実際、バットマン映画の先達を振りかえってみましても、1989年の『バットマン』では、主人公ブルース=ウェインがダークヒーロー・バットマンにならなければならなかった原点すなはちブルースの両親惨殺の真犯人役を、作品のメインヴィランであるジョーカー(ジャック=ネイピア)におっかぶせるという離れ業で、かなり深刻なブルースの人生的問題を映画1本の中で解決させるという物語の簡素化を図ったわけなのですが、その結果、2作目以降のバットマンの存在意義をやや軽くしてしまったきらいがありました。さすがバートン監督というべきか、2作目『バットマン・リターンズ』(1992年)では、ブルースの肩の荷が下りた分、メインヴィランのキャットウーマンとペンギンの人生背景を思いっきり重くするというバランス調整を行ったわけだったのですが、そのせいでキャットウーマンもペンギンも原作無視のほぼ別人となってしまったような気がします。ま、映画が最高だったからいいんですけど!
 漢と書いて「おとこ」と読む、漢ノーラン番長による3部作の1作目『バットマン・ビギンズ』では、さすが小細工を使わずに漢らしく、ブルースが世界を放浪し、バットマンという選択肢を発見する新人ほやほや1年目までをじっくりコトコトとつむぐ正攻法で物語を始めていったわけですが、ブルースがそんなに悩まなくても支援者(執事アルフレッドとか技術顧問のルシアス=フォックス)とかヴィラン(ラーズアルグールとかスケアクロウ)とかが勝手に物語を進めてくれて、両親を殺した黒幕(ファルコーネ)もよくわかんないうちに自滅してくれるという、とりあえず目先の問題をしのげばなんとかなっちゃうイージーモードになっていたような気がします。でもそうしないと話が進まないし! なので、チベットに行ったりして、確かにブルースの肉体的にはかなりハードなんだけど、精神的にはけっこう単純な流れなのでちょ~っと退屈なんですよね、『ビギンズ』って。まぁ、その反動が2作目以降に降りかかってくるわけなのですが。

 こんなわけで、正攻法で行くと大味になる、変化球で行くとのちのち続編でめんどくさくなるというシリーズ第1作目の試練にみたび対峙した今回の『 THE BATMAN』だったのですが、そこで選択された奇想天外の第3の選択こそが、「2年目を描く」という奇策だったと思うのです。そ~きたか~!
 バットマンになって2年目……この、実に中途半端な時期!! ブルースは、とりあえず手の届く範囲にいるゴッサムシティの悪者をかたっぱしからぶん殴るという草の根活動しかできておらず、両親惨殺の真犯人探しなどできる余裕はありません。満足に空を飛ぶこともできていないし、今では「バットマンの武器といえば、これ!」というトレードマークになっているバットラング(コウモリ型手裏剣)も開発していない状態です。バットマンの映画を何本も観てきたり、バットマンってこういうヒーロー?というイメージをなんとなくでも持っている多くの観客にとって、本作でのブルースの姿は非常に心もとなく、おぼつかない足取りのものに見えるでしょう。
 ところが、物語の舞台となるゴッサムシティにおいて、すでに謎の復讐男バットマンは丸1年も夜の活動を続けているので、ゴッサムの犯罪社会や警察にはもう充分にその名は知られているし、なによりもブルース自身がバットマン生活に慣れてきているので、いちいち「なんだテメェは!?」みたいな名乗り問答とか、「バットスーツはここをもっとこうすればいいのか!」みたいな開発秘話とかを語る必要がないのです。話を進めるにあたってそこら辺の形式的な流れがないので、本題のリドラーがらみの連続殺人事件やウェイン夫妻惨殺の真相探しにさっさか入っていけるんですね。こりゃいいや!
 もしかしたら、ブルースが何の前置きもなくハイテクメカ満載のスーツに身を固めたヒーローに変身することに疑問を感じるバットマンビギナーな方もいるかもしれないのですが、その財力源やブルースの心の闇については、それをはっきり描写せずともウェイン・エンタープライズのバカでかい高層ビルとか、リドラーが告発する過去のニュース映像を基にした動画などで示唆されるし、何よりもブルース役のロバート=パティンソンと、その育ての親たるアルフレッド役のアンディ=サーキスとの目と目で通じ合う「言外の演技」が、ウェイン家にわだかまるそうとう深い因縁と、それに打ち克つ2人の絆があることを雄弁に物語っているので、いまさら開発担当のルシアス=フォックスがしゃしゃり出てくる余地がないんですよね。ここらへん、とりあえずブルース役のクリスチャン=ベールのまわりに、マイケル=ケインだのゲイリー=オールドマンだのモーガン=フリーマンだのリーアム=ニーソンだのといったむくつけき面々が、ヒロイン役のケイティ=ホームズそっちのけで殺到しているうちに映画が終わってしまうという、バットマンの映画なのか『うる星やつら』のハリウッド実写版なのかがわからなくなるブルースもてもて映画『バットマン・ビギンズ』とは全く逆の、「省略の美」が貫かれていると感じました。ま、そんなこと言っても『バットマン・ビギンズ』でいちばんかわいいのはキリアン=マーフィなんですけどね!

 つまり、「ブルースとウェイン家」、「バットマンとリドラー」という関係を描くことに全神経を注ぐためには、シリーズの第1作目であろうが関係なく、かったるい説明は徹底的にそぎ取る。そのためには、身の回りのおぜん立てでもったもったして、とりあえず目先の課題を処理することで精いっぱいな1年目では絶対にいけない。多少なりともやることに慣れてきて、ともすると自分のやっていることに対して「このままでいいのかな……」と悩み始める2年目のほうが都合がよかったのでしょう。
 実人生においても、たいてい何かを続けて2年目という時期は、新鮮味もモチベーションも下がってきて地味~にヤな感じのじめっとした季節になるかと思うのですが、そこらへんをあえて選択したリーヴス監督の豪胆さに敬意を表したいです。
 ただ、こういう思い切った舵を切れるのも、世界観こそ違えどもバットマン1年目までを生真面目に描いた『バットマン・ビギンズ』があったおかげなんじゃないかとも思えるし、そこがバットマンのような歴史の長いシリーズの強みなんですよね。「わかんない人は『バットマン・ビギンズ』とかドラマ『 GOTHAM』を観てね♡」みたいな。
 ここでファンとして気になるのは、『 THE BATMAN』でのブルースが、どこで格闘術を学んだのかというあたりですね。作中で触れられていたようにアルフレッドからしか学ばなかったのか、それとも『バットマン・ビギンズ』のようにチベット修行やらヘンリー=デュカードから学ぶやらの世界遍歴をしてきたのか。そして、終盤で登場した「リドラーのとなりの囚人」は、果たしてバットマンとすでに面識があるのか!? 『 THE BATMAN』におけるバットマン1年目もまた、気になることづくめですねェ!!


2、この映画の主人公は、セリーナ=カイルじゃないのか!?

 ほんと、これなんですよね! これが良かったんだ、本作は。

 ブルースにとっての両親惨殺の真犯人探しという一大テーマは、1989年版『バットマン』ではブルース自身の手によって解決し、『バットマン・ビギンズ』ではなんかよくわかんないうちに実行犯の死亡と黒幕の発狂により終結しました。そして今作でもまた、真犯人がカーマイン=ファルコーネなのか、そのライヴァルである麻薬王サルヴァトーレ=マローニなのかがわからないままに終わってしまいます。
 ただ、ノーラン3部作でのバットマンも今作でのバットマンも、自分に関する最も重大な謎が未解決になってしまうことによって、いつまでそこにこだわっていてもしょうがないという諦念が生まれ、「復讐男」から「正義の味方」にひと皮むける契機となったわけです。
 そして、『 THE BATMAN』の175分(約3時間!)というアホみたいな長丁場をもたせる秘策として投入されたのが、ブルースがひと皮むけていくにあたり、「感情移入できる『友だち』ができたよ!」という、青春映画要素の投入だったのでした。

 友だち……もちろん気持ち悪いリドラーなんかではありません。ブルースと同じように親を殺され、そして血を分けたもう一人の親を「親友殺し」の犯人として殺そうとまで覚悟する復讐者、セリーナ=カイル!!
 このセリーナ、両親との容易ならざる因縁の他にも、ブルースとの共通点がありまくり。自分の目的のためには手段を選ばない直情径行、なんかよくわからない格闘術を会得している、バイク好き、黒いぴったりスーツ好き、友だちがほぼいない……そして最も大切なのは、今回のリドラー事件によってひと皮むけるということ!
 最高じゃないですか……ただし、今作でのセリーナは、親友のアニカがリドラー事件に巻き込まれるまでは、あくまでも自分の気に食わない金持ちの家に押し入るだけの腕のいいコソ泥としてしか暗躍していないので、バットマンに並ぶ知名度を誇る義賊「キャットウーマン」にはまだ変身していないのですが、ブルースと共にゴッサムシティの巨悪をあばく役割を担ってアニカ殺害の犯人を突き止め、ファルコーネへの復讐を遂げ、そしてクライマックスではブルースの危機を救うという八面六臂の大活躍を見せてくれるのです。

 こ、これは……このフルパワーの大回転っぷりは、まるであの伝説の、まっくろくろすけも真っ青になる漆黒の黒歴史映画『キャットウーマン』(2004年)の汚名を雪ぐかのようなお姿ではないか!!
 もともと、肌の黒い女優さんがキャットウーマンを演じるというのは、TVシリーズ『怪鳥人間バットマン』(1966~68年放送)における3代目女優アーサ=キットという先例があるので、ハル=ベリーがキャットウーマンを演じてもなんの問題もなかったのですが、ともかくバットマンサーガといっさい関係のない設定・内容(おハルさんはセリーナ=カイルですらない)に周囲の落胆の声は大きく、その後すぐに始まったノーラン・バットマンによって、その存在は忘却の彼方へ葬り去られてしまったのでありました。でも、ちゃんと映画料金を払って映画館にワックワクで観に行った私は忘れない……正直言って、そんなにけなすほど悪くはないと思うんだけど、なまじバットマンの看板を引きずってきちゃったから、期待値をいやがおうにも上げちゃったんだろうなぁ。ぶっちゃけ『スーサイド・スクワッド』(2016年)と内容はどっこいどっこいだと思うんだけど、困ったらプリンちゃんとかベンアフバットマンとかを出してなんとかしようとする『スーサイド・スクワッド』の姑息さは実にハーレイ・クインらしいし(ほめてます)、その一方で、周囲の助けをいっさい借りずにひとりでなんとかしようとして華々しく散った『キャットウーマン』も、なんかキャットウーマンらしいんですよね。哀しいくらいにまっすぐなんだよなぁ、バットマンもキャットウーマンも。
 そして、キャットウーマンの黒歴史といえば、ノーランバットマンの最終作『ダークナイト・ライゼズ』(2012年 日本語タイトルはなぜか『ダークナイト・ライジング』)に登場したアン=ハサウェイ演じるキャットウーマンも、外見は非常にいいんですがあんまり物語の本筋にからんでこないし、「生きて帰ってきてね……」みたいな妙になよなよした態度をとるところがセリーナらしくなく、猫というよりは忠犬みたいな御しやすいキャラに成り下がっていたと思います。ノーラン番長ぉ~!!

 そんな感じの、おハルウーマンとアンハサウーマンの無念を晴らすかのような、今回のゾーイ=クラヴィッツさんの入魂の猫っぷりは、原作のキャットウーマンが好きな方々にとっては、非常に胸のすくものがあったのではないでしょうか。
 バットマンとは、ガチバトルも辞さない一触即発の関係なわけですが、後ろから羽交い絞めにされて暗闇で一緒に息をひそめる共犯関係とか、バットマンにじーっと瞳を見つめられてなんかイイ雰囲気かと思ったら、単にセリーナが着けた特製コンタクトレンズの調子を確認されてるだけだったので「ったく……」みたいな感じで目をそらすとか、いい仕事の目白押しじゃないか! これよ! こういう機微、ユーモアとロマンスが表裏すれすれに描かれるのが、かっさかさに乾燥したノーラン番長ワールドにはなかったリーヴス監督の味なんだよなぁ!! ほぼ全てのシーンで雨が降っている本作の画面設計は伊達じゃなくて、マット=リーヴスというお人のウェッティな作風を如実に証明するものなんですね。
 ホラ、あの物語の途中でかなり悲惨な最期をとげるコルソン検事だって、ただ汚職に手を染めてリドラーの餌食になるだけじゃなくて、セリーナにフラれて傷ついたり、土壇場になって家族を守ろうとしたりして、かなり人間味のあるキャラクターに描かれていたじゃないですか。あんなん、ティム=バートン監督やノーラン番長の作品に出ていたらかなりつまらない小悪党として始末されるだけですよね。こういう細かい脇役の扱い方で、作り手の個性ってわかるんですね。

 あともう一つ。この作品においてブルースとセリーナは、お互いにとって足りない部分を補い合いながらリドラーの張った謎を解いてゆくのですが、正義の代弁者になろうとするがゆえに自分自身の人間としての成長をどこかでそっちのけにしてしまっているブルースと、自分が自立した大人になることを何よりも優先させてゴッサムシティにおけるサバイバル術を身につけておきながら、じゃあ何のために生きるの?という人生の目的を失いかけているセリーナという構図は、どっちも人間としての「半分」が欠けているという点で、実に巧妙に配置された「2人で1人」の関係になっていると思うのです。
 つまりは、「目的はあるけど手段がわからないブルース」と「目的はないけど手段は知っているセリーナ」という分類わけができると見たのですが、ここから分かるのは、一人前の人間として先に成熟しているのがセリーナであるということなのです。
 なるほど、だから2人のキスシーンは、2回ともセリーナからブルースに仕掛ける形なのか! ただブルースが恋愛におくてだとか、そういう問題だけじゃないんですね。リドラーの追及に全神経を集中させているブルースにとって、捜査中に突然唇を奪ってくるセリーナの行動は、まったく予想外、理解に苦しむアクシデントなのでしょう。でも、そんなセリーナの想いの方に共感できる観客にとって、ブルースの戸惑いはもどかしい以外の何物でもないんですよね! 嗚呼、男と女の間には、深くて暗~いゴッサム川!!
 でも、この後にセリーナが義賊キャットウーマンに変身するとするのならば、それはブルースの姿に影響されたからに他ならないわけで。ブルースとセリーナが、バットマンとキャットウーマンとしてまた再会したとき、2人はどんな関係になるのだろう。

 この『 THE BATMAN』は、バットマンの物語であると同時に、史上初めて原作の気風を背負ったセリーナ=カイルが生きて活躍し、そして「キャットウーマン」が誕生するにいたるまでの精神的遍歴を克明に描いた映画だと思うのです。そういう意味で、これは2004年の失敗を見事に克服した『シン・キャットウーマン』なのだ!! おハルウーマンや、成仏しておくれ~。


3、青春グラフィティ、『 THE BATMAN』

 これはブルースとセリーナだけではなく、ブルースとリドラー、そしてリドラーと「となりの囚人」の関係においてそうなのですが、涙が出るほどに自分の青春時代にオーバーラップするやり取りが多くなかったですか!? 私はもう、心に突き刺さるシーンが多かった多かった!!

 親友になるはずだったブルースにかなりつれない態度をとられて動揺しまくるリドラー、絶望の淵に落とされた中、したり顔でジョークの救いをさしのべる「となりの囚人」と一緒に大爆笑するリドラー……当然ながら、今作のメインヴィランであるリドラーの最大の見せ場は、バットマンの正体を知っているぞと詰め寄る場面であるはずなのですが、私にとって、もっとリドラーのキャラクターの厚みがひしひしと身に迫ってきたのは、やけに人間的なもろさのあるそこらへんの「弱っちい」姿だったような気がします。巷間で評されるように、明らかにイッちゃってるという点で、今回のリドラーは『ダークナイト』のヒースジョーカーに遠く及ばないと見るむきも分かるのですが、そもそもヴィランとして未完成であることこそが、バットマンを利用して完全な存在になろうとした今回のリドラーの犯行動機なので、両者を比較すること自体がどだい無意味なのではないでしょうか。弱いことこそが、リドラーの強みなのです。
 そして、その弱さとは精神が未熟なあかし。つまり、リドラーもまた、ブルースやセリーナのように心の成長の途上、青春の真っただ中にいるのです! ただキモイだけ、ただフラれただけ。くじけるなリドラー!!

 さらにみずみずしかったのは、ブルースとセリーナの関係の「んん~もう!」なもどかしさというか、互いに本心を打ち明けられないナイーブさね!! これがもう、すんばらしい。
 ラストのラストで、ゴッサムシティを去ると打ち明けるセリーナは、ブルースに「……一緒にこの街を出ない?」と誘います。しかしブルースは本心を言わないまま、「ば、バットシグナルが出てるから……」ともろもろゴードンのせいにして拒否。するとセリーナは、「けっ、冗談に決まってんでしょ!? 誰があんたなんかと!」みたいなそっけない態度をとってバイクにまたがるのでした。オイオイ勘弁してくれよ~お2人さんよ~!!
 そして、道が分かれるまで、一緒にバイクを走らせて夜明けの朝もやの中を並走する2人。分岐点で停止して、しばしの間をおいて、2台は別々の方向へとハンドルをきるのであった。

 くうぅ~っ、これはまさしく青春だ!! あの放課後、あの部活の帰り道、あのカラオケの解散後、あの徹夜ゲーム明け!! 私は、そしてあなたは、誰か淡い恋心をいだいた人と、他に誰もいない夜の空気のなかで2人きりの無言の時をすごしたことは、なかったか!?
 そこよ、その瞬間よ! あの夜の空気の冷たさ、朝もやの湿度。そこを実に精密に切り取っているのが、あのエンディングのすばらしいところなのです。そこが、単なるアクション一辺倒のヒーロー映画に終わらず、観る者の感情に、人生に迫る感動をもたらす映像の魔力なのでしょう。最高ですね。バイクだろうがヘルチャリだろうが、ほのかな恋心は世界共通なのだ!!

 青春といえば、本作がバットマン VS リドラーという構図に仮託した、「コンタクトレンズ派 VS メガネ派」の血で血を洗う頂上決戦であるという点にも注目しないわけにはいきません。
 さっさとコンタクトレンズに乗り換えて新しいワタシ生活を始めていくリア充の男女、ブルースとセリーナに対して、「瞳孔に物をはっつけるなんてマジかよ!? 信じらんね~。」などとのたまうリドラーは、自分のシンパまでをも超強引にメガネ派に引き込んでテロを起こさんとするのですから、これはもう激突必至の青春対決です。ほ~ら、あなたももう、ゴッサムシティが中学校のクラスに見えてきた。おんなじ中学校だったらそうなるわけがないのですが、同じ青春でもブルースがブレザー制服でリドラーが詰襟制服にしかイメージできないのは、なぜなのだろう!?
 ましてや、ブルースときたら自分特注モデルのコンタクトをセリーナに気前よくプレゼントしておそろにしているというのですから、それを聞いたリドラーくんとクイズ研のみなさんが黙っていられるわけがありません。

「なんてことだ……人間にとって、瞳孔は唇と同じ粘膜ゾーンなんだぞ! そこを共有するだなんて破廉恥な行動が、この満天下で許されて良いのか!!」

 いや、別に自分の使ったコンタクトをセリーナにあげるほどブルースも変態ではないと思うのですが、リドラーくんの妄想とルサンチマンはいやがおうにも高まってしまうのでありましたとさ。青春だねェ、どうにも。


4、ペンギン、いいよな~!

 本作のペンギンもまた、セリーナのように原作本来のキャラクターのうまみを活かした復活を遂げましたね! ゴッサムシティの闇社会の頂点を虎視眈々と狙う梟雄(ペンギンだけど)でありながらも、ファルコーネ親分の目の黒いうちはセリーナ以上にネコをかぶってひたすらヘーコラするという小物っぷり! このへんはまさに、あのドラマ『 GOTHAM』におけるペンギン(演・ロビンロード=テイラー)にかなりオーバーラップするものがあるのですが、『 GOTHAM』でペンギンがけっこう早いうちから闇社会の頂点に君臨できるようになるのに対して、こっちは相当苦労してたんだろうなぁ、という老けっぷりが目立ちます。でも、バットマンに脅された時に窓ガラスに派手にひびが入るくらいに背中を打ちつけられたのに全然動じなかったし、カーチェイスの末に車が5回転くらいしてクラッシュしたのにほぼ無傷だったしで、たいがい人間離れしたタフさですよね。おまけにカーチェイス自体、リドラーの仕組んだミスリードでペンギンが追われる必要が全然なかったという展開もかなりイイ感じです。そりゃ「バッキャロー!!」って叫びたくもなりますわ。でも、その翌日くらいには何食わぬ顔でファルコーネ親分のビリヤードに付き合ってるんだもんねぇ……丈夫すぎ!!
 ところで、今作でペンギンの手下として登場した、あのアイスバーグ・ラウンジの用心棒の双子(演・チャーリー&マックス=カーヴァー)は、バットマン世界のヴィラン「トゥイードル=ディとトゥイードル=ダム」のリブートという解釈でよろしいのかしら? ちょっと、つるんでるヴィランが違いますけどね。マッドハッターも映画に出てきてほしい~!


5、ゴードンも、いいよな~!!

 ノーランバットマンでは、若いころのブルース少年との交流や、妻子持ちの家庭生活などもリアルに描かれたゴードン警部補だったのですが、『 THE BATMAN』では、ひたすら職務に徹する公僕の鑑に。信頼感あるなぁ。
 善行にしろ悪行にしろ、ともかく常軌を逸したスケールとスピードで突っ走る人ばっかりのこの作品世界の中で、ただ一人、常識的な感覚と判断力を保ちながら物語の潮流に必死にしがみついてくるゴードンの存在は、観客にとって実に大切なジェットコースターの乗り物的役割を果たしてくれます。さすがに今回はバットモービルに乗せてはもらえなかったけど。
 また、自分のメールアカウントから市長のスキャンダルを告発するタレコミ情報を送信させられたり、バットマンを助けるためにバットマンにぶん殴られたりと散々な目に遭うゴードンなのですが、そのたびに見せる「勘弁してよ……」という苦虫をかんだような表情が、非常にキュートで笑いを誘いますね。かわいそうなんだけど、なんかおかしい。ジェフリー=ライトさんは本当に良い俳優さんです。
 汚職まみれの上司と、わけのわかんないコスプレ自警野郎との板挟みに悩むゴードンさん……がんばれ!! 少しはドラマ『 GOTHAM』みたいな甘いロマンスもあるといいね!


6、そして……ひたすら期待値の上がりまくる「となりの囚人」!!

 シルエットで横顔が見えるだけだったけど、あの前髪の逆立ったヘアスタイル……あれはまさしく、原作コミックの歴史的傑作『キリングジョーク』(1988年)や、さらにその上を行く神話的傑作『アーカム・アサイラム』(1989年)における「彼」のビジュアルにそっくりだぞ!! ウヒョ~本格登場が楽しみすぎる。バリー=コーガンさんも大変だろうけど、がんばってね!!
 余談ですが、彼が冗談を言って人を笑わせるシーンって、原作ではそれこそいくらでもあるけど、映像化された1989年以降の作品ではかなり少ないんですよね。ニコルソンジョーカーとジャレッドジョーカーは恐怖する相手を見て笑うのが好きみたいだし、ヒースジョーカーは人を笑わせることなんかそっちのけで自分が大笑いできることを探してるだけ。そしてホアキンジョーカーにいたってはジョークを言う才能がゼロというおそろしさです。
 そんな中で、ちょっとの出番だったにしても、リドラーになぞなぞ形式の冗談を言って大爆笑に誘うというお手並みの鮮やかさは、今までのどの実写ジョーカーよりも知的に見えますね。今のところ『 GOTHAM』のキャメロンジョーカーのような粗野で下品な感じもしないし、かな~りいい感じの「ちょっと見せ」にしていると思います。
 本格的な活躍は、いつになるのかな!? それまでは私もあなたも死ねませんね。


 他にもいろいろ言いたいことはあるのですが、ともかく、約3時間というとんでもない尺でありながら、ここまで緊張感のある傑作にしおおせるのはとてつもない手腕ですよ。水もしたたるマット=リーヴス監督の『 THE BATMAN』次作を、首を長~くして待ちたいと思います。楽しみにしてますよ~いっとな!!

 それにしてもゴッサムシティ、雨降りすぎだろ!! 靴下いくらあっても足りんわ……
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あの夫婦にも、昔はこんな時があったのねぇ……  ~映画『アルゴ探検隊の大冒険』本文~

2022年02月20日 21時23分06秒 | 特撮あたり
≪資料編は、こちら~。≫

 ハイど~もみなさん、こんばんは! そうだいでございます。いや~、山形のこの冬はもう雪がめっちゃくちゃ多い! バレンタインデーも過ぎて、もうそろそろ桃の節句だって言うのに、外は気持ちいいくらいの白一色でございます! いい加減にしてほしいね……仕事する前に雪かきですでにヘトヘトになっちゃってるんだもん。春が待ち遠しいよ!

 お知らせがいつ来るのかな~と首を長くして待っていた、NHK BSプレミアムの池松壮亮金田一シリーズの最新シーズンの放送日時の告知が、ついに先日出ましたね! 来たる2月26日土曜日の午後11時から1時間30分、一挙3作品連続放送ですって! え、一晩で全部やっちゃうの!? なんという大盤振る舞いか!
 大盤振る舞いっていうか、もったいなさすぎじゃないですか? 通例通り1週に1本で1ヶ月くらいもたせてもバチは当たらないでしょうに……なんてったって、『シン・仮面ライダー』にて第10代(声優を含めて)・本郷猛を演じる話題の池松さんなんですから、そのくらいの扱いにしてもいいんじゃなかろうかと。どうせ北京オリンピックの編成のあおりを受けてのものなんでしょ? いくらメインディッシュがいぶし銀の『女怪』だからって、そんなに邪険にしなくたっていいじゃねぇかよう! 非常に楽しみにしております。

 さて、それはそれとしまして、今回はお題がまったく別! 日本に円谷あれば、欧米にハリーハウゼンありと讃えられる、「ストップモーション特撮の神様」こと、レイ=ハリーハウゼンの代表作とも呼ばれる映画『アルゴ探検隊の大冒険』についてのあれこれでございます。いつも通り、映画の資料だけをあげておいて5年ぶりの本文よ! ひどいもんだなぁ。

 のっけから脱線してしまうのですが、この映画は英語圏で制作されていますので、登場人物の名前の発音は全員英語読みになっています。つまり、イアソンは作中ではふつうに「ジェイソン」と呼ばれているので、なんだか国の命運を賭けた密命を帯びたアルゴ探検隊も、リーダーがジェイソンくんだと週末のキャンプみたいなラフさが漂っちゃいますね。ヘラクレスの「ハーキュリーズ」はカッコいいなぁ!
 ちなみに、1980年代生まれの私が「ジェイソン」と聞くと、どうしてもボロッボロのホッケーマスクをかぶったスキンヘッドの大男という、ホラー映画『13日の金曜日』シリーズの名キャラクター、ボーヒーズさんをイメージしてしまうのですが、最近の若いもんは、ステイサムさんのほうを思い起こすんじゃないの? 世の中のジェイソン事情も変わってきましたなぁ。でも、「ジェイソン=パワー系」という印象は共通してるんだなぁ。もしイアソン役がステイサムさんだったら、ヒュドラなんか、かば焼きにして食べちゃいそうですよね。

 閑話休題。

 『原子怪獣現わる』(1953年)の恐竜リドサウルスや、『地球へ2千万マイル』(1957年)の金星竜イーマをはじめとして、『タイタンの戦い』(1981年)の海竜クラーケンにいたるまで数多くの魅力的なクリーチャーを創造してきたハリーハウゼンなのですが、彼に負けず劣らず、ゴジラやラドン、我が『長岡京エイリアン』では信仰の対象となっておられるおキングギドラ様といったスター怪獣たちを生んできた日本の特撮界とは、根本的に自分たちの仕事や作品に対する姿勢が違っている気がします。

 端的に言ってしまえば、ハリーハウゼンがこだわっていたのは「映像表現の可能性の広がり」で、日本の円谷英二、というか、円谷英二の後継者たちがこだわっていたのは「キャラクター世界の広がり」だったのではないかと思います。着ぐるみ怪獣だけでなく、『ハワイ・マレー沖海戦』(1942年)での、精巧きわまりないミニチュア戦闘機による爆撃シーン、『美女と液体人間』(1958年)での、重力に逆らって自らの意思を持ち這いまわる液体といった、「不可能を可能にする表現」にこだわっていた円谷英二の姿勢は、円谷プロ時代の『怪奇大作戦』や、『ウルトラQ』とか『ウルトラセブン』で、ワクワクして観たのに「あれ、怪獣出てこないぞ……?」と肩透かしをくらった幼児体験のある方ならば、誰でもお分かりかと思います。ハリーハウゼンと円谷英二自身は、やっぱり同じ天才としてよく似ているんですね。ただし、欧米と日本それぞれの特撮界は、彼ら天才が身を引いた後の展開の方向性がまるで違っていたわけなのです。かたや技術革新の追求による CGへの道、かたや着ぐるみという伝統を固守した内世界の拡大への道、といった感じで。
 それが、文化のグローバル化、ごった煮化、均一化が激しい21世紀の映像世界では状況がだいぶ変わってきて、ゴジラシリーズしかりウルトラシリーズしかり東映ヒーローものしかり、海を渡れば DCユニバースしかりマーヴェルCU しかり……面白いキャラクターがいれば、それを何度もブラッシュアップして再登場させるのが当たり前、という商業パターンが洋邦を問わず一般化してしまったわけです。今さら、ハリウッドがゴリゴリに固太りして顔だけ小さいゴジラを作ろうが、日本がニンジャバットマンやらノブナガジョーカーを作ろうが、だぁれも驚きませんよね。
 それはそれでいいんですが、そんな今の世の中から振り返れば、思ったよりもストップモーション特撮キャラの活躍時間が少ないハリーハウゼン作品は、いかにも「もったいない! もっと活躍させてよ!」と思わずにはいられないおあずけ感覚に陥ってしまいます。面白いんだけどね! 人間、腹八分目だけれども!!

 今作に関して言えば、ストップモーションで動きまわるキャラとしては「青銅の巨人タロス」、「怪鳥ハーピー」、「7首竜ヒュドラ」、「7人の骸骨剣士」が登場するわけなのですが、こういったラインナップを予備知識のない現代人に見せて、「最強のラスボスキャラ、どれにする?」と聞いてみたら、おそらく9割がたの人はヒュドラにするのではないでしょうか。強そうだし、7本の首がうねうね動きまくるのなんか、いかにも画になるしねぇ。

 ところが、本作を観てごらんのとおり、ラスボスはなんと骸骨剣士なんですよ! こんなもん、下手したら最弱の「スライムのちょい上」になっててもおかしくないですよね? しかも、骸骨剣士ってハリーハウゼンさん、以前に『シンドバッド七回目の航海』(1958年)でもやってるでしょ? なんでそれがラスボス!?
 ちなみに、本作のほんとうの原作である『アルゴナウティカ』(紀元前3世紀)におけるラスボスはタロスであり、さらにそのタロスを倒すのはイアソンでなくメデイアです。ハリーハウゼンさん、映画としての盛り上がりを最優先させて物語の順番やキャラの役割をアレンジしまくりですから、ギリシア神話にご興味のある方は注意しましょう。ヒュドラ、イアソンの地元ギリシアの怪物なのにコルキスに出張させられてるし! そりゃコンディションも最悪になるでしょ。

 本作で骸骨剣士がラスボスに選ばれた理由はもう、観てもらったらわかると思うのですが、とにかく「撮影が大変」!! そうなんですよ、デカさで言ったらタロス、飛行で言ったらハーピー、迫力で言ったらヒュドラなわけなんですが、剣と剣、剣と槍といった「生身の演者との絡みと手数」が圧倒的に多い骸骨剣士をラスボスに選んだのは、「不可能を可能にする表現」に挑戦し続けるハリーハウゼンとしては至極まっとうな選択だったのでしょう。彼がこだわったのは骸骨剣士というキャラクターのガワではなく、「あいつが7人もいたら殺陣どうするよ~!?」という、そんなこと言い出さなかったら誰も苦労しなかったであろう、むちゃくちゃな難易度の設定だったのです。できあがった作品を客として楽しむ分には全く問題ないけど、制作スタッフにはなりたくねぇなぁ~!! 業界はちがえども、手塚治虫、宮崎駿、そしてハリーハウゼン……天才は、近くにいる人にとっては天災なんだなぁ。

 それにしても、7人の骸骨剣士とイアソンたち3人の探検隊員との約3分におよぶ剣劇シーンは、本当にすごい。殺陣の振付の一手一手がまず面白い上に、骸骨剣士の動きと同期して背景に映り込む影までも再現し(当然生身の人間の影と同じ角度!)、首が取れて慌てふためいたり、あばら骨の隙間に剣が入っただけなのでノーダメージなのに、生前のクセからか「ぐわーっ!」とやられた振りをしたりするような骸骨剣士のユーモアまでちゃんと差し挟んでいる、ハリーハウゼンのサービス精神の旺盛さには、心の底から頭が下がります。しかも、よく見ると骸骨剣士の見た目も全員同じではなく、盾の装飾がそれぞれ違っていたり、剣の戦士と槍の戦士がいたりして微妙な違いがあるという……どんだけ自分を追い込めば気が済むんだい、ハリーハウゼンさんよう!!
 まぁ、その骸骨剣士たちの尺的なあおりを喰らってか、かなりラスボスっぽい見かけのわりに、なんとイアソンの剣の一刺しで死んでしまうというひどい扱いになってしまったヒュドラは不憫でなりませんでしたね。黄金の羊の毛皮の守護竜(ヒュドラの弟)の代理で登場してるのに、あっけなさすぎ! 切った首が次々に再生する展開とか、もっとこう……さぁ!! 7本の首を常にランダムにくねらせるヒュドラの動きは言うまでもなく素晴らしいのですが、巨匠ハリーハウゼンの飽くなきチャレンジ魂とどM 気質をもってしても、これ以上のスペクタクルの表現は、少なくとも1960年代の段階では無理であったか。でもヒュドラの消化不良感に関しては、最後の作品『タイタンの戦い』での、もはや伝説ともいえる「魔女メデューサとの決戦」における、メデューサの頭の無数の蛇のモーションで、見事リベンジを果たしてるんだよなぁ。さすがはハリーハウゼン、ただでは転ばない漢だ!!
 この『アルゴ探検隊の大冒険』において、ハリーハウゼンは青銅の巨人タロスによる「重厚な質量感のある動き」、怪鳥ハーピーによる「激しいはばたき」、7首竜ヒュドラによる「爬虫類のぬるぬる動き」、そして骸骨剣士による「軽快なカクカク動き」と、テンポの自由自在な変化によるストップモーション特撮の可能性の拡大に挑戦したのでしょう。まさに、ハリーハウゼン魔術のショウケース! ここらへん、コロッケさんのものまねレパートリーに近い鬼気を感じますよね。

 昨今、世界の空想フィクション世界では、「ヒーローは徒党を組まなければならない」、「怪獣は強く大きくカッコよくなければならない」、「仮面ライダーはフォームチェンジしなければならない」、「プリキュアは1チーム3人はいなければならない」などの、誰が言うでもなく慣習化した「数と力のインフレ」の歯止めが利かなくなっている状況が続いていますが、これは言い換えれば、「とりま、これやっとけば人気とれるっしょ。」という安心を求める甘えの産物でもあると思います。ひとりの人間として、その気持ちはよくわかるのですが、それは、クリエイターの仕事の姿勢として、どうなんだろうか。
 もう一度いま、作り手が全てをリセットし、「自分が心から燃える課題(表現)にひたむきにチャレンジする」ための、実験精神に満ちたゼロの大地を創り出す必要があるのではないでしょうか。そうしないと、業界全体が飽きられちゃうような気がするんだよなぁ。もう似たようなキャラばっかで、そんなんだったら、まだ新しいものに挑戦する緊張感のあった10~20年前の過去シリーズ作品でいいじゃんみたいな停滞感、なくない!? 特にニチアサとか。おもちゃを売るためだけにしか、新作つくってません?
 かの西洋ねずみ帝国の植民地と化してしまった『スター・ウォーズ』シークエルの腐臭ふんぷんたる大失敗は、決して対岸の火事ではありません。あなたが幼い頃に大好きだったヒーローやヒロインが、ある日突然、「お金になりそうだから」という理由だけで、敬意の全くないタスケン・レイダーにすら劣る輩によって墓から掘り出され、無理矢理操り人形にされてしまう悪夢が、明日来ないとも限らないのです! こわいね~。
 日本の特撮界が、マンネリ化による求心力の低下によって人気の空洞化現象をまねき、怪獣の死体をネタにしたコントが「日本伝統の特撮映画でござ~い。」みたいな顔をしてのさばるような世の中にならないように、切に祈りま……あ、もうなってるか。

 過去作品に材を取った『シン・~』の流れも別にいいんですけど、とにかく作り手が燃えている作品が観たい! 燃えている人が創り出した映像なのであれば、ラスボスがお骨だろうが、いきりまくった大怪獣が剣の一突きで死のうが、なんでもいいんです!! だって、ラスボスが必ず強くなきゃいけない理由なんて、どこにもないだろ! あのヒュドラだって、たまたまあの日は風邪かインフルでめちゃくちゃ調子悪かったのかもしれないし、もしかしたら直前に闘ったアカストス王子が異様に健闘していたせいで、HP が1/90000くらいにまで削られていたのかもしれないんですよ!! そう考えれば、イアソンが出遭った時に、ヒュドラがその尻尾で捕らえていた瀕死のアカストス王子を、かなり優しく地面に降ろしてからイアソンと対決すしていたのにも得心できますね。あれはヒュドラなりの、強敵への敬意のあらわれだったのだ……
 ところで、イアソンをまんまと策略に陥れ、そのすきに先に黄金の羊の毛皮を発見した時の、アカストス王子の「ちょろいぜ☆」と言わんばかりの、世の中をナメきった表情が実にステキですね。『鬼滅の刃』の名キャラクター・サイコロステーキ先輩の偉大なる祖先だと思います。

 蛇足ですが、私は『シン・ウルトラマン』でも『シン・仮面ライダー』でも大歓迎で観に行くつもりではあるのですが、なんかあの、よくわかんない「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」っていう企画、あれなに? あれだけは絶対に許容できません。ふざけんな! 何がユニバースだ!!
 だって、『キューティーハニー』(2004年)が入ってねぇじゃん!! サトエリさんを入れろ!! ついでに『シン・キューティーハニー』だか『キューティーハニー1984』みたいな感じで新作をつくれ!! 欧米のガル=ガドットに勝てるのはサトエリさんだけだろ! 18年前のね……
 『シン・~』シリーズの原点はゴジラでもエヴァンゲリオンでもなく、キューティーハニーですよ! それを「なかったこと」みたいにする姿勢は、絶対に許せるものではありません! まぁ、それが成功したかどうかは別の問題としても、『キューティーハニー』や『仮面ライダー THE FIRST』などのチャレンジの軌跡は、未来に活かしていくべき財産とするべきものなのです。忘れ去る、黙殺するなど、とんでもない!!

 すみません、取り乱しました。

 話を戻しますが、この作品は、ハリーハウゼンの特撮技術の研鑽を、さらに一段階レベルアップさせる格好の舞台となったわけなのですが、「シンドバッド」シリーズから『タイタンの戦い』へと通じる重要な「歴史ロマンもの」の一作であり、当然ながら、ロマン作品ならばラストシーンはカッコいいヒーローと美しいヒロインとの熱い抱擁でチャンチャン、となるわけなのですが……

 イアソンとメデイア、だもんねぇ。

 映画『アルゴ探検隊の大冒険』の原作は紀元前3世紀の古典叙事詩『アルゴナウティカ』であり、『アルゴナウティカ』はメデイアを妻としたイアソンとアルゴ探検隊(アルゴナウタイ)が神器『黄金の羊の毛皮』を手に見事、ギリシアのテッサリア地方、イアソンの真の仇敵ペリアス王の待つイオルコス王国に帰国して終わるわけなのですが……問題は、『アルゴナウティカ』で語られない、その後なのよねぇ。とてもじゃないけどハッピーエンド、円満な夫婦生活にはならないという。

 帰国後、イアソンはメデイアの魔力によって悲願だったペリアス王の抹殺に成功するのですが、メデイアのすさまじい魔力を恐れたイオルコスの民はイアソンが次期国王となることを拒否し、イアソンはメデイアを連れて近隣の、ペロポネソス半島にあるコリントス王国に亡命することとなります。
 しかし亡命者とはいえ、勇気あるアルゴナウタイのリーダーであり、イオルコス王家の王子でもある英雄イアソンの血統を重んじたコリントスのクレオン王は、娘のクレウサ王女をイアソンの正室にしようと提案し、クレウサの若さと清楚な美しさに惹かれたイアソンは、メデイアとの関係を「側室か愛人」に堕とし、クレウサと婚姻しようとします。
 このイアソンの、今まで何度となく命を救ってきた自分に対する恩も、それ以上に大切な愛情のかけらも残っていない判断にブチ切れたメデイアは、イアソンへの復讐としてクレウサとクレオン王を呪い(出力フルパワー)で焼き殺し、イアソンとの間にもうけた2人の幼子さえも自らの手で殺し、絶望するイアソンを尻目に、ドラゴンの牽く戦車に乗って実家のコルキス王国へと帰るのでありました。全てを失ったイアソンは、放浪の果てに朽ち果てたアルゴ船の下敷きになって死んだとか……

 チャンチャン……じゃねぇ!!

 このへんの経緯は、ある意味で『アルゴナウティカ』よりも有名な、エウリピデスによるギリシア悲劇『メデイア』(紀元前431年)と、それを原作とするルイジ=ケルビーニのオペラ『メデア』(1797年初演)、それをあのマリア=カラスが20世紀に演じて復活させた縁で、いわくつきの天才監督パゾリーニの手により再びカラスがメデイアを演じた映画『王女メディア』(1969年公開)でつとに有名なのではないでしょうか。日本だったら、「世界のニナガワ」蜷川幸雄の演出によるバージョンの『王女メディア』(1978年初演)を思い出す方も多いのですよね。ひらみきの衣装とメイクがすごいやつ!
 蛇足ですが、私、あのひらみきメディアの格好を見た瞬間から、「あれ、これ、どっかで見たことあるぞ……?」とミョーな既視感を覚えていたのですが、あれ、『電撃戦隊チェンジマン』(1985年放送)の、中間管理職の悲哀をこれでもかという程に体現した悪の大幹部ギルーク司令官(演・山本昌平)の、左遷時代のフォーム「ゴーストギルーク」のデザインの元ネタなんだそうですね! この情報を知った時はしっくりきたなぁ。ちなみに『王女メディア』の衣装デザインは辻村ジュサブローさんで、ゴーストギルークのデザインは出渕裕さんです。メデイアと特撮との意外なつながりは、なにもハリーハウゼン経路だけではなかったのですな。
 でも、メデイアの美女の面を抽出したのが『アルゴ探検隊の大冒険』で、魔女の面を抽出したのが『王女メディア』系の諸作であると解釈して間違いはないのですが、パゾリーニの映画版の『王女メディア』は、うん……面白くは、ないよね! 美術や衣装風俗こそ時代考証的には正しいのかもしれないけど、ハリーハウゼンがあれほどまでに重視していた「テンポ」というものを、気持ちいくらいにかなぐり捨てているのがパゾリーニ版なんだよなぁ。ヨーロッパ映画における、芸術性と睡魔の相関関係って一体……

 う~ん、やっぱり私は、『アルゴ探検隊の大冒険』のほうが好きだな! イアソンとかメデイアとかがどう描かれているかなんかは、ぶっちゃけどうでも良くて、問題は、それを現代に語る者、その語り方に情熱があるかどうかなのだ。大事なことね……


 ってなわけで、今回も字数がこんな感じにかさんでまいりましたので、最後に『アルゴ探検隊の大冒険』を観ていて私が感じた備忘録と、パゾリーニ版の『王女メディア』の情報をまとめておしまいにしたいと思います。


・バーナード=ハーマンの勇壮な音楽と、物語のハイライトをつづっていく壁画風映像のオープニングが、まさに正統派古代ロマン時代劇という感じで素晴らしい。親子で観ても安心!
・野心に満ちた武将ペリアスのクーデターと、のちにイアソンとなる赤ん坊が助けられる一連のくだりが非常にわかりやすい。なんてったって大神ゼウスの予言なんだから、イアソンを殺せるわけがないんだよなぁ……
・私は西洋の歴史にはそんなに詳しくはないのだが、そんな私が観ても、イオルコス王国の兵士の甲冑が、たぶん1500年くらい未来のローマ帝国みたいなデザインになっているような気がする違和感はぬぐいきれない。末端の兵士にいたるまで、そんなに惜しげもなく金属は使ってないんじゃ……日本で例えれば、聖徳太子がネクタイにスーツ姿になってるみたいなもんじゃないの? ま、いっか。コロンビア映画だし。
・ギリシア神話名物「ゼウスとヘラの夫婦漫才」がさっそく炸裂! 「ヘタレのペリアスが悪いんじゃよ……」と伏し目がちにヘラに反論するゼウスが実に人間くさい。神の中の神なのに!
・イアソンの仇討ちをなんとしても助けたる!と言い張るヘラに押し切られる情けないゼウスだが、「じゃあ5回助けるチャンスをやる。」と、とんでもないルールをこともなげに設定してしまうところが地味に大神らしくてあなどれない。やるな、オヤジ!
・作中の映像時間から察するに、ゼウスとヘラのいる天界での1分間は、地上での20年間に相当するらしい。ペリアス王の栄華、1分で終わっちゃったよ!
・いくら自分の神殿を血で汚されたからといっても、20年間もペリアス王をストーキングするヘラの執念がこわい。まさに、メン……いえ、なんでもないです。
・単に川で溺れている男(ペリアス王)を救助した純真な青年のような顔をして野営の宴に招かれておきながら、口を開いたとたんに俺は前王の遺児だと言い出し、ペリアス王への復讐を公言するイアソンの目つきが非常にアブない。助けた男、どう見てもペリアス王に近いテッサリア王国の有力人物だよね(実はペリアス王本人)!? バカなのか!?
・テッサリア王国を悪政から救うために神器「黄金の羊の毛皮」を見つける冒険の旅に出るという流れが、まさに RPGの元祖中の元祖という感じでわかりやすい。ワクワクするなぁ!
・女神ヘラの加護のあるイアソンを殺せないのなら、なるべく自分から遠ざけようと画策するペリアス王の判断が実に現実的で賢い。さすが、20年間おびえ続ける男なだけはある。
・なんか、最初に登場した時からミョ~に老けたメイクをした予言者だなぁと気になってたら、あんたオリンポス十二神のヘルメスだったんかーい! そりゃ予言も当たるわ。
・コルキスへ行けとヘラに言われて「世界の果てだぞ……」とひるむイアソン。でも、コルキスなんて黒海の東岸でしょ? もっともっと世界の果てジパングに住む人間からしたら、そんなもんねぇ。日帰りの温泉旅行みたいなもんでしょ!
・大神ゼウスとオリンポスの神々の圧迫面接にも物怖じしない姿を見てもわかる通り、イアソンは天才的な特殊能力こそないものの、勇気と弁舌に長けている、劉備玄徳のようなリーダー気質のある大人物らしい。またこの後の展開から、男に異様に好かれる人望も持ち合わせているようである。その一方で女運はどうかというと……不安!!
・非常に男むさい、イアソン主催の探検隊員募集のオリンピック大会のもようを、天界から実になごやかに笑顔で観戦するオリンポスの神々。ひまか!?
・エーゲ海と黒海を航行可能な大船アルゴ号を建造した天才アルゴスだが、まばたきをして眼球が動くギミックを取り入れたヘラそっくりの船尾像をオプションで造るほどのヘラ信者とは……これにはさすがのヘラもドン引き!?
・やっぱり、実物大のアルゴ船をちゃんと海に浮かべて行う撮影は、迫力と臨場感がちがう! いいなぁ。
・ギリシアからコルキスまでの距離は、片道およそ2400キロ(日本で言うとだいたい北海道~鹿児島間)の船旅。現在は陸路で片道およそ30時間かかるそうです。まぁ、古代の海路の感覚では長旅ですよね。
・いくら船旅で体力が落ちていたと言っても、天下の英雄ヘラクレスがクレタ島のヤギ1匹捕まえられないとは……でも、ヘラクレスはゼウスの隠し子でヘラからかなり憎まれていたという神話があるので、これもアルゴ船でヘラそっくりの船尾像ににらまれ続けていたがための呪いなのか!? あわれヘラクレス!
・本作で初めてクリーチャーが登場するのは、本編が始まって35分後というけっこう遅めのタイミングなのだが、それまでのドラマが面白いことと、なによりも青銅の巨人タロスの迫力がハンパないので、まったくダレない。青銅像なので当たり前だが表情ひとつ変えず、金属的なにぶいきしみ音だけを響かせてゆっくりと機動するタロス……こわすぎ!!
・複雑な海岸線沿いに重厚に進撃するタロスの見事な合成テクニックと、ハーマンの重々しい音楽が見事に調和した特撮シーン。日本に円谷英二&伊福部昭があるのならば、西洋にはハリーハウゼン&ハーマンがいる!
・男どもが汗だくで漕ぎ進めるアルゴ船の先に、岬にまたがったタロスの青銅の股間が迫る! なんなんだ、このむくつけき映像は。
・タロスは、武器の剣を右手に持って歩くのだが、右手でアルゴ隊員やアルゴ船を捕まえようとするときには、いちいち剣を左手に持ち替えて右手を使っている。タロスをわざわざ右利きに設定する、映画には一切出てこない開発者ヘーパイストスの異常なこだわり! ヘーパイストスっていうか、ハリーハウゼンか。
・タロスが軽々とアルゴ船を海面から持ち上げて、突然興味を無くしたようにぽいっと捨てる動作が、1954年の『ゴジラ』を意識していると見るのは、日本人のひが目か? ともかく、アルゴ船の精巧なミニチュア撮影と、実際に実物大の船セットから船員たちが落下するスタント撮影との絶妙な編集の組み合わせがすばらしい!
・タロスの攻撃で難破したアルゴ船から命からがら逃げてきた船員たちと海岸で合流するヘラクレス。イアソンの「掟を破ったな!」という詰問に、迷いなく「うん!」といった感じでうなずくところが、さすが脳筋中の脳筋ヘラクレス……憎めないヤツ!
・およそ10分間にわたる機動の末に、ヘラの助言を受けたイアソンの勇気ある行動により、かかとの栓から蒸気と血だかガソリンみたいな液体を放出して倒れるタロス! 利き手があったり、機動停止の直前に両手で喉元をおさえて苦しむなど、不必要に人間っぽい動作オプションが目立つステキなキャラでした。お疲れ!
・親友ヒュラスを探すためにアルゴ探検隊から脱退するヘラクレス。情に厚い、いかにも英雄らしい判断だが……自分のせいだもんねぇ。
・登場時から腰巻ひとつで、そのだらしない中年体型を惜しげもなくさらし続けていたアルゴスだが、下船する時はちゃんとした衣服を着て露出度がグンと減ってしまうのが、節度を守っていてほほえましい。でも、船に戻るとすぐ裸になる……アルゴ探検隊のグラビア担当は彼だ!
・盲目の預言者ピネウスをすぐに殺すでもなく、足でつつく、杖を盗む、テーブルをひっくり返して食べ物を台無しにする、衣服をはぎ取るという最低ないじめを繰り返す怪鳥ハーピー! その性格の悪さが妙に印象に残る。
・実在の俳優が持っていたり身に着けたりしているはずの杖や衣服をミニチュアのハーピーが奪い取るという合成撮影の連携が実に見事! さすがはハリーハウゼン、おのれに課す特撮難易度の高さがハンパない!!
・ゼウスの仕掛けた「吠える岩」の関門を、イアソンを助けるためにいとも簡単におさえてクリアさせる海神トリトン。お前、叔父さんに逆らうのか! でも、トリトンはヘラの甥っこでもあるんだよなぁ。難しい立場ね!
・吠える岩の落石で難破したコルキス船からイアソンが助けた、水もしたたるイイ女……その名はメデイア!! あ~あ、イアソンやっちまったな! メデイアを演じるナンシー=コバックの目力がものすごい。えっ、ナンシーさん、今もご存命(2022年2月時点でおんとし86歳)? 本物のメデイアじゃないの!?
・アカストス王子との決闘で負ったイアソンの腕の傷を、薬草でたちどころに完治させるメデイアの献身的な愛……のちの2人の顛末を思えば、なぜか自然と涙が。それにしてもメデイア、ウエストほっそ!
・全身に金粉を塗りたくり、ヘカテ教ダンサーチームのどセンターを張り、恍惚のおももちで踊りまくるメデイア。その光景を見て若干引き気味のイアソンの表情が興味深い。コイツ重いな! この時のイアソンの予感は正しかったのだ……
・ペリアス王といいメデイアといい、イアソンはその人の素性を知らないまま気安く接近して本心をさらけ出してしまう悪いクセがある。お人よしっつうか、無防備っつうか。
・アカストス王子の差し金とはいえ、国賓のようにさんざんっぱら歓待しておきながら、祝宴が盛り上がったところでいきなり手のひらを返してアルゴ探検隊をひっ捕らえるアイエテス王の情緒不安定さも、娘メデイアに負けず劣らずめんどくさい。この娘にしてこの父ありか。ちょっと『お父さんは心配症』を想起させる。
・コルキス王女の身でありながら、イアソンとの愛のために国や父王を捨てることを即決するメデイア。この激しさがくせものなんだよなぁ……
・見事に骸骨剣士たちの追撃から逃れてアルゴ船に生還し、愛するメデイアと熱いキスを交わすイアソン。これをもって本作の物語はハッピーエンドに終わるのだが、天界からこの2人の様子を見て若干表情を曇らせるヘラと、ゼウスの「イアソンの冒険はまだ終わっておらんぞ。さぁ、ゲームを続けよう。」という言葉がいかにも意味深なエンディングである。さぁ、イアソンとメデイアの夫婦人生航路は、これからどうなるのカナ~!?


映画『王女メディア』(1969年 106分 イタリア・フランス・西ドイツ合作)
 『王女メディア( Medea)』は、イタリア・フランス・西ドイツ合作のファンタジー映画。古代ギリシアの劇作家エウリピデスによるギリシア悲劇『メデイア』(紀元前431年)を原作とする。監督・脚本はピエルパオロ=パゾリーニ(47歳)。主演は世界的オペラ歌手のマリア=カラス。カラスが長編映画に出演したのはこの作品のみだが、当時すでにオペラ歌手としては事実上の引退状態にあり、歌唱はしていない。
 物語の舞台の異国感を出すためにトルコ・カッパドキア地方のギョレメ岩窟教会群で撮影し、音楽には日本やイラン、チベットの伝統音楽が使われた。

主なキャスティング
王女メディア        …… マリア=カラス(45歳)
英雄イアソン        …… ジュゼッペ=ジェンティーレ(26歳 当時現役の陸上三段跳びオリンピック選手)
コリントス王クレオン    …… マッシモ=ジロッティ(51歳)
ケンタウロスのケイロン   …… ローラン=テルズィエフ(34歳)
クレオンの娘クレウサ    …… マルガレート=クレメンティ(?歳)
ペリアス王         …… ポール=ヤバラ(?歳)
メディアの弟アプシュルトス …… セルジオ=トラモンティ(23歳)


 いや、パゾリーニ版の緊張感も、たま~に観たくはなるんですけどね。なんで2時間もない映画なのに、あんなに眠くなるんだろうなぁ……これも、時を超えたメデイアの魔力かな?
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たのしい悪夢はいつ醒める?  映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦』 ~本文編~

2022年02月06日 17時47分29秒 | 特撮あたり
≪資料編は、こっちら~ん。≫

 みなさん、どうもこんにちは! 相も変わらずそうだいでございまする。今日もいい日ですか? コロナ、かかってませんか? 私はもうヒヤヒヤの毎日ですよ!
 さて、今日も今日とて、コロナウイルスだの北京冬季オリンピックだの夢想だにできなかった8年も前の映画の感想文でございます。こんなの、自己満足でしかないよ~! 今、昭和でも平成でもなく令和よ!? 気ィきかせて『大怪獣のあとしまつ』でも観てきてレビューすればいいのにねぇ。ただ、我が『長岡京エイリアン』では、当面かの映画を観に行く予定はまったくありません。わかっちゃいないね……どんなに迷惑だろうが、死んだら怪獣は怪獣ではない! そんな粗大ごみに興味はない。生きてこそ神秘、生きてこそ怪獣!! それに、そんなネタ、『ティガ』か『ダイナ』でとっくにやってましたよね。

 で、今回は仮面ライダーなんですけれども、あの平成ライダーシリーズの「鬼子」ともいえる禁断のお祭り作品『仮面ライダーディケイド』が開いてしまったパンドラの箱・「クロスオーバーシリーズ」! その第7弾である、映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』(2014年3月29日公開 98分 東映)についてのあれやこれやを、ぶつぶつつぶやいていきたいと思います。いや~、これは公開当時、かなり意気込んで観に行きましたね。
 そういえば、この作品を映画館で観た当時、私は就職に向けた修行がてらアルバイトをしていたのですが、バイト先で何気なくこの映画を観たと誰かに話をしていたら、それまでそんなに親しくもなかった職場のギャルっぽい20代前半の娘さんが、それまで見たことも無いキラッキラした瞳をさせて、

「で、平成と昭和、どっちが勝ったんですか!?」

 とグイグイ聞いてきたのには驚きました。まさか隠れライダーファンだったとは! 平成ライダーもイケメンばっかだしねぇ。

 まぁともかく、当時はあの藤岡弘、が本郷猛として初めて平成ライダーシリーズに登場するという話題性と、従来の共闘パターンでなく、真正面から昭和ライダー陣営と平成ライダー陣営が大抗争を繰り広げるらしいヨという触れ込みは、「いよいよクロスオーバーもここまで来てしまったか……」という驚愕をもたらしたのでありました。
 ただ、フタを開けてみれば、そりゃもうどっちも正義の味方であることに変わりはないのですから、どちらかが全滅するような結末もあるはずがなく、わざわざ昭和勝利と平成勝利の2パターンが撮影された本当のクライマックスにいたるまでは、多少の考え方の違いはあったとしても、昭和チームは平成チームの厳しい先輩といった感じのポジションで、若者らしい甘さもある平成チームを叱咤しつつ、両チーム共通の敵であるバダン帝国に立ち向かうのでした。ここらへんは、今までの大ショッカーやらスーパーショッカーやらを相手にしていた過去作とほぼ一緒ですよね。

 お話に入っていく前に、まず今回の敵組織・バダン帝国の重要な大幹部である、このお方についてのあれこれを。

謎のバダン帝国最高幹部・暗闇大使とは(Wikipedia より)
 バダン帝国の最高幹部。雑誌連載版『仮面ライダーZX 』第3回(1982年9月)より登場。ショッカー大幹部・地獄大使の従弟であり、通常改造人間の二回りほど大きいベルトにバダンの紋章が刻まれていること、兜の頭部中央に角があること、全身が金と銀を基調としていることを除けば、地獄大使と外見がよく似ている。演者も、地獄大使を演じた潮健児(当時57歳)である。
 冷酷無比な性格で、使命感が強い。地獄大使に見られた粗忽さがなく彼を軽蔑しており、劇中で仮面ライダー1号に「おのれ、地獄大使!」と間違えられた際には「地獄大使だと? あんな奴と一緒にするな!」と一喝する一幕を見せた。仮面ライダーの打倒が果たせなかった地獄大使に代わってその野望を果たすことで、自分の優秀さを証明しようとしている。
 右手の甲に生えた高電圧の電磁ムチと、左手のカギ爪を武器とする。また、体内には時空破断システムのコントロール装置が埋め込まれている。
 その正体は、サザエの能力を持った最強改造人間サザングロス。

 本名はガモン。アメリカ合衆国サンフランシスコのスラム街出身で、サンフランシスコでの幼少時からフランス領インドシナ半島でのゲリラ戦線に至るまで、自身より3ヶ月早く生まれた従兄のダモン(のちの地獄大使)の影武者を務めてきた。ガモンは常にダモンに利用される立場だった。
 その有能さを見込まれてショッカーからスカウトを受けたガモンとダモンだが、東南アジアの山岳ゲリラ内での仲間の裏切りに遭って重傷を負う。2人はショッカーによって改造手術を受け改造人間として蘇生させられるものの、恋人の死によるショックやダモンへの反発心もあってガモンはショッカーから逃亡して姿を消し、やがてアマゾン奥地に隠れ潜んだナチス残党と結託してバダン帝国の基礎を作り上げる。
 バダン帝国最高幹部・暗闇大使となったガモンは、ショッカー大首領が歴代の秘密組織や大幹部を使い捨てていく様子を陰から見つめるうちに、自分が逃げた理由がダモンへの憎悪だけでなく、大首領に関われば破滅すると本能的に感じていたからだと悟る。しかし結局は大首領の思念から逃れきることができず、従兄の地獄大使と同様の末路をたどることになる。
 映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』では、外見は映画版『仮面ライダーディケイド』でデザインが一新された地獄大使と同じ黒い鎧をまとっている。

おさらい!! 仮面ライダークロスオーバーシリーズの歴代悪の組織
1、『仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(2009年8月)…… 大ショッカー
2、『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』(2009年12月)…… スーパーショッカー
3、『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(2011年4月)…… 2011年まで存続したショッカー
4、『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGA MAX』(2011年12月)…… 財団X と超銀河王
5、『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』(2012年4月)…… ショッカー・ザンギャック連合
6、『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z 』(2013年4月)…… スペースショッカー
7、『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』(2014年3月)…… バダン帝国


 というわけで、今回は『仮面ライダーZX 』に出てきたバダン帝国の復活であります。とは言っても、その実態は2014年までの歴代悪の組織の有名どころの再集結という、いつもの感じですよね。
 今回、オールブラックにリニューアルされた暗闇大使がかなりカッチョいいです。大杉漣さんのブラック地獄大使はいまいちピンときませんでしたが……そうそう、「暗闇」なんだから、ギラギラゴールドの昭和の原典よりも、こっちの方がそれっぽい! 演じる菅田さんも非常にハイテンションな哄笑でいい感じ。
 そんで、まぁある程度のライダーファンであれば、キャスティングを観た時点でピンとくるわけなのですが、今作での暗闇大使は非常に特殊な立場にありまして、ネタバレになるのではっきりとは申せないのですが、「暗闇大使本人」ではないんですよね。その正体が披露されるくだりは、「彼」にとって悲願のスクリーン独占だったこともあって非常に良かったのですが(それまでの『ディケイド』とかでの客演はカウントにならないよ!)、「じゃあ、いつ入れ替わったの?」というあたりについて語る尺がなかったのは実に惜しいことでした。できれば、昭和の『ルパン三世』式に、すっぱだかに縞のパンツ一丁になった本物の暗闇大使が、バダン帝国幹部着替え室のロッカーの中で、後ろ手に縛られて猿ぐつわをかまされた状態で「ムゴー!ムゴー!!」とかいってるところをコンバットロイドに発見されるくだりが観たかったのですが、しょうがないよね。でも菅田さん、本来の姿に戻ってもかなり悪役っぽかったぞ! それだけ潜入捜査は過酷だったのだ……映画『ディパーテッド』のディカプリオみたいなもんですよね。
 ところで、これだけは釘を刺しておきたいのですが、バダン帝国総統の声……そりゃまぁ似ているのかもしれないけど、ショッカー大首領とかの声を演じていた頃の納谷さんではないよね!? いらねぇっつうのよ~、ヨボヨボ味はよう!!


 この映画、いろいろ語りたいこと、気になったことはたくさんあったのですが、私としましてはおおむね楽しめたと言いますか、それまでのクロスオーバーシリーズの不満点を解消していると感じた部分がけっこうありました。単純に面白かったです。

 いちばんいいなと感じたのは、さすがに15名 VS 15名の対決なので全員というわけにはいかず数名にスポットライトを絞りながらも、現役チーム以外にも比較的丁寧な描き方がされている客演ライダーが数名いたこと。今作の場合、平成ではファイズとディケイド、昭和では1号、 X、ZX あたりが、もはや鎧武チームを喰っちゃう勢いでバンバン出てきてましたよね。コメディリリーフとして、探偵稼業を嬉々としながら続けている Wが観られたのも良かったです。
 特にファイズの扱いは、TV 本編の直接の後日譚ともいえる内容になっていて、回想シーンや亡霊の形でありつつも、あの草加雅人さんが、サブライダーならば誰でもいいようなゲスト扱いでなく、ちゃんと新規撮影で物語の重要に絡んできたのは素晴らしかったですね。ほんと、『仮面ライダー555』は愛されてるなぁ!

 また、映画の主軸となるシュウ少年と父レン(仮面ライダーフィフティーン)、母サキの親子の物語に、主人公であるはずの鎧武を差し置いてズズズイと入り込んでいくディケイドこと門矢士の存在感が、ずるいくらいに大きいのなんのって! 最後にバダン帝国に捕らわれたシュウ少年を助け出すの、ディケイドなんだもんね。しかも、その時にシュウにかける「よくがんばったな。」という言葉のあたたかさは、まごうことなき仮面ライダー1号の熱き血を継承する正義のヒーローのあかし!! もはや鎧武の映画じゃなくて『仮面ライダーディケイド』の「平成 VS 昭和の世界」編だこれ!! 本作は、ファイズの後日譚であると同時に、ディケイドの本当の「完成の物語」なのかもしれませんね。もっとも、どちらの旅もまだ終わりそうにはありませんが。
 序盤の初登場シーン、例のカメラを持った士がちらっと出て来ただけなのに「うわーヤバい奴きた! これからお祭りが始まるぞ!!」なゾワゾワ感がハンパなかったですよ。なんてったって、どんな仮面ライダーに出遭っても平然と状況を把握して「だいたいわかった。」で済ませられるお人なんですから。クロスオーバー映画のストーリーテラー役として彼以上に使い勝手のいいキャラもいません。歩き方もかなりスムーズになって余裕しゃくしゃくな感じになったし、先輩の乾巧に上から目線で「仮面ライダーの道」を諭すしで……士、というか井上さん、ほんと成長したな~!! 隣に青いストーカーがいないのが少々寂しいですが。
 現役時代以降、様々な経験を積んでここまで士がオンリーワンな存在になってしまった以上、見方によっては孤高で不気味なジョーカーでもあるそのポジションは、かつての鳴滝さんに限りなく近くなっているわけで、こうなると鳴滝さん、いらないよね。物語全体の説明、もう士がやれますから! でも、今作でも鳴滝さん、出てくるんだよなぁ。ゾル大佐とドクトルG になった分際で、よくもノコノコと……あ、漫才コンビという意味で、士には鳴滝さんが必要なのかな? だったらいっか。

 今回の映画は、シュウ少年をめぐる「過去を後悔する人々」の物語とファイズの物語が絶妙にリンクしている部分が魅力なのですが、そういったちょっと深刻になりがちな本筋をカバーするべく、「平成アップデート版本郷猛のおでまし」、「神敬介と港町の面々」、「左翔太郎のズッコケ探偵稼業」、「ディケイド VS フィフティーンのライダーものまねバトル」といった彩りもバランス良く配置されており、エンターテイメントとして結構いい感じにできあがっていると思うんですよ。本郷が大真面目に「アーマードライダーなどと浮かれてるようだが」と語る、その破壊力! この一言で、昭和が平成にケンカを売っている理由が丸わかりですよね。そりゃまぁ、立花のおやっさんと採石場で汗だくの特訓をしないとパワーアップできなかった世代からしたら、なんかよくわかんないオモチャみたいな道具でホイホイとフォームチェンジできる奴らはそう見えるか。
 また門矢士に限らず、左翔太郎も乾巧もかなりできあがっている濃い~キャラクターばっかりなので、中盤の脱線パートもなにかと楽しいですよね。過去出演陣のこういった夢の競演形式で、 TV本編の撮影で忙しい『鎧武』チームの穴を埋めるのって、便利だし豪華でいいなぁ! これが長期シリーズの強みでしょうか。細かい配慮として、翔太郎も巧も神敬介も、ちゃんと生活にバイクがあるのが心憎い! なんたって仮面ライダーだもんねぇ。

 主要キャスト以外の脇役陣を観ても、巧と敬介のいる食堂よしだやに押し入る指名手配犯の役を、今作で仮面ライダーフィフティーンのスーツアクターを務めている富永研司さんがノリノリで好演していたり、大ケガを負って敬介の医院に運ばれた漁師マサの役を、あの「ブラァーッ!!」こと岡元次郎さんが熱演していたりするお遊びがほほえましいです。スーツアクターが脇役を演じるのも、昭和ライダー以来の伝統よね! こういうノリ、まさにお祭り感があって最高ですが、これらが単なるマニア向けのサービスでなく、指名手配犯を真正面から説得したり、患者に時に厳しく接したりする敬介の生きざまを語るディティールとして機能しているのが実にうまいです。
 要するに、ただの恒例オールスター出演ものにはしたくないという意気込みが随所から伝わってくるのが、本作のいいところだと思うんですよね。ただずらずら~っと有名な歴代ライダーが出てきても子どもは喜ぶのでしょうが、もっとそれ以上の何かを目指すために、どこかに明確な照準を合わせてじっくりと語っていく。「巧と敬介」パートは特に、そういった野心的な姿勢に満ちていると思いました。こういう形の昭和と平成のカップリング、もっと観たかったなぁ~!


 だがだが、しかし! こうやってほめてばっかりでもいられないのがファンのつらいところなのでありまして……やっぱり本作でも、なんだか納得のいかない部分はあったんですよね。

 なんといっても一番気になったのは、本作における敵組織バダン帝国が、いったい死んでいるのか生きているのか、そこがはっきりしないところ!
 中盤で明らかになる、シュウ少年が実は〇〇だったという衝撃の展開は確かに意外なのですが、だとしたら、そのシュウ少年を利用して地下と地上とを逆転させようとするバダン帝国は何者なのか。全員、一度は仮面ライダーに敗れて地下の黄泉の国に叩き落とされた死者たちなのか、それとも、黄泉の世界の死者を利用して地上世界を混乱させ、それに乗じて世界征服を果たさんとする生者の組織なのか?
 後半で暗闇大使は、バダン帝国の侵略計画を語る際に自分たちのことを「亡者」と呼んでいるのですが、ライダーと闘っているバダン帝国のみなさんは、まず物理的に殴り合っていますし、負けるとフツーに爆死します。今までのショッカー系の「生きた」悪の組織と、なんら変わりがないのね! ということは、今回のバダンのみなさんもまた、何かの拍子に偶然見つけた「なんでもひっくり返す」超能力を持つシュウと、地下の黄泉世界に頼りっきりの他力本願なチンピラにしか見えないのですが……ま、他力本願なのはショッカー以来の伝統ですけどね。
 あえて好意的に解釈するのならば、バダン帝国総統がすでにシュウの超能力に近い機能をわずかながら手に入れていて、少しずつ身近な手駒をシコシコと実体化(再生)させて地上に送っていたからこそ、地上でライダーたちと闘う者たちはふつうに肉体を得ていた、ということになるのでしょうが……そこらへん、説明不足すぎない!? だいたい、地上と地下との見た目の違いが全然ないので、鎧武たちがどっちの世界で闘っているのかがよくわからなくなるんですよね。人が少ない以外にも、もうちょっと地下世界の特徴を出しても良かったのでは? 空の色とか。
 バダン帝国の先兵になっているレン(フィフティーン)が、顔色の悪いメイクをしているために生きているのか死んでいるのかがはっきりしないのも、地味にミスリードになっていて意地悪ですよね。彼の、シュウが地上に出てきたら母親のサキが喜ぶぞという説得の仕方も、その理屈がよくわからない。シュウが来たらサキは地下に行くんじゃないの?
 クライマックスになって地下から出てくる、そこらへんをふよふよ漂っている紫色の煙みたいな亡霊たちと、しっかり実体化しているバダン帝国の改造人間たちがどう違うのかもよくわかんないしね。ともかく、そこらへんが「うん、まぁ、雰囲気でわかってね。」みたいな大雑把なくくりになっているのが気持ち悪いんですよ! 死者の集団なんだったら、バダン帝国なんてしゃっちょこばった組織名にしないで、「故・ショッカー」にしといたらよかったのに。そういう無駄にプライドの高いとこが敗因なんですよ、総統~!!

 結局、昭和 VS 平成の噛ませ犬として登場するんだったら、設定うんぬんなんかどうでもいいという本音が聞こえてくるような気もしないではないのですが……そこらへんが、ご用とあらばいつでもどこでも復活してくる悪の組織の立場の弱いところなのよね~! でも、オリジナルに対する適切なフォローも敬意もなく「おれたちもバダン帝国ですが、なにか?」みたいな演技をさせられるジェネラルシャドウやジャーク将軍の身にもなってちょうだいよ……大神官バラオムの実にやる気のないたたずまいなんか、見ていて涙が出てきますよ!
 まぁ、TV本編で因縁のあった仮面ライダーBLACK RX に引導を渡されたぶん、ジャーク将軍は比較的マシな扱いはされていたのかもしれませんが、仮面ライダーBLACK とBLACK RX が別の人間という解釈は、平成ライダーシリーズのデフォルトなのか? 将軍、かわいそう!


 こんな感じに言いたいことをつれづれに書きつらねてまいりましたが、今回もまたいい加減な字数になってきましたので、あとはこまごま気がついた点と、バダン帝国のみなさまの活躍の記録をまとめてみたいと思います。いやぁ、なんだかんだいっても面白いポイントがそこかしこにあって、やっぱ楽しいやね!


・映画冒頭から昭和ライダー(ストロンガー、スカイライダー、J )と平成ライダー(カブト、フォーゼ、鎧武)の大混戦が展開されるのだが、既視感は否めない。開始1、2分でもうおなかいっぱいなんですが……
・シュウ少年の「なんでもひっくり返す」超能力がスタンドみたいでおもしろい。使いみちが意外と難しいが……これ、ロボット的なコンバットロイド相手に使ったらコミカルに処理されてたけど、生身の人間にやったらどうなるんだろう? 諸星大二郎みたいな上映不可能な惨事になっちゃうのか?
・変身したとたんに、なんかスリムになる仮面ライダー1号。ていうか、変身する前のほうが強そうなんですが……
・今作での戦闘員キャラであるコンバットロイドを相手に必殺技「ライダーキック」をかます1号が大人げないように見えるのだが、思えばコンバットロイドだって、1号が闘っていたショッカー戦闘員から数えて9世代目くらいに当たるわけなので、多少は歯ごたえのある強さになっているのかもしれない。たぶん、ショッカーの蜂女とかコブラ男(改造前)よりは強いんじゃないだろうか。そうでなくっちゃ、散華していった無数の歴代戦闘員さんがたのみたまが浮かばれねぇよなぁ。
・ヤマアラシロイドの平成リファインデザインがけっこういい感じにカッチョいい。相方のタイガーロイドが昭和のまんまなのは気になるが……昭和の時点で完成されてるもんね。
・バダン帝国大幹部として登場したジェネラルシャドウの声が柴田秀勝さんじゃなーい!! これはバダン帝国、負けたな。
・今作における悪の仮面ライダーこと、仮面ライダーフィフティーンのデザインは、頭の「十五」こそダサすぎるのだが、武田信玄の「諏訪法性兜」や後藤又兵衛基次の「熊毛総髪形兜」みたいな毛の生えた兜をイメージしていると考えれば、なかなか個性的で面白い。でも、ヘッドに対してボディスーツがちょっと貧相なんだよなぁ。でっかい剣も持つから、なおさらね。
・板尾さん、蜘蛛男役、電人ザボーガーの主役ときて今度は悪のライダー役ですか! やるなぁ。
・ヤマアラシロイドに「どけ!」と言われているあたり、仮面ライダーフィフティーンの新人改造人間としての立場の低さが見て取れる。映画『仮面ライダー対ショッカー』のザンジオー以来の、厳しい伝統ですよね! 悪の組織は年功序列にうるさいのだ。
・本郷猛に続いて神敬介も、 Xライダーに変身するとちょっぴりスリムになる。いい機能だな……
・昭和ライダーと平成ライダーが対峙したシーンで、仮面ライダー1号が話しかけているのが門矢士という時点で、このお話の主人公が誰かがわかりますよね。露骨!
・平成ライダーたちの死者への未練がバダン帝国を生んだという、1号の論理がよくわからない。せいぜい「バダン帝国のメガ・リバース計画を助長した」くらいじゃないの?
・数十人 VS 数十人の殺陣シーンを3分間もたせるって、制作スタッフにしてみたらとんでもないムチャぶりですよね……変幻自在のカメラワークはもちろんのこと、今回は市街戦であることに加えて、だんだん日が傾いて夕陽になって行くところが新機軸かなと思いました。お仕事ご苦労様です!!
・「めんどくさいから敵味方まとめて攻撃」という、映画『仮面ライダーV3 対デストロン怪人』のドクトルG 以来の愚策を繰り返すバダン帝国総統。おめぇがやっちゃあおしめぇよ!!
・あんなチャラチャラした格好でも、殉職の直前に「バダン、ばんざーい!!」と絶叫して散るヤマアラシロイドの実直さが涙ぐましい。ほんとはいい奴だったんだな……
・アクションの発想が面白いので観ていて楽しいは楽しいのだが、やっぱりスーパー戦隊の客演はいらねぇって……真剣勝負に水を差すっつうか、なんつうか。
・本作の目玉の強化フォーム「1号アームズ」……ねぇ……もうあれか、ダサいって思った方が負けなのか?
・昭和ライダー全員の力を結集した「ライダーシンドローム」をもってしても、1人の少年の命さえも完全に蘇らせることはできないというところに、作り手の良識を感じる。正義のヒーローだからって、なんでも願いが叶うってわけでもないのよね。
・あくまでも平成ライダーの甘さに鉄槌を下すことを忘れない1号ライダー! 大事なことなので、わざわざ変身を解除してから通告して、また変身し直しました!!
・熱い、熱すぎるぞ1号ライダー! たぶん、昭和ライダーの中でも「もう昨日久し振りにずっと闘って寝てねぇんだからさ、なぁなぁにして帰ろうよ……」と、平成ライダー以上にうんざりしている人は何人かいるはずだ!! 先輩の妙なハイテンションに付き合わされるのって、大変ですよね。
・15 VS 15の、朝日の輝く海岸での決戦は非常に絵になるのだが……徹夜で闘う身になってみれば地獄そのもの! 還暦すぎもいる昭和組に、さすがにこれはキツい!!


画面で確認できる限りの、バダン帝国のみなさんのご活躍(コンバットロイドは省略)
本編開始して
38分30秒後 …… タイガーロイド、仮面ライダーファイズに敗れ殉職
49分35秒後 …… バダン帝国大幹部ジャーク将軍、仮面ライダーBLACK とBLACK RX のダブルライダーキックで殉職
~以降はバダン帝国と昭和&平成ライダー連合との最終決戦~
70分50秒後 …… ザンジオー、仮面ライダーZX の ZXキックで殉職
71分13秒後 …… カメバズーカ、仮面ライダーZO のキックで殉職
71分17秒後 …… バダン帝国大幹部ドラス、仮面ライダー響鬼の太鼓ドンドンで殉職
71分20秒後 …… バダン帝国大幹部マシーン大元帥、仮面ライダーV3 の V3キックで殉職
73分00秒後 …… その他全員、バダン帝国総統の高熱火炎弾により殉職、っていうか、これは一斉解雇かな?
76分05秒後 …… ヤマアラシロイド、仮面ライダーバロン、斬月・真、龍玄の3体同時攻撃で殉職
86分55秒後 …… 仮面ライダーフィフティーン、仮面ライダー鎧武1号アームズのライダーキックで変身ベルトを破壊され戦闘不能

その他の地下帝国バダンのみなさん
ヒルカメレオン、十面鬼ユム・キミル、ジェネラルシャドウ、剣聖ビルゲニア、大神官バラオム、コブラ男ガライ、超銀河王
さそり男、サボテグロン、ゴースター、ジャガーマン、毒トカゲ男、ギリザメス、シオマネキング、ガニコウモル、サドンダスβ、怪魔ロボット・シュバリアンなど


 さて、2009年いらい、東映ヒーロー映画の定番となりつつあるクロスオーバーシリーズも今回で7作目となり、振り返ってみれば「昭和ライダーの復活」、「昭和の悪の組織の復活」、「タイムトラベル if世界もの」、「スーパー戦隊との共演」、「宇宙刑事との共演」ときて、ついに「昭和ライダー VS 平成ライダー」まできてしまいました。
 とかく話題性の大きいシリーズではあるのですが、はっきり言ってこれ以上に世界設定や登場キャラクターの規模を拡大するのは無理なんじゃなかろうか……実際、今作だってクローズアップされるライダーの人数は6~7人が限界でしたし、よくよく観れば、キャラクター造形の点で諸先輩がたに大きく溝をあけられていた現役『鎧武』チームの肩身が狭いという主客転倒な状況にもなっていました。経験の厚みが違うんだもの、しょうがないですけどね。
 確かに面白くはあるのですが、雑なところはとことん雑、しかもそれのあおりを食らうのはいっつも悪の組織のみなさんという、この「楽しい悪夢」は、今後一体どんな新展開を見せるのか、はたまた「も~やめやめ! 解散!!」になるのか。同じく東映のドル箱シリーズになっている「プリキュアオールスターズ」のメンバー急増化対策とともに、憂慮すべき大問題だと思います。
 でも、過去のヒーローがゲスト出演するのって、手っ取り早くお客さんを集められるカンフル剤だもんね。一度やってしまったら、そう簡単に禁じ手にはできんぞ……まさに麻薬!! おっそろしいもんだなぁ。鳴滝さんじゃないけど、これこそが仮面ライダーディケイド最大の罪ですよね。おのれディケイドぉおお!!

 余談ですが、本作をもって、平成ライダーシリーズの主人公ライダーは15名となり、サブライダー(ライダーマン)も、厳密にはもう平成に入っちゃってる時期の映画やオリジナルビデオの単発ライダーもかき集めた昭和ライダー15名と、人数で並ぶこととなりました。そして『鎧武』以降も平成ライダーシリーズは当然のごとく続くので、もはや「仮面ライダーといえば昭和だろ!」とは言えない局面に入ってしまったということなんですな。シリーズの期間にしても、昭和の「23年(1971~94年)」を平成ライダーシリーズが超えていくであろうことは、ほぼ間違いないわけです。そもそも、昭和ライダーは平成ライダーみたいに23年間ずっと TVで放送してたわけでもないし。
 そうなると、この「2014年」というタイミングは、昭和ライダーが平成ライダーに堂々と闘いを挑むことができる「最後のチャンス」だったのかもしれませんね。これ以降は数で差が出てきちゃうもんな! 私のような昭和ライダーファン(厳密には『 BLACK』とか『 BLACK RX』がリアルタイムなので半分昭和じゃないのですが)にとっては寂しい話ですが、「仮面ライダーは改造人間である。」という大前提も、歴史の1ページにすぎなくなっちゃんですよね。

 とはいえ、これからも昭和ライダーにはがんばってほしいんだよなぁ! 映画『仮面ライダー1号』やオリジナル配信『仮面ライダーアマゾンズ』シリーズの例もあることですし、これからも、手を変え品を変え、ニチアサ枠でゆる~くなった平成ライダーの面々に喝を入れてほしいところです!
 あっ、もちろん、悪の組織もがんばってね~!! ゴルゴムの3神官も、『仮面ライダーBLACK SUN 』に出るとしたら気合い入れなおせよ! 白石監督だからな!!
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ぬぐいきれない「まつりのあと」感……だが、そこがいい!? ~映画『五人ライダー対キングダーク』・本文~

2022年01月29日 10時22分45秒 | 特撮あたり
≪毎度おなじみ、7年も前の資料編は、こちらだ!≫

 お天気が良くてもさみー!! みなさま、どうもこんにちは。そうだいでございます。
 早くも1月が終わろうとしておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。こちら山形は、まだ冬の終わりは見えないやねぇ。この冬は雪が多かったな~! 主に年が明けてからでしたが、雪かきいちばん多くやったんじゃないかしら。早起きがきつい……
 コロナ、コロナ言ってもう2年になりますから、仕事場でのうんぬんは慣れっこになっていたつもりなのですが、いよいよ山形市が「まん防」に入ってしまいまして、仕事の後の「夜ラーメン」という背徳の時間が無くなってしまい、これにはさすがにショックを受けています。わたしの至福のひとときが……
 毎日のように「感染者数過去最多を更新」のニュースが流れる時期が、また来ちゃったねぇ。家で楽しく過ごす方法はいくらでもある時代なんですが、気分がくさくさしていけねぇや。来月にも庄内地方の温泉にでも行こうかと考えていたのですが、それもまた夢のまた夢のようで。待ってろよ、春!! 「米沢上杉まつり」、今年はどうかな……こちとら、身体の準備だけは万端なつもりなんですけどね。

 さてさて、今回もまた、そんな有り余るおうち時間を我が『長岡京エイリアン』の宿題消化に充てようという、なんとも不毛きわまりないマッチポンプの「やっと本文コーナー」でございます。今回も「7年ぶり」よ! 古酒でも造ってんのか!?

 お題は、ついにここまでやってきました、映画『五人ライダー対キングダーク』(1974年7月公開)! ある意味、悠久の仮面ライダーシリーズの、最初の一区切りを象徴する作品であると思います。
 映画のタイトルにはないのですが、この作品は当時放送されていた「仮面ライダーシリーズ」第3作『仮面ライダーX 』のオリジナル映画作品であります。タイトルの「五人ライダー」とは、言うまでもなく主人公の Xライダーと、その時点までのオールライダーである1号、2号、V3、そして本作で初めて復活するライダーマンのことですね。
 正直、主役なんだからタイトルに Xライダーの名前くらい出してあげてもいいじゃないかと思ってしまうのですが、映画のセールスポイントが「五人ライダー」の集合なんだもんね。しかたねぇかぁ。

 この作品、シリーズ恒例の再生改造人間軍団あり、過去ライダーのゲスト出演あり、大爆破&アクションありの天湖森夜な展開を、TV本編ではなかなか見られないド派手な規模で送る豪華作なのですが、な~んか、全体的に雰囲気がヘンなんですよね! 別に主人公が大ケガで降板したとか失踪しちゃったとかいう緊急事態はなかったはずなのですが、作品としての完成度がおかしい! ストーリーの展開が急すぎて、子ども向け作品とは思えない「筋の省略」が多いのです。
 端的に言っちゃえば「説明不足で意味不明な部分が多い」ということになるのですが、これは明らかに「制作スタッフが意図的にはしょってる」わけなので、そもそも説明する必要がないという判断があったのでしょう。つまり、「説明できなかった」じゃなくて「説明しなかった」と! プロがいらないと思って捨ててるんですから、そこを批判するのは野暮のような気もするんですよね。デイヴィッド=リンチ監督の映画を「わけわかんない!」と批判したり、ブラックコーヒーを飲んで「なにこれ、にが~い!!」と言うようなもんだと思うんです。そういうもんなの!ということで。

 でもさぁ……これ、直球どストレートの子ども向け作品ですからね。子どもにモネとかルノワールみたいな印象派の絵画を見せて、理解できるかどうか……いや、印象派だったらまだわかるかもしんないけど、この映画、カンディンスキーくらいのレベルなとこもあるしなぁ。おもしろけりゃいいのかな?

 簡単に言ってしまいますと、本作はたった29分というなかなかタイトな尺の中に「1、歴代ライダー集合」、「2、GOD機関の東京カラカラ作戦」、「3、Xライダー打倒の最強改造人間の登場」という3つのトピックを詰め込んでいます。まぁ、そこは料理のしようによってどうとでも収まるはずなのですが、本作の場合は、1に必然性を持たせるために2を Xライダーひとりではカバーできない規模の広範囲にわたって展開させます。それはいいのですが、それと同時進行で3のために Xライダーの能力を『ウルトラセブン』のガッツ星人方式にえっちらおっちら観測しているのが、ややこしい! つまり、観客はシーンが変わるたびに1&2の話を見ているのか3の話を見ているのかをいちいち推測しなければならなくなるので、途中からもうどうでもいいやモードになってしまうのです。最終的に1に従事した再生改造人間軍団のみなさんも3のコウモリフランケンも、都合よく集合してやられるので結果オーライなんですが。
 こういった感じの、特撮ヒーロー番組における悪の秘密組織が「組織としての作戦」と「邪魔なヒーローの打倒」を同時進行でやってしまおうとするクセは、映画『仮面ライダー対じごく大使』の先例を見てもおわかりの通り、秘密で進めるべき作戦が、よりにもよって一番知られたくないヒーローにバレるという最悪の「あぶはち取らず」に終わってしまうオチがほとんどの、「悪の秘密組織あるある」ですね。なにごとも、欲ばりはよくない!!
 それ自体はよくあるパターンなのですが、今回の場合、そこらへんの混線具合が異様に不親切に感じられます。作品の中で、だぁれも物語全体の大枠を語ってくれないので、まじめに見ている人ほどストレスがたまる内容になっているんですね。せいぜい、仮面ライダー2号がクライマックスの手前で語る、

「『東京カラカラ作戦』とは、東京中の水を涸らしてしまう作戦だ!」

 くらいが関の山だし、2号がそんな超絶推測にいたった経緯もぜんぜん描写されないし……そう聞いて、作中で事件に巻き込まれたマサル少年も、「うん……よくわかんないけど、たぶんそう。」という表情で、うつろな目で虚空を見つめ小さくうなずくばかりなのですが、老若男女を問わず、この作品を観ている者はそんな表情になってしまうことでしょう。マサルくん、トレンディエンジェルの斎藤さんに似てるし、滑舌も絶妙にギリギリで非常にいい感じです。
 ここらへんのストレスって、本作と先ほどの『仮面ライダー対じごく大使』とを比較してしまうと一目瞭然なのですが、要するに本作では、物語の大枠を簡単に説明してくれたり、物語全体の流れに関わっていたりする地獄大使のような「トリックスター」がいないんですよね。いないというか、いるんだけどほとんど仕事してない! 誰が本作のトリックスターなのかと言いますと、それは言うまでもなく、地獄大使と同じ立場にいる、東京カラカラ作戦と Xライダー打倒を一緒にやっちゃおうという愚挙に出た GOD機関大幹部・キングダークその人です。アジトの奥で寝そべってヴエーとかうなってないで、もうちょっとしゃべれやー!!

 っつうことで、今作のいちばんの戦犯である、大幹部キングダークについて。

大幹部? 最高幹部? それとも……? 謎の巨大ロボット・キングダークとは( Wikipediaより)
 キングダークは、GOD機関の大幹部にして巨大ロボット。仮面ライダーシリーズ初の巨大キャラクターである。身長26m、体重5t。
 『仮面ライダーX 』第22話(1974年7月13日放送)から登場(第21話では声のみの登場)。前任の GOD機関大幹部・再生アポロガイストの殉職後に着任した2代目大幹部。
 鋼の全身を黒いマントで包んだ巨人型ロボット。普段はアジトの奥で、涅槃仏のように寝転がって頬杖をついている。口からの毒ガスや目からの破壊光線、指先からのロケット弾など、多彩な武器を持つ。
 南原光一博士が開発した、すべての物質をエネルギーに変換する「RS装置」を体内に組み込んで起動する予定であったが、すでに RS装置を完成させていた南原博士は、その悪用を恐れて装置の設計図を9枚に裂き、分散させてしまう。分割された設計図を奪還すべく、キングダークは悪人改造人間軍団を次々と投入して Xライダーとの設計図争奪戦を繰り広げる。

 キングダークの巨体は、横になった姿の実物大セットが作られ圧倒的な存在感を示した。セットの制作は佐久間正光が指揮を執った。目と口には開閉ギミックを備えている。立ち上がった姿は着ぐるみで表現されたが、実物大の造形物とは印象の異なるものであった。

日本支部大幹部赴任期間1974年7~10月、全15作戦 ※(複)表記は X以外の仮面ライダーとも交戦した改造人間
ジンギスカンコンドル、ガマゴエモン、コウモリフランケン(複)、サソリジェロニモ、カブト虫ルパン、ヒトデヒットラー、再生改造人間軍団(複)、クモナポレオン(複)、カメレオンファントマ、ヒルドラキュラ、トカゲバイキング、アリカポネ、ムカデヨウキヒ(複)、タイガーネロ(複)、サソリジェロニモJr.


 ということで、今回の「東京カラカラ作戦」はキングダークにとって3回目の作戦ということになります。まだ駆け出しなのね! これまでの悪の大幹部と違ってだいぶ図体のデカい彼なのですが、やっぱり作戦は14~5回くらいの失敗で限界が来ているようですね。
 駆け出しとは言いましても、この、前任のアポロガイスト時代の改造人間たちもほぼ全員フル動員した GOD機関の再生改造人間オールスター感謝祭状態は、これまでのオリジナル映画に比べても規格外のもので、たいていこういう場合は、自分の直接指揮する「悪の偉人改造人間」が中心となって、前任者の管轄にあった「神話改造人間」のみなさんは数名チョイスされるだけで肩身が狭いという人選が通例なのですが(死神博士しかり地獄大使しかり)、今回のキングダークはかなり寛大に、ボーダレスに作戦参加者を募っているということになります。
 それだけ GOD機関内での人事権を自由に行使できるということは、キングダークはこれまでの大幹部とはちょっと違う次元の権力を持っているということになり、ということはつまり……ってなわけで、『仮面ライダーX 』本編の最終話に明らかになるキングダークの正体につながる伏線が、すでにこの映画の時点でほのめかされているのは、さすがですね! いや、ただ単に GOD機関の改造人間が少ないから見境なくかき集めただけなんじゃ……というツッコミは、なしだ!!

 ところで、Wikipediaの記事にもある、悪名高い「実物大の造形物とは印象の異なる」着ぐるみなのですが、これはやっぱり、先に出た実物大セットがカッコよすぎたのが原因ですよね。セットのどこがカッコいいのかと言うと、たぶんあの「肩幅の広さ」なんじゃなかろうかと。逆に言えば「小顔」なわけで、着ぐるみの場合、中にアクターさんが入ることを考えると、顔と身体の比率が実物大セットのあれほど離れたものにはなりえないと思うんですよ。大谷翔平さんみたいなとんでもない体型のアクターさんでもいないかぎり。もちろん、着ぐるみの質感の問題もあったのでしょうが、なにげに着ぐるみでは表現できないデザインに、あのセットは挑戦していたのではないかと。やっぱりスタイルって大事ですよね。


 話をキングダークから物語に戻しますが、結局本作は、コウモリフランケンによる Xライダー打倒というひとつの目的は失敗したものの、GOD機関の「東京カラカラ作戦」が成功したのか失敗したのかがはっきりしないまま終わります。まぁ、作戦に従事していた再生改造人間軍団のみなさんがもれなく殉職したし、その後東京がカラカラになったという話も聞かないので「頓挫したんだろうな。」みたいなふわっとしたエンディングになっているのが、いくらなんでもどんなもんなのか……
 これが、30分弱の枠ということで時間が短すぎたからこうなってしまったのか。でも問題は、脚本を担当したのがあの伊上勝先生だってことなんですよね。当然、仮面ライダーシリーズの第一功労者であるわけなんですが、92分もあった映画『恐竜・怪鳥の伝説』(1977年)のとっちらかりようを思い出すだに、単に時間だけの問題ともいえない気もするような……そもそも、あれ伊上さんの脚本じゃないらしいんですけどね。

 ここは非常に難しい問題なのですが、本作に限らず、作品全体に「もうホラ、ここらへんは雰囲気で。」とか、「いちいち言わなくても、わかるよね?」みたいな空気が蔓延しているのって、やっぱり作り手の驕りなんじゃないかと思うんですよね。いかにも初心者お断り、わかる人だけついてこい!って感じで。
 それだけ、多くの観客にそのジャンルのルールが浸透しているという恵まれた前提があってこその話なんでしょうが、それは『仮面ライダーX 』じゃなくて、そこにいたるまでの先輩作品の開拓のおかげだもんねぇ。こうなってくると、単体作品の魅力で戦っていないというか、ブームの「まとめ」に入ってきたというか、円熟期を通り過ぎた「まつりのあと」感がにじみ出てきてしまうと思うんだな。それは、他の『マジンガーZ 』だなんだという外的要因に追われてのことではなく、自身の中から自然と発生してきてしまう「終わりの始まり」なのでしょう。プロだとしても、人間、続ければ馴れは生まれますよね。

 よそのウルトラシリーズにしろゴジラシリーズにしろ、非日常なはずのスーパーヒーローや怪獣、宇宙人たちが毎回毎週出てきて当たり前、となった時からどう勝負していくか。ここが作り手の本当の修羅場であり、腕の見せ所でもあるんでしょうねぇ。
 当然、『仮面ライダーX 』も恐ろしいぐらいのプレッシャーの大きさに耐えながら、多くの新機軸への挑戦に彩られた作品であるわけです。特に本作でも堪能できる、主演の速水亮さんのスピーディなアクションとドスのきいた声の迫力はすばらしい! 前作の宮内洋さんのハデさの陰に隠れがちですが、やっぱり危険なシーンを変身してない本人がこなせるのって、カッコいいですよね。
 また変身した後も、特にクライマックスの奇岩城基地での五人ライダーと再生改造人間軍団との殺陣は、『仮面ライダー』時代から格段のレベルアップをとげていると思います。 Xライダーは棒術も当然すごいんですが、足技もまた華麗なんだよなぁ。日々研鑚のたまものよね!
 悪の組織のほうの挑戦もキングダークだけにとどまらず、まず「外国の神さま」を悪の側にしたてているというのが、色々問題はあるにしてもものすごいことです。アポロガイストなんか、正義のヒーローでもいいようなビジュアルだし。どストレートに組織の名前が「 GOD機関」というのも、いかにも石ノ森章太郎先生ごのみなアイロニーにあふれていて最高ですよ! 改造人間たちのデザインも、もうこれでもかってくらいに左右非対称で不気味! 本作の目玉のコウモリフランケンも、左の口角が下がっている絶妙に左右非対称な顔面の造形がすばらしいです。つぎはぎだらけの青白くふやけた肉体も気持ち悪~!
 ちょっと、子どもにとっつきにくい怖さがあるというデメリットも大きいんですが、本作でも跳梁跋扈する神話改造人間のみなさんは、な~んか記憶に残るインパクトに満ちています。ユリシーズこわい~! よく見るとアクターさんの生の目が奥に見えるという、シリーズ伝統の「こわっ。」イズムが生きていますね。

 最終的に『仮面ライダーX 』の挑戦が成功したかどうかは判断が難しいところですが、まさに「冒険者に失敗など存在しないッ!!」ということで、その果敢なチャレンジ魂は、その後に生きる私たちにとって、絶対に忘れてはいけない先人の教訓となるのではないでしょうか。まぁいいんだ、なんてったってシリーズは半世紀も続いてくんだから! セーフセーフ!!

 とにもかくにも、今回もまた、本編には観るべきポイントや「?」な笑いどころがたくさんあるのですが、今回も今回とて、だいぶ字数がかさんできてしまいましたので、そのごくごく一部を、かいつまんでのメモにとどめておきたいと思います。ホント、本作も超濃厚な30分弱ですよ!


・オープニングののっけからの五人ライダー集結は威勢が良いのだが、ロケ地の天気が悪い……そして、ライダーマンがなんか変! 中身が山口暁さんだったら最高だったのだが……ザボーガーで忙しいんじゃ、しょうがない!
・開始して3分00秒後に再生改造人間(ジンギスカンコンドルとガマゴエモン)が登場、3分30秒後に Xライダーに変身。展開がかなり早い!
・「地下から声が聞こえる」って言って様子を見に外に出るマサルくんが、2階の外階段から降りてくるのって、おかしくない? 単に駐車ガレージに人がいるだけなんじゃ……
・開始7分25秒後にさっそく仮面ライダー1号が登場! 声がちゃんと本郷猛なのが、頼もしい!
・仮面ライダー2号の本気めの「2号ライダーキック」をくらっても余裕で撤退するユリシーズ。新旧改造人間のシビアな性能差がわかる珍しいシーン。
・ネプチューン「見たな小僧……お前の命はもらった。」いや、何も見てねぇよ! 言いがかりも甚だしい。海の神が濁った用水路から出てくんな!
・トランポリン撮影の背景がぜんぶ灰色のホリゾントなのが、どうしようもなくテンションの上昇を阻害する。
・生まれた瞬間に上司(キングダーク)にたてつくコウモリフランケン。とりあえずイキればいいと思って……これが若さか!
・喫茶店に紳士的に入ったのに、店長の藤兵衛にフォークで右目をえぐられるキャッティウスの悲哀。やってらんねぇ~!
・人類の存亡をかけた闘いよりも、自分の喫茶店の内装にキズがつくかつかないかを気にする藤兵衛。歴戦をかいくぐってきた男の余裕!
・コウモリフランケンの空撮ふう爆破アクションが、けっこう新鮮。
・Xライダーの「クルーザーアタック」を受けても平気なコウモリフランケンだが、「大丈夫か?」と心配して駆け寄ってくる再生改造人間喫茶店チームの気遣いがあたたかい。「うるさい!」じゃないだろう……
・開始してちょうど折り返しの15分00秒で五人ライダーが勢ぞろい。それに対する藤兵衛の笑顔が実にいい。あと、やけにかっぷくのいい「43」シャツのおさげの娘さん(セリフ無し)も、なんかおもしろい。
・忘れている人に「東京カラカラ作戦」の存在をわざわざ思い出させた上で拉致するという鳥人イカルスの行動の意味不明さが、人間体の容姿もあいまって最高に気持ち悪い。これで邪魔なマサルくんを殺していたら、ジョーカー並みにいい感じのキャラクターなんだが……そんなこと仮面ライダーシリーズで許されるわけないんだよなぁ。
・黒マントをはおって女性の血を飲むコウモリフランケンのキャラクターの不安定さ。それフランケンじゃないよ~!! まぁ「コウモリドラキュラ」じゃなんのひねりもないからなぁ。ところで、「美女」の血じゃないんですね……制作スタッフさん、『 V3』で小野ひずるさんを起用した目はどこに落とした?
・GOD のスパイコウモリを追って住宅街をバイクで駆け抜ける五人ライダー……の後ろに、車両規制をかけている制作スタッフが思いっきり見切れているのがキビしい。隠れろ!! あと、車止め切れてないよ!
・Xライダーのクルーザーの右プロペラしか回ってないのが、なんとも言えない哀愁をさそう。撮影お疲れさまです!!
・今回の再生改造人間軍団の名乗りシーンは、19分35秒後! 神話改造人間10体の名乗りの時点ですでにジンギスカンコンドル、ガマゴエモン、キャッティウス、メドウサが Xライダーと対峙しているので、コウモリフランケンと合わせてその場には15体が出撃しているという陣容。
・ネプチューンの名乗りだけ、両手を前に「ドーン!」と出すしぐさが TVショッピングの司会者みたいでちょっとおもしろい。
・通常の撮影シーンではきれいなのだが、トランポリン撮影のカットだけ、Xライダーのおしりと両ひざが土で汚れている……ちゃんと洗濯してね!
・再生改造人間軍団の中でも、比較的新型(悪の偉人系)のジンギスカンコンドルとガマゴエモンが真っ先に殉職するのはどうなんだろう。他の旧型神話改造人間のみなさんの士気が心配!
・ライダー4人連続の「過去映像使いまわし」変身はちょっと……1号ベルトの風車が回る時の効果音も、オリジナル版じゃなく、なんだかメルヘン少女みたいな「しゃらららら~ん♡」になってるし……おかしいと思わんか!? でも、『仮面ライダーV3対デストロン怪人』での錦晴殿を背景にした志郎の変身の掛け声が撮り直されて「ブイスリャー!」になってるのは、うれしい。
・大乱戦シーンで子門真人の『レッツゴー!!ライダーキック』が流れるのはファンとしてはうれしいのだが、Xライダーとしてはどうなんだろうか……ショッカーせまってねぇし! GODだし!! あと、V3の主題歌『戦え!仮面ライダーV3』が水木一郎バージョンになっているのが、なんと言いますか……宮内さんじゃ、ダメ?
・ヒロインのエツ子さんの、ミニスカートの生足に刺さっている採血用チューブがエロい。
・最後に五人ライダーと手を組む時の、藤兵衛の腕がほれぼれする程ごつい。これこそ、昭和の男の腕だ!!
・エンディングテーマの、子門真人の『かえってくるライダー』は確かに名曲なのだが……Xライダーの存在感が……
・それぞれの愛機を駆りいずこへともなく去っていく五人ライダーと、岡本太郎デザインの飛行船(なぜ!?)から実に感慨深げな表情で見送る藤兵衛の対比が見事なエンディング映像なのだが、どことなく寂しい雰囲気でもある。まさか、仮面ライダーシリーズのオリジナル映画作品が6年おあずけになることを予見しているはずもないだろうが……


 ね、見どころはいっぱいあるでしょ? 個人的には、ほんとにそうする必然なんかどこにもないも無いのに、エツ子さんとマサルくん姉弟を怖がらせるためだけに人間体になって近づく鳥人イカルスのくだりが最高に好きです。あれ、GOD機関からは単に「エツ子をさらって来い」って言われてるだけですよね? そこをふくらませて、あそこまで気持ち悪い挙動に走るとは……その、マサルくんを始末しなかったという詰めの甘さが本作最大のミスとなっているだけに(まさしく『仮面ライダー対じごく大使』での再生ザンジオーの役割!)、非常においしいキャラになっていました。

 続けて、本作での改造人間のみなさんの努力の軌跡も、どうぞ。


登場した19体中、本作で実際に仮面ライダーたちと戦闘した改造人間は……(殉職 or 画面フェイドアウト順に)
開始から6分35秒後 …… マッハアキレス、Xライダーに普通に殴られ殉職
開始から20分00秒後、奇岩城基地での最終決戦のスタートから
25秒後(1分55秒後)…… ジンギスカンコンドルとガマゴエモン、Xライダーの名前は言わないけど必殺技っぽい同時2点キックで殉職
2分12秒後 …… アルセイデス、Xライダーに奇岩城基地の空中通路から普通に地上に投げ飛ばされ殉職
2分37秒後(4分07秒後)…… キャッティウス、1号に奇岩城の外壁から普通に地上に投げ飛ばされ殉職(ネコのくせに!)
※ジンギスカンコンドルとガマゴエモンとキャッティウスは他の再生改造人間軍団の名乗りシーンの1分30秒前から、奇岩城にたどり着いた Xライダーを包囲してロープで縛りあげているため、()内の時間が正確な戦闘時間である。
3分38秒後 …… 鉄腕アトラス、1号に普通に投げ飛ばされ殉職
3分45秒後 …… 死神クロノス、ライダーマンに普通に投げ飛ばされ殉職
3分55秒後 …… ヘラクレス、V3に普通に投げ飛ばされ殉職
4分02秒後 …… 火焔プロメテス、Xライダーにライドルスティックで普通に投げ飛ばされ殉職
4分13秒後 …… ヒュドラー、2号に普通に投げ飛ばされ殉職
4分15秒後 …… ケルベロス、1号に普通に蹴り飛ばされ殉職
4分22秒後 …… ネプチューン、V3に普通に投げ飛ばされ殉職
同     …… キクロプス、ライダーマンに普通に投げ飛ばされ殉職
4分33秒後 …… パニック、2号に普通に投げ飛ばされ殉職
4分35秒後 …… キマイラ、鳥人イカルス、ユリシーズ、誰に投げ飛ばされたのか不明だがとにかく殉職
※キマイラは奇岩城の名乗りシーンでもお台場の並びカットでもいなかったのだが、なぜか殉職する瞬間だけ出てくる。遅れて到着したのか?
※ユリシーズもお台場の並びカットにはいなかったが、なぜか殉職する瞬間だけ出てくる。間に合ってよかったね。
4分40秒後(6分10秒後)…… メドウサ、Xライダーに普通にライドルスティックでぶん殴られ殉職
※メドウサは、他の再生改造人間軍団の名乗りシーンの1分30秒前から、奇岩城にたどり着いた Xライダーを包囲してロープで縛りあげているため、()内の時間が正確な戦闘時間である。コウモリフランケンよりも長く闘ってるよ! お疲れさまでした!!
6分08秒後 …… コウモリフランケン、1号の「ライダーキック」で右の翼をもがれ、2号の「2号ライダーキック」で左の翼をもがれ、5人ライダー連携の必殺技「 Xライダースーパーファイブキック」により殉職


 ちょっと殴られたくらいで画面から消えていくマッハアキレスの扱いが雑すぎて涙が出てくるのですが、仮面ライダー的文法で言えば、あれは殉職したっていう解釈でいいんじゃなかろうかと。同じ場所にいたキマイラは、最後の最後で出てくるのにねぇ。遺体で。

 結局本作は、新型のコウモリフランケンの魅力が埋もれちゃってるのがけっこう痛いんだよなぁ。
 まず、目新しい要素が少ないというがツラいですね。「女性の生き血がエネルギー源」の設定からして、ショッカーの元祖最強改造人間ゲバコンドルがオーバーラップするんですが、初戦で仮面ライダー1号にしっかり圧勝しているゲバコンドルに対して、コウモリは Xライダーを圧倒できないままクルーザーアタックを受けて撤退してますから。死なないだけマシといえばそうなんですが、その強さがあんまりピンとこないんですよね。口でいくら最強だ最強だとのたまっていても、勝てなきゃねぇ。クライマックスでの、奇岩城基地を放棄してお台場の草原に戦場を移した判断も逃走にしか見えないし、五人ライダーからも一方的にいたぶられているようにしか見えないしで……これは五人ライダーを相手にして優勢に持っていけという方が無理な話なわけなんですが、やっぱり、特別強そうには見えないんだよなぁ。最後も翼をもがれて無様だったし。
 人間、改造されてもデカい口は叩くなという教訓ですな。実るほど こうべを垂れる 稲穂かな!!


 今回取り上げた映画『五人ライダー対キングダーク』は、決してあるシリーズの最終作として作られたものではなく、本編シリーズも『仮面ライダーX 』から『アマゾン』、『ストロンガー』へと続いていきます。そうではあるのですが、オリジナル映画作品としてはいったんの区切りとなった本作は、そうなっただけの「理由」を随所ににおわせた、実に味わい深い作品になっているのでした。これを「つまんない」の一言で片づけるのは、いかにももったいない! そこから何が学ばれ、どんな打開策が生まれていったのかを後続作品の中に探すのも、ひとつの楽しみなのではないでしょうか。ただ、個人的に私は「昭和仮面ライダー第2期」にうといところもあるので、昭和ライダーに関するあれやこれやをつづるのは、ここでひとまずおしまいにしたいと思います。

 さぁ、いよいよ今年は庵野秀明監督による『シン・仮面ライダー』の公開年でもあります! やたらとくすんだ緑のライダー、うなじで後ろ髪がなびいているライダー、そして、日本を代表する名優・池松壮亮のライダー!! 楽しみですね~。
 ちらっと出てくるシン・蜘蛛男のお姿から見て、ショッカーの改造人間側のデザインがだいぶ『仮面ライダー THE FIRST』よりになっているのがちと心配なのですが、ぜひとも、この令和の御代に悪の秘密結社の威厳と恐怖を蘇らせていただきたいと思います! くれぐれも、デジタル出演とか関智一さんのモノマネとか、「イカでビール」とかは、やめてね!!
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仮面ライダー極私的改造人間メモ ~『仮面ライダーストロンガー』から『仮面ライダーJ』まで~

2022年01月23日 15時59分59秒 | 特撮あたり
※本記事は、私そうだいが完全に自分のために作った、「仮面ライダー」シリーズに登場する改造人間に関するメモです。
※クモ、コウモリといったモチーフ生物が既出の後続改造人間は記述を簡略化しています。まぁだいたい、最初に出たバージョンが最高ですよね。
※改造人間名の後にカッコ書きで記してある「+〇」の数字は、勝手に想像した改造人間の強さです。
※話数の頭に「×」とついているのは、失礼ながら「あんまりおもしろくは、ないかな……」と思ってしまったエピソードです。判断するにあたり、勝手に私が敬愛してやまない特撮系レビューブログ『美女・特撮・ドラマ』(zura1980さま)における珠玉の記事群を参考にさせていただきました。最近、下ネタがきつめになってきましたね。

『仮面ライダーストロンガー』
〇ブラックサタン編
第1話(1975年4月)『おれは電気人間ストロンガー!!』
 ・奇械人ガンガル ・ブラックサタン戦闘員
第2話       ……奇械人オオカミン(1971年12月 黄金狼男+5)
第3話       ……サソリ奇械人(1971年4月 さそり男)
×第4話       ……奇械人ゴロンガメ(1972年3月 カメストーン+1)
×第5話(1975年5月)『ブラックサタンの学校給食!?』
 ・奇械人トラフグン ・ブラックサタン戦闘員
第6話       ……クラゲ奇械人(1971年10月 クラゲダール)
第7話       ……奇械人ワニーダ(1974年12月 ワニ獣人)
×第8話『溶けるなライダー!とどめの電キック!!』
 ・奇械人モウセンゴケ ・ブラックサタン戦闘員
第9話       ……カマキリ奇械人(1971年5月 かまきり男)
第10話(1975年6月)『恐怖のガンマー虫!人間を狙う!!』
 ・奇械人ハゲタカン ・ブラックサタン戦闘員
第11話       ……奇械人カメレオーン(1971年5月 死神カメレオン+1)
×第12話      ……クモ奇械人(1971年4月 蜘蛛男)
第13話      ……奇械人エレキイカ(1972年7月 イカデビル+8)
第14話(1975年7月)『謎の大幹部シャドウの出現!』
 ・奇械人メカゴリラ ・ブラックサタン戦闘員
×第15話      ……クワガタ奇械人(1973年8月 ワナゲクワガタ+3)
×第16話      ……奇械人ブブンガー(1972年8月 モスキラス+1)
第17話      ……コウモリ奇械人(1971年4月 蝙蝠男)
第18話(1975年8月)……奇械人電気エイ(1971年12月 エイキング+1)
×第19話      ……奇械人毒ガマ(1971年11月 ガマギラー)
第20話      ……奇械人アリジゴク(1971年9月 地獄サンダー)
×第21話      ……サメ奇械人(1972年7月 ギリザメス+1)
第22・23話    ……奇械人ケムンガ、奇械人ドクガラン(1971年8月 ドクガンダー+1)
×第24話(1975年9月)……奇械人ハサミガニ(1971年8月 カニバブラー)
×第25話      ……奇械人アルマジロン(1971年11月 アルマジロング+1)
第26話『見た!!大首領の正体!!』
 ・大幹部デッドライオン(+2) ・ブラックサタン戦闘員 ・ブラックサタン首領

〇デルザー軍団編
第27・28話(1975年10月)……荒ワシ師団長(1972年11月 ワシカマギリ+1)
第29話         ……鋼鉄参謀
第30話         ……ドクターケイト
第31話(1975年11月)  ……ドクロ少佐
×第32話         ……岩石男爵
×第33話         ……狼長官(1971年12月 黄金狼男+5)
×第34話         ……隊長ブランク
第35話         ……ヘビ女(1971年5月 コブラ男+1)
第36~39話(1975年12月)……ヨロイ騎士、磁石団長、マシーン大元帥、岩石大首領

『スカイライダー』
〇ゼネラルモンスター編
第1話(1979年10月)……ガメレオジン(1971年5月 死神カメレオン+1)
第2話       ……クモンジン(1971年4月 蜘蛛男)
第3話       ……コウモルジン(1971年4月 蝙蝠男)
第4話       ……サソランジン(1971年4月 さそり男)
第5話(1979年11月)……ドクバチジン(1971年5月 蜂女)
第6話       ……キノコジン(1971年9月 キノコモルグ+1)
第7話       ……カマギリジン(1971年5月 かまきり男)
第8話       ……ムカデンジン(1971年10月 ムカデラス+3)
第9話       ……コブランジン(1971年5月 コブラ男+1)
第10話(1979年12月)……カニンガージン(1971年8月 カニバブラー)
第11話       ……サンショウジン(1972年3月 ザンジオー+6)
第12話       ……ナメクジン(1972年2月 ナメクジラ+1)
第13話       ……アリジゴクジン(1971年9月 地獄サンダー)
第14話(1980年1月)……ハエジゴクジン(1973年1月 ハエトリバチ+2)
第15話       ……アオカビジン(1972年1月 カビビンガ)
第16・17話     ……ゴキブリジン(1972年4月 ゴキブリ男)、ヤモリジン(1971年6月 ヤモゲラス)

〇魔神提督編
第18話(1980年2月)……シビレイジン(1971年12月 エイキング+1)
第19話       ……オオカミジン(1971年12月 黄金狼男+5)
第20・21話     ……サイダンプ(1972年6月 サイギャング+1)、クラゲロン(1971年10月 クラゲダール)
第22話       ……コゴエンスキー(1972年1月 スノーマン+1)
第23話(1980年3月)……ムササベーダー兄弟(1971年9月 ムササビードル)
第24話       ……マダラカジン(1972年8月 モスキラス+1)
映画『8人ライダー VS 銀河王』……サドンダス(1972年1月 プラノドン)、ジャガーバン(1972年4月 ジャガーマン)、アルマジーグ(1971年11月 アルマジロング+1)、改造人間二世部隊、銀河王
第25話       ……ゾウガメロン(1972年3月 カメストーン+1)
第26話       ……ドクガンバ(1971年8月 ドクガンダー+1)
第27(1980年4月)『戦車と怪人二世部隊!8人ライダー勢ぞろい』・28話『8人ライダー 友情の大特訓』
 ・グランバザーミー(+10) ・ヒルビラン(1972年2月 ヒルゲリラ)、改造人間二世部隊
第29話       ……ヒカラビーノ(1971年12月 エジプタス)
第30話『夢を食べる?アマゾンから来た不思議な少年』
 ・オオバクロン
第31話(1980年5月)『走れXライダー!筑波洋よ死ぬな!!』・32話『ありがとう神敬介!とどめは俺にまかせろ!!』
 ・黄金ジャガー(+3)、トリカブトロン(1971年12月 トリカブト+4)
第33話       ……ドブネズゴン(1973年6月 スプレーネズミ+3)
第34話『危うしスカイライダー!やって来たぞ風見志郎!!』・35話『風見先輩!タコギャングはオレがやる!!』
 ・タコギャング(+2) ・マントコング(1975年7月 奇械人メカゴリラ)
第36話『急げ一文字隼人!樹にされる人々を救え!!』(1980年6月)・37話『百鬼村の怪!洋も樹にされるのか?』
 ・キギンガー(+2) ・ドラゴンキング(+2)
第38話       ……ガマギラス(1971年11月 ガマギラー)
第39話『助けて!2人のライダー!!母ちゃんが鬼になる』、40話『追え隼人!カッパの皿が空をとぶ』(1980年7月)
 ・オカッパ法師(+2) ・ウニデーモン(1972年9月 ウニドグマ)
第41話       ……クチユウレイ(1972年7月 ギリザメス+1)
第42話『怪談シリーズ ゾンビー!お化けが生きかえる』
 ・ゾンビーダ ・ゾンビ
第43話『怪談シリーズ 耳なし芳一 99の耳』
 ・ミミンガー
第44話(1980年8月)……ドロニャンゴー(1972年12月 ネコヤモリ+1)
第45・46・47話  ……アブンガー(1972年8月 アブゴメス+1)、ヘビンガー(1971年5月 コブラ男+1)、カガミトカゲ(1971年6月 トカゲロン+3)
第48話『4人のスカイライダー 本物はだれだ?』
 ・ドロリンゴ(+1)
第49話(1980年9月)……ザンヨウジュー(1971年10月 ザンブロンゾ)
第50話『君もアリコマンド少年隊に入隊せよ!?』
 ・タガメラス
第51話       ……リングベア(1972年2月 ベアーコンガー+1)
第52・53・54話   ……魔神提督、ネオショッカー首領

『仮面ライダースーパー1』
〇ドグマ編
第1・2話(1980年10月)……ファイヤーコング(1975年7月 奇械人メカゴリラ)
第3話         ……エレキバス(1980年5月 タコギャング+2)
第4話(1980年11月) ……カマギリガン(1971年5月 かまきり男)
第5話        ……カメレキング(1971年5月 死神カメレオン+1)
第6話        ……スパイダーババン(1971年4月 蜘蛛男)
第7話        ……アリギサンダー(1971年11月 アリキメデス)
第8話(1980年12月) ……スネークコブラン(1971年5月 コブラ男+1)
第9話        ……ガニガンニー(1971年8月 カニバブラー)
第10話       ……バクロンガー(1980年4月 オオバクロン)
第11話       ……ジョーズワニ一世、二世(1974年12月 ワニ獣人)
第12話『強敵あらわる!赤心少林拳敗れたり』、13話『見つけたり!必殺梅花の技』(1981年1月)
 ・ライギョン ・ギョストマ(+2)
第14話       ……ムカデリヤ(1971年10月 ムカデラス+3)
第15話       ……ライオンサンダー(1972年11月 クモライオン+1)
第16話『助けて!一ツ目怪人が襲ってくるよ』(1981年2月)
 ・オニメンゴ
第17話       ……ロンリーウルフ(1971年12月 黄金狼男+5)
第18話       ……ヤッタラダマス(1980年6月 ドラゴンキング+2)
第19話       ……カセットゴウモル(1971年4月 蝙蝠男)
第20話(1981年3月)……ツタデンマ(1971年4月 サラセニアン)
第21話       ……バチンガル(1971年5月 蜂女)
第22話       ……死神バッファロー(1973年7月 タイホウバッファロー+5)
第23話       ……カイザーグロウ(1972年3月 ギルガラス+1)

〇ジンドグマ編
第24~48話(1981年4~9月)……生物モチーフの改造人間ではないためカット!

『仮面ライダーZX 10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』(1982年7月~84年1月展開)
 ・サザンクロス(+8) ・バダン帝国総統 ・クモロイド(1971年4月 蜘蛛男) ・ドクガロイド(1971年8月 ドクガンダー+1) ・カメレオロイド(1971年5月 死神カメレオン+1) ・ジゴクロイド(1971年9月 地獄サンダー) ・トカゲロイド(1971年6月 トカゲロン+3) ・カマキロイド(1971年5月 かまきり男) ・タカロイド(1972年11月 ワシカマギリ+1) ・アメンバロイド(+1) ・バラロイド(1972年9月 バラランガ) ・ヤマアラシロイド(1974年11月 獣人ヤマアラシ+1) ・タイガーロイド(1972年12月 ムカデタイガー+1)

『仮面ライダーBLACK』
第1話(1987年10月) ……クモ怪人(1971年4月 蜘蛛男)
第2話        ……ヒョウ怪人(1972年4月 ジャガーマン)
第3話        ……クワゴ怪人(1971年8月 ドクガンダー+1)
第4話『悪魔の実験室』
 ・ノミ怪人 ・コウモリ怪人(1971年4月 蝙蝠男)
第5話『迷路を走る光太郎』(1987年11月)
 ・ヤギ怪人
×第6話        ……オオワシ怪人(1972年11月 ワシカマギリ+1)
×第7話        ……サイ怪人(1972年6月 サイギャング+1)
×第8話        ……セミ怪人(1972年6月 セミミンガ+1)
×第9話        ……ハチ怪人(1971年5月 蜂女)
第10話(1987年12月)……トカゲ怪人(1971年6月 トカゲロン+3)
第11話       ……サボテン怪人(1971年7月 サボテグロン+1)
第12話       ……カミキリ怪人(1972年7月 カミキリキッド+7)
第13話       ……カニ怪人(1971年8月 カニバブラー)
第14話(1988年1月)……マンモス怪人(1973年10月 吸血マンモス+4)
第15話       ……イワガメ怪人(1972年3月 カメストーン+1)
第16話       ……ハサミムシ怪人(1980年4月 グランバザーミー+10)
第17話       ……バク怪人(1980年4月 オオバクロン)
第18話(1988年2月)……クロネコ怪人(1972年12月 ネコヤモリ+1)
第19話『息づまる地獄の罠』
 ・オニザル怪人
第20話『ライダーの墓場』
 ・アネモネ怪人
第21話『激突!二大マシン』
 ・タマムシ怪人
第22話(1988年3月)……ツルギバチ怪人(1971年5月 蜂女)
映画『鬼ヶ島へ急行せよ』……カメレオン怪人(1971年5月 死神カメレオン+1)
第23話『マルモの魔法の力』
 ・アンモナイト怪人
第24話       ……シーラカンス怪人(1974年1月 シーラカンスキッド+3)
第25話       ……カマキリ怪人(1971年5月 かまきり男)
第26話(1988年4月)……バッファロー怪人(1973年7月 タイホウバッファロー+5)
第27話『火を噴く危険道路』
 ・イラガ怪人(+1)
第28話『地獄へ誘う黄金虫』
 ・コガネムシ怪人(+1)
第29話(1988年5月)……アルマジロ怪人(1971年11月 アルマジロング+1)
×第30話      ……イカ怪人(1972年7月 イカデビル+8)
第31話      ……ヤマアラシ怪人(1974年11月 獣人ヤマアラシ+1)
第32話      ……キノコ怪人(1971年9月 キノコモルグ+1)
第33話『父と子の愛の河』
 ・ベニザケ怪人
第34・35・36話(1988年6月)……怪人なし
第37話『想い出は夕張の空』
 ・ケラ怪人(+1)
第38話(1988年7月)……ネズミ怪人(1973年6月 スプレーネズミ+3)
映画『恐怖!悪魔峠の怪人館』……ツノザメ怪人(1972年7月 ギリザメス+1)
×第39話      ……ムカデ怪人(1971年10月 ムカデラス+3)
×第40話      ……サンショウウオ怪人(1972年3月 ザンジオー+6)
第41話      ……コブラ怪人(1971年5月 コブラ男+1)
第42話      ……ハエ怪人(1972年1月 ハエ男)
第43話(1988年8月)……クワガタ怪人(1973年8月 ワナゲクワガタ+3)
第44・45話    ……大神官ビシュム(1972年1月 プラノドン)
第46話『壮絶 バラオムの死』
 ・クジラ怪人(+1) ・コウモリ怪人(1971年4月 蝙蝠男) ・大神官バラオム(1973年10月 原始タイガー+3)
第47・48・49話(1988年9月)……大神官ダロム(1971年10月 ザンブロンゾ)
第50話『創世王の正体は?』・51話『ゴルゴム最期の日』(1988年10月)
 ・トゲウオ怪人(+2) ・創世王

『仮面ノリダー』(1988年3月~97年3月 一部不定期放送)
〇ジョッカー編
第1話『恐怖ラッコ男』(1988年3月)
 ・ラッコ男(+1) ・ジョッカー戦闘員 ・ジョッカー将軍
第2話『恐怖カルガモ男』(1988年10月)
 ・カルガモ男 ・ジョッカー戦闘員 ・ファンファン大佐
第3話『恐怖コアラ男』
 ・コアラ男 ・ジョッカー戦闘員
第4話『恐怖チョコ玉男』
 ・チョコボール男 ・ジョッカー戦闘員
第5話『恐怖プードル男』(1988年11月)
 ・プードル男 ・ジョッカー戦闘員
第6話『恐怖レンタルビデオ男』
 ・レンタルビデオ男 ・ジョッカー戦闘員
第7話『恐怖うさぎ男』
 ・うさぎ男 ・ジョッカー戦闘員
第8話       ……カンガルー男(1975年4月 奇械人ガンガル)
第9話(1988年12月)……象男(1980年7月 ミミンガー)
第10話『恐怖うす男』
 ・うす男 ・ジョッカー戦闘員
第11話『恐怖オランウータン男』
 ・オランウータン男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第12話『恐怖トナカイ男』
 ・トナカイ男 ・ジョッカー戦闘員
第13話      ……カニ男(1971年8月 カニバブラー)
第14話(1989年1月)……新巻ジャケ男(1988年5月 ベニザケ怪人)
第15話『恐怖ホルスタイン男』
 ・ホルスタイン男 ・ジョッカー戦闘員
第16話『恐怖大仏男』(1989年2月)
 ・大仏男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第17話『恐怖うま男』
 ・うま女 ・ジョッカー戦闘員
第18話『恐怖雪ダルマ男』
 ・雪ダルマ男 ・ジョッカー戦闘員
第19話      ……月の輪ぐま男(1972年2月 ベアーコンガー+1)
第20話『恐怖おひな様男』(1989年3月)
 ・おひな様男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第21話『恐怖ペンギン男』
 ・ペンギン男 ・ジョッカー戦闘員
第22話『恐怖ヒヨコ男』
 ・ヒヨコ男(ニワトリ男 +1) ・ジョッカー戦闘員
第23話『恐怖すっぽん男』
 ・すっぽん男 ・ジョッカー戦闘員
第24話『恐怖ピザ男 タケシ労働の喜びを知るの巻』(1989年4月)
 ・ピザ男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第25話『恐怖留守番電話男 よみがえるメッセージの巻』
 ・留守番電話男 ・ジョッカー戦闘員
第26話『恐怖スチームアイロン男 ノリダー怒りの鉄拳の巻』
 ・スチームアイロン男(+2) ・ジョッカー戦闘員
第27話『恐怖こいのぼり男 マリナの恋敵現れるの巻』(1989年5月)
 ・こいのぼり男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第28話『恐怖カーネーション男 マリナお母さんになるの巻』
 ・カーネーション男(+2) ・ジョッカー戦闘員
第29話『恐怖ハブ男 長いものにはまかれろの巻』
 ・ハブ男 ・ジョッカー戦闘員
第30話      ……サメ男(1972年7月 ギリザメス+1)
第31話(1989年6月)……ハリネズミ男(1972年6月 ハリネズラス+1)
第32話『恐怖カミナリ男 イナズマと共にやってきた男の巻』
 ・カミナリ男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第33話『恐怖カメラ男 甘ずっぱ〜い初恋の罠の巻』
 ・カメラ男 ・ジョッカー戦闘員
第34話      ……おたまじゃくし男(1971年11月 ガマギラー)
第35話『恐怖アサガオ男』
 ・アサガオ男 ・ジョッカー戦闘員
第36話『恐怖七夕男 ジョッカーの恋の巻』(1989年7月)
 ・七夕男 ・ジョッカー戦闘員
第37話『恐怖花火男 ひとときの命の巻』
 ・花火男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第38話『恐怖コウノトリ男 大変!!ノリダーが死んじゃうよの巻』
 ・コウノトリ男 ・ジョッカー戦闘員
第39話『恐怖蚊取り線香男 めざせ!!完全燃焼の巻』
 ・蚊取り線香男 ・ジョッカー戦闘員
第40話『恐怖シャワー男 プールサイドは走らないでねの巻』(1989年8月)
 ・シャワー男 ・ジョッカー戦闘員
第41話『恐怖北海道男 彼女がぬいぐるみにきがえたら 北海道に連れてっての巻』
 ・北海道男(+2) ・ジョッカー戦闘員
第42話『恐怖キタキツネ男 北の国から '89決闘…の巻』
 ・キタキツネ男 ・ジョッカー戦闘員
第43話『恐怖トーア・カマタ男 地獄のマイク・パフォーマンスの巻』
 ・トーア・カマタ男 ・ジョッカー戦闘員
第44話『恐怖デューティーフリー男 私恨んでますの巻』
 ・デューティーフリー女(+1) ・ジョッカー戦闘員
第45話『恐怖プラネタリウム男 星に願いを込めての巻』(1989年9月)
 ・プラネタリウム男 ・ジョッカー戦闘員
第46話『恐怖台風の目男 嵐を呼ぶ男の巻』
 ・台風の目男 ・ジョッカー戦闘員
第47話『恐怖帝都大戦男 東京大破壊計画の巻』
 ・帝都大戦男 ・ジョッカー戦闘員
第48話『恐怖ユーミン男 悪はユーミンにのっての巻』
 ・ユーミン男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第49話『恐怖ゴルフ男 ファーちみつレモンの巻』(1989年10月)
 ・ゴルフ男 ・ジョッカー戦闘員
第50話『恐怖プロ野球男 地獄の一球入魂の巻』
 ・プロ野球男 ・ジョッカー戦闘員
第51話『恐怖カップラーメン男 悲しくも美しい親子愛の巻』(1989年11月)
 ・カップラーメン男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第52話『恐怖バレーボール女 世界へソーレッ 若さでアタックの巻』
 ・バレーボール女 ・ジョッカー戦闘員
第53話『恐怖マラドーナ男 振り向くな君は美しいの巻』
 ・マラドーナ男 ・ジョッカー戦闘員
第54・55話『恐怖ボウリング女 美しきチャレンジャーの巻』
 ・ボウリング女(+1) ・ジョッカー戦闘員
第56話『恐怖寒中水泳大会男 いいぞ!いいぞ!ノリダー! わ〜〜ッパフパフ!!の巻』(1989年12月)
 ・寒中水泳男 ・ジョッカー戦闘員
第57・58話『ヒゲゴジラ VS 仮面ノリダー』
 ・ヒゲゴジラ男(+1)
第59話『恐怖マイケル・チャン男 コートに賭ける青春の巻』、60話『血戦!有明コロシアムの巻』(1990年1月)
 ・マイケル・チャン男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第61・62話『恐怖アイスホッケー男 愛は信じあうことの巻』
 ・アイスホッケー男(+1) ・ジョッカー戦闘員
第63・64・65話『恐怖大運動会男 立ち上がれノリダー!!アミーゴ大爆発!の巻』(1990年2月)
 ・大運動会男(+2) ・ジョッカー戦闘員
第66・67話(1990年3月)……ミッキーキャット男(1972年12月 ネコヤモリ+1)
第68・69話『恐怖ツバメ男 早すぎた北上 悲しみのツバメ前線の巻』
 ・ツバメ男(+2) ・ジョッカー戦闘員
第70・71話      ……キング・ジョッカー男(1972年11月 ワシカマギリ+1)

〇ゲロジョッカー編
第72話『誕生!仮面ノリダーV2 デモンバズーカ登場』(1990年12月)
 ・モグラドリル(1971年10月 モグラング) ・デモンバズーカ(+1) ・最高司令官猩猩右近 ・バンバンビガロ大佐 ・ジョッカー総帥 ・ゲロジョッカー戦闘員
第73話(1991年1月)……マンモスカッター(1973年10月 吸血マンモス+4)
第74話(1991年2月)……ドクバリコブラ(1971年5月 コブラ男+1)
第75話       ……ゲロコウモリ(1971年4月 蝙蝠男)
第76話(1991年3月)……サンダーキャット(1972年12月 ネコヤモリ+1)
第77話(1991年4月)……スプレーラビット(1988年11月 うさぎ男)
第78話『ま、まさかこんな死に方で セキセイインコ男登場の巻』(1991年5月)
 ・セキセイインコ男 ・ゲロジョッカー戦闘員
第79話『水尾さん爆薬の怨念 変身タヌキ男登場の巻』
 ・タヌキ男 ・ゲロジョッカー戦闘員
第80話(1991年7月)……帝京蜂男(1971年5月 蜂女)

〇復活ジョッカー特別編
第81話『仮面ノリダー IN マウイ キング・ジョッカーの息子 恐怖ヤシの実男 ハワイだマウイだワーイワーイの巻』(1992年7月)
 ・ヤシの実男(+3) ・ピラミッド男(1971年12月 エジプタス) ・ジョッカー戦闘員
第82話(1993年11月)……ゴキブリ男(1972年4月 ゴキブリ男) ・ジョッカー総帥二世 ・ジョッカー戦闘員
第83話(1997年3月)……ラッコ男2号(+3) ・ファンファン大佐 ・ジョッカー戦闘員


『仮面ライダーBLACK RX』(1988年10月~1989年9月)……明確な生物モチーフの改造人間ではないためカット!
『真・仮面ライダー 序章』(1992年2月)……生物モチーフの改造人間ではないためカット!
映画『仮面ライダーZO』(1993年4月)……ドラス(1972年12月 ショッカーライダー+6) ・クモ女(1971年4月 蜘蛛男) ・コウモリ男(1971年4月 蝙蝠男)
映画『仮面ライダーJ』(1994年4月)……コブラ男ガライ(1971年5月 コブラ男+1) ・ハチ女ズー(1971年5月 蜂女) ・トカゲ男アギト(1971年6月 トカゲロン+3)

※1998年の原作者・石ノ森章太郎先生没後の作品は、きりがないのでぜ~んぶカット!!
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