長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

新たなる支配者は、雨の日もよく燃えます ~映画『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』~

2022年08月10日 20時44分37秒 | 特撮あたり
映画『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』(2022年6月アメリカ公開 146分 ユニバーサル映画)

 映画『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者(原題: Jurassic World: Dominion)』は、『ジュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年)の続編で、「ジュラシック・パーク」シリーズ第6作目であり、「ジュラシック・ワールド」3部作の完結編である。アラン=グラント博士役のサム=ニールとエリー=サトラー博士役のローラ=ダーンが21年ぶりにシリーズ作品に出演した。
 アメリカ本国では2021年6月11日の公開予定だったが、新型コロナウイルスの感染流行を受けてスケジュール調整を強いられ、1年後の2022年6月10日に延期された。日本では2022年7月29日公開。

 2018年4月にトレヴォロウ監督は、「ジュラシック・ワールド」3部作の第1作『ジュラシック・ワールド』(2015年)をアクションアドベンチャー、第2作『ジュラシック・ワールド 炎の王国』をホラーサスペンスに分類し、本作がシリーズ第1作『ジュラシック・パーク』(1993年)に原点回帰したサイエンススリラーになると発表した。シリーズの主要人物であるオーウェンとクレアが引き続き中心人物となることと、『炎の王国』で初登場したメイジーも物語の鍵を握る可能性があることも、この時点で公表していた。2019年9月には『ジュラシック・パーク』の登場人物であるアラン=グラント、エリー=サトラー、イアン=マルコムも再登場することが明かされた。
 2021年6月には、トレヴォロウ監督のツイートで羽毛恐竜の登場が明かされ、本作の舞台が前作から4年後の2022年であることも発表された。ジュラシック・パークシリーズは映画の公開年と劇中の時代設定が同一となっており、今作もその流れを踏襲した形となる。

 本作は、前作『ジュラシック・ワールド 炎の王国』の公開以前に本作の構想はすでに持ち上がっており、2020年2月に撮影が開始されたが、新型コロナウイルスの感染流行の影響を受け、翌3月に撮影の中断・延期が発表された。その後はリモートワークによる製作が進行し、7月6日からイギリスのパインウッド・スタジオで撮影が再開された。500万ドルを投じた消毒や検査などの対策の下で撮影が進行していった。


あらすじ
 太平洋・アメリカ大陸中部沖の孤島イスラ・ヌブラル島からアメリカ本土に連れてこられた恐竜たちが人間の社会に解き放たれてから4年の月日が流れた。恐竜たちは繁殖して世界中に生息地を広げ、今や地球は、現旧の地上支配者である「人間」と「恐竜」が混在する新たな世界「ジュラシック・ワールド」と化していた。恐竜たちによる人間社会への被害が問題になる中、恐竜を自分たちの欲望のために利用する人間もいた。そんな中、かつて恐竜のテーマパーク「ジュラシック・パーク」を建造したインジェン社のライバル企業であったバイオシン社が、CEOルイス=ドジスンの指揮の下、アルプス山脈東部のドロミーティ山脈に恐竜の保護施設「バイオシン・サンクチュアリ」を設立した。
 前作の主人公オーウェンとクレアは、恐竜の保護活動をしながら、アメリカ西部シエラネバダ山脈の山中でメイジーと共に暮らしていた。2人はメイジーを実の娘のように育ててきたが、特異な存在である彼女の身の安全を考え、メイジーの行動範囲を厳しく制限していた。14歳になり思春期に入ったメイジーは、そういった行動制限を疎ましく思っており、今の生活を窮屈に感じて自由を求めていた。すぐ近くの森には、オーウェンがかつてジュラシック・ワールドで調教したヴェロキラプトルのブルーと、ブルーの子ベータが棲息していた。
 ある日、オーウェンとクレアに反発して外出したメイジーが、ベータ共々、密猟者のデラコートに拉致されてしまう。デラコートを追跡するオーウェン達は、かつてジュラシック・ワールドで共にラプトルを調教した同僚であり、今は CIA職員となっているバリーの手引きで、地中海マルタ島の恐竜の闇市場に潜入する。そこで、メイジーとベータが闇市場を牛耳る商人ソヨナの手からバイオシン社に引き渡され、バイオシン・サンクチュアリに移送されたことを突き止める。マルタの街中でサントスが放ったアトロキラプトルと激しいチェイスを繰り広げたオーウェンとクレアは、闇市場で知り合った輸送機パイロットのケイラに助けられ、ケイラの操縦する飛行機でバイオシン・サンクチュアリに向かう。

 一方、アメリカ中西部では、大量発生した巨大なイナゴに穀物畑が食い荒らされる被害が多発していた。その調査のため現場を訪れた古植物学者エリー=サトラー博士は、バイオシン社が開発した種の穀物を育てている農場が巨大イナゴの被害を全く受けていないことに気付き、疑念を抱く。このまま巨大イナゴの被害が拡大すれば世界の食料供給が重大な危機に晒されると考えたエリーは、旧知の古生物学者アラン=グラント博士に協力を要請する。アランはイナゴを詳しく調べ、白亜紀の生物の特徴があることに気付き、バイオシン社がイナゴに白亜紀の生物の DNAを組み込んで改良しているという仮説を立てる。2人はそれを確かめるため、かつて共にジュラシック・パーク事件の当事者となり、今はバイオシン社に雇われている数学者イアン=マルコム博士のつてでバイオシン・サンクチュアリに向かう。

 それぞれの目的でバイオシン・サンクチュアリに向かうオーウェンたちとアランたち。その行く手には、バイオシン社が企む巨大な陰謀と、史上最大の肉食恐竜ギガノトサウルスの脅威が待ち受けていた。


おもなキャスティング
オーウェン=グレイディ …… クリス=プラット(43歳)
 本作の主人公。ジュラシック・ワールドの元恐竜監視員。現在はシエラネバダ山脈の山中でクレアやメイジーと暮らしている。近辺に出没した恐竜の保護を行う傍ら、思春期となったメイジーの養育に苦労している。

クレア=ディアリング …… ブライス・ダラス=ハワード(41歳)
 ジュラシック・ワールドの元管理責任者。恐竜保護グループ「 Dinosaur Protection Group(略称:DPG)」のリーダー。
 メイジーの養育とともに DPGの活動も続けるが、絶えない恐竜の密猟・密売を撲滅しようと無茶をすることが多くなり、メンバーのジアやフランクリンからは難色を示されている。

メイジー=ロックウッド …… イザベラ=サーモン(16歳)
 クローン人間。前作で恐竜たちを人間の世界へと開放した張本人。
 思春期に入り、自身のアイデンティティの悩みから、彼女の安全を考え遠出をしないよう釘を刺すオーウェンやクレアとの喧嘩が絶えない。バイオシン社の依頼を受けたデラコート達によってベータ共々拉致される。

アラン=グラント …… サム=ニール(74歳)
 古生物学者。かつてのイスラ・ヌブラル島事件(シリーズ第1作『ジュラシック・パーク』)の当事者の一人で、後にカービー一家に巻き込まれてイスラ・ソルナ島でもサバイバルを経験した(シリーズ第3作『ジュラシック・パーク3』)。
 現在はユタ州で発掘調査を続けていたが、再会したエリーに誘われバイオシン社の陰謀を探る。

エリー=サトラー …… ローラ=ダーン(55歳)
 古植物学者。かつてのイスラ・ヌブラル島事件の当事者の一人。
 シリーズ第3作『ジュラシック・パーク3』に登場した頃(2001年)は外交官僚と結婚し2児を授かっていたが、現在は離婚し子ども達も巣立ったため、再び学者として復帰した。
 全米で問題となっている巨大イナゴ被害が、バイオシン社によって引き起こされたバイオハザードであると勘付き、アランと調査に乗り出す。

イアン=マルコム …… ジェフ=ゴールドブラム(69歳)
 数学者で、カオス理論の専門家。かつてのイスラ・ヌブラル島事件の当事者の一人で、サンディエゴ事件(シリーズ第2作『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク2』)の当事者でもある。
 現在はバイオシン社に雇われつつ、CEOのドジスンの陰謀を探っており、エリー達に協力する。

ケイラ=ワッツ …… ディワンダ=ワイズ(?歳)
 オーウェンとクレアを支援する元空軍パイロット。現在はマルタ島の恐竜密輸業に加担している。

ルイス=ドジスン …… キャンベル=スコット(61歳)
 ジュラシック・パークを建造したインジェン社のライバル企業「バイオシン社」のCEO。遺伝学者。
 表向きは慈善事業家としてドロミーティ山脈に設立した巨大施設「バイオシン・サンクチュアリ」にて、世界各地から集められた恐竜達を保護している。しかし、その裏ではサントスをはじめとする密売人と内通し、恐竜の横流しを行っていた。また、絶滅種の DNAを組み込んだ巨大イナゴを用いたバイオハザードを引き起こして、世界の食糧事情を一変させようと目論む。
 シリーズ第1作『ジュラシック・パーク』では同役をキャメロン=ソア(当時33歳)が演じており、インジェン社が開発した恐竜の胚を盗み出そうと画策し、ジュラシック・パークのプログラマーだったネドリーと結託し、ネドリーにシェービングクリームのスプレー缶に偽装した胚の保管装置を手渡していた。

ラムゼイ=コール …… ママドゥ=アティエ(34歳)
 バイオシン社の広報部長。CEOのドジスンの企みをマルコムから知らされ、アラン達に協力する。

ヘンリー=ウー …… ブラッドリー・ダリル=ウォン(61歳)
 かつてジュラシック・パークとジュラシック・ワールドの研究チームのリーダーを務めていた遺伝学者。
 現在はバイオシン社に雇われており、ドジスンの計画する巨大イナゴのバイオハザードに与するが、良心の呵責に耐え兼ね贖罪の手段を探す。

ソヨナ=サントス …… ディーチェン=ラックマン(40歳)
 マルタ島を拠点に恐竜密売の闇市場を牛耳る女。
 バイオシン社と内通しており、ドジスンからの依頼でデラコート達にメイジーとベータを拉致させ、報酬としてアトロキラプトル4頭を受け取る。

レイン=デラコート …… スコット=ヘイズ(39歳)
 サントスの部下で、現在指名手配中の恐竜密猟者。サントスの指示を受けベータとメイジーを拉致する。

フランクリン=ウェブ …… ジャスティス=スミス(26歳)
 前作『炎の王国』にも登場した DPGの ITエンジニア。
 無茶を繰り返すようになったリーダーのクレアに耐え兼ね、かねてより勧誘されていた CIAの野生生物管理部門に転職した。メイジーとベータが拉致された際は、デラコートの素性やマルタ島での恐竜闇取引の情報を提供し、オーウェン達をサポートした。

ジア=ロドリゲス …… ダニエラ=ピネダ(35歳)
 前作『炎の王国』にも登場した DPGの獣医師。
 フランクリンと同じく、無茶を繰り返すようになったリーダーのクレアには難色を示している。

バリー=センベーヌ …… オマール=シー(44歳)
 オーウェンの友人。シリーズ第4作『ジュラシック・ワールド』では、オーウェンと共にヴェロキラプトルの訓練を担当していた。
 現在はかつてのパーク職員達と共に CIA捜査官となり、マルタ島でサントスをはじめとする恐竜密売人を追っている。

ワイアット=ハントリー …… クリストファー=ポラーハ(45歳)
 CIA捜査官でバリーの部下。スパイとして恐竜密売市場に潜入し、デラコートの右腕として働く。

シャーロット=ロックウッド …… エルヴァ=トリル(30歳)
 大富豪ベンジャミン=ロックウッドの娘で、メイジーのオリジナルとされる人物。故人。
 生前は遺伝学者で、エリーやヘンリーも一目置く程の秀才だった。


登場するおもな恐竜・古生物
ヴェロキラプトル(体長3.5m、体重100kg)
ブルー
 シリーズ第4作『ジュラシック・ワールド』から登場する、オーウェンによって飼育・訓練されてきた雌のヴェロキラプトル。前作『炎の王国』の事件後、シエラネバダ山脈の山中を縄張りとして暮らしてきた。
 オオトカゲの DNAを組み込まれた影響で、単為生殖によりベータを産んだ。ベータを拉致され動揺する。
ベータ
 ブルーが単為生殖により生んだ雌の子。命名者はメイジー。
 メイジーと共に生物学上の貴重なサンプルとしてバイオシン社に捕らえられてしまう。

ティラノサウルス・レックス(体長11m、体重6トン)
 シリーズ第1・4・5作に登場した個体。
 前作『炎の王国』の事件後、捕らえられドロミーティ山脈のバイオシン・サンクチュアリへと移送された。

ギガノトサウルス(体長13m、体重7トン)
 史上最大の肉食恐竜。バイオシン・サンクチュアリ内における頂点捕食者に君臨している。

アトロキラプトル(体長2m、体重230kg)
 ヴェロキラプトルより大型で獰猛な肉食恐竜。作中には4頭登場する。
 バイオシン社により、レーザーポインターで示した標的を殺すまで追い続けるよう調教されている。メイジーとベータを拉致した報酬としてサントスに引き渡され、彼女の指示によりオーウェン達に襲い掛かる。

ピロラプトル(体長2.4m、体重180kg)
 ヴェロキラプトルやアトロキラプトルと近縁の肉食恐竜だが、全身が赤い羽毛で覆われている。
 バイオシン・サンクチュアリ内の凍ったダム湖に不時着したオーウェンとケイラの前に現れ、水中を水鳥のように泳ぐトリッキーな攻撃で2人に襲い掛かる。

ディロフォサウルス(体長1.5m)
 シリーズ第4・5作にもカメオ出演していたが、生きた姿としてはシリーズ第1作から29年ぶりに再登場する。
 バイオシン・サンクチュアリに不時着したクレアを襲う。

アロサウルス(体長9m、体重2トン)
 本作の冒頭でトレーラーハウスを襲う光景がニュース映像として流れる他、マルタ島の闇市場で成体と幼体が捕らえられていた。幼体は他の肉食恐竜の幼体と、闘犬のように戦わされている。成体は闇市場から逃げ出して密売人やマルタ島民を襲った。

カルノタウルス(体長9m、体重2トン)
 マルタ島の闇市場で、左の角が欠けた成体と幼体が捕らえられている。
 闇市場から逃げ出して成体は密売人やマルタ島民を襲い、幼体はデラコートの片腕に噛み付いた。

バリオニクス(体長9m、体重2トン)
 マルタ島の闇市場で左腕が義手になった幼体が捕らえられている。

コンプソグナトゥス(体長70~140cm)
 人間の幼児を襲ったり逆にチーターに襲われる光景が冒頭のニュース映像で流れる。
 マルタ島の闇市場では食用として捕らえられ、丸焼きなどが売られていた。

モロス(体長2.5m、体重80kg)
 本作では実際よりもかなり小型の恐竜として登場している。
 冒頭ではナイルチドリのようにギガノトサウルスの周りをうろつき、バイオシン・サンクチュアリではトビネズミを餌に飼育されている。

ナーストケラトプス(体長4.5m、体重1.5トン)
 植物食恐竜。ネバダ州の牧場で、密売目的で違法に飼育・繁殖させられていた現場をクレア達が摘発する。その中で衰弱した幼体が彼女たちに保護され、取り返そうと追いかけてきた牧場主たちを成体が撃退した。その後、保護された幼体たちはバイオシン・サンクチュアリへ移送された。

アパトサウルス(体長25m、体重30トン)
 シエラネバダ山脈の麓の町中に2頭が出没したが、メイジーの助言を受けた作業員たちに誘導され森へと帰った。

パラサウロロフス(体長10m、体重4トン)
 シエラネバダ山脈の麓で暮らしている群れが、オーウェン達に保護された。

ドレッドノータス(体長26m、体重35トン)
 バイオシン・サンクチュアリで飼育されている恐竜の中では最大の個体。

テリジノサウルス(体長10m、体重5トン)
 植物食恐竜だが、サイのように視力が弱いため非常に縄張り意識が強く、気性が荒い恐竜として描かれている。
 独特の鳴き声を反響定位として利用している。野球バット大の長く鋭い爪が特徴。

ミクロケラトゥス(体長2m)
 マルタ島の闇市場で捕らえられている他、生前のシャーロットのビデオ日記にも登場している。

ディメトロドン(体長1.8~4.5m、体重30~250kg)
 バイオシン・サンクチュアリの地下にある琥珀採掘抗跡に住み着いている。迷い込んで来たアラン、エリー、メイジーに襲い掛かる。

ケツァルコアトルス(翼長11m、体重250kg)
 史上最大の翼竜。冒頭につがいが大都市の高層ビルに営巣していた他、バイオシン・サンクチュアリでも飼育されている。

ディモルフォドン(翼長1.4m)
 小型であるためペット目当ての密売が横行しており、マルタ島の闇市場では籠に入れて売られている。

モササウルス(体長15m)
 ベーリング海でカニ漁の漁船を襲うなど、世界各地の海で問題を引き起こしている。

リストロサウルス(体長90~120cm)
 マルタ島の闇市場で捕らえられている。意外と気性が荒く、デラコートの片腕に噛み付いた。


おもなスタッフ
監督 …… コリン=トレヴォロウ(45歳)
脚本 …… コリン=トレヴォロウ、エミリー=カーマイケル(40歳)
音楽 …… マイケル=ジアッチーノ(54歳)
撮影 …… ジョン=シュワルツマン(61歳)
編集 …… マーク=サンガー(48歳)


≪世界サイズのふろしきをたたむのは難しいね!! 本文マダヨ~≫
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これぞ平成深夜!! 可能性の怪物『ウルトラセブン X』の精華 ~資料編~

2022年06月26日 14時20分58秒 | 特撮あたり
特撮TV ドラマシリーズ『 ULTRASEVEN X』とは

 『 ULTRASEVEN X(ウルトラセブン・エックス)』は、2007年10~12月の毎週土曜深夜2:30~3:00に中部日本放送( CBC)を制作局として TBS系列で放送された、円谷プロダクション制作の特撮 TVドラマシリーズ。全12話。

 同じく円谷プロダクション制作の特撮 TVドラマシリーズ『ウルトラセブン』40周年記念作品。ウルトラ戦士の登場する作品としては初の深夜帯放映作品かつ初の1クール作品であり、実写作品としては16:9ハイビジョン放送で制作された初の作品である。制作局は、円谷プロによる「ウルトラシリーズ」第14作『ウルトラマンネクサス』(2004~05年放送)から第16作『ウルトラマンメビウス』(2006~07年放送)までのシリーズに引き続き CBCが務めている。「ウルトラシリーズ」としては、BS11で放送され、後にテレビ東京系列局で地上波放送された番外シリーズ『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(2007~08年放送)とその続編『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』(2008~09年放送)を除けば、最後の地上アナログ放送作品であると同時に、2022年時点では TBS系列で放送された最後の作品でもある。
 『ウルトラセブン』はこれまでにも、直接的な続編『平成ウルトラセブン』シリーズ(1994~2002年)が制作されたが、本作は新しい世界観となる。企画はセブン好きを公言する八木毅の主導で行われ、併せて本作のメイン監督とシリーズ構成も務めた。公式サイトでは当初から「オリジナルのウルトラセブンと SEVEN Xの関係こそが全話を貫く最大の謎」という記述がされており、その真相は最終話にて明かされた。

 企画の発端は、2006年の夏に深夜枠で新機軸を狙った『ウルトラマインズ』という企画で、『ウルトラQ dark fantasy』(2004年放送)のプロデューサーであった表有希子を中心として、CBCへのアプローチが想定されていたため『ウルトラマンメビウス』での監督経験のある八木をメイン監督、プロデューサーの渋谷浩康に企画協力、『ウルトラマンマックス』でも脚本を担当した小林雄次らを招聘。企画を一同で練ったが、2007年初めに企画が仕切り直しとなり、同年に誕生40周年を迎えるウルトラセブンのキャラクターを活かした企画へと舵が切られた。
 さらに八木は、かつて2002年頃にまとめられていた企画案『 ULTRAMAN ZAX』の「地球にさまざまな宇宙人が人知れず潜んでいる」という設定とスタイリッシュさや、『ギャラクティカ』シリーズ(2003~12年)や『24 TWENTY FOUR』シリーズ(2001~17年)などの海外ドラマのテイストも参考にしつつ、小林とともに企画をおよそ3か月ほどで固めていった。

 本作は深夜特撮ドラマらしく「ホラー」や「怪奇」がメインテーマとなっており、初期ウルトラシリーズでも描かれていた「人間に寄生や擬態するエイリアン」、「人間社会に溶け込み暗躍するエイリアン」がメインであるが、「人間自身がエイリアンの起こす事件の原因に関与している」という、過去のウルトラシリーズとは異なる部分がある。また、SEVEN Xとエイリアンとの戦いがメインではなく、「エイリアンが起こす怪事件や殺人を組織が捜査し、その事件の首謀者であるエイリアンを SEVEN Xが倒す」という構図を取っている。平成に制作されたウルトラシリーズとしては珍しく、エイリアンが起こす事件で死者が出たり、数か所ではあるが流血シーンも存在する。
 リアリティを重視するため、特撮パートではミニチュアセットを組まず極力セット製作を抑えてグリーンバックやブルーバックで撮影され、実景とのデジタル合成や造形物のない CG作画のみの敵キャラクターが主体となっている。また、他のウルトラシリーズと比較して戦闘シーンが極めて短く、ドラマパートに重点が置かれている。ウルトラシリーズでは初の本格的なワイヤーアクションが取り入れられている点も特徴である。
 「戦闘機などの巨大兵器」、「組織内で統一された隊員服」といったそれまでのウルトラシリーズの要素や、『セブン』や『平成セブン』に登場した「カプセル怪獣」の要素は、本作では踏襲されていない。
 番組タイトルや変身ヒーローの名称、サブタイトルが今までのウルトラシリーズとは異なり英語表記となっている。また、主要スタッフやキャスト、主題歌の表記もエンドロールのみとなった。高年齢層を視聴対象とした作品であるが、児童向けの超百科では他のウルトラシリーズと同様に取り併記されている。
 放送終了後の2008年5月に、本編の内容を補完する小説版『 ULTRASEVEN X』が、ホビージャパンより刊行された。執筆は第1・6・10~最終話の脚本を担当した小林雄次と、小林の実弟である小林英造が担当。本文挿絵は特撮キャラクターデザイナーの酉澤安施が担当している。


あらすじ
 近未来を思わせる、我々の生きる世界とは似て非なる世界。大気汚染は深刻化しているものの、あらゆる戦争やテロが根絶され、町には政府の方針やさまざまな情報を報じる巨大モニターが各所に設置されており、人々はその情報によって支配される高度な管理社会を形成している。
 ある日、深い水の中に漂う夢を見て男は目覚めるが、彼はそれまでのすべての記憶を失っていた。そこに白いドレスの女が現れて赤い眼鏡(ウルトラアイ)を託し、腕時計型の機械(ビデオシーバー)のスイッチを入れる。「この世界を救って欲しい」と告げる彼女に促され窓から飛び降りた男は、腕時計の不思議な力で地上に降り立つ。その直後、2人の居た高層ビルは爆破された。
 用意された車で自宅に戻った男は、自分の素性にまつわる一切の痕跡が消されていることを知る。戸惑いを隠せない男のもとに、腕時計型の機械から無機質な声が響く。「エージェント・ジン。新たなミッションだ。」それにより、男は自分の名前がジンであることを知る。
 状況が把握できないままクラブでエージェント・ケイと合流したジンは、自分たちがエイリアンを密かに抹殺する組織「 DEUS」の一員であることを聞かされる。人間の女性に擬態したエイリアンを追ったジンは、彼らのアジトにたどり着く。するとそこに再び白いドレスの女が現れ、「戦いなさいジン。貴方はこの世界の救世主よ。」と告げる。ウルトラアイを装着したジンは、赤い巨人( ULTRASEVEN X)に変貌する。こうして、世界を守ると決意したジンの孤独な戦いが始まるのであったが、その様子を監視している何者かの姿があった。


おもな登場キャラクター、組織、専門用語(俳優の年齢は放送当時のもの)
ジン / ULTRASEVEN X …… 与座 重理久(えりく 26歳)
 25歳。本作の主人公。DEUSのエージェント。過去の記憶を失っているが、水に全身を包まれる感覚と白いドレスの女性と相対する自分の姿というイメージだけは残っている。寡黙だが内面は熱く、ULTRASEVEN Xの力でこの世界を守ることを決意している。本来の性格も暗いわけではない。エージェントとしての実力は高く、直感力や洞察力に優れ、即座の判断にも長ける。また、生身でもエイリアンに互角に対抗できる戦闘力を有している。愛車はキャディラックSRX(初代)で、他の DEUSエージェントからのウルトラガンによる攻撃を弾く特殊仕様となっている。

ULTRASEVEN X …… 新上 博巳(スーツアクター 37歳)
 ジンが変身する超人。
 額のビームランプ、胸と肩のプロテクター、腹から足への銀色のラインなど、従来のウルトラセブンのデザインを踏襲しているが、小さくなった頭部や吊り上がった形状の目、アイスラッガーのデザインなどに相違点も見受けられる。
 変身方法はオリジナルと同様でウルトラアイを使用し、必殺技もワイドショット、アイスラッガー、エメリウム光線と従来のセブンと同様であるが、アイスラッガーは発光せずブーメランのように回転して飛行する。人間の等身大から身長40m、体重3万5千t の巨人へと自由に変化できる。
 作中では、ボーダ星人戦やメカ・グラキエス戦を除けば苦戦することはほとんどなく、圧倒的な戦闘力でエイリアンを倒している。劇中では「赤い巨人」と呼ばれている。

冴木 エレア …… 加賀美 早紀(22歳)
 22歳。本作のヒロイン。ジンにウルトラアイを授けた白いドレスの女。神出鬼没でジンに助言や警告を与える。
 DEUS のエージェントではなく、過去に AQUA PROJECTに携わっていた科学者であり、恋人のジンから AQUA PROJECTの真実を聞かされ、地下でグラキエスへの抵抗活動を続けると同時に、記憶を失ったジンを導いていた。ジンによれば星が好きらしい。

ケイ …… 脇﨑 智史(24歳)
 25歳。日常的にジンとパートナーを組むことの多い DEUSのエージェント。やや軽い単純な性格のかっこつけたがりでコメディリリーフな役割が多いが、ウルトラガンの射撃に関しては高い実力を持つなどエージェントとしての腕は確かで、地球を守ることに使命感と誇りを持っている熱血漢。服装は白を基調とし、ジンとは対照的。甘党でプリンが好物。エスに好意を持ち、頭が上がらない。

エス …… 伴 杏里(22歳)
 25歳。ジンやケイと共にパートナーを組むことの多い DEUSのエージェントで、潜入捜査を得意とする。好物のチョコを食べていることが多い。エージェントとして銃の扱いにも長けているが、格闘技が最も得意。ジンが裏切り者として指名手配されても彼を信じ続けるなど、強い仲間意識を持つ姉御肌。衣装は黒で、ケイと対になるようになっている。

DEUS司令 …… 夏木 陽介(声の出演 71歳)
 DEUSの司令官。ビデオシーバーを通して各エージェントにミッションを伝える。どこにいるのかも、何をしているのかも謎に包まれている。

DEUS
 人類社会に侵入したエイリアンを捜索して抹殺することを主な目的とする、国家的秘密組織。メンバーは「エージェント」と呼ばれ、メンバー同士ではコードネームで呼び合っている。
 公表されていない地下空間に無数のモニターと巨大なホストコンピューターが設置されたエリアを持つ。エージェントは普段、一般市民として生活しているが、ビデオシーバーで司令官からの指令や作戦を受け、複数名でミッションを遂行する。各エージェントは通信以外にも多くの機能を持つ万能通信機ビデオシーバー( VC)と、対エイリアン用にカスタマイズされたエネルギー銃「ウルトラガン」を携帯する。

VC(ビデオシーバー)
 エージェントたちの通信をつなぐほか、簡易の検査機能、GPS機能や電磁バリア展開機能を含めて機能はさまざまで、反重力システム(「 ANTI GRAVITY」の文字が表示される)を起動させれば、高層ビルから落下しても無事に着地できる。腕時計のように手首に巻いて携帯する。

ウルトラガン
 エージェントたちが携帯する、対エイリアン用にカスタマイズされた小型エネルギー銃。下部をスライドさせ、エネルギーを装填することでレーザービームを発射する。
 『ウルトラセブン』でウルトラ警備隊が使用していた銃と同名だが、形状は大きく異なり、銃身より銃把が多くを占めているデザインとなっている。別名「ウルトラガンX 」。


登場するエイリアン、怪獣(俳優の年齢は放送当時のもの)
時空怪獣ガルキメス(第1話「 DREAM」に登場)
 身長40m、体重6万t。
 地球社会の中枢に潜入して人間に擬態し、自分たちの侵略活動をチェスに例えるエイリアン集団のキング(演・大谷朗)が操る、巨大な2足歩行の人型生命体。時空のゲートを経由して地球上に出現し、手から緑色の破壊光弾を発射して大都市の破壊活動を行う。ガルキメスを操るエイリアン集団の正体は終始明かされず、最後まで地球人の姿であった。
 デザインイメージはガジュマルで、極彩色の体色にしている。
 その後、スーツのマスク部分は映画『ウルトラマンオーブ』(2017年)のガルメス人に改造された。

エージェント・ケイとアールと戦っていたエイリアン(第2話「 CODE NAME"R"」に登場)
 身長2m、体重120kg(ペガッサ星人の情報)。
 エージェント・ケイの回想シーンに登場したエイリアン。1年前にエージェント・ケイとアールと交戦し、ウルトラガンの攻撃を受けて倒れた。『ウルトラセブン』第6話「ダーク・ゾーン」や『平成ウルトラセブン』シリーズの「ダーク・サイド」(2002年リリース)などに登場した放浪宇宙人ペガッサ星人のスーツを流用している。ただし、映像に映ったのは腕の部分のみで全身像は明らかになっていない。

宇宙商人マーキンド星人(第3話「 HOPELESS」に登場)…… 小宮 孝泰(51歳)
 身長170~190cm、体重70~100kg。
 タマルという地球人に擬態していた昆虫型エイリアン。目と腕から破壊光線を出す。地球を侵略する意志はなく、他エイリアンからの依頼で商品を製造し販売する商人。侵略兵器製造の依頼を受け、仕事の無い人間たち「ホープレス」をアルバイトとして雇って脳のエネルギーを吸収して侵略兵器を造っていた。飛行能力を持つが、戦闘では地上での格闘戦が主体である。
 頭部全体を光らせるために、触覚が球体の上に付いているイメージでデザインされた。
 のちに「ウルトラシリーズ」第20作『ウルトラマンX 』(2015年放送)、第24作『ウルトラマンタイガ』(2019年放送)にも再登場している。

パラサイト宇宙生物ペジネラ(第4話「DIAMOND"S"」に登場)
 身長42m、体重4万t。
 ナノサイバティクス社の社員や、機能性化学薬品「シャイナー05」を服用する人間の脳に寄生していた、パラサイト型エイリアン。肉塊のような身体に爬虫類を思わせる体表を持つ。元々はひとつの生命体で、細胞分裂によって自己増殖を繰り返す本能しかもっていなかったが、人間に寄生して知能を得たことからシャイナー05を使って効率的に増殖したうえ、人間とは違う新しい身体を製造していた。無数の小型ペジネラが合体することで、巨大生物に変化する。破壊光線のほか、粘液状の小型ペジネラを吐いて相手の動きを封じる。動きは身軽で、アイスラッガーも受け止める。同話の最後では回収し切れなかった販売済みのシャイナー05が存在していたことから、ペジネラを殲滅できてはいないことが示唆されている。
 左右に分割した下あごからスーツアクターの手が入るようになっており、手を上げることで口が閉じる仕組みになっている。
 その後、スーツは『ウルトラマンX 』の不動怪獣ホオリンガに改造された。

チャムダ星人(第5話「PEACE MAKER」に登場)…… やべ けんじ(34歳)
 身長180cm、体重65kg。
 アルファケンタウリ星系のエイリアン。同星系に住むボーダ星人とは交戦状態にある。蒼い肌と額にも目を持つこと以外は外見に地球人との相違は無いが、容姿は全員が同一であり、身体能力はきわめて低い。細身で、地球の重力下では長時間の歩行すらままならない体質の脆弱さと社交性の高さから、地球への害意や侵略の危険は無いと DEUSに判断され、地球亡命を認められている。しかし亡命は表向きの理由でしかなく、真の目的はボーダ星人が地球に隠した守り神「オリファム(鉱石)」を発見し、彼らに対抗することであった。オリファムを発見した後はボーダ星人を殲滅することで戦争を終わらせる旨を述べ、帰還する。結局、双方の星が滅亡してしまったため、グラキエスには「双方とも愚か」と一蹴されている。

凶暴宇宙人ボーダ星人(第5話「PEACE MAKER」に登場)
 身長2m、体重120kg。
 アルファケンタウリ星系のエイリアン。戦力は腕から放つ破壊光線と体の前面に張るバリア。同星系に住むチャムダ星人とは交戦状態にあり、彼らから「守り神」、「彼らのすべて」などと称される緑色に発光する十六面体の緑色の石「オリファム」を奪い、地球に隠していた。複数のチャムダ星人が亡命を理由に地球に飛来してオリファムの探索を開始したため、彼らを抹殺するために再び地球へ侵入し、次々と殺害していく。頭部内部にもう1つ凶暴な牙を隠し持っているほか、大柄な体格とは裏腹に俊敏性と超怪力を持っており、チャムダ星人曰く、オリファムの力がなければ不死身らしい。ULTRASEVEN Xを追い込むほどの戦闘能力を持つ。

ヴァイロ星人(第7話「YOUR SONG」に登場)
 身長175~180cm、体重70kg。
 地球を侵略するために先兵を送り込んでいたヒューマノイド型エイリアン。死ぬと跡形もなく消滅してしまう。侵略を行う兵士は最高権力者から白いマスクを直接手渡され、死ぬまでそのマスクを外してはならない。先兵の調査員として地球へ侵入し、侵略のための調査を行っていたナタル(演・石川紗彩)は、地球の歌に対する愛情と DEUSのエージェント・ディーとの出逢いからマスクを外してしまったため、反逆者として同胞たちから命を狙われていた。統制の取れた集団行動を行いながら、マスクのパラボラ状の口元に取り付けられた円形の装置に両手を当てて強力な破壊音波を伴う甲高い声を発し、敵を攻撃する。ウルトラガンの攻撃を素手で偏向させたリーダー格とうかがえる個体は、飛行物体からバドリュードを出現させた。

生物破壊兵器バドリュード(第7話「YOUR SONG」に登場)
 身長45m、体重6.5万t。
 ヴァイロ星人のリーダーが飛行物体の船底から出現させた、ゼリー状の液体で形成された二足歩行の巨大ロボット。ヴァイロ星人のマスクと同様に、頭部の発光体に両手を当てて発射する超音波光線で敵を攻撃する。
 体表は内臓のようにブヨブヨとしており、胸部を中心に機械が各部から露出したものをベースに、デザインのモチーフにはシャンパンゴールドのカラバリが選ばれた。黒い模様は布袋寅泰のギターのデザインを元にしているという。

殺戮宇宙人ヒュプナス(第8話「BLOOD MESSAGE」に登場)…… 黒田 勇樹(25歳)
 身長175~180cm、体重75kg。
 何者かによってエイリアンとしての記憶を消され、人間の姿で普通の生活を営んでいる。しかし、一度極度の肉体的苦痛を受けると、エイリアンとしての殺戮本能が覚醒し、両手に持つ鋭利な爪の一掻きで人間を絶命させる本来の容姿と、脆弱な人間としての容姿を使い分けながら、周囲の人間を無差別に殺害する。過去に2体が発見されており、DEUSに捕獲された2体目の自白から、何者かが無差別殺人を目的として放ったことが判明する。3体目のアガタ・キョウスケは人間の妻のアサミを得て生活していたところ、ドラッグシンジケートの売人たちに撃たれたことで覚醒してアサミを殺害するが、「ドラッグの売人たちにアサミを殺害された」という記憶に書き換えて彼女の赤いコートを着込み、売人たちへの「復讐」を続けていた。まだ妻が生きているという妄想に取り付かれていたが、その真実にたどり着いたジンと対峙して自分の青い血液を見たことから本来の記憶を取り戻し、ようやく本性を現す。潜伏中のヒュプナスの数は不明のまま、同話は幕を下ろす。
 スーツのボディは、「ウルトラシリーズ」第12作『ウルトラマンガイア』(1998~99年放送)に登場したウルトラマンアグルの流用。
 のちに映画『ウルトラマンオーブ』(2017年)、映画『ウルトラマンジード』(2018年)、第24作『ウルトラマンタイガ』(2019年放送)、映画『ウルトラマンタイガ』(2020年)にも再登場している。

獣人(第9話「RED MOON」に登場)
 身長180~190cm、体重70kg。
 尾形朔(サク 演・高野八誠)と名乗る兄と共に星々を旅していたエイリアン。普段は地球人と同じ外見で尾形望(ノゾム 演・小笠原宙)と名乗っており、水に触れると体細胞が変化する特異体質ゆえに水を恐れていたが、100年前の皆既月食の夜に恋に落ちた地球人の女性・鷺ノ宮まひるの願いを聞き入れてやむなく池の水に触れ、全身が鱗に覆われた半魚人のような怪物と化してしまう。この際にまひるを殺害しているが、本人はその事実を受け入れず、100年ぶりに目覚めても彼女を探していた。

小型集合体グラキエス(最終話「NEW WORLD」に登場)
 身長4.8m、体重2.5t。
 情報網を掌握することで地球文明に気付かれずに管理社会を作り上げ、他のエイリアンを排除するために DEUSを組織し、AQUA PROJECTを利用して平行する異世界への侵攻も画策していた真の支配者たち。ジンの脳裏に老紳士や中年とうかがえる男女3人の人間に擬態した姿(演・野口雅弘、ナカヤマミチコ、千葉誠樹)で現れ、自分たちの目的は侵略と支配ではなく、平和な世界の維持だとうそぶく。本来はクモに似たエイリアンであり、攻撃力は高くない。
 ヘビのような体表で、目がオレンジ色に光っている。着ぐるみではなくフルCG で表現された。

巨大機械生命体メカ・グラキエス(最終話「NEW WORLD」に登場)
 体長89m、体高33m、体重9万t。
 攻撃力の高くないグラキエスが、自己防衛のために自分たちを模して造った巨大なクモ型機械生命体。3体でフォーメーションを組んで現れ、火炎弾や粘液状の糸を使った連携攻撃で一度は ULTRASEVEN Xを退ける。
 目は青く光っている。グラキエス同様、着ぐるみではなくフルCG で表現されている。

AQUA PROJECT
 ある周波を水に照射することによって、原子力に代わる莫大なエネルギーを確保しようという政府の計画。しかし、その実験中に偶発的に異世界(ウルトラセブンが存在する次元)へのゲートが出現したため、計画は凍結された。

おもなスタッフ(年齢は放送当時のもの)
監修・製作  …… 円谷 一夫(46歳)
製作統括   …… 大岡 新一(60歳)
シリーズ構成 …… 八木 毅(40歳)
監督 …… 八木毅、鈴木 健二(50歳)、梶 研吾(46歳)、小中 和哉(44歳)
脚本 …… 小林 雄次(28歳)、太田 愛(43歳)、福田 卓郎(46歳)、金子 二郎(45歳)、林 壮太郎(38歳)、長谷川 圭一(45歳)
アクション監督 …… 小池 達朗(38歳)
ウルトラセブンX デザイン・画コンテ …… 酉澤 安施(45歳)
エイリアン・小道具デザイン …… 丸山 浩(45歳)
エイリアンデザイン …… さとう けいいち(41歳)
スタジオ …… 東宝ビルト
エンディング主題歌『 Another day comes』(作曲・歌:Pay money To my Pain)
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真の侵略者、黙して語らず ~宇宙忍者バルタン星人の歴史メモ~

2022年06月04日 14時28分52秒 | 特撮あたり
バルタン星人とは……

 バルタン星人は、円谷プロダクションが日本で制作した特撮テレビ番組シリーズ「ウルトラシリーズ」に登場する架空の宇宙人。別名は宇宙忍者。『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』(1966年7月放送)にて初登場。
 セミに似た顔、ザリガニのような大きいハサミ状の両手を持ち、高度な知能を備えた直立二足歩行の異星人である。両手は厚さ20センチメートルの鉄板を切断できるという。マッハ5での飛行能力のほか、瞬間移動能力も有しており、分身するかのように移動できる。眼は5,000個の眼細胞から構成される複眼となっており、1万メートル先の小さな物体も視認できる。その反面、歴代のどの個体も接近戦が苦手な描写が存在する。一般に「フォッフォッフォッフォッフォッ」と表記される独特の音声(1963年製作の東宝映画『マタンゴ』に登場するマタンゴの声を流用)を発するが、『ウルトラマン』第2話の監督・脚本を担当した飯島敏宏によれば、その際に腕を上げて手を揺らすのは、スーツアクターが「腕を下げていると爪(ハサミのこと)が重くて大変だったから、休むために生まれたシーン。腕を上にあげて立てていると楽だった。」そうである。
 『ウルトラマン』第16話への再登場以降、数多くのウルトラシリーズに登場し、ウルトラ戦士の最大のライバルとして幅広い層から認知され、人気を博している。シリーズ本編以外にもマンガやゲーム、ライブステージなど映像以外の作品にもたびたび登場するうえ、バラエティ番組へのゲスト出演など、ウルトラシリーズ以外のメディアでも活躍している。故郷の星を失った宇宙の放浪者という設定であり、後続シリーズ『ウルトラマンコスモス』や『ウルトラマンマックス』では、人類に友好的に接する個体(チャイルドやタイニーなど)も登場している。
 飯島は、バルタン星人は今よりも科学や経済が発達した人類の未来の姿を映した反面教師と位置づけており、悪役として描かれた後発のバルタン星人(4~9代目を指すか)については認めていないと発言している。

 バルタン星人の命名は飯島による。名称はバルカン半島に由来するという説と、設定当時の人気歌手シルヴィ=ヴァルタンから取ったという説があるが、飯島の著作によれば正しいのは前者であり、「母星が兵器開発競争によって滅んだため、移住先を求めて地球にやってきた」という設定を、ヨーロッパの火薬庫といわれて紛争の絶えなかったバルカン半島に重ねているとされる。しかし、宣伝部の提案でヴァルタンから名付けたことに決めたので、両説とも間違いではないと述べている。

 デザインは成田亨、着ぐるみ造型は佐藤保が担当した(初代バルタン星人の造形担当は佐々木明とされていたが、佐々木自身がこれを否定している)。撮影に使用された着ぐるみは、『ウルトラQ』第16話『ガラモンの逆襲』(1966年4月放送)に登場した宇宙怪人セミ人間を改造したもの(飯島は、セミ人間の頭部とケムール人のスーツの改造と証言している)。セミ人間は回転しながら発光する両眼が印象的だったが、バルタン星人では発光する両眼を回転させ、さらに左右に動かせるよう機電担当の倉方茂雄が改良を施した。
 しかし、造形を担当した佐藤保は2013年のインタビューで「セミ人間を改造した記憶はない」と述べている。
 「セミ人間に角とハサミをつけてくれ」という飯島の注文で、成田亨によってデザイン画が描かれた。鎧兜の意匠をセミ人間に追加し、有機的にハサミを抽象化している。額にある Vの字状のものは、デザイン画ではもっと細く鋭く尖った形状であった。
 『侵略者を撃て』で特技監督を務めた的場徹は、「バルタン星人をセミ人間に似せてつくったのも私のアイディアです。あのセミとハサミをくっつけるというのは自分でもなかなかよかったと思っています」と述べている。
 飯島はデザインコンセプトについて、当時は宇宙に生物がいるかどうか不明であったためにとりあえず昆虫型とし、ハサミは当時、川で大量に繁殖していたアメリカザリガニからイメージしたものとしている。

宇宙忍者バルタン星人初代
 身長ミクロ~50m、体重0~1万5千t。
 『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』(1966年7月放送)に登場。
 故郷のバルタン星を狂った科学者が行った核実験により失い、たまたま宇宙旅行中だったことから難を逃れた20億3千万人の同胞と共に、宇宙船で放浪していた異星人。「宇宙忍者」という異名どおり、多彩かつ特異な能力を持っている種族である。火星にある架空の物質「スペシウム」を弱点としている。宇宙船内部ではほとんどの乗員がミクロ化されて地球のバクテリアサイズで眠っており、科特隊と接触することになる1名のみが、人間大のサイズで活動している。地球には宇宙船の修理と欠乏した予備パーツのダイオードの調達のために偶然立ち寄っただけであるが、自分たちの居住できる環境と判明したため、移住を強行しようとする。
 武器は両手のハサミから出す赤色凍結光線と白色破壊光弾。足の内部には、物体を腐らせる毒液が入った袋が存在する(設定のみ)。また、防御能力として数多の分身を作ることが可能。その他、地球人に乗り移り、その脳髄を借りて会話するという能力も持つ。
 手始めに科学センターに侵入し、完全に生物の活動を停止させる赤色凍結光線で職員を仮死状態にして占拠する。この時点では地球の言語を理解できなかったため、同じく仮死状態にしたアラシの身体に乗り移ってイデやハヤタと会話し、自分たちの事情を説明した後に地球への移住について交渉した。前述のように最初の攻撃では人間を殺害しておらず、ハヤタから「地球の法律や文化を守るなら移住も不可能ではない」と言われた際には、即座に丁寧語で話すなど、当初は地球人を尊重し共存する姿勢も見せていたが、バルタン星人の人口の多さを聞いたイデが難色を示した上に、スペシウムが存在する火星への移住をハヤタから提案されたことで交渉を一方的に打ち切り、移住の強行を宣言。正体を現して巨大化し、侵略破壊活動に移行した。防衛軍の核ミサイル「はげたか」により倒れるも、すぐにセミが脱皮するかのように新しい肉体を得て復活する。その後、石油コンビナートを破壊しながらウルトラマンと空中戦を繰り広げる。
 戦闘中に左のハサミをウルトラマンにへし折られる展開は、撮影現場で本当にハサミが破損したため、割れるシーンをフォローとして追加撮影したためである。造型を担当した佐藤保は、当初のハサミはカポックの削り出しを FRPでコーティングしたものであったが、以後は FRPのみで造り直したと証言している。
 本エピソードでは、深夜に無人のビルの闇に潜む怪物という怪奇色の強い扱いだった(前作『ウルトラQ』の影響が強い)。また、「生命」の意味を理解できないなど人類とは根本的に異質な存在であることが徐々に明かされ、クライマックスでは「街中で撃たれた核ミサイル2発を受けてもたやすく復活する」といった、地球人の力ではどうにもできない存在であることが明示される。
 のちに本エピソードなどが再編集された映画『ウルトラマン 怪獣大決戦』(1979年)では、ウルトラマンとの空中戦の途中で、東京都新宿区の明治神宮外苑・聖徳記念絵画館前に降り立って地上戦を繰り広げる新撮シーンが追加されているが、初代の着ぐるみはこの時点で現存していなかったため、形状の異なるスーツが分身体を含めて2体、新規に造型されている。これは後に『ウルトラマン80』の5代目や6代目に改造された。また、スペシャルドラマ『ウルトラセブン 太陽エネルギー作戦』(1994年3月放送)では、ウルトラ警備隊の過去のデータファイルとしてこの新撮シーンのバルタン星人がモニターに写るシーンがある。
 幻冬舎の書籍『21世紀ウルトラマン宣言』では、セミに近い昆虫から進化した知的生命体とされている。「バルタンの木」という植物を食べて生活していたが、肉食を覚えると残虐で好戦的な種族に変化し、腕もより確実に獲物を狩れるよう、現在のハサミ状へ進化した。また、アリやハチのようにフェロモンを用いる社会となっており、個体の感情がないはずなのに持つことになるウルトラマンへの復讐心も、そのためだとされている。
 円盤は『ウルトラQ』のセミ人間の宇宙船を流用したもの。その後、悪質宇宙人メフィラス星人の円盤(第33話)に再度流用された。

宇宙忍者バルタン星人2代目
 身長ミクロ~50m、体重0~1万5千t。
 『ウルトラマン』第16話『科特隊宇宙へ』(1966年10月放送)に登場。
 先にウルトラマンによって壊滅的な被害を受けたが、何とか生き延びた一部のバルタン星人たちは、太陽系に存在する R惑星に漂着していた。新たな仮の住まいを見つけたものの、地球侵略とウルトラマンや全人類への復讐の機会をうかがっていた者たちは、地球で毛利博士による人類初の有人金星探査が行われようとしていることを知ると、ロケットで旅立った彼を移動用の宇宙船である発光する青い球体で強制ドッキングして捕らえ、ボス格が憑依する。バルタン星人たちは科特隊とウルトラマンをおびき寄せた隙に大挙して地球を制圧しようと襲いかかる。
 本エピソードにおいても、特徴として複数の人間大のミニバルタンに分身することが可能であることが描写されている。また、胸部にスペルゲン反射光(書籍『ウルトラ怪獣大全集』ではスペルゲン反射鏡と記述している。書籍『ウルトラマン大辞典』では、スペルゲン反射光を反射板で跳ね返されたスペシウム光線を指す語としている)を装備し、弱点のスペシウム光線を跳ね返すことが可能になった。さらには光波バリヤーを全身に張り巡らせることが可能になり、これによって八つ裂き光輪を防ぐ。武器はハサミから発せられる重力嵐。その他、分身が手から破壊光弾を発射する。
 R惑星におけるウルトラマンとの1回目の対戦では、飛行中に放たれたスペシウム光線をスペルゲン反射光で反射して浴びせ、墜落させる。そこに重力嵐を浴びせ、動きを止めたウルトラマンに襲いかかろうと飛翔したところに八つ裂き光輪を受け、縦真っ二つにされる。地球では等身大の14体の分身が群れを成して襲いかかるが、迎撃に出たイデが小型ビートルのフロントグラス越しにマルス133で狙撃し、多数が撃墜される。R惑星からテレポーテーションで地球の羽田空港に戻ったウルトラマンに対し、分身状態から合体して巨大化した2回目の対戦では、光波バリヤーにより一度は八つ裂き光輪を防いだ。
 初代の着ぐるみが劣化により撮影に使用できなくなったため、佐々木明によって新たに着ぐるみが作られた。頭部やハサミの形状が鋭角的になり、初代よりも成田亨のデザイン画に近くなった。色彩は全体的に茶色で、顔の T字ラインとハサミが銀色。目玉の回転が初代と逆である。
 バルタン群のミニチュアは、当時市販されていたマルサン商店製のソフビ人形に塗装したもの。
 金城哲夫による小説『怪獣絵物語ウルトラマン』(1967年)では、本エピソードの前日譚として作戦決行前に悪質宇宙人メフィラス星人や他の宇宙人たちとともにウルトラマンを倒すための作戦会議に参加しており、その中での第2作戦として地球とウルトラマンへの攻撃を担当したことになっている。

宇宙忍者バルタン星人3代目
 身長50m、体重1万5千t。
 『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』(1967年2月放送)に登場。
 地球人に対し自分の力を誇示せんとしたメフィラス星人の手により、威嚇の目的で東京・丸の内に出現した。特に暴れ回ることはなく、すぐに消え去っている。資料によっては、実態のない投影像であった可能性も示唆されている。2008年に出版された書籍『ウルトラ怪獣列伝』( PHP研究所)では、巨大フジ隊員が姿を消した直後に出現したことから、巨大フジ隊員はバルタン星人の変身であったのではないかと推測されている。
 着ぐるみは2代目のリペイント。体色は黒と銀を基調に、頬に青い模様があり、頭部が金色になっている。また、目から口吻が白くなっている。
 未映像化に終わったエピソード『ジャイアント作戦』にも登場が予定されていた。

『ウルトラファイト』に登場するバルタン
 身長40m、体重2万t。
 特撮テレビ番組『ウルトラファイト』(1970~71年放送)の新撮部分に登場。本作では宇宙人も怪獣扱いするため「バルタン」と呼ばれている。
 戦闘の際には初代同様、分身術などのバルタン忍法で相手を幻惑するうえ、飛行能力も持っている。相手を待ち構えて背後から攻撃したり、味方と思わせて不意打ちを喰らわせるなど、卑怯な戦法を好む性質だが、体力がないため返り討ちに遭うことが多い。しかし弱いわけではなく、第75話ではウルトラセブンを相手に引き分け、第103話ではイカルスに勝利するなど、確かな実力も兼ね備えている。一度はセブンの「地獄の三角斬り」で両腕と頭を切断されて敗れ去るが、その後は何事もなかったかのように再登場している。
 第195話「激闘!三里の浜」では、ハサミ状ではなく人間と同じ形状の手で角材を持っているバルタンが、エレキング、キーラー、イカルス、ウーとともにセブンに挑むが、返り討ちに遭う。
 第196話「怪獣死体置場」では、円谷プロの着ぐるみ倉庫に頭部が逆さに吊られているのが確認できる。
 着ぐるみはアトラクションショー用であり、丸みを帯びたハサミが特徴。従来のバルタン星人と違って目が回転せず、点灯のみのアクションとなっている。

宇宙忍者バルタン星人Jr.(通算4代目)…… 阪 脩(声の出演 41歳)
 身長ミクロ~45m、体重0~3万t。
 『帰ってきたウルトラマン』第41話『バルタン星人Jrの復讐』(1972年1月放送)に登場。
 初代ウルトラマンに倒された初代バルタン星人の息子で、父の復讐のためにバルタン星から地球に飛来する。地球に飛来したバルタン族としては4代目に当たる。色彩は黒を基調に、所々に金や銀が散りばめられている。若い個体ゆえに腕は太くてやや短く、またハサミも先代に比べて小さく、上半分と下半分にそれぞれ黒いライン模様が見られる。笑い声も「フォッフォッフォッ」という鳴き声は発さず、普通の地球人に近い高笑いとなっている。
 建設中のマンションを改造したロボット怪獣ビルガモを操り、MAT隊員たちをビルガモの体内に監禁して人質にとる。ビルガモが倒されると巨大化してウルトラマンの目の前に現れ、「勝負はまだ一回の表だ。」と復讐を示唆する捨てゼリフを残して飛び去るが、背後からスペシウム光線を浴びせられ、白い十字光を発して消滅する。生死は不明。
 ウルトラマンとは直接戦闘しないが、設定では300以上の超能力を身につけているとされ、ハサミからマイナス140度の冷凍弾、反重力光線、ミサイル弾を発射できる。
 デザインは井口昭彦が担当。造形では複眼と頭部の溝部分が赤くなっており、口吻周辺が金色になっている。
 内山まもるによるコミカライズ版では本エピソードの後日談が語られており、消滅後も暗躍している。郷秀樹が少年を自動車で撥ねたように見せかけて罪を擦りつけるという、テレビ本編における宇宙参謀ズール星人(第46話に登場)の役割を担う。

『レッドマン』に登場するバルタン星人
 特撮テレビ番組『レッドマン』第13話、第16話(1972年5月放送)に、どちらもエリ巻恐竜ジラースと共に登場。声は発しない。
 第13話では最初はジラースと戦うが、レッドマンが現れたのを見て停戦し、ジラースとともにレッドマンと戦う。挟み撃ちにして追い詰めるも、体当たりを仕掛けたところをレッドマンに避けられ、ジラースと同士討ちとなって敗れる。
 第16話では最初からジラースと協力して再びレッドマンと戦うが、ジラースになんらかの合図と思われる行動を行った後、戦闘中にジラースを放置して逃亡する。ジラースが倒された後、レッドマンが再びバルタン星人を追跡するというシーンで登場シーンが終わり、その後に登場することはなかった。戦闘ではレッドマンの攻撃で倒れたジラースを助け起こすなど、優しさを見せている。
 レッドマンと戦う怪獣・宇宙人の中で死亡が確認されなかったのは、バルタン星人だけである。
 着ぐるみは『ウルトラファイト』で使用されたものと同一。

宇宙忍者バルタン星人5代目 …… 水鳥 鉄夫(声の出演 42歳)
 身長ミクロ~50m、体重0~1万5千t。
 『ウルトラマン80』第37話『怖れていたバルタン星人の動物園作戦』(1980年12月放送)に登場。
 体色はグレーで、口吻の形状が豚の鼻のような独特なものとなっている。
 圧倒的な科学力と技術力を誇り、自分たちを優秀な種族だと思っている。そのため、異星人や宇宙生物を自分たちより劣ると見なして吸引光線で葉巻型の宇宙船に収容しては、下等生物としてバルタン星の宇宙動物園へ送り込んでいる。恨み重なるウルトラ戦士の一人であるウルトラマン80のことも、下等動物としてバルタン星の動物園に収容するべく作戦を開始する。UGMの一日体験豆記者に落選した少年・森田政夫に変身して UGM基地に潜入し、戦闘機シルバーガル内で矢的隊員と2人きりになったところで正体を現して捕らえようとするが矢的に脱出されたため、彼のパラシュートのベルトを切断して墜落死させようとする。しかし、80に変身されて自らも巨大化する。戦闘力は高く、ハサミからの火炎弾や格闘、瞬間移動、透明化、さらに宇宙船との連携攻撃などを駆使して地上や空中で激しい戦いを繰り広げる。
 着ぐるみは映画『ウルトラマン 怪獣大決戦』(1979年)の新撮シーンに登場したものの改造である。
 新たなバルタン星の設定は、銀河系に新たなバルタン星を建造したとする書籍がある一方で、「 R惑星の通称がこの頃にはバルタン星になっていたのではないだろうか」という考察もある。

宇宙忍者バルタン星人6代目 …… 西村 知道(声の出演 34歳)
 身長ミクロ~50m、体重0~1万5千t。
 『ウルトラマン80』第45話『バルタン星人の限りなきチャレンジ魂』(1981年2月放送)に登場。
 宇宙に造り上げた新バルタン星から、またしても地球征服にやってきた限りなきチャレンジ魂の持ち主。姿形は5代目のものとまったく同じであるが、破壊による制圧を目指した歴代の個体とは異なり、謀略による地球人の自滅を目指す侵略手法を採用した。
 初代や2代目など初期作品の個体は地球上の言語や価値観をまったく理解していなかったが、この個体は饒舌さに磨きがかかっており、「お釈迦様でもご存知あるめえ!」や「手裏剣、シュシュ」など、現代の日本人ですら日常話さないような江戸時代の町人言葉までよく話すようになっている。
 計画実行のために自分の顔を模した小型飛行艇に乗って子供たちの前に飛来し、ハサミから出した白い光線状の袋で捕らえた際に矢的隊員のライザーガンの銃撃で飛行艇を破壊され、彼の前で子供を光線に包んで人質に取り、巨大化してあらかた破壊活動を行った末、矢的が変身したウルトラマン80との直接対決となる。戦闘力は高く5代目と同様に瞬間移動や格闘術に長けており、さらにハサミから80の必殺技サクシウム光線と互角の泡状光線や、5代目も使用した火炎弾を放つなど、もっぱら武力による攻撃に転じて80を苦戦させる。
 着ぐるみは5代目と同様に『ウルトラマン怪獣大決戦』の物の改造だが、体色がやや異なり初代同様に目玉などが動く物が等身大時、5代目を流用した物を巨大化時にと2体が使い分けられている。

メカバルタン(通算7代目が改造された姿)
 身長50m、体重2万2500t。
 雑誌グラビア作品『ウルトラ超伝説』(1981年4月~86年2月連載)と特撮テレビ番組『アンドロメロス』(1983年2~4月放送)に登場。
 身体の一部をサイボーグ改造されてファイティング・ベムとなったバルタン星人。グア星のグア軍団の一員として登場。改造された左腕のハサミと右腕の機械式のメカ爪が武器で、主に相手を締めつけたり斬りつける攻撃で戦う。バルタン星人特有の両腕を上げて笑う仕草は見せるが、改造されてグア軍団の支配下に置かれているのか言葉は一切話さず、「ビョゥンビョゥン」という機械的な音声を発する。
 グア軍団侵略軍団長ジュダの部下となっており、一度やられてもジュダの魔力で即座に再生することができる。その際には、以前の同じ攻撃は通じなくなる。
 雑誌『ウルトラマンAGE』ではウルトラマンに倒された初代バルタン星人を、『ウルトラマンオフィシャルデータファイル』第106号では、地球で初代アンドロメロスに倒された個体のバルタン星人(これが通算7代目に当たるか)を改造して蘇らせたとされている。
 グラビア版の『ウルトラ超伝説』では、『てれびくん』1981年8月号、1982年2月号、3月号で登場。
 1981年8月号では、生身のバルタン星人(容姿は80登場時のもの)が軍団を編成して東京を襲撃するが、アンドロメロスに次々と倒され全滅した。
 1982年2月号では、侵略軍団長ジュダが復活した改造怪獣を率いてきた際、ボス格のみが復活してメカ改造された姿となって登場した。全員でメロスとウルフを取り囲んで高速旋回しながら炎の渦を発生させる火炎車戦法を仕掛ける。

宇宙忍者パワードバルタン星人(通算8代目)
 身長ミクロ~65m、体重0~2万3千t。飛行速度マッハ27(地球大気圏内にて)。
 『ウルトラマンパワード』第1話『銀色の追跡者』(1993年12月リリース)、第13話『さらば!ウルトラマン』(1994年8月リリース)に登場。
 これまでに多くの惑星を滅ぼしてきたバルタン星の凶悪な宇宙生物で、ウルトラマンパワードに追われて地球の衛星軌道上に全長8キロメートルの大型母艦で飛来。地球へは先遣隊として3体が降り立ち、その後、繭から誕生するとロサンゼルスの倉庫街で侵略の準備を行う。デザインが鋭角的なものに変更されている。体色は青。W.I.N.R.のエドランド隊長たちの攻撃により、バズーカ砲で倒されたかに見えたが、その後すぐに復活。変幻分身能力によって空中に自身の幻影を投影して撹乱を行う。設定では、周囲の時間波を遅くすることで超高速移動を可能とする。パワードとの戦闘時に背中の羽を伸ばして飛行し、空中戦を展開。クチバシ状の口から毒ガスを噴射するなどして苦しめる。ハサミから空間を圧縮する反重力波や赤色破壊光線を発射し猛攻をかける。
 最終第13話では、同族の個体がサイコバルタン星人の護衛のため、共に宇宙船でアメリカ大陸に飛来した。
 デザインは前田真宏。デザインにあたっては2代目バルタン星人や成田亨の作品「メバ」を意識している。前田は一番気に入っている怪獣に挙げているが、初代をデザインした成田からは怒られたという。結晶化した外骨格のイメージで描かれ、昆虫としての側面を強調したデザインとなった。

宇宙忍者サイコバルタン星人(通算9代目)
 身長ミクロ~75m、体重0~2万6千t。
 『ウルトラマンパワード』第13話『さらば!ウルトラマン』(1994年8月リリース)に登場。
 バルタン星のバルタン一族の支配者。通常のバルタン星人と比べて頭脳が異常発達しており、頭骨から露出している。巨大な頭は通常のバルタン星人より念動力が強いと言われており、ここから放つ精神波によって部下のバルタン星人や宇宙怪獣たちを操っている。先遣隊がパワードに敗れたのち一時撤退するが、密かに情報収集を続け、最後に宇宙怪獣パワードドラコを派遣。ウルトラマンパワードの戦闘データと光線の情報を宇宙恐竜パワードゼットンに与え、地球へ送りこんだ。パワードがゼットンと相撃ちになって倒れた後、全長1.6キロメートルに達する巨大な宇宙船で地球に飛来。W.I.N.R.のスカイハンターと対決するが、パワードの仲間と思われる2体の赤い玉(M78星雲人)がスカイハンターに加勢、ビームで攻撃されて宇宙船ごと爆破された。
 劇中では常に宇宙船内にて策を巡らせるが、NGシーンでは部下と思われる他のバルタン星人と共に地球へ降り立ちパワードの死亡を確認するシーンや、スカイハンターの前に立ちはだかるカットが存在していた。
 着ぐるみはパワードバルタン星人の改造。

宇宙忍者バルタン星人ベーシカルバージョン(通算10代目)
 身長50m、体重3万5千t。
 映画『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』(2001年)に登場。
 環境破壊によって故郷バルタン星が滅び、地球へ移住しようと来襲した宇宙生命体。この来襲が、ウルトラマンコスモスが地球圏を訪れるきっかけとなる。武器は冷凍光線や敵の光線攻撃を無効化するエクスプラウドなど、ハサミから発射する様々な光線。ほかにも背中から羽が生え、脚の形状も変化させての飛翔や、分身や脱皮など多彩な能力を持つ。
 世界各国が発した宇宙へのコンタクトを地球への招待だと解釈し、地球を子供たちのために安住の地にしようと考える。荒廃した母星の一部を切り取って居住できるように改造して内部には刃物状の罠も仕掛けた宇宙船・廃月で地球へ飛来し、コスモスとの空中戦を繰り広げた後、遺跡公園に眠っていた怪獣呑龍(ドンロン)を復活させる。呑龍がシャークスの攻撃を受けて倒れた際に呑龍の体内から飛び出し、シャークスの戦闘機を撃墜する。その後は廃月へ戻るが、シャークスの襲撃を受けて部隊を全滅させると、都市上空に飛来する。SRCの作戦による子守唄で眠るが、その隙に再度シャークスが攻撃を仕掛けたことに怒って地球の占領を決意し、コスモスと激闘になる。
 戦闘時にはネオバルタンに変身する。
 『THE FIRST CONTACT』の監督は、『ウルトラマン』第2話を手がけた飯島敏宏が務めており、プロデューサーの鈴木清からの要望により、バルタン星人が登場することとなった。
 デザインは丸山浩による。原典のモチーフはセミだが、本作ではクワガタがモチーフとなったため、角の内側に突起がある。背面はバルタン星人の円盤デザインをアレンジしている。飛行形態は、足を尖らせることで昆虫的なイメージをより強調している。

宇宙忍者ネオバルタン
 身長51m、体重4万5千t。
 バルタン星人ベーシカルバージョンの超戦闘モード。甲冑をまとった黒騎士のような禍々しい姿となり、両手にはバルタン星人に共通する巨大なハサミを持たず、サーベルや鋼槍、鉤爪や光線砲などを装備する。この両手から剣型の光線や光のムチなどを放つほか、肩の突起を無数のトゲに変えて放つ技も持つ。変身前と同様に分身術も可能であり、これらの能力を駆使してコスモスと互角の戦いを繰り広げる。
 デザインは丸山浩による。より凶暴にするため体色を黒くしているが、光沢があるとグリーンバックに映り込むため、ツヤ消しにしている。

チャイルドバルタン(通算11代目)
 身長120cm、体重15kg。
 バルタン星人ベーシカルバージョンの子供である。武力による地球侵略や争いを快く思っていない。このうち、シルビィという名の個体が平和的な解決を模索する中で春野ムサシの友達であるマリと同化した。シルビィはのちにマリとメル友になり、続く劇場版2作品にも登場している。
 デザインは丸山浩による。造形物は制作されず、CGのみで表現された。常にフワフワしているイメージでベーシカルをデフォルメしている。

超科学星人ダークバルタン(通算12代目)…… 尾崎 右宗(33歳)
 身長ミクロ~357m、体重0.1g~27万3千t。
 『ウルトラマンマックス』第33話『ようこそ!地球へ バルタン星の科学』、第34話『ようこそ!地球へ さらば!バルタン星人』(2006年2月放送) に登場。
 地球人を「地球を汚し尽くしたら次は月や火星を我が物にしようとする宇宙の侵略者」として敵視する銀河系外惑星バルタン星の過激派で、初代バルタン星人とほぼ同じ姿をしている。
 反重力による攻撃を得意とし、ハサミからの熱線や反重力砲を始めとして、超巨大化能力やクローンによる無数の分身体の発生、クローン技術によって四散した身体の再生などウルトラマンマックスを上回る能力を発揮。マックスの必殺技マクシウムカノンすら胸部の展開したスペルゲン反射鏡で弾き返し、超巨大化能力を使ってマックスを何度も踏み潰す。本人曰く、「バルタンの科学はウルトラの星の科学を超える」とのこと。バルタン星人は、元々は地球人と同じ姿をしていたが、度重なる核戦争によって今の姿に進化したと言われている。バルタン星の科学には相当なまでの自信を持っているようで、自分の能力を自慢する。
 一度は超巨大化でエネルギーを消耗した上、拘束光線で身動きの執れなくなったマックスを倒し、復活したマックスとの戦いでも終始優勢を保つが、同族のタイニーバルタンがバルタン星から持ち帰った古代バルタンの銅鐸状の古代遺物の音色を聴いて戦意を喪失。平和を愛する心を取り戻し、ダテ博士が開発した新兵器メタモルフォーザーによって人間と同じ姿に戻された後、タイニーと共にバルタン星へ帰還した。
 頭部の電飾は初代のスーツのものを再現している。分身したバルタン星人が空を埋め尽くす光景は、脚本を担当した飯島敏宏が40年間温めていたイメージであり、当初制作された CG映像ではバルタン星人は10体程度であったが、飯島の指示により大幅に増やされた。
 ウルトラシリーズ史上初めてウルトラ戦士に勝利したバルタン星人であり、その数々の超能力も合わせて最強のバルタン星人として紹介されることもある。

超科学星人タイニーバルタン(通算13代目)…… 半田 杏(14歳)
 身長ミクロ~1.5m、体重0.1g~55kg。
 ダークバルタンによる地球侵略計画を伝えるためにやって来たバルタン星の穏健派。一人称は「僕」であるが、バルタン星では女の子ということになっており、人間の少女に変身し、両手でVサインをして「マルルー」と呪文を唱えることで自由自在に重力を操り、ホウキにまたがって空を飛ぶなど、バルタンの超科学力による様々な、ほとんど魔法にしか見えない不思議な現象を引き起こすことができる。地球人のツトム少年の協力を得てダークバルタンの地球侵略を止めるべく奮闘。最終的にダークを改心させることに成功し、共にバルタン星へと方舟アークで帰った。
 デザインは丸山浩が担当。背中の白い模様は、イノシシの幼獣ウリ坊をイメージしている。

映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』(2009年)に登場するバルタン星人
 かつてウルトラ戦士に倒されたバルタン星人が、ウルトラマンベリアルのギガバトルナイザーの力で怪獣墓場から蘇ったもの。外見は初代ウルトラマンと戦った初代バルタン星人とほぼ同一。ベリアルが操る怪獣軍団の一体としてウルトラ戦士やレイモンの怪獣たちと戦う。ゼットンやアントラー、キングゲスラなどと共に初代ウルトラマンと激突する。
 過去シーンでも、「ベリアルの乱」においてベリアルが操る怪獣軍団の一体として登場し、他の怪獣と共に光の国を襲っていた。
 また、百体怪獣ベリュドラの左角を構成する怪獣の一体として初代バルタン星人、右腕を構成する怪獣の一体として2代目バルタン星人の姿がある。

映画『ウルトラマンギンガ ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』(2014年)に登場するバルタン星人
 渡会健太がウルトライブシミュレーション内でライブしたもの。容姿がほぼ同一である初代と同様に分身術や赤色凍結光線、白色破壊光弾などの技を使う。久野千草がライブしたテレスドンや石動美鈴がライブしたモチロンと戦う。テレスドンに対しては豊富な能力で圧勝したが、モチロンには腕がハサミである点を突かれ、ジャンケンで敗北した。

映画『ウルトラマンX きたぞ!われらのウルトラマン』(2016年)に登場するバルタン星人
 ファントン星人グルマンの記憶に眠る、はじまりの巨人・ウルトラマンの伝説を語る際の過去イメージシーンに登場。得意の分身能力などを駆使してウルトラマンと激戦を繰り広げた。容姿は初代のものとほぼ同一。
 使用されたスーツは2体のみで、1体はアトラクション用の物の流用であるが、合成技術で多数登場しているように見せている。

メバ
 1967年に成田亨が「バルタン星人をメカニックなイメージで」という発想のもとにデザインしたキャラクター。名前は「メカニック・バルタン」の略称で、昆虫的要素は薄く金属質のシャープなボディのデザインで、両手はハサミ状ではない独自の形状のものであった。映像作品に登場する機会はなかった。

未発表作品でのバルタン星人
 『ウルトラセブン』の未発表エピソード『宇宙人15+怪獣35』では、他の宇宙人と手を組んで宇宙連合軍を結成し、セブンを襲いダンに絶対安静の重傷を負わせ、怪獣を東京に出現させるシナリオが予定されていた。これ以前に『セブン』企画時の初期段階でもバルタン星人の登場は検討されていた。
 1993年に『ウルトラマン』の25年後を舞台とした映画『ウルトラマン バルタン星人大逆襲』の製作が予定されていたが、中止されている。千束北男(飯島敏宏)により執筆された脚本は飯島敏宏著『バルタンの星のもとに』(風塵社)に収録されている。内容の一部は映画『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』や『ウルトラマンマックス』第33話・34話に反映された。

類似キャラクター
・『ウルトラマンタロウ』第33・34話(1973年11月放送)に登場した極悪宇宙人テンペラー星人は、それまでの敵宇宙人の要素を組み合わせたデザインだったが、頭部や口吻の形状、ハサミ型の手など特にバルタン星人を意識した部分が多い。映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(2006年)以降ではスマートにリファインされたデザインのテンペラー星人が登場するが、デザインを担当した酉澤安施は、「バルタン星人がモチーフと聞いたので少しバルタンに戻していった。」と語っている。
・『ウルトラマンレオ』第15話(1974年7月放送)に登場した分身宇宙人フリップ星人はバルタン星人と酷似した笑い声を発するが、これはバルタン星人の鳴き声をアレンジ、早回ししたためである。青白い光学合成による分身やテレポーテーションを得意としている点も共通しており、ビデオソフト『ウルトラ怪獣大百科』では親戚関係も噂されている。


 あの~、これ、完全にメモ! 私的備忘録なので、特にこれに対する本文とかはございません。
 最近、ガシャポンであの豚っ鼻5&6代目がフィギュア化されたからふっと思い立っただけです。いいセレクトセンス、さすがは三条陸先生!

 でも、こうやってまとめるだに、バルタン星人の物語は『コスモス』と『マックス』で完結しているんですよね。確かに、今さら『シン・ウルトラマン』などで蒸し返すべきものではないのだな。飯島敏宏さんも M78星雲に旅立たれていることだし。
 リアルタイムで『マックス』を観た時の衝撃はものすごかったなぁ。他にも実相寺監督回もあったし、あの時期の土曜日の朝、ほんとうに毎週ワクワクしていましたよ。『メビウス』みたいに設定がかっちり決まっているんじゃなくて、わりと毎回毎回行き当たりばったりな作風が、いかにも「空想特撮シリーズ」って感じで大好きでした。平成ウルトラシリーズの中で一番好きですね。
 エリーちゃんももう、生身の人間どころか、立派な大女優さんにあいなりもうした……嗚呼、時の流れよ!!
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まごころ星人を、君に ~映画『シン・ウルトラマン』の感想 後編~

2022年05月21日 22時10分18秒 | 特撮あたり
≪本ブログは、2022年5月現在公開中の映画『シン・ウルトラマン』の感想を好き勝手につづるものですが、いち特撮ファンとしてど~しても譲れない異常なこだわりから、一部の登場人物や用語の表記を意図的に改変しています。どうしようもねぇ昭和野郎だとどうか哀れに思し召し、ご了承くださいませ。≫

 そんなこんなでまぁ、大ヒット上映中の『シン・ウルトラマン』を観た感想の続きでございます。
 前回の記事で、わたくし個人として「おもしろくない。」と感じた3つの理由のうちの2つまでくっちゃべってきたわけなのですが、いよいよ最後の3つ目に触れる前に記事の字数がいつもの1万字に達してしまいましたので、カラータイマーピコンピコンということで一時撤退させていただきました。やっぱさぁ……ラインの色が赤から緑って、しっくりこないよねぇ!? それ、成田亨先生の構想にはありませんよね!? 結局、カラータイマーを撤廃した意味がなくなってんじゃないの。なんなんだ、その見事なまでの墓穴の掘りっぷりは!?

 前回も言いましたが、3つ目の理由は、今までの2つとはちょっと異質なものだと感じました。前の2つは、たぶん作り手としてはあんまり意図的に出しているものではないような気がするのですが、この3つ目だけは、作り手が、特に言えば脚本を担当した庵野秀明さんその人が、かなり意識的にあえて出している「おもしろくなさ」だと感じたのです。そして、そこまでして、おもしろさを捨ててまで描こうとしたその要素こそが、『シン・ウルトラマン』を世に問おうとした本質であると思うのです、あたしゃ。


3、脚本がおもしろさを狙っていない。

 この作品の脚本を通して庵野さんが問いたかったこと。それは、「あなたは『自分と異なるもの』をどこまで受け入れられるのか?」という問題提起だったのではないでしょうか。
 私が思うに、この『シン・ウルトラマン』におけるシン・ウルトラマン(便宜上、初代ウルトラマンと区別するためにこう呼称します)は、お話が進んでいくにつれて、どんどんその超能力に科学的説明すなはち現実味がついて超人でなくなっていき、最終的には、世界人類のほとんどが知らないうちに宇宙空間でひっそりとゼットンと対決し、結局両者ともに「この世からいなくなる」というフェイドアウトのような結末に(いったん)なります。その姿は、「ウルトラマンがんばれ!」と地上の人類(だいたい日本人)が応援する中で、迫りくる大怪獣を華々しく退治する初代ウルトラマンとはまったく違う異質なもので、はっきり言えば「ヒーロー」とは呼べない不気味なもの、いわば「モスマン」や「人面犬」のような得体のしれない類の世界の方がしっくりくるような気さえします。
 そこらへん、同様に表情がまったく変わらない初代ウルトラマンでも、その「雄々しさ」や「苦戦っぷり」を活き活きと伝えていた「ヘアッ!」や「ジュワッチ!!」といった肉声をシン・ウルトラマンがいっさい発しないところに、庵野さんの意図がはっきり込められていると思います。『シン・ウルトラマン』の世界に、人類がいたらいいなと願う神様やヒーローはおらず、ただ、意図の汲み取りにくい無言の「異様なひと」がいるだけなのです。

〇善人でもなく、悪人でもない「異人」ウルトラマン

 なんだかわからないけど、人類の文明を脅かす大怪獣や宇宙人を全力で倒してくれる「異様なひと」ウルトラマン。
 ただし、日本の全エネルギーを吸い尽くしかねないシン・ネロンガをスペシウム光線で撃滅したり、シン・ガボラの放つ放射能ビームを中和させた上に遺体までも持ち去って処分してくれるという異様なまでの献身っぷりに、アサミ隊員ら科特隊のメンバーは「なんらかの意志」を感じ取ります。そしてそれは、ウルトラマンの仮の姿となっているカミナガ隊員との交流を通じて、「地球人類を守る」という確固としたウルトラマンの信念による行動だったことが明らかとなるのでした。

 守る。とにかく地球人類を守る。人類の日常生活を壊そうとする怪獣から守る。人類を滅ぼそうとするシン・ザラブ星人から守る。人類を騙して地球の支配権を奪おうとするシン・メフィラス星人から守る。天体兵器ゼットンを発動させて地球を太陽系ごと処分しようとする「あのひと」から守る。それが自分の属する「光の星」の掟に背く行為なのだとしても守る。守る対象の地球人類のほとんどがその貢献に気づいていないのだとしても、守る、守る、守る!!

 大丈夫か、シン・ウルトラマン!? もはやその姿は、「守る」という強迫観念に憑りつかれているようにすら見えてしまうアブナイ域に達しています。当然、そうまでして守る理由は物語の中で明らかとなるのですが、それはあくまでもシン・ウルトラマンが地球人類という生命体に興味を持つことになった、なんとなくもっと詳しく知りたくなったという「きっかけ」でしかないのです。その点、宇宙凶悪怪獣ベムラーの追捕という任務執行中にハヤタ隊員を事故死させてしまったのを申し訳なく思ったから自分の命を預けた、という初代ウルトラマンの動機とは、ちょ~っとニュアンスが違うんですね。初代ウルトラマンはあくまでも「光の国」(原典は光の星でなく光の国)の一員という立場を捨ててはいないのですが、シン・ウルトラマンは場合によっては仕事を捨ててでも興味のあるものの保護に邁進するという、地球人から見ても光の星から見ても常軌を逸した「異様さ」があるのです。いわば公務員と芸術家みたいな、本質の違い?

 これを言ってわかっていただける方がいかほどいらっしゃるのか不安なのですが、シン・ウルトラマンって、その行動の利害を無視した異様さ・危うさと、それを引き換えに手に入れている「唯一無二の輝き」が、あの天才やなせたかし先生の手によって生まれた「初代アンパンマン」(1970年発表)のそれに近いと思います。世界の人気者になっているカッコいい有名ヒーローたちに馬鹿にされながらも、砲弾が飛び交う紛争地帯に飛んで行って、そこで飢餓に苦しむ孤児たちに自分の焼いた手作りパンを配り続けるという行為を、死ぬまでやめなかった小太りの中年男、アンパンマン。そして誰の理解を得ずとも、全宇宙を敵に回しても、自分の行動を、想いを貫こうとする異人シン・ウルトラマン。この2人には、どこか似ている孤高さがあるような気がするんですよね。初代アンパンマンも、現行のあんぱんまんのような子どもウケのする要素は意図的に廃されています。

 シン・ウルトラマンの、にわかには親しみづらい「哀しきモンスター」っぷりは、奇しくも庵野さんが声優を務めたジブリ映画『風立ちぬ』(2013年)の堀越二郎のキャラクターともオーバーラップする部分が多いのではないでしょうか。あくまで実在の人物でなくアニメの中の堀越二郎の話なのですが、知らない子どもに自分のお菓子「シベリア」をあげようとしてキモがられるさまなどは、コミュニケーションの苦手な、それでも澄み渡った清い(それがゆえに危ない)心を持っている異人っぷりを際立たせているではありませんか。

 つまり、『シン・ウルトラマン』はヒーローもの特撮のようでありながらも、実はまごころひとつを武器にして闘い続ける、誰とというと、敵味方関係なくコミュニケーションの取りづらい周囲の他者すべてと闘い続ける修羅の道を選んだ、いや、その道しか許されなかった異常人の姿を描くヒューマンドキュメンタリーなのです。まぁそりゃ、おもしろさを追求するわけにはいきませんよね。ドン引きする周囲の人を描かなきゃいけないもんねぇ。
 う~ん、シン・ウルトラマンは、ブッダであり、キリストであり、宮沢賢治であり、現代の即身仏であるのか。その常軌を逸した「身の捨てっぷり」に意味があるのか無いのかは、その死後に生きる人類全員でよく考えて決めるべきことなのだ……深いなぁ~!!

 つまり、庵野秀明さんは、21世紀も20年代に入ったこの令和の御世に「いまだかつて現れたことのなかった新たな異端児」を生み出し、その規格外の愛情、まごころを受け入れる覚悟が人類にあるのか、また、守られるに足る価値があるのかという問いを投げかけているわけなのです。
 だからまぁ~、『シン・ウルトラマン』の「シン」は、『新約聖書』のシンなんでしょうかねぇ。いかにも考察好き界隈がわきそうな連想なので、言うのもこっぱずかしいですが。本質的に、光の国のウルトラ兄弟と光の星のシン・ウルトラマンがまるで違う印象を持たせるのは、そういう理由だったんですね。要するに集団の幸せか個人の信念か。宗教が違うのです。

 そんなことよりもさぁ、私が気になってしょうがないのは、庵野脚本の次のようなとこなんっすよ、ええ!!


〇子どものいない世界『シン・ウルトラマン』

 ここ! ここがいちばん気になるポイント。
 なんでなんだろ……なんで『シン・ウルトラマン』には、子どもの姿がほとんど見えないんだろう!?
 冒頭でカミナガ隊員が助けたランドセル姿の小学生とか、メフィラス星人とカミナガ隊員が会話しているシーンで映っていた公園の子ども達とかは、ほぼ誰が演じてもいいようなモブ扱いでしたよね。あとはぜ~んぶ、いい歳こいたおじさんおばさん、政治家のおじいちゃんばっか! ヘタしたら20代の男女も、フナベリ隊員ぐらいでほとんどいなかったような。その若手枠のフナベリ隊員ですら、ミョ~に所帯じみた雰囲気の人物に描かれていたし。別に悪意はないんだろうけど、カメラのどこをどういじくったら早見あかりさんがあんなにもっさりして見えちゃうんだろうか!?

 そして、なんで!? なんで、メフィラス星人のエピソードをチョイスしておきながら、子どもが一切メインストーリーにからんでこないの!?
 わからない……庵野さんほどの特撮愛に満ちた方が、「メフィラス星人の相手に子どもを選ぶ」という天才・金城哲夫のアクロバティックな脚本の妙味を、なんでああも簡単に切り捨ててしまうのだろうか。おかげでシン・メフィラス星人のエピソードは、おそらくは金城哲夫が「それじゃおもしろくもなんともねぇな。」と回避していたつまんなさに見事ハマってしまったではありませんか。政治家ばっかでつまんねー!!

 庵野秀明さんにとって、「特撮世界における子ども」とは、一体どんな存在なのだろうか。いなくてもいいような軽さのものなのか? 『ウルトラマン』のホシノ少年は、『帰ってきたウルトラマン』の坂田次郎くんは、そして『ウルトラQ』の次郎少年(『ゴメスを倒せ!』)なり三郎少年(『鳥を見た』)なりピー子ちゃん(『虹の卵』)は、そんなにいとも簡単にカットしていいものなのか!?
 前回にも触れましたが、『シン・ウルトラマン』の冒頭の『シン・ウルトラQ』パートは、それこそサービス精神満載でテンポも最高な導入になったのですが、よくよく振り返ってみると、「あれ、リトラは?」とか「え、ぺギラ駆除されちゃったの?」とか、そもそも『ウルトラQ』最大の持ち味である「市井のなんでもない人々が力を合わせて天災に打ち克つ物語」がまるごと無いものにされている点で非常に納得のいかないものが残ります。そこを除去しといてゴメスがうんぬんパゴスがかんぬんと言われても、そんなの『ウルトラQ』をリブートしたとは言えないのです。
 まぁ、あの映像が、政府がいろいろ情報操作をしながら作成した外部向けの公的資料であると考えたらいいわけなんでしょうが、せめて一の谷研究所は科特隊にからんでこないとダメでしょ! 「地球にやってきた宇宙人第0号」の称号をセミ人間から奪っちゃうのも、大人げないよねぇ~。

 ともあれ、少なくとも『ウルトラQ』や『ウルトラマン』において、半世紀前に特撮作品を作っていた方々がいちばん大切にしていた部分は、そこにある「夢物語」としての荒唐無稽なワクワク感だったと思うのですが。当時の庵野少年だって、そこがあったから特撮の世界にすんなり入り込めたのではないのでしょうか。その要素を『シン・ウルトラマン』に取り入れないというのは……庵野さんは、次世代を担う特撮ファンを作ることには興味がないのか? そこがわからない!!
 それでいて、ぬけぬけと「空想特撮シリーズ」の御旗を振りかざすというのは、おこがましいにも程があるのでは? 『シン・ウルトラマン』のどこらへんに「空想」の悦びがあったというのでしょうか。一介の女子バレー選手が身長57m の怪獣とバレー対決を繰り広げ、どっかの寺子屋の塾講師の青年がロープとナイフだけで宇宙大怪獣改造ベムスターを瀕死に追い込む『ウルトラマンタロウ』でさえ「空想特撮シリーズ」の大名跡は襲わなかったんですよ!? そこらへんの重みをちゃんとわかっていただきたい。

 一方、樋口監督はというと巨大アサミ隊員のタイトスカートの中が見えたとか、女性の身体のにおいがどうとかで勝手に盛り上がる「思春期型特撮ファン」なていたらくという……なんだよその、文科系部室のダベリ場感!?
 『シン・ウルトラマン』と『シン・ゴジラ』を観比べるだに、樋口監督と庵野さんとでは、同じ「特撮愛」だとしても、それぞれのグッとくる観点と言いますか、それにあこがれている各人の「精神年齢」が違うような気がします。
 つまり、樋口監督は、それこそ中高生の部室のような、同好の士が集う限られた空間の中で「あれはああいう意味なんだよな!」とか「オレだったらあれはこういうアングルで撮りたいね!」と、時を忘れて語りつくす体験を、その特撮の才を愛でる最高のゆりかごとして育ってきたような「キャッチーさ」と「女性へのほのかな幻想」があるような気がします。それがこじれた結果が、巨大フジ隊員を気持ち悪くリブートした巨大アサミ隊員がらみの物議なのではないでしょうか。
 それに対して庵野さんはどうかといいますと、思春期以前の、ともかく異形で巨大なものに対する信仰に近い愛といいますか、自分があれこれアレンジしたいとかエッチに解釈したいとかいう邪念など生まれる余地もない、子どものような「あこがれ」と、その子どもの時に生まれて初めてゴジラやウルトラマンを観た時の自分自身の衝撃を、いかにして他者にわかってもらうのかという永遠のテーマに独りで取り組んでいる姿が、その才能の原点にあると思うのです。周囲の人間が大騒ぎしようがメッタメタに大批判されようが、庵野さんの作風に揺らぎがないのは、庵野さんの仕事の最終的な判定人が「庵野さんご本人」だからなのでしょう。この唯我独尊感は……スゴイ! っていうか、その姿がシン・ウルトラマンそのものじゃないか!!

 だからといって、ドラマの中に「生き生きと活躍する子ども」をいっさい登場させないというその態度は、逆にあまりにも子どもっぽ過ぎないか!? ウルトラマンの世界は庵野少年だけが独り占めってか! いやいやそこはさぁ、金城、千束、上原、市川、佐々木といったいくたのレジェンドさまの後ろ姿を拝して、ちょっとは子どもを空想世界にいざなうマネくらい、してもいいじゃねぇかよう! 今の子どもたちにも夢を見させてくれよ~!!
 でも、こういう作品を世に出してるのが当代随一のお2人なんですもんね……グウの音も出やしません。そんなに子どもを出したくないんだったら、『シン・ウルトラマン』じゃなくて『シン・恐竜・怪鳥の伝説』でもやったらよかったんじゃないですか? 東宝じゃないけど! 恐竜も怪鳥も出てこないけど!!

 ただ、「特撮博物館」というロマンたっぷりの大企画を現実化して、かつ大成功させたお2人のことなんですから、きっと、また別の作品で思いっきり子ども向けに振り切ったものを見せてくれるかも、っていう期待も持っちゃうんですよね。いつになるかわからないけど……
 もしよ? もし、庵野さんが、いつかあの『帰ってきたウルトラマン』をリブートするんだったら、それは子ども(次郎くん)を出さないわけにはいきませんよね。さすがにそこは入れるよなぁ!? まぁそこにいくまで、当面『ウルトラセブン』や『怪奇大作戦』で子どもが大いにフィーチャーされることはないかもしれないけれども。

 余談になりますが、今回の『シン・ウルトラマン』でも、「円谷プロのリブートと言ったらやっぱこれっしょ。」といった軽率さで、いわゆる実相寺アングルな画面構成が多用されていたのですが(科特隊基地でよく使われていた、やたら低い位置のデスク上や事務機器のスキ間から発言している人物を撮影しているカッティング)、これだって、子ども向け番組としての意味がちゃんとあると思うんですよ。
 創始者である実相寺昭雄監督自身がどう理論づけておられたのかはこの際おいておき、私として強く感じる印象を述べますと、あの画面構成は、明らかに「視聴者( TVの外側にいる人)」と「物語(ウルトラシリーズの世界)」にはっきりした境界線を引くものであり、人類文明や地球そのものの危機に対抗する世界有数のエリートたる地球防衛組織の隊員たちの極秘作戦を「枠外からのぞき見している感覚」から本能的な緊張感を引き出すという重要な効果があると思うのです。そして、そのアングルが大人の視点よりも意図的に低くなっている、こそこそと隠れながら見ているようになっているということは、視聴者全員が番組を観ているあいだだけ無意識のうちに「子ども」に還元されてしまうという、とんでもないトリック演出なわけなんですよ、たぶんね! あとあれよ、異常などアップで登場人物の顔を接写するのも、大人の身体が大きく見える子どもの感覚だからなんじゃない、たぶんよ!?
 あのヘンなアングルが、あまねく視聴者の子ども時代における、「オトナ同士の意味のよくわからない会話を盗み聞きしていた体験」にリンクするからこそ、単なる奇をてらった演出でなく、映像作品を手がける人間ならばなんとなくやってみたくなる魅力を持ち続けるものになっているのではないのでしょうか。
 ただ、だからといってまんま使用意図もわからずバンバン採用しちゃうと、今回の『シン・ウルトラマン』のように「あぁ~、ファンサービスね。」程度の残念な効果にとどまってしまうわけです。だって、巨大アサミ隊員のタイトスカートの中が気になったり、平和な時期が来たらいかにもそれっぽいけど中身が何にもないジャズBGM なんかが脳内に流れるような子どもなんかいないからです。子どもを徹底的に排除している人が使っていい演出方法ではないと思うんです、実相寺アングルって。もちろん、実相寺監督が子どもが観ていい作品ばっかりを作ってるわけないのは周知の事実で、そここそが実相寺昭雄の唯一無二の魔力の源泉であるわけなんですが。
 いろいろ言いましたけど、要するに私が言いたいのは、樋口監督が実相寺アングルをマネするなんて、分不相応にも程がある!!ってことなんであります。そんな暇があったらとっとと「実相寺アングル」、「中野爆発」、「川北ビーム」、「板野サーカス」みたいな「樋口なんちゃら」を創始していただきたいと。もしかしたらもうあるのかも知れませんが、寡聞にして私はまったく聞いたことがありません。「樋口絵コンテ」? でもそれ、完成作品じゃ見れないしねぇ。
 あと、これ別に樋口監督のせいじゃないかもしれないけど、科特隊のマスコットのぬいぐるみ、全然かわいくないんだよ! ちったぁ『ウルトラQ 星の伝説』(1990年)の実相寺ちな坊を見習えい!!

 あれか、庵野さんと樋口監督のお2人は、この『シン・ウルトラマン』を反面教師として、「 VS ゴジラシリーズ」に対する「平成ガメラ3部作」みたいな対抗新人が爆誕することを期待しているのかな!? その輪廻に、私は大いに期待した~い!!


 ……とまぁ、こんなわけで今回も2つの記事にわたりいろいろ言いたい放題やりましたが、やっぱり庵野さんのからむ作品は、コストパフォーマンスが素晴らしいですよね!! おもしろいおもしろくないは、ぶっちゃけ関係ない。
 作品の内容の賛否はこの際ほんとにどうでもよくて、結局それを起爆剤にして観た人の思索や、観た人たち同士の議論がこれだけ活発になされるというのは、やっぱり庵野さんの本質が、周囲の世界に嵐のような波風を沸き立たせる「台風の目」だからなんでしょう。
 そういう庵野さんの性質にとって、先人の遺産を磨き直す『シン』シリーズの商法は非常に水の合ったものなのでしょうが……そんなに「自分」がなくていいものなのかなぁ~、とちょっぴり心配になっちゃったりもしてしまいます。まぁ、エヴァンゲリオンがもうあるからいいやってスタンスなのでしょうか。

 お次の『シン・仮面ライダー』、予告編じゃそんな雰囲気はまるでなかったけど、今度こそ令和の子どもたちがワックワクするような作品を期待しておりますよ、庵野監督~!!
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宇宙からきた変なヤツ!! ~映画『シン・ウルトラマン』の感想 前編~

2022年05月14日 22時47分07秒 | 特撮あたり
≪本ブログは、2022年5月現在公開中の映画『シン・ウルトラマン』の感想を好き勝手につづるものですが、いち特撮ファンとしてど~しても譲れない異常なこだわりから、一部の登場人物や用語の表記を意図的に改変しています。どうしようもねぇ昭和野郎だとどうか哀れに思し召し、ご了承くださいませ。≫


 ど~もみなさま、こんばんは! そうだいでございます~。
 いや~、あっというまに終わっちゃいましたね、今年のゴールデンウィークも。みなさまはいかがお過ごしでしたか?
 今年はなんだか、私の場合は平日出勤がちょいちょい差しはさまれちゃって、お得感の少ない連休だったのですが、それはそれなりに充分に満喫しましたねぇ、ハイ。

 できればちゃんと独立した記事にしたいのですが、私はこのゴールデンウィークを利用して、長年やりたかった夢をかなえまして。
 今年、3年ぶりに開催された山形県米沢市の「上杉まつり」(4月29日~5月3日)の最終日のイベント「川中島合戦再現」に、上杉軍の足軽として従軍してきたんですよ。コロナ対策の関係で上杉・武田両軍の動員兵数は少なかったのですが、戦場の迫力はすごかったですよ。みごとに日焼けしちゃったけど、楽しかったなぁ。
 甲冑オール赤備えの武田軍は、遠目の陣容こそ非常に怖かったですが、抜刀して実際に接近してみると、ピッチピチの女子高生やハイテンションな外国の方で構成されている部隊が多かったので、意外と若々しくておもしろかったですよ。でも足軽具足とはいえ、何百メートルも走るとそうとう息が上がりますね! わらじ履きはクッション性ゼロなので、股関節がガッタガタになりました。

 ああいう歴史イベントは、話せる人と一緒にいたほうが楽しいやねぇ! 関東からいらっしゃったという上杉謙信ファンの色白美人な娘さん、初対面にもかかわらず、正体不明な私との気さくなトークにのってくれて、どうもありがとう! 約束どおり、来年にも必ずまた戦場で逢いましょう!!
 その方、ゲームの『戦国無双』シリーズで上杉謙信のファンになったとおっしゃってたんだけど、そんな娘さんに私、岩明均の『雪の峠』をぜひ読むようにと薦めちゃったよ……少々びっくりするかも知れないけど、好きな人のことはなるべくいろんな面を知っておいた方がいいやねぇ。『信長の野望』シリーズでさんざんひどい目に遭わされてきた私にとっての上杉謙信のイメージは、まさにそっち寄りですよ。こわすぎ!! ベルセルク!!

 そんな感じの川中島レポートを、えっちらおっちら空いた時間につづろうかと思っていたのですが、そんな久闊を叙するヒマもなく、我が『長岡京エイリアン』としては決して無視するわけにはいかない映画がついに公開! これはちょっとスルーできないなということで、今回はこの映画を観た感想を問わず語りにくっちゃべっていきたいなと思います。来週末には『ハケンアニメ!』の公開もあるしね。忙しいな!!


映画『シン・ウルトラマン』(2022年5月13日公開 113分 東宝)

 1966~67年に放送された特撮 TVドラマ『ウルトラマン』を現代に置き換えたリブート映画であり、タイトルには「空想特撮映画」と表記される。円谷プロダクション、東宝、カラーが共同で製作し、企画・脚本の庵野秀明、監督の樋口真嗣など『シン・ゴジラ』(2016年)の主要製作陣が参加する。キャッチコピーは「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」、「空想と浪漫。そして、友情。」。
 ゆるめの世界観にしたかったことから、政府系組織内外の設定などは『シン・ゴジラ』に比べてかなりフィクション寄りとなっている。

 本作でのウルトラマンのデザインコンセプトは、初代ウルトラマンをデザインした成田亨が1983年に描いた油彩画作品『真実と正義と美の化身』が元になっている。成田と彫刻家の佐々木明によるオリジナルデザインへの回帰を図った結果、カラータイマーや目の下部の覗き穴、スーツ着脱用ファスナーに伴う背ビレ部分が排され、マスクからボディ、グローブ、ブーツまでシームレスに繋がっている。
 長い手足と痩身の身体は、初代ウルトラマンのスーツアクターを担当した古谷敏のスタイルを色濃く投影し、当時の塗料では表現しきれなかった金属のようなメタル感が意識された皮膚感となっているなど、宇宙人の雰囲気を強くしている。3DCG描写であるからこそ可能な表現として、基本動作などは初代ウルトラマンの映像をトレースしたり、古谷のモーションキャプチャーのデータを元にしている。ウルトラマンの CGモデルは、古谷の体型データから作成された。
 ウルトラマンの体表のラインは、成田が描いた様々な絵画やイラストからのシャープなイメージを融合させている。初代ウルトラマンの胸にあったカラータイマーは、後から制作の都合で付けられた経緯があったことから無くなっている。初代でも活動制限時間は明確に描かれていないため、本作でも制限時間は明言されていないが、エネルギー残量が乏しくなると体色の赤い部分が緑に変化するものとなった。ウルトラマンを CGアニメーションで作った後に、ウエットスーツを上から着せたような歪みやしわを加えている。
 本作でのウルトラマンの地球飛来時の顔は、初代ウルトラマン Aタイプ(第1~13話で使用されたマスク)のものに近づけられ、体色は全身銀色が採用された。

おもなキャスティング、用語
怪獣特設対策室
 通称「科特隊」。日本に次々と出現する巨大不明生物「怪獣」に対抗するために防災庁とともに設立された専従組織。
 制服は特にないが、オレンジ色の腕章をしている。
カミナガ隊員 …… 斎藤 工(40歳)
 本作の主人公。警察庁公安部から科特隊に出向した作戦立案担当官。
 専用デスクの上には消波ブロックのミニチュアを並べている。
アサミ隊員 …… 長澤 まさみ(34歳)
 公安調査庁から科特隊に出向した分析官。
 専用デスクの上には余計な物を何も置かないようにしている。
タキ隊員 …… 有岡 大貴(31歳)
 科特隊に所属する、城北大学理学研究科非粒子物理学専攻の非粒子物理学者。
 専用デスクの上にはエンタープライズや『サンダーバード』など、怪獣がメインで登場しない特撮作品の模型が置かれている。
フナベリ隊員 …… 早見 あかり(27歳)
 文部科学省から科特隊に出向した汎用生物学者。
 専用デスクの上には生物学関連の書籍やグッズが置かれている。
タムラキャップ …… 西島 秀俊(51歳)
 防衛省防衛政策局より出向した科特隊隊長。
 専用デスクの上には科特隊のマスコットキャラ「 KATO太くん」のぬいぐるみが置かれている。
ムナカタ参謀 …… 田中 哲司(56歳)
 科特隊の室長。
加賀美 …… 和田 聰宏(そうこう 45歳)
 警察庁警備局公安課所属。カミナガ隊員の元同僚。
小室防災大臣 …… 岩松 了(70歳)
大隈総理大臣 …… 嶋田 久作(67歳)
狩場防衛大臣 …… 益岡 徹(65歳)
中西外務大臣 …… 山崎 一(64歳)
内閣官房長官 …… 堀内 正美(72歳)
首相補佐官  …… 利重 剛(59歳)
早坂陸自戦闘団長 …… 長塚 圭史(47歳)
政府の男   …… 竹野内 豊(51歳)
ザラブ星人  …… 津田 健次郎(声の出演 50歳)
メフィラス星人 …… 山本 耕史(45歳)

おもなスタッフ
監督 …… 樋口 真嗣(56歳)
脚本・総監修 …… 庵野 秀明(61歳)
監督補 …… 摩砂雪(61歳)
副監督 …… 轟木 一騎(53歳)
准監督 …… 尾上 克郎(62歳)
VFXスーパーバイザー …… 佐藤 敦紀(61歳)
デザイン …… 前田 真宏(59歳)、山下 いくと(57歳)、竹谷 隆之(58歳)
ウルトラマン・怪獣・宇宙人オリジナルデザイン …… 成田 亨(2002年没)
ウルトラマン CG原型モデル …… 古谷 敏(78歳)
音楽 …… 宮内 國郎(2006年没)、鷺巣 詩郎(64歳)
 ※『エヴァンゲリオン』シリーズや『シン・ゴジラ』での候補曲から、未使用に終わっていた音楽も使用されている。
主題歌『 M八七』(作詞・作曲・歌 - 米津玄師)
配給  …… 東宝


 いや~、ついに公開されてしまいましたね。まさか、ほんとに庵野秀明さんが制作にかかわった『ウルトラマン』の公式作品が、しかも「円谷プロ」と「東宝」の奇跡のタッグで世に出てしまうとは! 作品の内容云々を言う前に、まずその時点で感慨深い。
 思えば6年前、『シン・ゴジラ』の感想をつづった時に私は、作中における日本政府とフランスとのミョ~な蜜月関係から、『シン・ゴジラ』の直接的な続編の形で『シン・ウルトラQ』を経由した『シン・ウルトラマン』が、庵野さんの手で必ず制作されるはずだと予想していたのですが、まぁこれは、半分当たって半分外れたという結果になったでしょうか。ちゃんと『シン・ウルトラQ』やってましたよね! 30秒もしないで終わっちゃったけど。
 あれ、権利やなんかの理由もあるんでしょうが、直接の続編じゃなくてモヤッとしたパラレルな処理になってるのが惜しいなぁ! 謎の政府要人役の竹野内さんとか総理役の嶋田久作さんとか、出オチで笑っちゃう「シン・ゴメス」とかのサービスはありましたが、あくまでも2016年の「巨大不明生物ゴジラ災害」のあった日本とは別の世界という扱いになっているのが、いかにももったいない。でも、シリーズ作同士どころか、同じタイトルの中でもエピソード同士で設定のつながりに整合性がないのが「ウルトラシリーズ」の伝統ですからね。『ウルトラマンレオ』になった瞬間に、『ウルトラマンタロウ』の防衛チームZAT の超絶科学どこいっちゃった!?みたいな。そりゃMAC も壊滅しますわ。組織間の引き継ぎって大切!!

 あっ、申し遅れました。この記事では、いわゆる「ネタバレ回避」はせずに好き勝手に感想を進めていきますので、映画を観る前だから真相に迫ることは知りたくないという方は、読まずにお戻りください。
 ていうか、私つらつらと思いまするに、映画はなんてったって映像作品なのですから、「あれが登場する」とか「あれが実はこれ」とかいうネタを文章でバラしたところで、映画の魅力を減らすことにはならないと思うんですよ。『シン・ウルトラマン』を観るか観ないかの判断にネタバレは関係ないんじゃなかろうかと。これが同じ文章の世界、特に推理小説(とその映像化作品)だったら問題は致命的になるかも知れませんが、大事なのは制作陣があれやこれを「どう映像化しているか」ってことなんじゃなかろうかと。だとしたら、予備知識に何が入ろうが、結局は作品そのものを観なきゃ話は始まらないのです。ソフト商品化を待てない人は、ともかく映画館へ行くっきゃない!

 私も、座席の込み具合やネット上のレビューが落ち着いてきたころにのんびり観ようかなんて思っていたのですが、特撮ファンの宿命といいますか、いざ公開日の13日金曜日になると居ても立ってもいられなくなり、仕事が終わるやいなや、景気づけに一人焼肉をした後に意気揚々と21時30分からの最終回を観に行きました次第です。いや~、盛況なのは当然でしたが、お客さんが見事に男ばっかりでしたよ! それでも、私みたいなオッサンというよりも大学生みたいな若者がメインだったのはちょっぴり安心しました。やっぱりなんだかんだ言っても、「ウルトラシリーズ」は現役最新作がコンスタントに出ているだけあって、ファン層が若いね! そこが「ゴジラシリーズ」ファンから見ると、ちょっとうらやましい。

 んでまぁ、『シン・ウルトラマン』を観てきたわけなんですが、ともかく、いち特撮ファンとしてまず1回だけ観た段階で印象に残った点を羅列していきたいと思います。まぁ、少なくともあと1回は観に行くだろうな。

 『シン・ゴジラ』は誰に対しても「おもしろいよ!」と言い張る自信はあるのですが、今回の『シン・ウルトラマン』に関しては、「まぁ観てみてよ!」とは言えても、おもしろいとは、ちと言えないものがあったかしら。

 おもしろいと思えるかどうかは、ほんとに人によりけり。ただ作り手の「世界」はかっちり出来上がっている作品なので、それを観ることによって湧き上がった感情を、こじゃれたカフェかどっかでエスプレッソでもすすりながらじっくりと自己分析することによって、自分の「好きなもの」や「許せないもの」を認識する格好のリトマス試験紙にはなるのではないでしょうか。これって、映画にしろ演劇にしろ小説にしろ、エンタテインメントのしごくまっとうな楽しみ方ですよね。そういう意味で、この『シン・ウルトラマン』はまず及第点はいっているのではなかろうかと。

 『シン・ウルトラマン』が、少なくとも私にとってはおもしろくなかった理由は、大別すると3つほどあったように思えました。

1、オリジナル『ウルトラマン』の魅力に勝っている点がほぼない。
2、監督の演出バランスが悪い。
3、脚本がおもしろさを狙っていない。

 う~ん、どれも致命的~!!
 でも、それでも私は、この作品を観ることを人に薦めたいとは思うのです。それは、「3、」において、脚本がおもしろさを捨ててまで訴えたかったことに、ちょっとだけながら感動してしまったからなのです。その話は最後にとっときましょう。
 まずは、いつもの流れにのっとりまして、おもしろくなかった3点をひとつずつ詳しくさぐっていきましょう。


1、オリジナル『ウルトラマン』の魅力に勝っている点がほぼない。

 これはすごいね~! なにがすごいって、55年後に作られたエンタメ作品に余裕で完勝できている『ウルトラマン』がものすごいんですよ。
 メフィラス星人も「天体制圧用最終兵器」ゼットンも、半世紀前の造形の方がカッコイくない!? そりゃあ、オリジナルのメフィラス星人は子ども相手にすぐキレるボテ腹体型のおじさんですし、ゼットンも科特隊ビルの窓ガラスを割ってぼやを起こすくらいの火球しか吐きません。でも、中に人間が入らなけらばならないという制約の中で作られ、その上で、同じように中に生身の人間の古谷さんが入っているウルトラマンと泥臭い格闘を繰り広げるからこそ、敵としての「手強さ」がひしひしと伝わってくるのです。ウルトラマンと対峙してじりじりと間を詰める悪質宇宙人メフィラス星人の指先のわななき、抵抗するウルトラマンの腕をしつこく払って目も鼻も口もない顔を「ぐぐぐっ」と近づけてくる宇宙恐竜ゼットンの無言の圧力。これらに限らず、幾多の大怪獣・宇宙人たちとの命のやりとりを克明に描写した『ウルトラマン』の映像の力に、一瞬でも勝てたカットが、果たして『シン・ウルトラマン』における5体の精鋭怪獣&宇宙人との戦いの中にあったでしょうか。シン・ガボラのドリル頭&しっぽとか「花びら超回転ビーム」とかは、いかにもぬいぐるみでは実現が難しいギミックで「おっ。」とは思いましたが、しょせんは前座怪獣の立場なので、大御所でありながらも身体を張って大奮発の5変化を見せたシン・ゴジラはおろか、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版・序』の第6の使徒(ラミエル)の足元にも及ばないかと思いました。
 怪獣の怖さって、一瞬で太陽系を滅ぼせる破壊力とか、巨大化したはずのウルトラマンさえ米粒のように見える大きさとかいう「強さのインフレ」で言えるものではないことは、『シン・ウルトラマン』制作陣のどなたもご存じのはずなのですが……
 唯一、敵としての「怖さ」を語れる存在だったのはメフィラス星人の人間態を演じた山本耕史さんの不気味な紳士的演技だったのですが、それが正体を現したとたんに、おしゃれなユーロカーみたいな威厳のかけらもない姿になっちゃうんだもんねぇ。居酒屋でらっきょうなんかつまんでないで、もっとメシ食って貫禄だせ!! でも、2代目くらいまでは太らないでね。ゼットンだって、私は「ブモー。」な2代目の方がシン・ゼットンの1兆倍は魅力があると思います。

 もうひとつ、オリジナル『ウルトラマン』の魅力を思い出させるだけで、『シン・ウルトラマン』のオリジナリティをかすませる効果しかなかった重大な要因として、『シン・ゴジラ』における伊福部昭サウンド以上にフル活用されていた宮内國郎サウンドと、それに対して耳に残るところがまったくなかった鷺巣音楽のしけっぷりがあったかと思います。
 いや、もちろんいい音楽なんですから宮内さんの BGMはどんどん再活用していいわけなんですが、それに対抗して奮起するはずの鷺巣詩郎さんの音楽、どこで使われてました!? いつもの絶望感をあおる合唱ばっかりで、もうぜんっぜん印象に残ってない!
 その点、どこをとっても重インパクトの塊といっていい強敵・伊福部先生を相手にしても、『シン・ゴジラ』における鷺巣音楽は、少なくともゴジラ VS 陸上自衛隊の緊迫感あふれる戦闘シーンや、あの「内閣総辞職ビーム」発射シーンにおいて、素晴らしい仕事をしていたと思います。ああいった感じの、『シン・ウルトラマン』といえばこれ!というオリジナルな BGMがあったのかといえば……みごとに無かったですよね。
 ただこれは、メフィラス星人戦からゼットンとの最終決戦に向かうまでが顕著なのですが、今回の『シン・ウルトラマン』は「盛り上げるところこそ重苦しい音楽を」という挑戦もあったようですので、鷺巣さんの調子が悪かったとばかりいうのも酷なのでしょうけど……結局、テンションの上がる「宮内サウンド無法地帯」にしてしまった現状に、いいことはなかったのではないでしょうか。じゃあ『ウルトラマン』観ようよって話になっちゃいますもんね。

 話が脱線しますが、私は奇しくもいま、使用される音楽に関して『シン・ウルトラマン』とまったく同じ不満を、現在放映中の『金田一少年の事件簿』最新シリーズに対しても強くいだいています。初代・堂本少年の事件簿に夢中になって、見岳章さんのサントラまで購入した私としましては、そんなに過去の音源をバンバン使うんだったら、音楽担当者に見岳さん以外の名前をクレジットするなと言いたい。使うならがっつり使う、使わないなら新しい道枝少年にぴったりのオール新曲で勝負する! そういういいとこどりで中途半端なの、お母さんいちばんダイッキライ!!

 やたら先達『ウルトラマン』の良さを際立たせるだけで、まるで「自分がない」超謙虚映画。それが『シン・ウルトラマン』なのです。ウルトラマン単体だけじゃなく、この映画全体が「異常にいいひと。」なんだよなぁ! おもしろさを過去作品に譲るとは……それ、ひとつの独立した娯楽映画と言えるのか!?


2、監督の演出バランスが悪い。

 こりゃも~、今に始まったことじゃないですよね。
 この作品は、ちまたでも多少物議をかもしているように、監督がおもしろがって提示しているギャグ展開が、お客さんの多くにとってそんなにおもしろくないというセンスの齟齬が生まれています。『シン・ゴジラ』では、せいぜいルー語を話す石原さとみさんくらいにしか見受けられなかった、「アニメではすっと入るけど、実写で役者さんがやるとなんかこっぱずかしくて見てられない」やり取りが妙に目立つんですよね。
 アサミ隊員が自分のデジタルタトゥーに一喜一憂した末に「よっしゃー!!」と絶叫するシーン、フナベリ隊員がテーブルいっぱいに広げられた駄菓子をむさぼるシーン、タキ隊員が VRゴーグルをかけて一人トークをしているシーン。それらは、アニメでやると違和感なくニヤリとしてしまうようなちょっとしたキャラクターの味付けシーンなのですが、ああいう風にいちいちカット割りしてじっくりやられると、いかにもトゥーマッチになってしまうんですよね。こういうの、実写で絶対にやるなっていう話じゃなくて、岡本喜八監督とかがやるともっとスマートで、ちゃんとおもしろくなるはずなんですけれどね。

 そしてそれ自体は、監督がギャグパート以上にシリアスパートをじっくり描いているのならば、バランスが取れて目立たなくなるはずなんですが、この監督、こういうアニメ仕込みの得意なディフォルメ展開はしっかり撮るのに、脚本の本質に迫る「カミナガ隊員(の中のウルトラマン)の地球人としての成長」とか、「ウルトラマンが地球に残ることを決めたきっかけ」周辺の描写はめちゃくちゃおざなりにしてませんか? その後の展開にかなり重要な関わりを持つはずの「現場に子どもが!」のあたりの雑な展開なんか、まるでコントみたいな飛ばし演出になっちゃってるじゃないですか。『シン・ゴジラ』の「現場におばあちゃんが!」とは雲泥の差の、緊張感の欠如。子どもも救助されたあとはいっさいお話にからんでこないし。昭和ウルトラシリーズへのリスペクトを込めた作品とは思えない粗雑な扱い。ホシノ少年的な展開、そんなに嫌いなんですか!? 「フィクション寄り」って標榜してるんだったら、思いきってそこまでいけばいいのに。

 あと、ギャグセンスが『ウルトラマン』での飯島監督や実相寺監督のそれと違って、いかにも品がないような気がします。
 「巨大アサミ隊員」のくだりとか、「ニオイで探索」のくだりとか、自分と他人の区別もつけずにおしりをパーン!と叩くアサミ隊員のクセとか。それ自体、別にあってもいいとは思うんですが、描き方がしつっこいから鼻につくんじゃないでしょうか。
 なんか「昨今のコンプライアンス的にアウト。セクハラだ!」みたいな批判もあるようなのですが、いやいや、そんなこと以前に撮り方が品もテクニックもないからダメなんじゃないですか? ニオイだからといって、カミナガ隊員がアサミ隊員の身体に鼻を近づけるさまをそのまんま映してなにがおもしろいんだよう!!
 そこ、飯島監督だったらたぶん、ニオイをかぐ様子なんか直接には撮らないかカミナガ隊員の背中越しのショットだけにして、あとはタムラキャップが空咳をしながら他の2人を肘でこづいて、3人仲良く視線をそらすという演出にするのではないでしょうか。あとはアサミ隊員の「えっ、ちょっ……」、「そんなに嗅がないで!」みたいなセリフだけを言ってもらっときゃいいのです。秘すればこそ花! そっちのほうが断然イイじゃないですか!! どうイイのか?って話は、それこそ真のセクハラなのでなしだ! ともかく、半世紀以上前の『ウルトラマン』よりも、現在の樋口演出の方が単純でひねりがないのは間違いないでしょう。あきれるほどに子どもっぽい。
 だいたい、そこに帰結させるためだけに、天下の長澤まさみさんにその前のシーンから「シャワー浴びてない」ってセリフをしつこく言わせるのが、無粋というか、気持ち悪いにも程があるのでは? そんなの伏線とは言わねぇよ。

 唯一、タイトスカート姿のまんまの巨大アサミ隊員の足元からの仰角カットを受けて、真剣な表情のタムラキャップが「もっと近くに行ってみよう!」と言う映像のつながりに私はクスリときましたが、それ以外のあれやこれやは……第一、身体を張ってる長澤さんがそんなに魅力的に見えないというのはダメなんじゃないだろうか。実相寺監督の桜井浩子さんとか、飯島監督のひし美ゆり子さんくらいにちゃんとキレイに撮らなかったら、女優さんがかわいそうじゃないですか!! 2時間近くある本作の中で、長澤さんがきれいに見えたのはほんとのラストの1カットだけでしたよ。

 ほんと、樋口監督は、あの金子修介監督と一緒に「平成ガメラ3部作」を撮っておいて、いったい何を学んできたのだろうか。金子監督はすごいよ~。『ガメラ3』では、あんな不憫な役だった仲間由紀恵さんでさえもちゃんと美人でしたからね。あっそうか、だからムナカタ参謀は、仲間さんのかたき討ちで科特隊室長となって怪獣退治に心血を注いでいるのか! なんという夫婦愛!!
 ムナカタ参謀といえば、平成版の『怪奇大作戦』で牧史郎父子役だった西島さんと田中さんが仲良く共演しているのはうれしいですね。お2人とも、押しも押されもせぬ大俳優におなりんさって……

 お話を本筋に戻しましょう。私の勝手な印象なんですが、今回の脚本のテイストって、もしかしたら本質的に樋口監督のセンスとは合わないのかもしんない。でも、だからといって監督演出も100%庵野さんでいったらかなり重たい作品になってしまい、しまいにゃ完結しなかったかもしれず。ともかく、『シン・ウルトラマン』として作品が完成したのは樋口監督の良くも悪くも「売り物としていちおう仕上げる」フットワークのおかげなのではないでしょうか。いいコンビ……なのか?


3、脚本がおもしろさを狙っていない。

 ここが、こここそが! 『シン・ウルトラマン』の不思議な魅力の本質だと思うんですが……
 字数がかさんできちゃいましたんで、続きはまた次回にいたしましょうか。ごめんなさ~い!!

 庵野秀明さんって、ほんとに不思議な作家さんですよね~。私の中では、アンディ=ウォーホルに通じるものが大いにある方だと思います。
 周囲はいっつも天地を揺るがす大騒ぎ。でも、騒ぎを起こすご本人はいつでも醒めていて、台風の目のように静謐&うつろ……
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