『甲虫の羽音』。Junhigh作。

2006-02-06 22:32:56 | memo。
 新宿火災跡
 若い警官の
 うつろな目は
 中空に焦点を
 求め
 切れ目のない
 人波は
 焼け跡を包み込む
 青きシート
 を洗うように
 流れていった

 快楽と欲望の
 渦巻く
 この通りを
 あてどなく彷徨し
 遠くに
 呼び込みの
 猫声を聞き
 新宿コマを
 右手に曲がる

 人を射るような
 まなざしを
 感じながら
 多国籍の街に
 甲虫の
 はばたきの
 音を聞く

 コンビニに
 たむろする
 疲れ顔の
 少年の
 横をすりぬけ
 缶入りの
 ブラックコーヒー
 を買う

 消毒液の
 臭いのきつい
 迷路に続く
 裏路地を
 通り抜け
 薄暗い
 公園ベンチに
 座り
 かびた星空を
 見る

 僕の失った
 時間は
 どこへ
 行こうとも
 発見できず
 置き去りのままに
 風化していく

 公衆トイレの
 ヒビ割れ鏡
 映る顔
 呼び戻せない
 時の欠落
 冷めたこころ
 すべてを
 革袋に
 詰め込んで
 流したい

 街灯に甲虫
 僕は
 何に
 向かって
 いるのだろう


     (ramen付記:数年前の歌舞伎町ビル火災時の……。)
コメント (3)
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