
さて、延々とお話ししてきた平成26年度富士総火演、
いよいよ最終回となりました。
この日、10式戦車が最後に観客の前を手を振りながら装甲する様子が
ニコニコ動画に上がっておりましたのでキャプチャしました。
わずか40秒の映像ですが、10式の走行の軽さ、速さが実感できるかと思います。
さて、フィールドを歩き、あまり熱心にではありませんが、
少し装備展示を見てから帰ることにしました。
89式走行戦闘車も、遠目には小さく見えましたが、
近くで見ると決して小さいというわけではありません。
自衛隊ではこの装備を、防衛省謹製の愛称を相変わらず拒否して
「ライトタイガー」ではなく「FV」と呼んでいますが、
これは「歩兵戦闘車」を意味する
Infantry Fighting Vehicle
から当初「IFV」と呼んでいたことに起因します。
わざわざ「I」を外したのは、これが「歩兵」という意味だからで、
日本には歩兵は存在せず、普通科と称することから
なぜか「FV」(ファイティング・ヴィェクル)になったのです。
Infantryがなくなったらfighting にも当然意味が無くなるのでは?
Fighting Vehicleでは「戦う車」になるがかっこわるくないか?
とわたしなど思うのですが、まあ、日本だから仕方ありません。
先日お会いした元陸幕長も普通に「歩兵出身」と言っていたように、
「歩兵」は公式あるいは文面では無くなっただけで、「駆逐艦」「士官」
のように口語では現行ですけどね。
しかし屈折した「軍隊」だなあ・・・あ、これも駄目なのか。
そしてここに警備のため立っていた隊員なのですが、
多くの自衛隊員のように結婚指輪着用でらっしゃいます。
そしてその左袖には
FUJI SCHOOL BRIGADE MARTIAL ARTS INSTRUCTOR
と書いてあります。
これ・・・どういうことですか?
気づいたのが写真をアップしてからなので、本人に聴くわけにもいかず。
そこで息子に聞いてみることにしました。
息子は、この夏サンノゼを車で走っていたとき、わたしが上空を指して
「見て、軍用機」というと、ちらっと見てただけで
「あーC−2だね」と機種を即答し、わたしを驚かせました。
軍用機になど全く興味を持つ様子もなさそうなのに・・。
ゲーム関係で色々と仕入れて来る知識の一環かもしれません。
というわけで、
「これなに?」
と聴くと
「だからカラテかなんかのマスターだよ」
えーだからなんでカラテマスターが戦闘車の前に立ってるのよ。
「知らね」
確かに武道の教官といわれても違和感のない体躯ではありますが・・。
マーシャルアーツに他の意味があるとかいう事情を
ご存知の方、ぜひ教えて下さい。
軽装高機動車は、公式愛称「ライトアーマー」、部隊では
「LAV」、または「けいき」などと呼んでいます。
なぜかこのラヴだけ、「接写撮影禁止」と貼り紙がされ、
小窓からは中が見えないようになっていました。
予想ですが、(撮影禁止だったので遠慮して近くでも見なかった)
助手席のモニターかなにかに機密があったのではないでしょうか。
そんな機密よりわたしが興味深かったのは、これ。
なんと
純正ショベルと専用ショベル収納システム!
あんまりショベルが使われた形跡がありませんが、こんな場所に
きちんと装備するからには重要な備品なのだろうと思います。
にしてもよく考えられてますよねー。
96式多目的誘導弾システム
は中をのぞいてもいいようです。
ガン見する彼氏にそれを見守る彼女。
愛称は96マルチ。
曲射弾道を描いて飛翔する長射程の大型誘導弾です。
10式ほどではないけど大人気、地雷原処理車。
90式くらいになると道無き道を切り開くことも可能ですが、
いかに戦車でも地雷があっては動けません。
本日の演習でも白眉といえたのがこの地雷原処理車の展示でした。
因みにまわりに迷彩服がいっぱいいますが、自衛官は奥の一人だけです。
地雷原処理車の俯仰を行う部分は、このような
蛇腹状のもので覆われているようです。
何か飛んできて挟まったら元に戻せなくなるからですね。
このころになると、多くの人が装備の回りにたくさん。
「接写禁止」と書かれたラヴの車窓は、案の定それが
興味を引く結果となり、皆が覗き込んでいます。
逆効果だったのではないかと思うのはわたしだけ?
人垣の間から自走砲の砲身が綺麗に並行して見えています。
90式先輩はなんと今気づきましたが囲いなしです。
これなら手形つけられますよ~。
超余談ですが、「やわらか戦車」で90式先輩が好きになるのは
女性らしい曲線を持った74式の戦子さん(弁当屋)です。
オーロラビジョンの画面にはずっと自衛隊広報ビデオが流されています。
わたしたちは帰るだけですが、自衛官たちの仕事はまだ終わっていません。
実はわたしはパスしたのですが、この後には夜間演習の展示があり、
おそらく昼間以上に大変な任務をこなさなくてはいけなかったのです。
警備や整地を含めて大変だったことと思います。
今これを見ていて思ったのですが、自走砲と戦車の見分け方は
単純に自走砲の砲身は長い!でいいかもしれませんね。
自衛官の説明を熱心に聞いているのはほとんどが男性です。
女性のこういうイベントへの参加が増えた昨今でも、
スペックや実際の昨日についてのオタ質問をする女性はさすがに
まだまだ希少種かもしれません。
この辺で見学を終了し、わたしは出口に向かいました。
観覧席のステージに向かって左側は自衛官の待機場所で、
このような偽装網を掛けたテントが立っています。
偽装網はわずかでも暑さを凌ぐ役目があるのかと思いました。
もはや巧みの技と呼びたいくらい。
斜面には車両がミリ単位の車間で停められています。
この、一段高いところにあった外の見えるテントですが、
もしかしたら来賓の観覧する席だったのかもしれません。
雨や陽射しをよけつつ、全面が見渡せる場所だからです。
そしてテントの前の小高くなっている一角が報道席。
三脚が立っていますが、カメラはなく、カメラマンは今
外に出て撮影をしているのかと思われます。
バラックのような建物ですが、アンテナが立っているここは通信班。
偽装網ですっかり隠されていましたが、中からはいろんな音が聞こえて
かなりたくさんの隊員が詰めているテントに思われました。
そんな観察をしながら駐車場に向かいます。
行きは何とも思わなかったのに、帰りの坂道の斜面が
あまりにも急だったことに気がつきました。
隣を歩いていた人が、
「あれ、この坂道こんな急だったっけ」
「行きは気づかなかったな」
と全く同じことを言っていたのでおかしくなりました。
朝、一刻でも速く現場に到着しようとして気がせいているときには
誰でも全くそんなことは意識にないくらい懸命に歩くものなのですね。
全てが終わって疲れと気が抜けた状態で歩く身には、
全く別の道のように感じられました。
さて、興奮と感激のうちに終わった総火演。
わたしにとって生まれて初めての実弾による陸自演習でした。
我が日本国自衛隊の精鋭ぶりを目の当たりにし、
あらためて彼らの日頃の鍛錬に頭が下がる思いでしたが、
最後にこんな隊員たちの姿を紹介して、
この総火演編をおしまいにしたいと思います。
ヘリが次々と着陸し、展示のための戦車や自走砲などの装備が
走行して所定の位置に付けられているあいだ、
このような一団がフィールドをくまなく歩き回っていました。
一番前の隊員が持っているのはゴミを挟むトングですが、
あとは全員な長い棒と、背中にランドセルのような器具を背負っています。
どうやら不発弾や燃え残りなど、フィールドに危険物を残さないように
点検して回っている部隊のようでした。
10式戦車でスラロームした隊員にも、ローラーで地面を均した隊員にも、
こうやってフィールドを歩いて点検にあたる隊員にも。
この日任務にあった全ての自衛官たちに、心からの敬意と感謝を。
終わり。
戦車は直射(自分で照準して撃つ)ので、ご覧になられた以上でも以下でもありませんが、りゅう弾砲は曲射(目標の近くにいる観測員が目標の位置をりゅう弾砲に伝えて、その指示に従って撃つ)なので、総合火力演習ではいませんが、実戦だと○の台の周辺には観測員がいます。
これを経験して見るともうちょっと武器の怖さが分かります。射弾が自分のところに落ちて来ることはまずないとは言え、発射側にいるのと、弾着側にいるのでは、やはり迫力が違います。
頭の中の知識だけで戦争ハンタ~イ!と叫ぶのは簡単ですが、なぜいけないのか、総合火力演習を見るとよく分かりますよね。
LAVのガラス窓の接写禁止は、ガラスの厚みで防弾性能が(分かる人には)分かるからです。
90先輩に囲いなしと書かれているのは、FVじゃないかと思います。
「武器の本当の恐ろしさを知るイベント」だと思います。
わたしは見なかったのですが、いろんな体験談を拾うと、会場の近辺に
「集団的自衛権反対」「子供達を戦場にやるな」
といったのぼりを立てていた集団がいたそうです。
そんな人たちは会場に入れないのですが、彼らがもし中で訓練を見たとしたら、やはり
「兵器とはこんなおそろしいものだ」ということを実感するでしょうし、
さらにそれによって彼らの主張は裏書きされるでしょう。
しかし、我々は「こんな恐ろしい兵器だからこそ使われることがあってはいけない」
と認識するという意味において全く同じなのです。
実戦によって知った恐ろしさは「だからそれを捨ててしまえ」なのか、
「相手が捨てない限りこちらも捨てない」なのか、
全く行き着く先は違ってしまうのです。
平和を望む気持ちは同じであるのに、こうなってしまうんですね。
ラヴの「接写禁止」の意味、そうなんですか。
皆興味津々で中を覗き込んでいたけど、果たして一人でもその結論に達した人がいるかどうか。
>囲い
74式が囲んでいるのに90式が囲いなしなんて変ですよね。
というわけでオタの皆様、やはり90式先輩にも手形付けられません。
素晴らしいお写真と濃いコメントをありがとうございました。三十数年ぶりの総合火力演習でしたが、見ただけよりもっともっと楽しいものになりました!
Markさん、徒手格闘って陸自の訓練で行われるあれですよね。
なるほど、徒手格闘の教官の資格を持っている走行戦闘車隊員ということだったんですか。
教官が「専業」ではなく、隊員の資格制任務であるということはちょっとした驚きです。
本当に自衛隊の中の世界は外から見ると色々とあるものですね。
CH乗って来られましたか!いいなあ。
あれは展示を見ていてもとても安定していて乗り心地は良さそうです。
なんといっても自衛隊の将クラスの国内移動は皆これで行うそうですし、
習志野のときには防衛大臣も運ぶくらいですからね。
やっぱりヘリ飛行中には全員腰に何か付けるんですね。
今回の展示でもどう見ても着陸寸前のオート隊とかは固定具なしに見えましたので、
まさか、と思っていましたが安心しました。
雷蔵さん、その辺がもう残念過ぎるんですよ。
相手からこういう攻撃を一方的に受けることには全く想像も至らないんです。
佳太郎さんへのコメントの返事で書きましたが、「こちらが武力を放棄すれば向こうからは決してやって来ない」
と信じている人が現実にいるんです。
それがわたしの身内だというのが一体何の因果かと思ってしまうわけですが(笑)
何を根拠に、世界を性善説で測れるのか、と聴くと「そんなことをしたら世界に非難されるから」
戦争を仕掛けて来られなかったのが日本が平和だった理由なのだそうです。
じゃあなんで竹島は取られているのか、なぜ尖閣に侵入されるのか、それは9条のせいじゃないのか、
と聴くと答えられないんですよ。
そしてそれ以上の議論を拒否されましたorz
こういう団塊、戦後世代が消えないともしかしたら日本は前に進めないのかも、
と思ってしまいました。
こちらこそ、小さな疑問から大きな間違いまで(笑)逐一的確なレスポンスを頂き、
陸自装備と戦闘力に対する理解が深まりました。
心からお礼を申し上げる次第です。
全隊員なので女性も含みます。部隊に行くとやっているところに出くわすこともあります。おっちゃん(おばちゃん)は除外で一佐になると出なくていいそうです。
腕、胸、股間に防具を付けますが、相手と息が合わないと入ってしまい、痛い思いをするようです。二佐から一佐になるときのメリットとして、徒手格闘免除はバカにならないという人もいるそうです(笑)
これがあるのは教育隊のときだけかと思っていました。
写真の方はやはり「兼教官」だったのですね。
道理で立派な体格だと思った。