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ヒラー航空博物館~次世代型航空機

2014-07-26 | 航空機

去年の夏滞米したときに見学したヒラー航空博物館ですが、
あまりにネタを小出しにしすぎて、全部報告し終わらないうちに
またしてもアメリカに来てしまいました。
今はまだ東海岸ですが、西に移動したときにもう一度訪れて、
前回とは違ったアプローチでご報告していこうかなと思っています。



ヒラー博物館はアメリカの航空博物館の中でもそのアプローチが
非常に多角的で勝つユニークなものだというのが、いくつかこの手の
博物館を訪れてわたしが受けた感想です。

やはり科学革新という意味で先端のシリコンバレーを擁し、
航空機に関しても先端の技術が集結してくるせいか、
ただ従来の航空機をメモリアルとして展示するだけに留まらず、
現在進行形の航空技術のあり方を想起するような科学技術の一端を
このような展示で見せてくれていると感じました。



そのヒラー国空博物館の一隅にこのような航空機の模型がありました。 

一見かっこいいのですが、そのコクピットや窓から想像されうる大きさを 考えると、
わたしの場合、先に「キモチ悪い」という言葉が浮かんでしまいます。

これが例えばせめてステルスくらいの大きさなら何とかなるんですが、
どうして大きいとキモいのか。

「巨大な造形物恐怖症」というものがあります。
インターネット社会になって、今までなら人に話すことも憚られる
自分の中の「フォビア」について堂々と(匿名ですが)
語り合うことができるようになったため、
様々な「恐怖症持ち」がそれこそ仲間を求めてスレッドを立てたりしています。
そういうのを見ると決してこれが特殊なものではないと安心するのですが、 
この「大きな飛行機が怖い」というこの性癖を理解できる方はいませんか?

たとえば、わたしはキャッスル航空博物館で見た

 

これとか(ブラックバード)



特にこれとか(B−52)を見ると、かっこいいとかなんとかよりまず
水族館で巨大魚を見たときのような何とも言えない落ち着かなさを感じます。
怖い、とまではいかないのですが、なんというか・・・・・
やっぱり、キモチ悪い、というのが一番近い気持ちではないかと思います。
この冒頭写真の飛行機はどこからどう見ても「エイ」なのですが、
エイやイカ、タコ、マンボウ・・・巨大魚類に対する感覚に通じるものがあります。

というわけで冒頭の飛行体がもし巨大ならこんなキモいものはないのですが、
これは

BWB Blended Wing Body  

という次世代型といわれる航空機なのです。

貼ることはできませんでしたが、ボーイングのHPの映像を見ていただくと
いかにこの飛行体が「エイ」そのものであるかわかります。

スティングレイといわれるあのエイの尻尾までちゃんと再現されているんですよ。

このBWBはボーイング社がNASAとの共同開発を行っているものですが、
NASAは

「環境的責任 航空プロジェクト(Environmentally Responsible Aviation project)」

の一環として、20年後を視野においた航空機の研究をしており、
その具体的なモデルがこのブレンデッド・ウィング・ボディ型なのです。




研究段階なのでいきなり巨大な旅客機を作るわけにもいかなかったらしく、
まずは1:8.5スケールのものを作り、様々な研究が行なわれています。
ちなみにこのサイズが翼幅6mということなので、フルスケールとなると
約50m・・・・・・・・・・やっぱり怖い(笑)


風洞実験中。


バーチャルツアー。

ブレンデッドウィングボディ
というのは翼と胴体が一体型になっていることをいいます。
バーチャルツァーで内部を見ていただければわかりますが、客室が広いため、
全く窓に面していないコンパートメントが出て来る模様。
外が見えない乗り物、しかも航空機はおそらく受け入れられないと思うがどうか。

それだけが理由ではないと思いますが、
移動を目的とする一般人には、この飛行機、不評のようです。
今のところ旅客機の会社は、ほとんど興味を示していないようですね。

しかし「環境的責任」プロジェクトで、研究の結果この形が採用された、
ということに注目すると、このシェイプが
「省エネルギーの面で大きく意味を持っている」ということですから、
いずれはこういったタイプに航空機は移行していくということのようなんですね。
(やだなあ)

まず、このぬめっとした平たい形は空気抵抗がまず小さいので
省エネルギーであることはもちろん静音性が確保できます。
そして製造は簡単になるのかどうかはわかりませんが、
少なくともメンテナンスも楽そうです。
そして、貨物部が飛躍的に大きくなるので一度に輸送できる人員も増えます。

これは、万が一事故になったとき
それだけ被害も増えるということでもありますが。





OBLIQUE ALL-WING(オブリーク・オール・ウィング)

スタンフォード・テストモデル、と説明があります。
オブリーク、というのは「斜め」という意味で、オブリークウィングは例えば



こういう翼をいいます。
昔「斜め銃」を搭載した日本機がありましたが、あれだと
「オブリーク・ガン」なのかしら。
ついでに、「斜め上」は「Diagonally on」となります。関係ないけど。


All-wingという名称は、機体のすべてがこれ翼だからです。
これが飛ぶとこうなります。



怖いよこれ怖いよ。
だいたい、どっちに向かって飛んでるんですか。



と思ったら、飛んでる方向がわかる画像を見つけました。
斜に構えて進む飛行体だったんですね。
それでオブリーク、と。
なんかいろいろとツッコミどころの多い飛行体であるなあ。
どうやって着陸するの?とか、操縦席はどこ?とか。



ここにはこういった「普通でない形」の航空機のシェイプが
パネルで展示してあります。

ボーイング社のイメージカラーで塗装されているこの相胴の飛行機、
現代版のP−38か?と思ったのですが、これも「大変大きい」のだそうで、
相胴の片側はまるまる液体ガスかオイルのタンクになっていて、それらの
輸送を目的として作られたものです。

1970年のオイルショック後登場して来たコンセプトで、
その後代替燃料を模索する中、こういう輸送法も考案されました。



補助尾翼をつけた近未来的デザイン。
機能は向上すると思いますが、なんかかっこわるい。
なんだかバランスが悪いと思ったら、主翼にその機能を負わせるつもりだと思いますが、
水平尾翼が無いんですね。



ティルトローター式の飛行機。
オスプレイのテクノロジーをベースにしています。

ローターをティルトつまり機体側に傾けることによって垂直上昇が可能になるので、
都市間を結ぶの通勤用に使われることを期待しています。

これからのこのタイプの飛行機は、効率改善のために
翼の形がこのようになっていくだろう、ということです。

 
さて、ここで、わたしはどうしてもあの名前を出して来ざるを得ません。

 米国国防高等研究計画庁(DARPA)

の名前を(笑)

 

この、実にキモい飛行体は

ノースロップ・グラマン・スウィッチブレード

といい、アメリカがノースロップとグラマンに作らせた無人機ですが、
この飛行体のリスク軽減や 予備計画を公募したところ
DARPAの案が「受賞」し、
1030万ドルの「研究費」を獲得しました。

こういう形をしていますが、高速性、航続性、耐久性を求めた結果
このような形に行き着いたそうで、機体の下に付いているエンジン部分が
斜めに稼働し方向を変えるそうです。

斜め翼というのは
主翼全体を中心の一点を軸として斜めにある程度回転させるもので、
左右の片側は後退翼・もう一方は前進翼となるわけですが、
これは翼が回転しているのか、それとも下部が回転しているのか。

なんだか禅問答みたいですけど。


こういった変な、といってはなんですが、普通でないものを開発するとき、
そこに欠かせないのがこのDARPAだということがまた証明されましたね。

しかし途中経過はすべて省略しますが、案の定この計画は、

制御システムの難しさを理由にキャンセルされました。

負けるなDARPA。



これは解説の写真を撮り損ないました。

ボーイング2707SST


アメリカ初の超音速旅客機としてボーイングが1970年代に開発しました。
超音速旅客機といえば有名なのはコンコルドですね。

ところで私事ですが、アメリカにいる頃、ふと、
「コンコルドに乗ってみたいね」という話が出て、
まだその頃就航していたコンコルドの運賃を調べたことがありました。
答えは

「アメリカからパリまで普通運賃片道一人100万円」

ということで、その桁違いの高さに驚いたものですが、
コンコルドは、その非常識な価格と、滑走距離を要することがあだとなって
経営に苦境を来していたさなか、2000年7月5日の
シャルル・ドゴール空港での墜落事故
きっかけとなって事故の二十日後に運行停止になってしまいました。


コンコルド墜落事故

実はその事故が起こったのはわたしたちがたまたま値段を聞いた直後。
もしうちが家族三人往復600万の運賃がポンと払える富豪であったら、
丁度その日コンコルドに乗っていたかもしれない、くらいのタイミングでした。





さて、コンコルドもそうですが、超音速旅客機が発展しなかった理由の一つは、
ソニックブーム(超音速突破のときの衝撃)です。

なぜ次世代型航空機の話をしていてこの、少し古い話をするかというと、
このソニックブームの低減の技術は現在でも研究され続けており、
その研究を主導で行っているのが、DARPAでもあるからです。

わたしはこの組織を甘く見ていたかもしれない。
ちゃんとした研究もやっていたんですね。って失礼?

ちなみに日本でこのソニックブーム低減の研究をしているのはJAXAで、

低ソニックブーム設計概念実証プロジェクト(D-SENDプロジェクト)

と称するプロジェクトを持っているそうです。 


さて、20年後、世界の空にはどんな飛行機が舞っているのでしょう。

ブレンデッド・ウィングボディの実用化はおそらく疑いないところでしょう。
もしかしたらその20年後には葉巻のようなオールウィングの飛行体が
主流になる日が来るかもしれません。

ところで、この「葉巻型」でふと思ったのですが、UFOのシェイプって、
わりと今地球で開発されている次世代型航空機に通じるものがありますよね?

もし他の惑星から地球を訪ねて来るくらいの高い文明を持った生物がいるのなら、
彼らの乗っている飛行体はそのまま人類が将来的に持つはずの航空機と
そっくりであったとしても全く不思議はないわけですが・・。



 

 



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1 Comments

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かっこいいじゃないですか (雷蔵)
2014-07-26 06:06:46
全翼機、かっこいいと思いますけどね。ご存知かと思いますが、全翼機の歴史は古く、第二次世界大戦中にドイツのホルテン兄弟が考え出したデザインで、大戦中のドイツ空軍と戦後、ノースロップが実用化(YB-35。採用ならず)しています。今のB-2ステルス爆撃機もB-35の延長線上です。ドイツの機体はインディー・ジョーンズ?の映画に出て来ます。

旅客機にはどうなんでしょうか。確かに大容積にはなりますが、大きければ重くなるので、胴体(翼)は金属製ではなく軽い炭素繊維主体になるでしょうが、お値段もそれなりになります。

炭素繊維の機体の維持整備は金属より大変です。金属の場合は、板の張り合わせなので、痛んだ部分を取り替えればいいのですが、炭素繊維はその部分だけの交換は出来ないようです。最近のクルマはドアやバンパーに傷が付くと割と簡単に全交換になりますが、あんな感じです。

全翼機以外のデザインは確かに「キモい」ので、採用の可能性は低そうですが、全翼機はなかなかかっこいいと思いました。

ヒコーキに乗る人は案外、保守的ですよね。米空軍のF-15後継機はF-22とF-23の競争になりましたが、保守的なデザインのF-22が選ばれました。F-23はノースロップ製で全翼機に近いデザインです。

個人的にはあの設計陣を日本に呼んで、設計させればいいのが出来そうだと思うのですが、ゼロ戦を設計した会社の誇りが許さないでしょうね。そろそろ飛行試験が始まる「心神」はステルス機ですが、極めて保守的なデザインです。

模型好きが見ると、ここは○○から持って来たなとかすぐに分かるパーツ(操縦席の風防はF-1戦闘機を流用)があります。そのためか、機首のデザインはF-1に似ています。

会社毎にカラーがあるのでしょうね。ボーイングの出世作は第二次世界大戦中のB-17ですが、B-52や747、777も同じ路線だし、ノースロップは終戦直後のB-35全翼機のリベンジをF-23では果たせず、B-2で果たしたんでしょうね。
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