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バトルシップ・コーブ〜世界最大の海軍艦展示

2016-07-21 | 軍艦

住んでいたときも、それから毎年夏に渡米するようになってからも、
おなじマサチューセッツにこんなお宝展示があるとはしりませんでした。

バトルシップ・コーブ。

”COVE” というのは入江や小さな湾のことですが、マサチューセッツ州の、
ボストンから南へと行ったところにあるフォールリバーという街に、
海軍艦をそのままいくつも繋留展示しているミュージアムがあったのです。

当時は海軍の”か”の字にすら興味がなかったので、そんなものがあることを
知ろうともしなかったわけですが、今回、フリーウェイを走っていて、
降り口のところにある「ここを降りればこんなアトラクションがあります」
と示す茶色い看板に、「USS SALEM」というのを見つけたのをきっかけに
調べたところ、この海軍博物館の存在を知ったというわけです。

ちなみにこのとき、「USS SALATOGA」がマサチューセッツのプロビデンスに
繋留されている「らしい」ことも知り、廃艦が決まったという彼女の姿を
写真に納めに行こうと思っていたのですが、その後調べたところ、サラトガは
すでに今年、海軍から業者に1セントで売却され、スクラップにされるために
ジョージタウンに出航する姿を元乗組員の老人たちが敬礼して見送っている、
というニュースを見つけました。

その出航が今年の1月だったということで、グーグルマップにはまだ埠頭に
「USS SALATOGA(CVー60) 」の記載がありますが、航空地図にすると
もうすでに彼女の姿はここからは消え失せていました(´;ω;`) 


さて、バトルシップコーブは住んでいるウェストボロから車で1時間あまりです。



ここ全体がヘリテージ・ステート・パークという位置付けです。
普通の州立公園のように、ピクニックができる牧草地、トレイル、
そしてヨットなどのウォーターレジャーを楽しむための公園です。



一応パーキングには料金徴収をするための建物もありますが、誰もいません。
駐車場はもちろんただです。

ここに「オーバーナイターはシップストアでチェックインしてください」、
とあり、つまり艦にお泊まりするという企画が行われているようです。

調べてみると、この企画は一種のキャンプで、

● 展示戦艦の隅から隅まで探索
● 乗員が寝ていた本物の寝台で寝る
● 艦上での乗員たちの生活とその任務を学ぶ
● 特別な行事に参加
● アクション満載の映画なども鑑賞
● 歴史を作った元乗員との触れ合いタイム
● 士官の専用食堂でフルコースの朝食と夕食を
● ほかにもいろいろ

住んでいた時息子がもう少し大きかったら行かせていたかも・・。



小さな子供のために、カルーセル(回転木馬)がこの建物の二階にあります。

時間がなかったので見ることもままなりませんでしたが、
木馬は1919年製の木彫りのアンティークで、大変貴重なものだそうです。

アメリカらしく、ここや戦艦の内部を借り切ってパーティをすることもできるそうです。



ここも時間がなくて立ち寄ることができませんでしたが、
公園のビジターセンターだったようです。



昔の港の名残り、船を上げ下ろしするスロープがあります。



わたしが到着した2時過ぎ、フィールドには見学を終えて出てきたらしい
サマーキャンプの子供たちがバスの到着を待っていました。



広場の前に星条旗と例の「わたしを踏みつけるな」の旗、
海軍の「ファースト・ネイビー・ジャック」が揚がっています・



どれどれ、と近づいてみると、同時多発テロで亡くなった、
マサチューセッツ州出身者のための慰霊碑でした。
碑文は、ジョージ・ブッシュ大統領が捧げた弔辞が刻まれています。

「テロリストのアタックは、我々の作り上げた最も大きな建物の基礎を
震わせることはできたが、彼らはアメリカの基礎には手を触れることもできない」

という、アメリカ人の好きそうな文言です。



マサチューセッツに被害者が多かったのは、あの同時多発テロの時に
ニューヨークワールドトレードセンタービルに突入したと言われている
アメリカン航空11便と、ユナイテッド航空175便がどちらもここマサチューセッツの
ローガン国際空港から出発していたからです。

この名前が刻まれた銘板は同じものが二枚ありますが、
少なくない人の名前の横に航空機乗員であるという印が付いていました。



高速を降りてこれらの海軍艦艇群が見えてきたとき、わたしは思わず
感激と興奮で「おおおお〜」と声を出してしまいました。

さすがは全米で一番評価が高いと自らが胸を張る施設だけのことはあります。
まず、一番向こうにあるのがここの「目玉」である戦艦「マサチューセッツ」



信号旗が揚がっていますが、意味がお分かりの方おられますか。



浮きドックではなく、固定されているものかもしれません。
ここに「マサチューセッツ」が博物館として固定されてから設置されたものでしょう。
ショップで購入した記念冊子によると、この「バトルシップコーブ」が
このようなかたちで博物館となってから去年で50周年を迎えたそうです。



こちらに見えているのが潜水艦「ライオンフィッシュ」。
1942年に建造されているので、当然ですが日本軍との戦いを経験しています。

この写真では分かりにくいですが、「マサチューセッツ」と「ライオンフィッシュ」の間に
いるのがミサイルコルベット艦「ヒデンゼー」
『 HIDENSEE』がどうしてヒドゥンシーと読まないのかというと、これはドイツ語だからです。
バルト海上にヒデンゼー島というドイツ領の島があるのですが、それにちなんでいるとか。

この不思議な名前を持つアメリカ海軍の艦についてものちに詳しくお話しします。



そしてこちら、駆逐艦「ジョセフ・P・ケネディ・ジュニア」
皆さんはあのJFKにジョセフという2歳上のお兄さんがいたことをご存知でしょうか。

1915年生まれのジョセフはハーバード・ロースクール在学中に海軍のパイロットに応募、

1942年に海軍予備少尉となって対潜哨戒任務に就いていました。
1944年に欧州戦線トープシークレット作戦に参加し、戦死したのですが、もし彼が死ななければ、
おそらく、この優秀でスポーツ万能だった兄にずっとコンプレックスを持っていたという
弟のジョンが政治家になることもなかったのかもしれないと思われます。

ジョセフ・ケネディの戦死から1年後、彼の名前を付けられた駆逐艦が誕生しました。
それがこの「ジョセフ・P・ケネディ・ジュニア」です。 



大統領に就任した弟のジョン・F・ケネディは、この駆逐艦に乗り、
デッキからアメリカズ・カップを観戦した、という話があるそうです。



コーブの艦艇群を見渡せる岸壁に、慰霊碑がありました。
「コモドア」とありますが、この場合はヨットクラブの会長のことでしょう。



大型船の船の錨が説明もなく転がされております。
「マサチューセッツ」のものかもしれません。



こちらは間違いなく「マサチューセッツ」のプロペラです。
展示に当たってはずしてしまい、ここに展示してあるのです。
彼女が1998年から1999年の間にドライドックに入っている間に取り外されました。
博物館として展示繋留されている船も時々はドック入りしてるってことなんですね。

「マサチューセッツ」は4つのプロペラを持ち、これはその一つ。
このプロペラの説明が書かれた銘板には、彼女の愛称が「ビッグ・マミー」であること、
そして彼女が1947年にはすでに「リザーブフリート」(予備艦隊)入りし、
1965年からここで展示されている(ENSHRINED・安置されているの意)
ことが書かれています。



これも説明がありませんが、「ビッグマミー」のものでしょうか。

 

さて、外の見学はそこそこにして(なにしろ時間がなかったので)、中に入ります。
このストアショップの中で入場料を支払い、建物の裏から入場します。
入場料は大人が12ドルというものでした。
ちなみに、ベテランや軍服着用の軍人は無料です。
この日はいませんでしたが、別の日に海軍迷彩の人が結構ウロウロしていました。

チケットを買うと、「ジップコードは?」と聞かれたので「住んでないんですけど」
というと、「どこの国から来ましたか」ともう一度聞き直されました。
「日本ですが・・・それって必要なの?」と聞いてみると、
来場者がどこからきたかというデータを取っているそうです。



入ってすぐの埠頭に当たるところには、揚陸船だったらしい船体の一部を
切り取ってこのように展示してありました。
奥にある階段を上って、船の舳先に立つこともできます。
子供が喜んで上に登ったりしてました。



まるで置物のようにここに座ってじっと動かなかったおじいさん。
一人でやってきたのでないとすれば、家族が見学しているのを待っているのでしょうか。
確かに、特に戦艦の見学は、狭い急な階段を上ったり降りたりが続き、
足腰に不安のある老人には不可能です。

ハンディキャップの人々に配慮することでは日本以上のここアメリカでも、
これだけは如何ともし難く、HPにもはっきりと

「車椅子での見学はできません」

と書いてあります。



なんか映画で見たような車がいるー。
それに、向こうに並んでいるものもなんとなく古いものばかりのような・・。

これは、この横に設えられたスクリーンと、この手前の海の部分を使って
行われる、

「パールハーバー・エクスペリエンス」(でた)

の小道具であったことが後から分かりました。
これもいちおう「体験」しておきましたのでそのうちお話しします。





続く。