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海軍軍人謎の乗艦〜潜水艦「ノーチラス」

2016-07-01 | 軍艦

アメリカに来てから毎日のように小旅行並みの移動が続き、
PCを開ける間もなく、潜水艦博物館の話を始めたと思ったら、
映画「海の神兵」のエントリを日付を間違えてアップしてしまい
(お節介船屋さん、コメントまで頂きましたが、
後日アップの際に掲載させていただきます。申し訳ありません)
ろくにコメントへのお返事もできない状態で誠に遺憾な状態です。

アメリカ国内の旅行中の移動は車がないとほぼ不可能なのですが、
我が家はわたし一人しか免許を保持していないため、
帰ってきたらもう運転疲れでもう使い物にならんのです。(自分が)


ただ今回借りたのはトヨタカムリですが、安定していて長距離が楽。
燃費もいいし、やっぱり日本車は信頼出来ると思います。
GPSが付いていなかったため、(日本車にはなぜかナビがないことが多い)
わざわざ次の日空港まで戻って携帯式のGPSシステムを借りたのですが、
このシガーソケットから電源を取るナビが超優秀。

渋滞情報や迂回路を教えてくれるなどという機能はありませんが、
小さな画面(5cm×7cm)に、乗り換えの時にどの車線にいればいいか、
わかりやすく示してくれ、地道と高速をつなぐ最短距離を選んでくれ、
これはもしかしたらわたしの車についているナビより優秀ではないか、
と思うくらいで、今ではすっかり信頼しています。

そんな信頼できるナビが付いているのに、入口を間違え、
海軍基地に突入してしまったわたしですが、このために
本物のアメリカ軍人と言葉を交わすことになったので、これもまた
ナビの計らいだったと思うことにしています。




潜水艦博物館は展示室だけでなく、ホールにもこのような
歴代潜水艦の型模型が一目で見られる展示があり、これが
潜水艦の大きさを理解するのにとても便利。



ここからは「モデルウォール」が通路の片側に続きます。

「全部同じスケールなので、20世紀の潜水艦のサイズと形を
ドラマチックにご覧いただけます」

と高らかにこの企画を自慢しております。
この模型はアメリカ海軍が歴史上所持したすべての潜水艦の型を網羅しているため、
アメリカ海軍が特に第一次、および第二次世界大戦のために集中的に潜水艦を
建造したということなども視覚的に理解できる仕組みです。




左の二列に書かれた潜水艦の最初はSS182「サーモン」1935年建造。
最後はSSS312「バーフィッシュ」で、1943年就役です。
この期間に建造された潜水艦がいかに多いかがこれだけでわかりますね。
ちなみに「バーフィッシュ」は何度か日本海域で戦闘を行っていますが、
撃沈スコアが記録されているアメリカ潜水艦の中で、
スコア中に日本の艦船が含まれない、おそらく唯一の潜水艦だそうです。



ガラスが光ってしまって写真が撮れないのが困りものですが。
 一番上の大きなのが「オハイオ」級の原子力潜水艦。
右側が「ロスアンジェルス」級、その下「バージニア」級。

「ボストン」「ラホーヤ」「マイアミ」「シカゴ」「アナポリス」・・。 

昔は潜水艦といえば魚類の名前をつけていたものですが、それもなくなり、
今ではたくさん作りすぎて名前が軒並みアメリカの地名になっております。



オハイオ級が鯨なら、こちらはまるでめだかのよう。
形もなんとなくめだかですよね。
SS1、その名も「ホランド」。
こちらは開発者の名前がホランドさんだったから。

「ホランド」はいわば試作品だったので、データを収集したあとは
海軍水雷ステーションで士官候補生の訓練やアナポリスでの訓練に使用され、
1910年に除籍あとはスクラップとして100ドルで売却されています。
スクラップ会社は艦が解体され船として使用されないことを保証するため、
5,000ドルの契約を要求されたということです。

最初から潜水艦といえば機密のかたまりみたいな扱いだったんですね。 

さて、実はこの後わたしは外に係留してあるノーチラスを見る前に、
がっつりと室内の展示によって潜水艦の歴史を勉強したのですが、
それは後日お話しすることにして、2階の展示を見ながら海寄りの部屋に来ると、



窓からは原子力潜水艦「ノーチラス」をのぞむことができました。



上を見上げるとバナーが。

「FIRST AND FINEST」(最初にして最善」

は史上初の原子力潜水艦としての「ノーチラス」を表す言葉です。
史上初の潜水艦「ホランド」と同じく、試験艦として生まれた「ノーチラス」ですが、
潜行状態で一度も浮かび上がることなく北極点の氷の下を通過し、
潜水艦を「潜航可能な船(submergible ship)」ではなく、水中活動をこそ常態とする
「真の潜水艦(submarine)」に進化させたその功績は偉大です。

 「ノーチラス」が初めてここテムズ川において、原子力で航行したとき、

  "Underway on nuclear power."(「原子力にて航行中」)

という言葉は、「オペレーション・サンシャイン」において、
北極点を潜行しながら通過したときのナビゲーターの

” Nautilus, 90°N, 19:15U, 3 August 1958, zero to North Pole.”

という電文と共に歴史にその瞬間を刻みました。



海軍迷彩が潜水艦に向かって歩いていきます。



建物の出口には「ノーチラス」のトレードマークが。
潜水艦の鯨が顔を出しているのは原子力を表すモチーフ。

「我々の誇らしい歴史遺産保存」

とは、ここにノーチラスが展示されることになった1980年からのロゴでしょうか。



写真を見て気づいたのですが、潜水艦と展示館の間に一つ建物があります。
もしかしたら海軍迷彩はここに入っていったのかもしれません。



さて、わたしたちも階下に降りていよいよ「ノーチラス」を見学することにしました。
前もって展示室でその業績と、潜水艦の歴史についてもざっとおさらいして
準備も心構えもバッチリです。



ところで、潜水艦の前に単線の線路があります。
廃線にしてあるにしては線路が錆びていないし、海軍時代の輸送線路かな?
と思い、地図で線路をたどっていくと、延々とテムズ川をさかのぼり、
そのあとはずっと名前の変わった川の河畔に沿って伸びていき、
なんといつの間にかボストンの通勤線とつながって、マサチューセッツ湾まで
続いていました。
全米を網の目のように走る線路の一部だったんですね。

なお、向こうの方に見えているのはインターステート95です。



ここで後ろを振り返ってみると、ミュージアムはこんな形。
手前の小さな建物は軍人さんの休憩室かな。



「ノーチラス」は日本で言うところの文化財的な扱いとなっています。
真ん中のプレートは、「海軍建築家・エンジニア協会」の認定。
最初に北極点に達した歴史的な潜水艦であり、世界的見ても
潜水艦の技術的革命を起こしたことを顕彰する、とあります。

その向こうは、ノーチラスが世界で初めて原子力で推進した潜水艦である、
と書かれたプレート。



記念艦としてここに固定繋留されているのですが、イントレピッドのように
底を固定するということはせず、テムズ川に浮かんでいるようです。
2本ずつ舫がクロスして舫杭につないであります。

ところで、潜水艦のこの部分を説明しておきます。




まず、セイルの左に旗がありますが、これは「PUC」、
Presidential Unit Citation、つまり殊勲賞だそうです。
ノーチラスは北極点に達したことでこの栄誉を得ました。

上に煙突のようなものがいっぱい立っていますが、
左から

●IFF/UFF (極超短波アンテナ)●VLF loop(超長波アンテナ)

●BRD-6B(敵の通信、レーダーを探知する)

といった感じで(おい)つまり全てアンテナ関係です。

● 一番高い金色のがペリスコープ、つまり潜望鏡。

● その右側の白いのも潜望鏡です。
同じようなところになぜふたつあるかというと、昼夜の使い分けみたいです。
夜用にはレーダーも内蔵されているのだとか。

● 白い潜望鏡の右側のものはなんと「ピッグ・スティック」といいます。
「豚棒」?
取り外しのできるフラッグスタッフだそうです。

● 一番右は見てもわかるとおり、ビーコンライト。
ナビゲーション・エイドを略してNAVAID(ナヴァイド)と呼びます。
なんでも省略する傾向は日本だけでなく米海軍も同じなんですね。



舫だけで繋留しているなんてことはなかろうと思ったら、やっぱり
こんな風に岸壁に固定してありました。



だったら舫なんて必要ないよね?と思ってしまうわけですが、
やはりそこはそれ、雰囲気というやつだと思われます。

繋留されて以来おそらく一度も動かされたことのない丸めたロープ。



そのときわたしのネイビーセンサーが鳴り響きました。
海軍迷彩の一団が続々と「ノーチラス」艦尾に向かっている?



艦尾には国旗が立てられているのですが、全員がラッタルを渡ると
国旗に敬礼して艦上に乗り込んでいきます。

あーなんかすごくいいものを見せてもらってる気分。
皆その瞬間は背筋がピンと伸びて直立する様子がかっこよす。

最後に一人でやってきた軍人さんは、わたしの予想通り、この中で
「一番偉い人」だったようで、この人が乗り込むと全員が
シャキーン!<(`・ω・´)と敬礼をしておりました。



そういえば、この人たちはわたしたちが展示物を見学しているとき、
ロビーで待ち合わせをしていたんでした。
海軍五分前はアメリカも同じらしく、早くきた人たちはすることがないので
展示物の「各国の潜水艦部隊章」など見ておしゃべりしていたのですが、
そのうち見学客にせがまれて写真を全員と撮らされておりました。

わたしも頼んでみればよかったかな・・。



で、7〜8人のこの団体、全員揃ってから何人かが後部から
ノーチラスの中に入って行ってしまいました。

「ノーチラス」で公開されているのは全部ではありません。
後部発射室とその近くの、全体から見るとごく僅かといっていいでしょう。
で、彼らが入って行った部分には何があるのか・・・?



なんと、見学を終えてでてきたときも、この三人は同じところにいました。
ということは、後の人たちはまだ中にいるということになります。
もしかしたら、中には公開されていないシミュレーターかなんかあって、
数人の人たちがトレーニングをしている・・とか・・?



星条旗と海軍迷彩の軍人たち、かこいいなあ・・・。



さて、後部の海軍さんに心を残しながらも、中に入ってみることにしました。
見学者用に潜水艦の上にガラス張りのエントランスが増設されており、
ここでやっぱり海軍迷彩の人が解説のモニターを貸してくれます。



「ノーチラスに乗る前に」

● セルフガイドですので配られたガイドに従って進んでください

● ツァーには30分から45分くらいかかります

● 階段をおりていかなくてはいけないのでハンディキャップの方の見学はできません

● 内部は大変狭いのでそれで気分が悪くなるかもしれません

● 子供達は大歓迎


さあ、それでは乗り込んでいくとしましょう。


続く。