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親パレスチナ派の卒業式ボイコット〜大学卒業式@ベイエリア

2024-06-30 | アメリカ

MKの大学の卒業式報告、続きです。


先住民族から当大学の「承認」を受ける、という
アメリカならではの儀式を終え、ここからが卒業式本番です。



まず学長の「ウェルカム」宣言。
卒業生への祝辞と、学位取得者への賞賛、そして
グラウンドキーパーなどセレモニーのために働いた人々への労いが続きます。

この学長(実は臨時の学長らしいですが)は、

博士号103名、修士号2,475名、学士号1,838名

学部生中176名が80カ国の出身
大学院生中1,301名が110カ国の出身


と数字を挙げ、本学で学んだ人々が世界に多大な貢献をすることを期待し、
卒業生たちをここまで連れてきた彼らの家族や友人に
立ち上がって拍手を送ってください、と告げると、


グラウンドの卒業生たちは立ち上がり、振り向いて
スタンドに向かって手を振り声援を送りながら拍手、
スタンド側からもそれに答えて手が振られ歓声が上がりました。

そして引き続き各種賞の贈呈が行われました。
ここでいう賞は、卒業してからの業績に対してのものがほとんどです。

■ 数百名の学生が卒業式をボイコット


賞の授与が終わり、学長のリチャード・サラー(Saller)が挨拶を始めました。
このサラー学長が一時的な代理だったことを後から聞きました。

前学長のテシエ=ラヴィーン氏が、神経生物学の論文における
データの操作と改竄という、学者にとって致命的なスキャンダルによって、
本人はそのことを否認しながらも、大学のためにと辞任したのを受け、
サラー氏は次期学長が就任するまでの間の代理学長を務めています。

あくまでもテンポラリーな繋ぎなので、名前は学長として残されないし、
よりによって大学史で初めてとも言われる学生運動が任期中発生し、
こんな時に不祥事を受け代理なんて損な役回りとしか言いようがありません。

スピーチを始めた学長は、まずコロナ禍下入学した学生たちの困難にふれ、
次いでここ一年の「悲惨な戦争」について言及しました。

そこまできた途端、卒業生席が大きくざわめきました。



イスラエルのスカーフを掲げた女性を先頭に、
卒業生の席から、次々と人が立ち上がり、退場を始めたのです。

拍手とピーピーという口笛、ざわめき。
それらは席に残る卒業生からだったとは思いますが、
彼らの行動を賞賛するものばかりではなく、
おそらくその中には、非難の声も含まれていたことでしょう。


ある者はイスラエルの旗を持ち、ある者はスカーフを巻き・・。

彼らが入場してきた時、この豆絞り風のスカーフが目につき、

気になっていたのですが、この時になって、この柄が、
PLOの故アラファト議長が着用していたのと同じであるのを思い出しました。

このスカーフ、クーフィーヤというそうですが、
白黒のクーフィーヤはパレスチナの象徴となっています。

後から新聞記事で知ったところによるとウォークアウトしたのは数百人。

しかし、わたしもTOも全く予想外の出来事だったので、
彼らの持っているプラカードに、

「大学はジェノサイドに投資している」

と書かれているのを見て初めて彼らが
大学がイスラエル側に立っているとして抗議していると知った次第です。



よく見ると、客席からも彼らに声援を送る人が少数いて、
大学院卒業者席は、皆が携帯で写真を撮っています。


おそらく大学当局は、なんらかのアクションを予想していたかもしれません。
しかし、まさか学長のスピーチの途中でウォークアウトとは。

大学公式のビデオでスピーチする学長の様子を見ると、
(カメラはずっと学長の顔をアップにしている)
卒業者席から歓声が上がり、抗議者たちが立ち上がりだしても、
学長は平静を装ってそちらをチラリとも見ることはありませんが、
明らかに声の調子には動揺があるのがわかります。

この写真でメリンダ・ゲイツはずっと学生の列を目で追っており、
彼女の横の女性学部長たちは、おそらく今年になってから、
パレスチナ系学生の度重なる学内での狼藉について非難してきた立場なので、
この写真にも明らかなくらい、不快感をあらわにしています。

左後ろには、壇上からビデオ撮ってる教授もいますが(笑)

この件を報じるロスアンジェルスタイムズの記事より。

「学生数百人が、パレスチナへの支持を示すため卒業式をボイコットし、
イスラエルとハマスの戦争に関連した抗議活動で揺れた
キャンパスでの激動の一年を締めくくった。


ソーシャルメディアで拡散している動画には、
リチャード・サラー学長が卒業生に向けてスピーチをしている最中に、

学生たちが次々と椅子から立ち上がる様子が映っている。

学生たちの多くはクーフィーヤやパレスチナの国旗を振っている。
数分以内に、数百人がスタジアムから流れ出る様子が見られる。

このストライキは親パレスチナ派の学生団体が計画したもので、
同団体は学生たちに式典を離れ、別の場所で行われる
「人民の卒業式」に行くよう呼びかけていた。

■ 学生の「座り込み」活動


ガザ地区でのハマスとイスラエルの戦闘が始まった2023年10月17日以降、
アメリカ全土で学生を中心とした抗議運動は活発化していました。

イスラエルの攻撃はハマスの奇襲攻撃に対する報復だったのですが、
ガザでは多くの民間人が犠牲になっていることを受け、
親パレスチナの学生が抗議の声を上げることから活動が始まりました。


そしてすぐにそれは「反ユダヤ・イスラエル主義」となって、
時にユダヤ系学生への個人的ないじめとなって現れることになります。

そこで当大学のユダヤ系学生は、

「偏見に対する報告、安全、コミュニティのメンタルヘルスに
十分な救済策を提供しなかった」


として大学側を非難し、一方パレスチナ系学生側は、

「大学当局からこちらの権利を主張することを弾圧され、
親イスラエル団体の攻撃から守ってくれなかった」

としてやはりこちらも大学側に抗議の声を上げました。


同様の動きは、全米のいわゆるエリート校、
コロンビア、ハーバード、ノースウェスタン大学などでも起きており、
波及的にさまざまな処分(停職など)となって現れています。

こういった対立を、第三者からの目で見る意見も当然あり、
当大学のある2年生の学生は、

「The War at Stanford」

として、次のような意見を表しています。

私のコンピュータサイエンスクラスのセクションリーダーの1人、
Bは、ジョー・バイデン大統領を殺害すべきだと考えていた。

この23歳の学生は先月、少人数の抗議者たちにこう語った。

「民間人というわけにいかないから軍人がやるべきだ。
バイデンは死ねばいいんだ」

彼は、当大学がパレスチナ人の大量虐殺に加担しており、
バイデンはその当事者であるだけでなく、責任者でもあると考えている。
そしてさらに、

「バイデンは大量虐殺の罪を犯したのだから、肌の色が濃いテロリスト
(肌の色が濃いテロリストは、通常、アメリカの飛行機によって
爆撃されたり無人爆撃機による攻撃を受けることは周知の事実)
と同じ扱いを受けるべきだと言っているのだ」

と言った。

彼は、10月7日のハマスによる攻撃は正当な抵抗行為だったと信じており、
現政府に代わってハマスがアメリカを統治すること望んでいるとまで言う。

そこで「君の目的は何なの」と尋ねると、彼は「平和さ」と答える。

私はコンピュータサイエンスのクラスを変えた。


当大学のキャンパスからイスラエルまでは約12,000kmの距離がある。

しかし、ハマスの侵攻とそれに対するイスラエルの報復反撃により、
私の通う大学は分裂してしまった。

この大学は、通常、地政学よりも、今どきの寮を拠点とするような
テクノロジー系新興企業へのベンチャーキャピタル投資に重点を置く。

そこにはバイデン大統領の退陣を求める学生などほとんどいない。(多分)

ガザに平和を望むという若者たちの多くは、
自分が実際には暴力を支持していることに気づいていないようだ。

過激主義が教室や寮に蔓延し、信仰や伝統、外見を理由に
嫌がらせや脅迫を受けることが学生の間では日常化している。

キッパー(ユダヤ帽)を被っているだけで大量虐殺の加害者と罵られたり、
クーフィーヤをつけているだけでテロ支援者と非難されたりするのだ。

東海岸では、アイビーリーグにおける過激主義や反ユダヤ主義が、
メディアや議会から大きな注目を集めた。
学長2人が職を失う事態にまで発展している。

しかし、カリフォルニアのキャンパスを席巻している
文化戦争に気づいた人は
ほとんどいないかに思える。

この記事が書かれたのは今年の3月終わりでしたが、
その後、大学では前述のようにパレスチナ派が頻繁に座り込みを行い、
ついには学長室の占拠や歴史的建造物への破壊行為が起こりました。

そして、今回の数百人による卒業式ボイコットというパフォーマンス。
否が応でも「文化戦争」は大々的に顕在化されることになったのです。

続く。




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1 Comments

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ハマスの立ち位置 (Unknown)
2024-06-30 05:59:44
イスラエル(国家)とハマス(ガザを実効支配しているものの、国家ではない)の戦いが、国家間の「戦争」なのかどうか微妙ですが、国家間の戦争には「戦時国際法」というルールがあります。

「戦争にもルールがある。 「戦時国際法」の内容とは」によると
https://lmedia.jp/2015/02/13/61483/

>10月7日のハマスによる攻撃は正当な抵抗行為だった。

いきなりコンサート会場を襲い、民間人を殺害、拉致しているので「軍事目標以外への攻撃禁止(降伏者、負傷者、民間人等の攻撃禁止)」に該当し、アウトです。

ただ、イスラエルの軍事行動も、多数の民間人を殺傷しており「軍事的必要性を超える無差別な破壊・殺戮」に該当しそうですが、この「軍事的必要性」を決めるのは攻撃側なので、イスラエル自身がそうだと認めない限り、アウトにはなりませんが、セーフとは言い難いと思います。

ガザ地区とヨルダン川西岸地区におけるパレスチナ自治区を認めたオスロ合意以後「アラブの大義」を錦の御旗にして、パレスチナ人を支持する動きは大幅にトーンダウンしました。ガザ地区は、イスラエルとエジプトに接していますが、これだけの惨状になっても、エジプト側の国境を解放し、避難民を受け入れようという動きは、アラブ側にはありません。ハマスを支持しているのは、アラブではなく「イラン」だからです。

今でこそイランはイスラム教を信奉しているので、アラブだと思っている人は多いですが、元々はペルシャで、アラブ世界と対立して来ました。年配の方なら「イラン・イラク戦争」を覚えておられると思いますが、その後も、イランはヒズボラを通じてイスラエルと、フーシを通じてサウジアラビアやイエメンと、今でもアラブ社会(イラク以西)と対立しています。欧米で、ハマスを支持する国がほとんどないのは、ハマスとの戦いは、世界の厄介者イランとの代理戦争だからです。

フーシはスエズ運河を通って、紅海を走る多くの国の船舶を攻撃したので、多くの西側の国は反撃を行いましたが、ハマスとの戦いは、イランが裏で糸を引いているとは言え、イスラエル以外が攻撃された訳ではなく、どの国も巻き込まれたくはないので、アメリカ以外は、支援も行っていません。

イランではライシ大統領が航空機事故で亡くなり、大統領選挙が行われます。新しい指導者が穏健派で、ヒズボラやハマス、フーシへの支援を控えるようになれば、少しは沈静化すると思いますが、どうもそういう感じではなさそうですね。しばらく今の状況が続くと見ていますが、ハマスとの戦いがもう少し落ち着けば、世界の厄介者イラン相手に、イスラエルとサウジアラビアの関係強化がまた進むと思います。
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