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国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ベーリング海峡横断トンネル建設がもたらす地政学的大転換と21世紀の世界システム

2007年04月22日 | ロシア・北方領土
米露両国を結ぶ海峡横断トンネルが実現に向かって動き出したという。このトンネルの鉄道は、現在建設中のアムール=ヤクート鉄道の延伸区間として建設されることになると思われる。マガダン州などの東シベリア~ロシア極東は天然資源の宝庫であるが従来はアクセスが困難であった。東シベリアからベーリング海峡を経て北米大陸に至る鉄道ルートが建設されれば、沿線の資源の開発・輸送を一手に引き受けることが出来る。また、船舶よりも鉄道の方が輸送時間が短いことを利用して、東アジアから北米への輸出品の内で航空貨物ほど急がないが船舶輸送では遅すぎるようなものを輸送することも出来るだろう。更に、LNGよりもコストが低く、ガスの液化のためのエネルギーのムダのないパイプライン輸送の天然ガスの利益も非常に大きいだろう。米国では本土からアラスカまでガスパイプラインが伸びており、ロシア側の延伸工事ができれば一挙に米露の天然ガス輸送網が連結可能となる。なお、パイプラインはトンネル内に建設する必要はないのでトンネルより先に建設される可能性が高い。この計画がもし実現するならば、ユーラシア大陸+アフリカ大陸の世界島から離れた島であった北米大陸がアフリカ大陸と同様に地峡でユーラシアと繋がり、世界島の一部になるという地政学的大転換を意味すると思われる。鉄道を中心とするランドパワーの輸送力と輸送速度がシーパワーのそれを圧倒することになるだろう。今後、ベーリング海峡はスエズ地峡やマラッカ海峡と同様の戦略的重要性を持つことになるだろう。また、この計画よりもコストが低く利益が大きいと予想される宗谷海峡トンネルを利用した日露間の鉄道直結計画がベーリング海峡より先に実現するであろうことは言うまでもない。21世紀の世界はロシアのランドパワーの優位を背景に、ロシアと鉄道・パイプラインで繋がった欧州・北米・日本の三極が中核となるG8体制になると私は考える。なお、このトンネル・鉄道・パイプライン等の建設計画では、シベリア先住民族の民族自決問題が絡んでくる筈である。唯一のアジア系先進国である日本がG8に加盟していることは、ロシア人と先住民族の間の対立を仲介して軟着陸させるという役割も期待されているのかもしれない。例えば、日本・ロシア・東シベリア先住民族国家からなる国家連合形成といった解決策も考え得るだろう。 . . . 本文を読む
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