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国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ハルキ神学校の再開問題と聖ソフィア大聖堂の返還問題:コンスタンティノポリス総主教庁とトルコの対立

2007年03月15日 | トルコ系民族地域及びモンゴル
全世界の東方正教会信者の精神的指導者であるコンスタンティノポリス総主教庁のバルトロメオス1世総主教がウィーンでトルコ政府による迫害を非難している。ハルキ神学校の再開問題を含め、東方教会とトルコ政府の間の対立は余りに根深い。コンスタンチノープル総主教庁はローマ法王庁と同格の教会とも考えられ、その指導者がトルコ政府を公式に批判したというのは余りに重大なニュースである。2002年の欧州閣僚理事会全体会議による『ハギア・ソフィア(トルコ語ではアヤ・ソフィア)を教会に戻すように、イスタンブルをキリスト教の都市にするように』と言う内容の決議、2006年10月末のローマ法皇のコンスタンチノープル総主教庁訪問、3月13日のプーチン大統領のバチカン訪問もこれと関連している可能性があるだろう。 欧州で「欧州文化に同化しないイスラム教徒」への反感が高まっていること、程度の差はあれ欧州でイスラム教徒が二流市民扱いされていることを考えると、トルコでキリスト教徒が二流市民として迫害されるのは相互主義の点からは当たり前という見方もできる。しかしながら、東方教会のみならずカトリックやプロテスタントの信者も含めて欧州人はイスタンブールを欧州の都市であると考えている。歴史的に見てもコンスタンチノープルは欧州文化の中心の一つであったし、オスマントルコも多民族国家としてイスラム教徒とキリスト教徒の共存を認めていた。オスマントルコ滅亡後のトルコ共和国がトルコ民族の国民国家を目指したこと、トルコ共和国が欧州キリスト教文明の中心の一つであるコンスタンチノープルを領土に含めたことがこのキリスト教弾圧の原因の全てであり、その解決は容易ではない様に思われる。今年5月に予定されている国会議員の投票による大統領選挙、11月4日に予定されている総選挙を控え、トルコ国内の世論の動向だけでなく、イスラム主義の与党と世俗主義の軍の力関係にも注意が必要だろう。 . . . 本文を読む
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