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海辺のねこ

どんな日もかけがえのない一日。

未完の夢 無言館展

2006-06-13 | 芸術・文化
先日の日曜日、岡山市デジタルミュージアムで開催されている「未完の夢 無言館展」に行ってきました。
すぐに感想を、と思ったのですがなかなか言葉に表すことができませんでした。
言葉にすると思いから離れていってしまいそうだったのです。
でも、今の気持ちを忘れてしまわないうちに書いておきたいと思います。

「無言館」とは長野県上田市に平成9年に開館した、戦争で亡くなった画学生たちの油絵や水彩画などの作品と、彼らの遺品を展示・保存している戦没画学生慰霊美術館のことです。
今回の展示会では、地元岡山の笠岡出身の日本画家小野竹喬氏のご長男、小野春男氏の「屏風絵 茄子」他、約130点が紹介されていました。

館内は静寂に包まれていました。
皆さん絵や展示品にじっと見入られていて、涙されている方も多々いらっしゃいました。
私も泣いているという感覚を感じないほど、自然に涙がこぼれて…。

大切な人や、思い出の風景が描かれた作品たち。
さっき描かれたばかりなのかと錯覚するような瑞々しい筆あと。
そして作品から立ち上がってくる絵に対する純粋な「描きたい」「好き」という思い。
只々、その世界に引き込まれていました。

そして…。キャプションに書かれた言葉。
作者やそのご家族、周りの人々に思いがめぐります。
享年20~30代の若者達。
外から近所の人らが出征兵を送る万歳の声が聞こえる中、「せめてこの絵の具を使い切ってから」と、見守る両親にそう言い絵筆を置こうとしなかった人。
出征直前まで恋人の絵を描いていた人。
「もし生きて帰ったらパリに留学させて」との申し出に「家や山を全部売っても行かせてやる」と答えた義理姉。
「姉さんありがとう」という便りとともに芍薬の花を描いたハンカチーフを贈った人。
ご子息の戦死についてずっと語らなかった画家の、90歳すぎてからぽつんと呟いたという「悔しい」という言葉。

お一人で来られたご様子の70代くらいの男性はとても丁寧に鑑賞されていました。
じっと作品に見入っておられた。
そして展示室を出たところに設けられた椅子に座り、ずっと空を眺められていました。
展示会を観にこられた方々が抱える様々な思い…。

遺された作品を観ながら、ずっと感じていたこと。
戦争は本当に多くのものを失わせてしまう。そして、ずっと心の奥底に傷跡を残す…。
どうかどうか世界中が平和でありますように。
未来ある子ども達、若者の夢が叶えられる世の中でありますように。
そして、私たち大人はそれを守る努力をし続けよう。
この地球は未来からの預かりものなのだから―。