ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

アルケミスト/パウロ・コエーリョ

2016-01-29 | 読書
羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトの
ピラミッドに向けて旅に出た。
そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて―。
「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」
少年は錬金術師の導きと、さまざまな出会いと別れのなかで、
人生の知恵を学んでいく。
世界中の人々の人生に大きな影響を与えてきた夢と勇気の物語。
(「BOOK」データベースより)

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ようやく読みました。評判どおり、とても良かったです。
”神のお導き”的な表現であったり、聖書の知識があってこその考え方
であったり、こういう話は日本人にはあまり書けないんだろうな。
「前兆」が語るものを見逃さず、心の声に従い行動する。
すべては啓示的で、示唆に富んでいる…。
そういう雰囲気にちょっと馴染めなくて、途中、停滞気味になったけど、
作品全体としての構成は素晴らしかった。

「隠された宝物のありか」を示す夢に従い、様々な経験を積みながら
ピラミッドに向けて旅をするんだけど、ついに行き着いた場所は!!
なるほどね、うん、人生を表している!(言わないけどね

愛の力、自分が感じる力、そういうものをしっかり信じて進むことこそが
人生で最も大切なこと。
迷える子羊たちの教本というところでしょうか。


⭐︎

夜の国のクーパー/伊坂幸太郎

2016-01-29 | 読書
目を覚ますと見覚えのない土地の草叢で、蔓で縛られ、
身動きが取れなくなっていた。仰向けの胸には灰色の猫が
座っていて、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と声を
出すものだから、驚きが頭を突き抜けた。
「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。戦争が
終わったんだ」猫は摩訶不思議な物語を語り始める…
これは猫と戦争、そして世界の秘密についてのおはなし。
(文庫裏書きより)

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んーーーー
猫や鼠が話す、ファンダジーの世界観…それはそれで別にいいんだけど
人間や戦争や、政治や、国の成り立ちや、そういうリアルな世界との共存は
ちょっと個人的にはのめり込めなかったな。
半分過ぎくらいまでは、かなり苦しみながらページをめくりました

でも、これは伊坂くんの思惑どおりで、著者あとがきにあるように
『どうせ小説を読むなら、聞いたこともないような「とんでもないホラ話」
 しかも現実社会とどこか地続きのものがいいと、ずっと思っていた。』
んですと。
なので、私はこのテイストにちょっと不向きだったのかもね。

最後の【オチ】も申し訳ないけど、はじめから予想がついてしまってて
うん、やっぱりそうよね。それしか落とし所ないよね
と、妙な納得感でしたが、ストーリー展開としては、後半からぐっと
いつもの伊坂節になってきて、どんでん返しやテンポの良さが際立ちました。
ラストもなかなか感動的。。
やっぱり伊坂くんの作品は、勧善懲悪でなくちゃ

自分の信じているものを疑え、真実と思っていることを疑え、
そうすれば世界が変わるかもしれない。

それは自分で考えた答えですか?
誰かの意見に左右されていませんか?

猫のトムくんのように、しっかりと自分の眼で見て考えよう!


⭐︎⭐︎

あの家に暮らす四人の女/三浦しをん

2016-01-29 | 読書
謎の老人の活躍としくじり。ストーカー男の闖入。
いつしか重なりあう、生者と死者の声―
古びた洋館に住む女四人の日常は、今日も豊かでかしましい。
谷崎潤一郎メモリアル特別小説作品。
ざんねんな女たちの、現代版『細雪』。

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やっぱり、三浦しをん、好きー
負け組目線だけどユーモアたっぷりの表現(笑
私も、こういう女ばかりで一緒に暮らしてみたいなー。
楽しそう

谷崎の細雪は読んだことないけど、こんな感じなのかしら。
さすがに河童の干物はでてこないと思うけど…
そう、河童がキーワードです、お見逃しなく!

春が来れば花見に繰り出し、夏が来れば泳ぎに行こうと水着の新調。
部屋が雨漏りしたり、ストーカー男に付きまとわれたり。
女4人の日々の生活。そして移り変わる季節、ただそれだけ。
でも何故か生々しい暮らしの匂い。
こういうのが結局面白いんだよね。


⭐︎

火花/又吉直樹

2016-01-22 | 読書
お笑い芸人二人。
奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。
笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。
神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。
彼らの人生はどう変転していくのか。
人間存在の根本を見つめた真摯な筆致が感動を呼ぶ!
「文學界」を史上初の大増刷に導いた話題作。

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うん、芥川賞っぽい作品だね!

いかにも太宰とか梶井とかの影響を受けているんだろうなーという、
うまく生きられない人間失格系の人の話!(
…というと身も蓋もないけど、でも純粋に、こんな文章書けてすごいなーと思う!

私たち一般人には分からない、人生をかけた「笑い」の追求。
又吉だからこそのテーマだし、考え方なんだろうな。
そういう意味でも面白かったです。

漫才コンビも色々でしょうが、次回からM-1とか見る時には
もっと居住まいを正して、コンビの裏側に潜む人間ドラマなども
透視しながら、真剣に見てみよう

ただ、ひとつ言わせてもらえるなら、あのラストは何だかなー。。
ちょっとエグかった。
個人的には、もっと他のやり方があったんじゃないかと思いましたが。
他の方の評価はどうなんでしょうね。


⭐︎⭐︎

死神の浮力/伊坂幸太郎

2016-01-22 | 読書
一年前、一人の少女が殺された。
犯人として逮捕されたのは近所に住む二十七歳の男性、本城崇。
彼は証拠不十分により一審で無罪判決を受けるが、
被害者の両親・山野辺夫妻は本城が犯人だということを知っていた---。
人生をかけて娘の仇を討つ決心をした山野辺夫妻の前に、死神の千葉が現れる。
(「BOOK」データベースより)

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んー、いいね千葉さん、再び参上

7日間、対象の人間を観察し、その人間に死を与えることは
「可」であるか「見送り」であるかを判定。
その仕組みも何だかズレてる気がしないでもないけど、
今回は「寿命還元キャンペーン」ってのも笑えたね!
情報部(死神の情報部ってのもシュールだけど)が、早死にする若者を多く
出しすぎたので、バランスをとるためにちょっと手心加えて寿命延ばしても
いいよ、みたいな。

人はいずれ必ず死ぬ。誰も逃れられない。
当たり前のことを、伊坂ならではの軽快なテンポとユーモアのある会話で綴る、
死のおとぎ話って感じかなぁ。

それにしても、千葉さんのピントのずれた会話がツボです。(参覲交代とか!
あとちょっとで良い人になれそうなのになぁ~、千葉さん、残念。
でも、そこはやっぱり死神なのね。死を与えちゃうのね(笑

読後感も爽快!

人は死ぬんです。
でも、それをバッドエンドではなく、ハッピーエンドにすることこそが、
素晴らしい生き方なんだろうな。


⭐︎

ヘヴン/川上未映子

2016-01-22 | 読書
<わたしたちは仲間です>――十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える<僕>は
差出人不明の手紙を受け取る。
苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。
葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。
善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。
(文庫裏書きより)

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いじめと拷問のシーンは生理的にすごく嫌いなので、普段は選ばないんだけど
前回の川上さんの小説がすごく良かったので、2冊目を読んでしまった…
うーーん。どうかな。
百瀬が言うところの、いじめる側の理屈とかも、すごく理不尽ではあるけど
分からんでもない。
こんな人生達観した中学生いないでしょ、って感じだけど

僕とコジマの関係だけを見ていると、とても穏やかで優しく、
若くて脆くて純粋な2人って感じなんだけど
中学校という子供達にとって唯一の閉ざされた世界の中に置かれると
平和な時間は続かない。
苛めという罠にかかってしまっては、どうやっても抜け出せず、お互いを助け出せず
ただ崩壊を待つばかり。

コジマにとってのヘヴンは、一体どんな絵だったんでしょう。
それで彼女は救われることがあったんだろうか。

やっぱりこういう類の小説は読むのが辛いな、もうやめとこ。


⭐︎⭐︎

億男/川村元気

2016-01-16 | 読書
宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男。
浮かれる間もなく不安に襲われた一男は「お金と幸せの答え」を求めて
大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪ねる。
だがその直後、九十九が失踪した―。
ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、
ジョン・ロックフェラー、 ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツ…
数々の偉人たちの“金言”をくぐり抜け、一男の30日間にわたるお金の冒険が始まる。
人間にとってお金とは何か?
「億男」になった一男にとっての幸せとは何か?
九十九が抱える秘密と「お金と幸せの答え」とは?
(「BOOK」データベースより)

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以前、話題になっていたので読んでみました。
普段読まない珍しいタイプの作品でしたが、面白かったな!

ほんと、お金って何でしょうね。困りますね

九十九は言います。
「人間には自分でコントロールできないことが、3つだけある。
 死ぬこと、恋すること、そしてお金だ。」

なるほど。
コントロールできないほどの大金を持ったことないので、いまひとつ
ピンときませんが、やはりお金は魔物なんでしょうね。

怪しげなミリオネア・セミナーの会場で、教祖のような男は言います。
「お金が無限にあったとしたら、あなたは何をしますか?何を手に入れますか?
 何でもいいので、想像力を最大限に働かせて、すべて書き出してください。
 ただし制限時間は3分です。」

!!
さて、私だったら、何かひとつでも書けることがあるだろうか?
・・・あんま、無いかも
やはり強烈な欲求が無いと、大金を持つチャンスも資格もないんだろうな。
欲というものは、悪にもなり、生きる糧にもなる。

一男と九十九の大事なエピソードに「シェルタリング・スカイ」の
いくつかのシーンが引用されていたのも、さらにこの小説を好きになれた
要因かな。
私が好きな映画のひとつ!
ラストシーンで老人の言葉が切なく心に残ります。
「人は自分の死を予知できず、人生を尽きせぬ泉だと思っている。
 だが、あと何回満月を眺めることができるのか?
 せいぜい20回だろう。
 だが人はその機会が無限にあると思い込んでいる。」

生きる意味、生きて行くうえでのお金と幸せの答え、
一見、重いテーマのようですが、小説自体は軽快な語り口で面白かったです!


⭐︎

すべて真夜中の恋人たち/川上未映子

2016-01-16 | 読書
孤独な魂がふれあったとき、切なさが生まれた。
その哀しみはやがて、かけがえのない光となる。
芥川賞作家が描く、人生にちりばめられた、儚いけれど
それだけがあれば生きていける光。『ヘヴン』の衝撃から二年。
恋愛の究極を投げかける、著者渾身の長編小説。
(「BOOK」データベースより)

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素晴らしかった!
川上未映子って、こんなに美しい文章を書くのね。。
そう、本当にその情景が目の前にくっきりと美しく浮かぶのです。

そして…久しぶりに泣いたわ。
こういう柔らかい恋愛小説モノで涙するなんて、本当にこれはもう
文章が美しすぎるからです

ショパンの子守歌を
「まるで夜の呼吸のようです。溶かした光で鳴っているようです。」
ですってよ、奥さん!(笑

校正の仕事はひたすら孤独で、今までの人生もずっと孤独で
人とうまく付き合えず、街を歩いていても、キラキラしているそれは
自分とは全く無関係の作り物のように見える。
気分良く歩いていても、みるみる気持ちがしぼみ、画用紙くらいの
真っ白い紙は、あっという間に手のひらに握り込めるくらい小さく
折り畳まれてしまう。
主人公、冬子の揺れ動く気持ちが、手に取るように描写されていて
読んでるこちらが息苦しくなるー。

出かける前にはお酒を飲まないと、人と会ったり自発的な行動が
できなくなり、酔いが途切れた時の不安で魔法瓶に日本酒を入れて
バックに持ち歩く…。

苦しい、苦しい、苦しい。

そして偶然出会った、高校教師の三束さんとの穏やかな触れ合いで
少しずつ変化していく冬子の感情…。
こんなに美しい言葉で表現できるのね、 日本語って本当に素晴らしい

早速、ほかの作品も読んでみなくては!




人質の朗読会/小川洋子

2016-01-16 | 読書
遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。
紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。
祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと
見張り役の犯人、そして…
しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。
(「BOOK」データベースより)

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もうこれは完全に小川ワールドですね。
すごく良かった

地球の裏側のとある国でのツアー旅行中、反政府ゲリラに人質として
捉えられてしまった8人の日本人が紡ぐ8つの物語。
人質たちは閉じ込められた山小屋で、
「自分の中にしまわれている過去、未来がどうであろうと決して
 損なわれない過去の思い出」を朗読しようと決める。


やまびこビスケット
B談話室
冬眠中のヤマネ
コンソメスープ名人
槍投げの青年
死んだおばあさん
花束

それぞれの人生で、ある日すっぽりと異次元に迷い込んだような
不思議な体験。
自分にも、人生で何かひとつでも語れるような物語があるだろうか。

「冬眠中のヤマネ」は好きだったな~
露店商の老人と、中学生の僕の奇妙な物語。
片眼の老人が路上で売る手作りの縫いぐるみは、どれもガラクタかと見間違うほど
奇妙なものばかり。
アルマジロ、オオアリクイ、疥癬で脱毛したアライグマ、ラクダとアルパカの混血…

どんなに想像力を働かせても、その縫いぐるみ達の造形が浮かばないのは
逆に面白かったな
頭の中で漠然と描いていた、冬眠中のヤマネも、最後に「ボケットの中に」とか
「キーホルダーとして」などと書いてあり、
「え!そんなに小さいモノだったの? 」と一人驚き…(笑

本当にもう、小川さんの創造の世界には凡人の私はついていけません!


⭐︎

注文の多い注文書/小川洋子 クラフト・エヴィング商會

2016-01-15 | 読書
クラフト・エヴィング商會
吉田篤弘と吉田浩美による制作ユニット。
テキストとイメージを組み合わせた、独創的な作品を多数発表している。

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なにこれ!!おもしろーーーい
小川さんとクラフト・エヴィング商會のコラボです。
小説…?うん、一応、小説なんだけど、それぞれのケースにつき、
発注書と納品書と受領書、という不思議な構成です。

「人体欠視症治療薬」川端康成
「バナナフィッシュの耳石」サリンジャー
「貧乏な叔母さん」村上春樹
「肺に咲く睡蓮」ボリス・ヴィアン
「冥土の落丁」内田百

それぞれ5つの小説に基づいた「探し物」を依頼されるクラフトさんは
あらゆる手を尽くして納品するんだけど…
それぞれの注文がなんというか究極すぎて。

読んでいてもどこまでが本当のことで、どこからがファンタジーなのか。
小川さんの創造力はすごいね
そもそも、私は「貧乏な叔母さん」しか読んだことないから
他の話も知っていれば更に楽しく「探しもの」を探せたかも!
「探し物」も「探し者」も!

不思議世界に惹きこまれる珍しい作品でしたー。