ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

2014-06-29 | 映画
911の同時多発テロで、大切な父(トム・ハンクス)を亡くした
少年オスカー(トーマス・ホーン)。
ある日、父の部屋に入ったオスカーは、見たことのない1本の鍵を見つける。
その鍵に父からのメッセージが託されているかもしれないと考えたオスカーは
この広いニューヨークで鍵の謎を解くため旅に出る。
(Yahoo!映画あらすじより)

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これはもう、ものすごく切なくて、ものすごく感動する映画でした

少年がね、大好きだったお父さんを亡くして心に深く傷を負うんですね。
そりゃぁ、負うよね。
まだ小学生だもんね。
父のメッセージを受け取れず、苦悩する自分から解放されるため、
偶然見つけた鍵の謎を解こうとニューヨーク中を奔走する。
一生懸命なの、まだ子供なのに

でも、ひょんなことから、とある言葉を失った老人と出会い
一緒に鍵の謎探しの旅をするんだけど、これがまた良い!
老人と少年、完璧です。

あとねーー(興奮ぎみ
母親役のサンドラ・ブロックが、これまた素晴らしくてねーー!

悲しいテーマではあるけど、ありきたりの物語りではなく、
いくつかの謎を媒体に、父の死をどうやって受け止めていくのか、
本当によく練られたストーリーで、素晴らしい作品です。
かなりオススメ!

幻の光

2014-06-28 | 映画
これが監督デビューとなる是枝裕和が、宮本輝の同名小説を映画化した、
ひとりの女性の“生と死”“喪失と再生”を描いたドラマ。
主演はモデル出身で、新人の江角マキコ。ゆみ子は12歳の時、
祖母が失踪したことで、祖母を引き止められなかったことを悔いていた。
やがて、25歳になり夫・郁夫と息子とともに幸せな日々を送っていたが、
ある日突然、今度は夫が自殺してしまう。
そして、奥能登の小さな村に住む民雄と再婚した今も、
過去の悔いを残していた…。(allcinema ONLINE)

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是枝さんのスタート地点なんですねー。
良かったです

もう20年近くも前の映画だけど、江角マキコは全く変わりませんね!
浅野忠信や内藤剛志は、ずいぶん若いですが…

奥能登(輪島)が舞台のようで、日本海と共存する漁村の田舎風景が
とっても良かった。
何てことない、普通の人間の淡々とした日常生活だけど
心の揺れが静かな風景の中で、ぐっと浮き彫りにされる瞬間があり
この場所ならではなんだろうな~と。
日本の原風景

見終わっても、ふと映画の1シーンが脳裏によぎってしまうような
じわじわと心に残る映画でした。
さすが、是枝さん。


きのうの神さま/西川美和

2014-06-27 | 読書
村からただ一人、町の塾へ通っているりつ子は、乗っていた路線バスの
運転手・一之瀬から突然名前を呼ばれ戸惑う。
りつ子は一之瀬のある事実を知っていた(「1983年のほたる」)。
人の闇の深さや業を独自の筆致で丹念に描き出し、直木賞候補になった
傑作が待望の文庫化。
(「BOOK」データベースより)

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映画監督は小説だって書けるんですねー
僻地の医療を題材とした、短編集です。
そう、「ディア・ドクター」。

本編は映画とは全く違うストーリーなんだけど、
実際に取材した成果が、映画の脚本の素材となったようです。

+++++
映画の時間軸では語りきれなかった、様々なエピソードや
人々の生き方を、この本の中で蘇らせたつもりです。
(西川さんの後書きより)
+++++

どのお話も「ゆれる」的で、良かったなぁ…
正解なんて無いし、きれいな結論も無い。

終末医療は、僻地だからって問題でもないですよね。
大切な人を送るには、どんな事をしても後悔が残ると思う。

でも、『満月の代弁者』の中で医師が言う。
「楽に死ぬことよりさきに、楽に生きることです。
 少しは逃げたり、人の力に頼ったりすることを考えてもいいんだ。」

なかなか難しい問題だけど、あと10年後くらいに、この言葉を
思い出せるといいなぁ。
ある程度歳とってくると、ポックリ死んで、周りに迷惑をかけず
自分も苦しまず、理想の死に方ばっか考えちゃう…

楽しく生きるのだっ!


☆☆

ポテチ

2014-06-20 | 映画
宮城県仙台市、生まれた年も日にちも一緒の2人は成長した後、
片方はプロ野球の人気選手、もう片方は空き巣という
まったく異なる人生を歩んでいた。
ある日、空き巣をなりわいとする今村(濱田岳)が
恋人の若葉(木村文乃)と共に、地元のプロ野球選手(阿部亮平)の家に
盗みに入っるが、今村は一向に仕事を開始するそぶりを見せない。
すると部屋に女性から電話がかかってきて…。
(Yahoo!映画あらすじより)

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あまりに後味の悪い映画を観たので、こちらで爽快に

伊坂幸太郎の「フィッシュストーリー」の一編ですね。
わりと原作に忠実だけど、原作には無い部分と、映画ならではの
表現力や表情(濱田岳が良かった)で、
映画の方が感動的な作りとなっております。こほん。

伊坂のストーリーは、解説しては元も子もないので、特に何も
言いませんが、なかなか役者の人選が良くて、小説を読んでいても
別の楽しみ方があるみたい。
黒澤が大森南朋っつーのは、なかなか秀逸なチョイスですね

音楽(斎藤和義)も映画と合ってて、すごく良かった。

心あったかーーーーくなること、請け合いです

キャタピラー

2014-06-17 | 映画
勇ましく戦場へと出征していったシゲ子の夫、久蔵。
しかし戦地からシゲ子(寺島しのぶ)の元に帰ってきた久蔵(大西信満)は、
顔面が焼けただれ、四肢を失った姿だった。
多くの勲章を胸に、「生ける軍神」と祭り上げられる久蔵。
シゲ子は戸惑いつつも軍神の妻として自らを奮い立たせ、久蔵に尽くしていくが…。
(Yahoo!映画あらすじより)

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久しぶりにこういう映画見たなぁ・・・(ちょっと後悔
まったくもって完全な反戦映画だけど、シゲ子という一個人の生々しい日常を
通してのメッセージなので、なんと言うか、かなり過激。酷い。重い。
後味悪くて、あんまり感想書く気分でもないなぁ・・・

ただ、やっぱり寺島しのぶ、すごいね。
負傷兵の大西信満も、かなり体当たりの演技だったけど、
寺島しのぶの、表現力には完全に呑まれちゃう。

手足も声も失い、肉の塊となって戻ってきた夫に、
絶望し、恐怖し、同情し、尽くし、怒り、欲情し・・・
シゲ子という立場でしか到底理解できない、複雑な愛憎の感情を
爆発させる。

食べて、寝て、食べて、寝て。
それでも生きていかなきゃいけない。

でも、それって、現代の私達と何が違うのだろう。
人間って。つらいね。

あぁ、今、私、暗いよぉ・・・

麒麟の翼/東野圭吾

2014-06-14 | 読書
「私たち、お父さんのこと何も知らない」。胸を刺された男性が日本橋の上で息絶えた。
瀕死の状態でそこまで移動した理由を探る加賀恭一郎は、被害者が「七福神巡り」を
していたことを突き止める。家族はその目的に心当たりがない。
だが刑事の一言で、ある人物の心に変化が生まれる。父の命懸けの決意とは。
(文庫裏書より)

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加賀さん、本当にあんたは素晴らしい
相変わらず、えーぇ男や。

日本橋の麒麟像って本当に美しいんだよね。
ストーリーの舞台が実際に分かる場所だと余計に感情移入できる。

謎の真相は、まぁさておき、最後に加賀刑事がすごーーーーく感動的な
セリフを言うんだけど、それを書いちゃうと犯人バレちゃうしなー。
残念だけど、書きません(笑。

「死んでいく者のメッセージを受け取るのは、生きている者の義務だ」
加賀さん自身が言われた言葉なんだけど、これが事件を説く鍵になり
最後、一気に事件解決するあたり、やっぱり東野さんのミステリーは
読みやすく気持ちがええのぉ~!




アーティスト

2014-06-12 | 映画
1927年のハリウッドで、サイレント映画のスターとして君臨していた
ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、
新作の舞台あいさつで新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)と出会う。
その後オーディションを経て、ジョージの何げないアドバイスをきっかけに
ヒロインを務めるほどになったペピーは、トーキー映画のスターへと
駆け上がる。
一方ジョージは、かたくなにサイレントにこだわっていたが、
自身の監督・主演作がヒットせず…。
(Yahoo!映画あらすじより)

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良い!!
面白かった

敢えて今、モノクロ映像でのサイレント映画って新鮮だけど、
単なる原点回帰ってワケじゃなくて、本当に美しく瑞々しい!

昔の映画が何故面白いって、シンプルで美しいから。
難しいことは何もなく、誰の心にも届くステキなストーリー。

そして、この映画の素晴らしさは、何と言っても『犬』!
ジョージの愛犬のジャックラッセルテリアがもう、めちゃくちゃお利口で
可愛くて、シーンごとにピリリとスパイスを効かせてくれるのよー!
なんてったって本作で、“犬”版アカデミー賞と言われる
第1回ゴールデン・カラー賞(金の首輪賞)を受賞したくらいだからね!
(もう、犬バカだから止まんないよ
このワンコ無しでは、この映画は成り立たないよね。
ラストもオイシイ所、全部もってっちゃうし!
本当にキュートでした。

スターの凋落→自暴自棄になり→他人(あるいは自分)を傷つける
という、よくある暗くなりがちな話も、この子の存在が大きいよね。
あと、ジョージに心寄せるペピーが、有名女優にのし上がっていくにつれ
本当に可愛く輝いていくのも、キュートだったな!

心あたたまり、エンドロールが流れ始めると
「あーーおもしろかった!」と自然に口をついて出るような映画、
たまには見なきゃね


その夜の侍

2014-06-09 | 映画
小さな鉄工所を経営する中年男の中村(堺雅人)は、5年前に木島(山田孝之)が
起こしたひき逃げ事件で最愛の妻を失ってしまい、抜け殻のようになりながらも
復讐することだけを考えて日々を生きていた。
やがて、刑期を終えて出所した木島のもとに、復讐を遂げる日までの
カウントダウンを告げる差出人不明の脅迫状が届くようになる。
そして妻の命日の夜が訪れ、ついに中村と木島は対面を果たすが…。
(Yahoo!映画あらすじより)

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すっっごく難しい映画でした。

妻を殺された男が心を失い復讐を誓うが、題名が示唆する「侍」というのが
キーワードなんでしょう。

「お前を殺して、俺も死ぬ。」
妻の命日を復讐の日と予告し、当日、どしゃ降りの真夜中の公園での
中村と木島が対峙するシーンは、すごかった・・・。
ここに、この映画で表現したい事が全て集約されてんじゃないかな。
木島の卑しさ、中村が本当にやりたかったこと。

最後に中村が放つ一言が、素晴らしい
『この物語は最初から君には関係ない話だった』

それにしても山田孝之は、こういう人間のクズみたいな役やらせたら
日本一だね。
すごい役者です。

ラストシーン、5年間何度も聞き続けた妻の留守電を消去し、
プリンをぐちゃぐちゃにして顔から頭からかぶる。
犯人との最終決戦を終え、自分の気持ちに区切りをつけるという
感じは分かるんだけど、この映画を真に理解するのはかなり難易度が高いと
思い知らされた終わり方でしたね~。


屋根屋/村田喜代子

2014-06-02 | 読書
雨漏りのする屋根の修理にやってきた屋根屋。
自在に夢を見られると語る彼の誘いに乗って、「私」は、
夢のなかの旅へ一緒に出かける。
九州訛りの木訥な屋根屋と、中年主婦の夢の邂逅は、
不思議な官能をたたえながら、ファンタジーの世界へと飛翔する。
(「BOOK」データベースより)

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村田喜代子さんって、知らなかったなぁ~。
北九州市出身なんだ、モロ地元じゃん!
しかも芥川賞をはじめ、各種文学賞の受賞歴もあるのに、
何で今まで気付かなかったんでしょうね。

なかなか面白かったです、こういう感じ久しぶり。
ファンタジーなんですけど、なんつーか・・・生活密着型ファンタジー!

屋根に着眼点を置くってのが新しい
日本の寺社やヨーロッパの教会や寺院を巡る旅でも
屋根にしか言及しない。面白い。

----引用------
屋根の上とは、この世とあの世の境の、賽の河原のような場所にも
似ている。賽の河原には水がある。水の代わりに屋根の上には空がある。
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なるほどね。
屋根ひとつ取っても、人によっては色々な見方があるんだねぇ。


夢を操り、2人は毎晩、色々な場所に旅に行く。
夢が濃い(明晰夢)と、現実との区別がだんだん付かなくなり、
むしろ現実の方が薄ぼんやりとしてくる。

----引用------
結婚生活の相棒は歳月と共に空気みたいに慣れていくものだ。
相棒が朝な夕な生々しい存在でそばにいたら、愛したり憎んだり
欲情しっぱなしだったりで厄介である。
というわけで生活の便宜上、夫や妻は影が薄くなるようにできている。
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うん、そのようにできている
完全同意。(久しぶりに出た

全体的にふわっとしたストーリーではあるけれど、
こうやって所々で示唆に富んだ表現も出てきたり…
大人のファンタジーですね。




英国王のスピーチ

2014-06-01 | 映画
幼いころから、ずっと吃音(きつおん)に悩んできたジョージ6世(コリン・ファース)。
そのため内気な性格だったが、厳格な英国王ジョージ5世(マイケル・ガンボン)は
そんな息子を許さず、さまざまな式典でスピーチを命じる。
ジョージの妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)は、スピーチ矯正の専門家
ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)のもとへ夫を連れていくが……。
(Yahoo!映画あらすじより)

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実話に基づくって言っても、そりゃー映画なんだから随分脚色されとるわな。
うん、でも、OK
良かった!感動した!

どんな高名な医者にかかっても治らなかった吃音が、平民で資格も持たない
言語療法士との友情で克服する・・・というストーリーではあるけど、
実際は、そんなにゴリゴリの友情物語ってカンジではないのが良かった。
そんな映画みたいに(!)簡単に治ったりしないでしょう
ジョージ6世の苛立ちと不安は最後の最後まで続くし、そういうリアルな
雰囲気が余計に、最後のスピーチの感動を呼んだのかも。

あと、映像の撮り方っていうのかな、よく分からないんだけど
1つ1つのカットが絵画のようで印象的でした。
ジョージ6世が、ライオネルの所で受けるカウンセリングのシーンなどが
特に面白く、2人が会話するシーンなのに、2人が映っているのではなく
喋る方に、パッパッとカメラが切り替わり、それが人を写しているというより
後ろの壁紙を写しているような妙なバランスが。
不思議な感覚におそわれる美しい映像でした。

ラストの戦争開始の演説は、お見事
これで9割方、感動をもってかれます(笑

とっても良い映画でしたが、そんな賞を総舐めにするような派手な映画
ではなかったよ。(こら