ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

最後の息子/吉田修一

2019-08-21 | 読書
新宿でオカマの「閻魔(えんま)ちゃん」と同棲する「ぼく」。
友だちのオカマがホモ狩りにあって殺された事件を契機に、
気楽なモラトリアム生活がうまくいかなくなってしまう。
家族との関係、元彼女との再会、閻魔ちゃんとの生活……
自分がどうしたいのかわからないまま、ビデオ日記を見返してゆく。
そこに映っていたものは?
文學界新人賞を受賞した表題作の他に、長崎の高校水泳部員たちの
夏の一瞬を爽やかに描いた「Water」、「破片」を収録。

=================================
「おっさんずラブ」や「きのう何食べた?」にハマってからというもの、
BLを暖かい眼差しで見られることから、本作も何だかとてもグッときました。
良かったです

特に「Water」は瑞々しすぎる青春小説で、特に良かったなぁ
歳のせいなのか、以前にも増して青春モノに弱い気がする今日この頃。
眩しいす。眩しすぎる。若いって素晴らしい

「破片」はちょっと独特な雰囲気の短編でした。
早くに妻を亡くし男手一つで息子2人を育てた長崎の田舎の
酒屋のオヤジと、屈折したその息子たち。
ほんの心のかすり傷からでも膿んで大きな病になっていくのか。。
男だけの殺風景なやり取りの中、それでも親子としてのか細い絆のような
ものがあるのか。
他の2作とは違う、少し重めのストーリーでしたが、吉田修一らしくもあったかな。


☆☆

ジャッジメント/小林由香

2019-08-17 | 読書
大切な人を殺された者は言う。「復讐してやりたい」と。
凶悪な事件が起きると人は言う。「同じ目にあわせてやりたい」と。
犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。目には目を歯には歯を―。
この法律は果たして被害者とその家族を救えるのだろうか!?
第33回小説推理新人賞受賞。大型新人が世に問う、衝撃のデビュー作!!
(「BOOK」データベースより)

==================================
うーん。なんかエグいの読んじゃったな
心情的に訴えたいことは分かるけど。
復讐法かぁ。。
被害者遺族は、旧来の法に基づく判決か、自らの手で犯罪者から受けた被害内容と
同じ形で刑を執行できる復讐法のどちらかを選べる。
言ってみれば近未来SF的な「そんなのあり得ないよ」だけど
内容としては報復殺人と言う意味で全くあり得る話でもあり。。

被害者遺族たちの苦悩、葛藤、よく描かれていると思うけど、どうしても
深く感情移入まではできなかったかな。
自分の大切な人が殺されたら、ここまで出来るだろうか。
でも、そんなの実際にその立場にならないと1ミリも語れないよ

5つの事件を描く短編集のような形式で、「応報監察官」という、復讐法に立ち会う
役人からの目線で語られていく。
こんなやるせない仕事ないよすぐに病んじゃう。

やはり人間は心の生き物。
法律だけで何かが解決するわけではありません。
色々と考えさせられる物語でした。


☆☆

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち/山田詠美

2019-08-15 | 読書
ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。
澄生と真澄の兄妹に創太が弟として加わり、さらにその後、千絵が生まれる。
それは、幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。
しかし、落雷とともに訪れた“ある死”をきっかけに、澄川家の姿は一変する。
母がアルコール依存症となり、家族は散り散りに行き場を失うが―。
突飛で、愉快で、愚かで、たまらなく温かい家族が語りだす。
愛惜のモノローグ、傑作長篇小説。
(「BOOK」データベースより)

========================================
お盆は久しぶりによく本を読んだなー
てか、山田詠美!!まだ書いてたのか!笑
20年ぶりくらいかしら?
若い頃は好きでよく読んでいたけど、途中から体質に合わなくなってきて
多分、読まなくなった頃から彼女もそんなに執筆してないと思うけど、
久しぶりに読んでも、やはり山田詠美らしい文章で、懐かしく心地よかった。

とある家族の物語。
「私」「おれ」「あたし」「皆」と、章ごとにそれぞれの視点から描かれる。
家族って外から見てもその実は分からない特殊な組織だよね。
人が似るのは血の繋がりよりも生活習慣。
同じ食べ物を体に取り入れて、同じ所に身を置いていると魂が似てくる。
そして、全ての家族と唯一血の繋がりを持つ末娘の千絵が
「血って時々すごく濃くて、時々すごく薄い」と言う。
なんか納得!!

とても良い作品でした。

死にぞこないの青/乙一

2019-08-15 | 読書
飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。
先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。
クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現れた。
ホラー界の俊英が放つ、書き下ろし長編小説。
(「BOOK」データベースより)

=========================================
続けて乙一。
これも良かったなぁ。
はっきり言って怖かったです。
ある意味ホラーですが、そういう怖さではなくて、結局人間が一番コワイよねってやつ。

いじめの問題。
人の心の弱さ。
洗脳されて心が壊れていく過程ってこういうことなのかな、と、
途中、読むのがちょっと辛かった。
主人公マサオくんの気の弱さにイライラしながらも。

マサオの心の弱さを具現化したような存在のアオと共に
後半、自分を取り戻し生きていこうと決意してからの展開がとても良くて
これまた引き込まれてあっという間に読了。
乙一、なかなかイイかもー



暗いところで待ち合わせ/乙一

2019-08-07 | 読書
視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。
駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。
犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。
他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。
奇妙な同棲生活が始まった―。
(「BOOK」データベースより)

=========================================
乙一!!まさかこんなものを書いているとは!
失敗したー
10年以上前と思うけど、初めに読んだ彼の作品が全く合わなかったので
(確か「Zoo」だったと思う)
こういうテイストの人なんだな、と苦手レッテルを貼ってその後新作が出ても
手に取ることもなかったが。
反省、反省。好みも変わるし、色んな味付けだってある。

とにかく、これ良かったわーー。
設定が奇想天外なわりに、すごく引き込まれるストーリーで、さらに後半の急展開!
「え?」となってからは夜中まで一気に読まずにはいられなかったよ。

人間関係を作ることが苦手で心や身体に障害を抱える孤独な二人が
緊張状態の中から自分が次第に変わっていくことを感じる。
サスペンス要素はありながら、やはりこの作品は心温まるヒューマンドラマだと
思う。
人の心は脆くて、でも強くあれる。それは独りでは無し得ない。
ミチルが暗闇から抜け出せる光が見える、とても素敵な物語です。



平成猿蟹合戦/吉田修一

2019-07-19 | 読書
歌舞伎町のバーテンダー浜本純平は、ある日、ひき逃げ事件を目撃する。
だが逮捕されたのは、まったくの別人だった。
真犯人への恐喝を目論むうちに、世界的なチェロ奏者のマネージャー園夕子と
知り合った純平は、いつの間にか地元東北から国政選挙に出馬することになり…。
(「BOOK」データベースより)

======================================
めちゃくちゃ面白かったーーー
久しぶりに吉田修一で大当たり出たよ。
タイトルからは全く想像がつかない内容で、普段だったらスルーしそうだけど
何でしょうか、呼ばれちゃいまして。

長崎の島から出てきた美月と朋生
チェロ奏者の湊圭司とマネージャーの夕子
湊圭司の身内であるサワと友香
歌舞伎町のクラブで働く美姫ママ
それぞれの人生の物語に少しずつ純平が関わり、やがては皆を繋いでいく。

登場人物多いわりには話も混乱せずテンポもいいし、
それぞれの物語テーマが多岐にわたり飽きさせない!
そして最後は爽快な気持ちになれる

ミステリーや重いやつとは全く異なるし、かといって青春小説って訳でもないし
なんていうカテゴリーに入れたらいいかな。。

やっぱり吉田修一は奥が深い!やるな!!


鍵のない夢を見る/辻村深月

2019-04-10 | 読書
望むことは、罪ですか?
誰もが顔見知りの小さな町で盗みを繰り返す友達のお母さん、
結婚をせっつく田舎体質にうんざりしている女の周囲で続くボヤ、
出会い系サイトで知り合ったDV男との逃避行──。
普通の町に生きるありふれた人々に、ふと魔が差す瞬間、
転がり落ちる奈落を見事にとらえる五篇。
現代の地方の閉塞感を背景に、五人の女がささやかな夢を叶える鍵を求めて
もがく様を、時に突き放し、時にそっと寄り添い描き出す。
著者の巧みな筆が光る傑作。第147回直木賞受賞作!
(「BOOK」データベースより)

================================================
よかった…
辻村さん、そんなにたくさん読んだ事ないけど、やっぱり好きだな。

普通に生活していれば、誰にでも起こり得る、つまづき。
どうして自分だけうまく行かないのだろう、という落ち込み。
劣等感、イライラ、嫉妬、プライド…。

そういう当たり前の感情を、実にうまく、生々しく曝け出してくれる。
読み終わったあと、何かイケないものを覗いてしまったような
罪悪感に似たモヤモヤを抱いてしまうけど、
自分だって同じことをやるかもしれない、怖さ。

いやぁ、うまいもんです。




消滅/恩田陸

2019-04-10 | 読書
202X年9月30日の午後。日本の某空港に各国からの便が到着した。
超巨大台風の接近のため離着陸は混乱、さらには通信障害が発生。
そして入国審査で止められた11人(+1匹)が、「別室」に連行される。
この中に、「消滅」というコードネームのテロを起こす人物がいるというのだ。
世間から孤絶した空港内で、緊迫の「テロリスト探し」が始まる!
(「BOOK」データベースより)

================================================
もーーーーー
ほーらー!
だから恩田さんとは合わないんだってばぁー

上下巻のわりとボリュームある感じで、前半は本当にハラハラして
緊迫感あるストーリー。

密室ミステリーの「この中に犯人はいる!」的なやつね。
うんうん、いいぞ!
それで?どうなる?
と、盛り上がっていったんだけど。

ね。

今まで何度もやられたのに。

私のバカ。

やっぱり、恩田さんの作品は、青春モノ・感動モノに
限ると思います・・・。


☆☆☆

犯罪者/太田愛

2019-03-21 | 読書
白昼の駅前広場で4人が刺殺される通り魔事件が発生。
犯人は逮捕されたが、ただひとり助かった青年・修司は搬送先の病院で
奇妙な男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」と警告される。
その直後、謎の暗殺者に襲撃される修司。
なぜ自分は10日以内に殺されなければならないのか。
はみだし刑事・相馬によって命を救われた修司は、相馬の友人で
博覧強記の男・鑓水と3人で、暗殺者に追われながら事件の真相を追う。
(「BOOK」データベースより)

==========================================
「幻夏」があまりにも良かったので、姉妹作にすぐ着手!
相馬・鑓水・修司の強力タッグが生まれるきっかけとなった最初の作品。
いやーー、それにしても凄い。
これがデビュー作
よくもまぁ、これだけ骨太の小説書けますね
ボリュームも内容もストーリー展開も、どれを取っても大満足。
お腹いっぱい

通り魔事件に巻き込まれる修司、大手食品メーカーの中迫、
与党重鎮の磯部、産廃業者の真崎、幼児に発症する原因不明の難病。
いくつものストーリーが並行し、スピード感のある展開で
ハラハラドキドキ、ぐいぐい引っ張られていき途中でやめられなーい!

そして、いくつもの点が繋がってきた時の高揚感ったら。
殺し屋が追っかけてきて怖いし、涙もろいおばちゃんには男の友情が
切なく心に響くし、もう忙しいったらありゃしない。

スピード感だけでなく、相馬と鑓水、修司3人それぞれが抱えている過去が
更に内容の面白さの層を厚くしてるし、
同時に企業の隠蔽体質という社会問題にも切り込んでいき、スケール感!
とにかく、すごい小説です。

…それにしても、なんで「犯罪者」なんて、漠然としたタイトルにしたのかな。
それだけが少し不思議

ま、とにかくこれは文句なしの満点です!


フーガはユーガ/伊坂幸太郎

2019-03-17 | 読書
常盤優我は仙台市のファミレスで一人の男に語り出す。
双子の弟・風我のこと、決して幸せでなかった子供時代のこと、
そして、彼ら兄弟だけの特別な「アレ」のこと。
僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い。
(「BOOK」データベースより)

===========================================
久しぶりの伊坂の新作・・・が。
今までにない読後感の悪さで、切なすぎる

ファンタジー(というかフィクション?)の部分が根底にありながらも
児童虐待やDV、いじめ等、現実世界の悲惨なシーンがリアルすぎて
結構つらかった。。
小玉ちゃんの虐待のくだりなんて、不快感でページが進まなかったし。

いつもの、死神とか殺し屋とか、まぁ悪い奴はいっぱい出てきても
伊坂ワールド特有の爽快感みたいなものに救われて楽しく読めるのが
常だったので、本作にはちょっと驚いたかな。

でもまぁ、ずっと同じテイストのものを書くのも作家としての
成長がないから、色々なスタイルに挑戦したいって雑誌のインタビューで
言ってたし。
そりゃ挑戦も必要か。

後味の悪さと、作品の出来とは全く関係ないとは思うんだけど
うーーん。まだちょっと消化できない感じなので、星は3つにしておこう。

☆☆