ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

ガール/奥田英朗

2015-11-26 | 読書
わたし、まだオッケーかな。
ガールでいることを、そろそろやめたほうがいいのかな。
滝川由紀子、32歳。仕事も順調、おしゃれも楽しい。
でも、ふとした時 に、ブルーになっちゃう(表題作)。
ほか、働く女子の気持ちをありえないほど描き込み、話題騒然となった短編集。
あなたと彼女のことが、よくわかります。
(「BOOK」データベースより)

======================================================
どうして奥田さんはイイおっさんなのに、こんなに女子の繊細な気持ちが
分かるんでしょう!
管理職になり年上の嫌味な男性が部下になってしまった聖子ちゃん(ヒロくん)
親友に触発され、マンション購入計画に燃えるゆかりちゃん(マンション)
シングルマザーの負い目を払拭するため営業部で奮闘する孝子ちゃん(ワーキングマザー)
新入社員の超イケメン男子の教育係りになってドギマギする容子ちゃん(ひと回り)

本当に、どれも手に取るように気持ちが良く分かり、女性ならではの
見栄や、意地、プライドと葛藤しながらも、本当の自分に立ち返るという
爽やかな読後感。
あーーん。もう、奥田さん素晴らしい

私はマンションのゆかりちゃんタイプかなぁ…
今までは好き勝手に仕事をして「一人タカ派」と呼ばれていたゆかりだったが、
マンション購入のため、はじめて会社を辞められないという立場に置かれ
今までバカにしていた同僚の男性達を見る目が変わる。

「彼らは生活がかかっている。守るものがたくさんある。
 そういう中で頭を下げ、上からの無理難題に耐え、生きている。
 それを保身とからかう自分は、無責任で世間知らずの子供だ。」

役員室の秘書達との不毛なやり取りにもぐっと我慢して低姿勢に。。
でも、最後にはとうとう堪忍袋の緒が切れ常務本人に食ってかかる(笑
本当の自分は抑えられない。
一度きりの人生、楽しみたい元気の出る小説でした~。


誰かが足りない/宮下奈都

2015-11-26 | 読書
おいしいと評判のレストラン「ハライ」に、同じ時に訪れた6組の客の物語。
仕事に納得がいっていない。
認知症の症状がではじめた。
ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない。
人の失敗の匂いをかぎとってしまう。
「足りない」を抱える事情はさまざまだが、前を向いて一歩踏み出そうとする時
おいしい料理とともに始めたい。
決心までの心の裡を丁寧に掬いあげ、本屋大賞にノミネートされた感動作。
(文庫裏書きより)

===========================================
はじめまして、の宮下奈都。
なかなか良かったです
やっぱり、美味しいものって人を幸せにするし、それどころか、
幸せにするきっかけにさえなるんですね。
食べ物、大事

それぞれの章で、多かれ少なかれ心を病んでいる人たちが、何かを手がかりに
それを乗り越えようとする。
そのキーワードが、ハライという美味しいと評判のレストラン。

全く別の人生を紡ぐ6組の人物たちが、予約を入れた10月31日に
そのレストランで同じ空間を共有する…
なかなか面白い構成でした。

ほんわかした感じも良かったし。
ただ、刺激に慣れすぎてる私からすると、綺麗にまとまりすぎてるかな?
いやいや、良かったんですけどね!


⭐︎⭐︎

東京物語/奥田英朗

2015-11-11 | 読書
1978年4月。18歳の久雄は、エリック・クラプトンもトム・ウェイツも
素通りする退屈な町を飛び出し、上京する。
キャンディーズ解散、ジョン・レノン 殺害、幻の名古屋オリンピック、
ベルリンの壁崩壊…。バブル景気に向かう時代の波にもまれ、
戸惑いながらも少しずつ大人になっていく久雄。
80年代の東京 を舞台に、誰もが通り過ぎてきた「あの頃」を鮮やかに描きだす
まぶしい青春グラフィティ。
(「BOOK」データベースより)

================================================
すごく良かった
まさに私たちの年代が読むとドンピシャの小説じゃない?
時代背景やその時に起こった事件、そして、今は自分が地方から出てきて
東京に住んでいるからこそ分かる地理感覚とか戸惑いとか。
すごく気持ちがシンクロできて物語に入り込めました。

1978年~1989年までの田村久雄くんの人生を切り取った6つの短編。
時系列ではないのも良かったな。
東京で大学を中退し就職した小さな広告代理店で、殆ど寝る間もなく
コキ使われる毎日。
2年遡った2編目は、初めて地元の名古屋から状況して一人暮らしを始める
興奮と心細さを見事に描く!
3編目は大学のサークル仲間とのいかにも大学生的な自堕落な日々の中で、
気になる女の子の一挙一動に振り回される・・・

どれも甘酸っぱくて、切なくて、生意気で、愛おしい
若気の至り、とは良く言ったもんです。
若いってのは特権。それを眩しく思えるのは、こういう年齢になってから。

ある程度、自伝的要素があるんだろうな、と思うこの作品は
きっと奥田さん自身が自分の若気の至りを振り返り、真摯に書いたんじゃないかな。
とっても素敵な小説でした!


あなたが消えた夜に/中村文則

2015-11-05 | 読書
ある町で突如発生した連続通り魔殺人事件。
所轄の刑事・中島と捜査一課の女刑事・小橋は“コートの男”を追う。
しかし事件は、さらなる悲劇の序章に過ぎなかった。
“コートの男”とは何者か。誰が、何のために人を殺すのか。
翻弄される男女の運命。
神にも愛にも見捨てられた人間を、人は救うことができるのか。
人間存在を揺るがす驚愕のミステリー!
(「BOOK」データベースより)

===============================================
最新刊もいつもの文則節。ブレません
出だしは「あれ?なんか普通のミステリーっぽい。犯人とか探しちゃうワケ?」
と違和感を感じつつ読み進めてたけど・・・
安心してください!途中からはしっかり重くなりますので!

前半は殺人事件が起こって、刑事(この人も心を病んでる)が捜査するんだけど
後半、犯人が分かってからは、犯人が事件を起こすまでの心の闇をひたすら
綴っていきます。お得意の手記で
こっちが完全にメインね。

それにしても相変わらず、文則くんは病んでるね。
いつも思うけど、本当に人を殺したことあるんじゃないかな(爆弾発言
それくらい鬼気迫るよね。
「人を殺すとういう風景」に対する表現や、殺人を犯すとどれほど精神が
壊れるかという心理状態の描写がハンパないし。

人は脆い。
脆くて弱くて、いっそ狂ってしまった方が楽になれるんじゃないか。
そういう人々のもがき苦しむような魂の叫びは、平和にのんびり人生を
送っている人にはどうやっても書けないと思うし。
いつも、この人の小説を読むと重く悲しくなるのと同時に、文則くん自身は
大丈夫なのかしら、と心配してしまう、おせっかいな読者(40代・主婦)
です。

あと、前から思ってたけど、神に対する絶望の表現は、遠藤周作の「沈黙」を
彷彿とさせますよね。
頑張って生きてくれ!文則!
今回の終わり方もちょっと「掏摸」の時のような、ほんの僅かな光が見えて
いるよ!!光の射す方へ~!


⭐︎