ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

あの空の下で/吉田修一

2016-11-21 | 読書
初めて乗った飛行機で、少年は兄の無事を一心に祈っていた。
空は神様に近いぶん、願いが叶う気がして――。
機上で、田舎の駅で、恋人が住んでいた町で。
ささやかな、けれど忘れられない記憶を描いた12の短編と、
東南アジアから北米まで、6つの町での出会いをつづったエッセイの
詰め合わせ。ANAグループ機内誌『翼の王国』人気連載をまとめた、
懐かしくいとおしい、旅情を誘う作品集。

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あぁ、なるほど!ANA機内誌の連載集だったのか!
なんだか余韻を残すような、プツンと切れてしまうような、
なんとも不思議な読み心地のする短編集だなぁ…と思ったら、
そういうコトだったのね。

でも、そう考えると、小説としての通常短編と、機内誌に投稿する短編と
何が違うのだろう…。 気合い?
吉田さん、やっつけで仕事した?(こら。

どの短編も悪くなかったし、嫌いじゃないけど、やっぱり本域で仕事
してほしかった。。。(こーら。

夜、寝るまえに一編ずつ軽く読んでお布団に入る、って感じが
良いと思います。


⭐︎⭐︎⭐︎

ワン・モア/桜木紫乃

2016-11-08 | 読書
安楽死事件を起こして離島にとばされてきた女医の美和と、
オリンピック予選の大舞台から転落した元競泳選手の昴。
月明かりの晩、よるべなさだけを持ち寄って躰を重ねる男と女は、
まるで夜の海に漂うくらげ―。
同じ頃、美和の同級生の鈴音は余命宣告を受けていて…
どうしようもない淋しさにひりつく心。
人肌のぬくもりにいっときの慰めを求め、切実に生きようともがく人々に
温かなまなざしを投げかける、再生の物語。
(「BOOK」データベースより)

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良かったす。。

連作短編って、一編ごとに登場人物たちの視点が切り替わるし、
大きなストーリーでありながら、細々とした側面や色々な人の感情が
丁寧に伝わってくるのが良い。
そして最後、全てが繋がっていく感じも好き。

本作も良かったなぁ〜。
個人的には暗い話も好きだけど、これは希望が見える終わり方で
ホっとするタイプの物語かな。
読後感は爽快です

主役は美和ってことになるのかもしれないけど、脇を固める人達に
しっかり味があって、それぞれの短編が切なく苦しい。

強がって生きている人達、自分を表現するのが不器用な人達への
応援歌なのだ!
桜木さん、よろしぃです


⭐︎

蛇行する月/桜木紫乃

2016-11-01 | 読書
人生の岐路に立つ六人の女の運命を変えたのは、ひとりの女の“幸せ”だった。
道立湿原高校を卒業したその年の冬、図書部の仲間だった順子から電話がかかってきた。
二十も年上の職人と駆け落ちすると聞き、清美は言葉を失う。
故郷を捨て、極貧の生活を“幸せ”と言う順子に、悩みや孤独を抱え、
北の大地でもがきながら生きる元部員たちは、引き寄せられていく―。
彼女たちの“幸せ”はどこにあるのか?
(「BOOK」データベースより)

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六編からなる連作短編集ですが、清美、桃子、弥生、美菜恵、静江、直子という
それぞれの女たちの、それぞれの時代の物語を通して「順子」という女性の
一生を描いた長編小説という趣向です。

すごく、すごく良かった!!
なんだ、桜木さんいいじゃないですか!
ホテルローヤルがあまり響かなかったので、それ以降手をつけていない作家でしたが
いやいやいや…。
もしかしてホテルローヤルも今読むと感動したりして。
自分のコンディションで小説って感じ方変わるからなぁ〜

北海道の湿原高校なんて、もう名前聞いただけでもジメジメして暗い話っぽいし
極寒の地、閉鎖的な田舎で生まれ育った彼女たちは、何を人生の幸せとするのか。

それぞれの短編に出てくる順子がキーパーソンで、全ての話を繋げているわけだけど
20歳も年上の職人と子供ができて駆け落ちし、極貧の生活を強いられながら
各地を転々としてきた順子。でも彼女は満面の笑みで「しあわせ」と言う。

最後の直子の章は、とても悲しかった
死ぬことすら楽しみと言い切れる順子のまっすぐさ。
陳腐な言い回しだけど、幸せの形なんて人それぞれ。
でも、こんな風に人生を送ることが出来るのが本当に最高の形なんだろうな。