ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

ブエノスアイレス

2014-05-31 | 映画
香港映画界の鬼才、ウォン・カーウァイ監督が男同士の切ない愛を描いた恋愛ドラマ。
惹かれ合いながらも、傷つける事しかできない男と男の刹那的な愛を綴ってゆく。
徹底的に突き放した視点で彼等を捉える事で、より深い感情の揺れ動きを
捉える手腕は流石。
またアルゼンチンの雄大な自然美や、アストル・ピアソラの切ないメロディが映画を
効果的に彩る。トニー・レオン、レスリーチャン共演。
南米アルゼンチンへとやってきた、ウィンとファイ。
幾度となく別れを繰り返してきた2人は、ここでも些細な諍いを繰り返し別れてしまう。
そして、ファイが働くタンゴ・バーで再会を果たすが...。
(allcinema ONLINE)

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イギリス映画のこの手のやつは美しさを強調したようなものが多い気が
しますが、アジア人がこれやっちゃうと、なんつーか、生々しい

ただね、トニー・レオンですよ、結局。
なんですか、この人の美しさというか、セクシーさというか。
ほんの1mm微笑んだだけで、1mくらい吹っ飛ばされるカンジ!
いやーーー、こういうガチの役もこなしちゃうのね。
自身、「これが自分の代表作になる」とも言っているようです。

実にウォン・カーウァイ的、映画でしたね。
映像も美しく、音楽が更に切なさを増す。
最後、街並みを天地ひっくり返して撮る場面が続くんだけど
気持ち悪くなっちゃった。

私達の常識って、結局、普段見ているものを「正」と理解しているだけで
逆からモノを見るって事が、どれほど物理的にも心理的にも難しい
ことか、驚かされました。
あのシーンに、そういう意味があるのかどうかは別として。

最後いきなり明るく締めて「再生」感出そう!みたいな終わり方が
個人的にはイマイチでしたが、やっぱり切ない映画ですよ、これは。

抱擁、あるいはライスには塩を/江國香織

2014-05-30 | 読書
東京・神谷町の広壮な洋館に三世代十人で暮す柳島家。
子供たちは学校に通わず家庭で教育されていたが、ある日とつぜん
父親の提案で小学校へ行くことに。次女の陸子はそこで知るのだった。
叔父や叔母との同居、父親の違う姉と母親の違う弟の存在などは、
よその家では「普通」ではないらしいということを―。
世代をこえて紡がれる、風変りな一族の愛と秘密。江國香織の新たなる代表作。
(「BOOK」データベースより)

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気高く美しい一族の歴史。
ゆるぎない愛の果てにある、やすらかな孤独。
江國さんの、こういう家族をテーマにした物語、好きなんだよねー。
家族だけの親密で特殊な空間、自分が完璧に守られている場所。

でも、今回はちょっとやりすぎ感あったかな
4兄弟姉妹のうち、長女は父親が別、末弟は母親が別、
でもそういうことを全て了解して家族が成り立っているって
ちょっと気持ち悪い。
それに、それぞれの実の父や母も、お互いに行き来があって、
大きな意味での”家族ぐるみ”なんて・・・ねぇ

でもね、江國さんだから。良いと思います。
つか、こういうのが本当は究極の丸く収まる理想形だと思う。
家族は大事だけど、好きになったものは仕方ない。
不倫相手に子供が出来たら、引き取って、皆で仲良く暮らしましょう!
ってね。
(こう簡単にまとめてしまうと、身も蓋もないが・・・)

先日読んだ、角ちゃんの「ツリーハウス」もそうだったけど
こういう家族の年代記、みたいなの書くの流行ってんのかな?
作家たるもの、みんなそこに行き着きたいのかな?


面白かったけど、ありえへん度が少々高いので
☆☆!


旧古河庭園に行ってきました

2014-05-29 | 日記
母が東京に遊びに来たので、親孝行week(自分で言う)に突入。
バラで有名な旧古河庭園ですが、さすがにもう終わりがけでしたね。
でも、洋館との風景が美しいのが、ここならでは。


カメラを勉強中の母撮影。


平日の朝っぱらから出かけたのに、相変わらずすごい人。
ヒマな人が多いことね~!と自分達のことは棚に上げて、
都会の絶対数に呆れる田舎もの母娘でしたー。


恋しくて~Ten Selected Love Stories/村上春樹 編訳

2014-05-21 | 読書
村上春樹が選んで訳した9編のラブ・ストーリー + 書き下ろし短編小説
マイリー・メロイ 「愛し合う二人に代わって」
デヴィッド・クレーンズ 「テレサ」
トバイアス・ウルフ 「二人の少年と、一人の少女」
ぺーター・シュタム 「甘い夢を」
ローレン・グロフ 「L・デバードとアリエット」
リュドミラ・ぺトルシェフスカヤ 「薄暗い運命」
アリス・マンロー 「ジャック・ランダ・ホテル」
ジム・シェパード 「恋と水素」
リチャード・フォード 「モントリオールの恋人」
村上春樹 「恋するザムザ」(書き下ろし)

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どれもタイプの違う、上質なストーリーばかりでした。
甲乙つけがたいなぁ・・・。
バックグラウンドとして日本人では描けないような内容の短編も多く、
とても興味深かったです。
春樹さん自身、あとがきで書いているようにホント、多彩です。

  世の中には初心者向けの素直で素朴な恋愛から、
  上級者向けの屈折した恋愛もある。
  ~中略~
  結果的にいろんな種類の、いろんなレベルのラブストーリーが揃った。

また、ひとつひとつの物語に、春樹さんの解説と恋愛甘苦度の★が付いてるのも
非常に良かったな。

書き下ろしの「恋するザムザ」を読んでから、もちろん
カフカの「変身」を再読しちゃいました。
春樹さんのチャーミングさが存分に盛り込まれた短編ですね!

「バースデイ・ストーリーズ」の時もそうだったけど、
こういうおまけ(というかファンにとってはご褒美)が付いてくるから
編訳本いいよね~!




さよなら渓谷

2014-05-20 | 映画
緑が生い茂る渓谷で幼児の殺害事件が発生し、容疑者として母親が逮捕される。
隣の家に住んでいる尾崎俊介(大西信満)がその母親と不倫していたのでは
ないかという疑惑が、俊介の妻かなこ(真木よう子)の証言によって浮かぶ。
事件を取材する週刊誌の記者、渡辺(大森南朋)がさらに調査を進めていくうちに
尾崎夫妻をめぐる15年前の衝撃的な秘密にたどり着き……。
(Yahoo!映画あらすじより)

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映画の方です。
つか、原作は吉田修一なのね!!知らんかった。
どーりで暗いワケだ

真木よう子が、急上昇中です
今まで特に何とも思ってなかったけど、すごい本気じゃない(失礼。
この映画(主演女優賞)と「そして父になる」(助演女優賞)で
日本アカデミー賞ダブル受賞、すごく納得。

さて、戻りますが、そっか、吉田修一ですか。。。
小説読んだらもっと面白いだろうな。
全く内容を知らずに観たので、却ってストーリーにのめり込めたのは
良かったけど、とにかく重い。
うぅ。
でも、こーゆーの、キライじゃない。

憎しみか、償いか、それとも愛か。

ラストシーンで、
事件を起こさなかった人生と、かなこに会わなかった人生、
どちらを選びますか、という渡辺の問いに、
口を開いた尾崎は何と言ったのか・・・

重く心に残る映画ですね。

下町ロケット/池井戸潤

2014-05-16 | 読書
研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は
製品開発で業績を伸ばしていた。
そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。
圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。
創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、
佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。
特許を売れば窮地を脱することができる。
だが、その技術には、佃の夢が詰まっていた――。
男たちの矜恃が激突する感動のエンターテインメント長編!
第145回直木賞受賞作。

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やっと文庫になったからね、今更ながら読みましたよ!
初・池井戸潤です。
半沢直樹も見てないし、今やってる、ルーズベルト何ちゃらも
見てないからね!

まぁ、そもそも勧善懲悪の物語って知ってるし、
どういうストーリー展開かってのも、想像つくし
そういうの趣味じゃないんだけど、
やっぱり読むと引き込まれちゃうんだよね~(弱いな。

「強きをくじき、弱きを助ける」って美徳は、日本人のDNAに
刷り込まれてるんでしょうね。
否応なしに感動しちゃいますよね。

いかにも、ドラマになりやすそうなお話。
だって、まるでドラマの脚本読んでるようですもん。(いい加減にせい。
え?Google先生、既にドラマ化されてるんですか?
主人公の佃航平が三上博史ですって
いやーーーー、それはないわ(笑

☆がいっこ、減りましたよ!





永遠の僕たち

2014-05-15 | 映画
交通事故によって両親を失い、臨死体験をした少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)の
ただ一人の友人は、彼だけにしか見えない死の世界から来た青年ヒロシ(加瀬亮)
だけであった。
他人の葬式に参列するのが日常的なイーノックは、ある日、病によって余命いくばくも
ない少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)と出会う。
(Yahoo!映画あらすじより)

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なんだか不思議な映画・・・でした。
加瀬亮が出てるってところがミソ。
だって、特攻兵の幽霊って!

突然両親を事故で失い、死に取り付かれている少年が、
見ず知らずの人の葬式めぐりをしている時に、余命いくばくもない少女と出会い
恋に落ちる、というストーリー自体は、うん、まぁ…なんだけど。

アナベル役のミア・ワシコウスカっていう女優さんが、めちゃくちゃ可愛い!
ベリーショートがこんなに似合う女優さんは、「ゴースト」の時の
デミ・ムーア以来じゃない?(古いか。

少年と少女の繊細で脆くて透明で美しい恋愛の一瞬一瞬を切りとるような
切ない情景描写がとってもステキでした。

マドンナ/奥田英朗

2014-05-14 | 読書
ああ、なんてかわいいオジサン達なんだろう
42歳課長、部下に密かにときめく。
46歳課長、息子がダンサー宣言。
44歳課長、営業から総務へ異動。
課長さん達の日常。
そこにある愛しき物語5編を収録!

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奥田英朗は、本当によい!!
ヒューマンタッチの達人、と呼ぼう。(うん

今、若い子の間で、おじさんのことを可愛いと思う、と
まさかのブームが来ているとTVでやっていたのを見て目を疑ったが
ハゲ・デブ・チビの3大オヤジ要素が、まさかの”可愛い”だと?
大丈夫か、日本

でも、それはさておき、この小説に登場するオジサン達は、
確かに愛すべきキャラでしたね

つまりはみんな一生懸命家族のために働いているんです。
中年にしか分からない哀愁、笑い、全てが程よく配分された
本当にステキな一冊です!

オススメ度


八日目の蝉

2014-05-13 | 映画
子どもを身ごもるも、相手が結婚していたために出産を
あきらめるしかない希和子(永作博美)は、
ちょうど同じころに生まれた男の妻の赤ん坊を誘拐して逃亡する。
しかし、二人の母娘としての幸せな暮らしは4年で終わる。
さらに数年後、本当の両親にわだかまりを感じながら成長した
恵理菜(井上真央)は大学生になり、家庭を持つ男の子どもを
妊娠してしまう。
(Yahoo!映画あらすじより)

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映画のほう、やっと観ました。
言わずと知れた、角ちゃん先生の傑作でございます。
そりゃ、泣きますよね・・・

「悪人」に続き、小説も映画も両方OKなやつです。
永作はもちろん、井上真央ちゃんもいいね。
でも、この映画で良い味出してるのは、間違いなく小池栄子です!
この人は良い女優ですね~。アクが強すぎて役を選ぶ気もするけど
素晴らしい演技します

そしてこの映画、終わり方好きだったなぁ・・・。

原作の、希和子の視点で終わる、切ない結末も心に残りましたが
原作とは違った、光が見えるようなエンディングは、未来を感じます。
真央ちゃんの表情も素晴らしかった。

そりゃ、そうだよね。
犬だって4年も育てれば、しっかり親の顔を忘れないというのに
(犬と一緒にするな
こんなに絶望的に愛情をかけられた子供が、母親のことを忘れられる
ワケがないよね・・・
母性の限りない深さに感動でした

小暮写眞館/宮部みゆき

2014-05-12 | 読書
家族とともに古い写眞館付き住居に引っ越ししてきた高校生の花菱英一。
変わった新居に戸惑う彼に、一枚の写真が持ち込まれる。
それはあり得ない場所に女性の顔が浮かぶ心霊写真だった。
不動産屋の事務員、垣本順子に見せると「幽霊」は泣いていると言う。
謎を解くことになった英一は。
待望の現代ミステリー。
(「BOOK」データベースより)

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久しぶりの宮部みゆきです。
ミステリーとは謳ってありますが、決してそうではありませんので
今までのような重めのミステリーを期待してたらご用心。
これは完全に感動の物語でございます!

最近、何故か時代物(江戸怪談のような)が続いていたので
手が伸びていなかったのですが、現代小説は3年ぶりだったとのこと。
その理由について、文庫の解説に抜粋されていた、宮部さんの
インタビュー記事が興味深かったです。

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犯罪とか、つらい出来事をずっと書いてきて、そのことに疲れて
しまったんです。
現実でこんなに嫌な事件が起こっているのに、ありもしない嫌な
事件を、また自分の手元で書くってことが、怖くなってきて。
~中略~
一番の大きなターニングポイントは、やっぱり『模倣犯』でした。
物語の中で、本当にむごいことをたくさんやりましたし。
書き終わった後、半年くらい、かなりの疲労と自己嫌悪の中にいたんです。
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宮部さんの、時代に合わせた事件の真相に迫る筆力とか、
人間の暗い部分を緻密にあぶりだす感じとか、
まさに社会派ミステリの名手!として、すごく好きだったんだけど、
そっか、疲れるのね
それはお気の毒でした。きっと優しい人なんでしょう。

そして、そういう呪縛から解き放たれたかのように、
本作の清々しさったらありません!
連作短編形式で、ミステリーというよりは、ちょっとした謎解きのような
話がいくつか続き、初めはそんなにエンジンかからなかったんだけど、
後半からぐっと加速がつきました!
無愛想な不動産屋の事務員、垣本順子がキーパーソンなのです。
この人がねぇ~。もうねぇ~!モゴモゴ(お口はミッフィーで

最後、間違いなく感動します。
素晴らしい青春小説、そして家族の愛の物語です。