ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

百年法/山田宗樹

2016-02-26 | 読書
原爆が6発落とされた日本。
敗戦の絶望の中、国はアメリカ発の不老技術“HAVI”を導入した。
すがりつくように“永遠の若さ”を得た日本国民。
しかし、 世代交代を促すため、不老処置を受けた者は100年後に
死ななければならないという法律“生存制限法”も併せて成立していた。
そして、西暦2048年。実際には訪れることはないと思っていた
100年目の“死の強制”が、いよいよ間近に迫っていた。
経済衰退、少子高齢化、格差社会…国難を迎えるこの国に捧げる、
衝撃の問題作。
(「BOOK」データベースより)

============================================
読み応えたっぷりの上下巻ですが、もう、夢中で読みました!
リアルSFです(勝手に命名。
SFなんだけど、現実的に考えさせられることが多くて、とても絵空事とは
思えない怖さがありました。

【生存制限法】
不老化処置を受けた国民は
処置後百年を以て
生存権をはじめとする基本的人権は
これを全て放棄しなければならない

不老化ウイルスってのが開発されてね、チクっとすれば、ずっとその時の
年齢のままでいられるわけ。
そりゃぁ、アンチエイジングって魅力だし、特に女性はいつまでも若く
ありたいとは思うけど、永遠の命とはまた別の話。
人が老いなければ、どういう問題が起きるのか。
家族、労働、政治や経済、あらゆる事がどのように崩壊していくか
実にリアルにあぶり出されます。
そして、100年が経った時、法律を遵守し自らの命を終わらせられるのか。

いやー、こういう設定、よく思いつくよね…と感心しましたが、
実際に、結婚もせず、子供もいない、兄弟もいない、なんて人は増えてるわけで
今後ますます孤独死や貧困死が増えるんじゃなかろうか、と考えた時、
自分で自分の命をコントロールできるってのは、ちょっとアリなのかなぁ…。

でもね、とにかく、永遠の命は要らない。
人間は適正に経験を積み、適正に老いていくから、成熟できるんだよ!
文中にもあるとおり
「死があるからこそ、生は輝く。死の喪失は、生の喪失にほかならない。」

あと本作は、ストーリー展開が秀逸なんです。
かなりの長編であるにも関わらず、生存制限法という大きなテーマの下、
政治家、官僚、警察の渦巻く野望と、民間人の生活とのコントラスト、
何十年にも渡って繋がってくる、登場人物の相関関係も面白く
全く長さを感じさせず、ぐんぐん読めました。

リアルSFでの圧倒的な死生観を体感できる、オススメ作品です



ジャイロスコープ/伊坂幸太郎

2016-02-26 | 読書
助言あります。スーパーの駐車場にて“相談屋”を営む稲垣さんの下で
働くことになった浜田青年。
人々のささいな相談事が、驚愕の結末に繋がる「浜田青年ホ ントスカ」
バスジャック事件の“もし、あの時…”を描く「if」。
謎の生物が暴れる野心作「ギア」。
洒脱な会話、軽快な文体、そして独特のユーモアが詰まった七つの伊坂ワールド。
書下ろし短編「後ろの声がうるさい」収録
(「BOOK」データベースより)

=================================================
なんとも変わった感じの短編集でした
それぞれ、アンソロジーや雑誌に掲載された短編を集めたものらしく、
バリエーションに富んでいます。

伊坂っぽくない作品もありますが、
巻末の「15年を振り返る、伊坂幸太郎インタビュー」でも語っているように
「伊坂っぽくないね」と言われるものも書きたかった、そうです。
でも、そういうのばかり書いていると
「昔みたいな小説はもう書けないのかと思われるのも悔しい」ということで
また、伊坂らしいものもあります。
なんか、そういう所がたまらなく可愛らしくて、好き。

個人的には「一人では無理がある」が良かったな。
サンタさんにプレゼントをもらえないような境遇にある子供達を
リストアップし、プレゼントを配るというNPO団体のようなファンタジー。
プレゼントの調査管理部の松田くんは究極のおっちょこちょいで
ドライバーとか鉄板とか、およそ子供がプレゼントに欲しがるわけないだろ!
ってものを間違って準備してしまうが…。
心あたたまる&伊坂らしいオチの持って行き方が抜群の作品でしたね

最後の「後ろの声がうるさい」はそういうバラバラなテイストの短編を
全て受け皿として拾ってまとめた作品ですが、ばらまいた伏線を
丁寧に拾ってストーリーにまとめ上げるのは、さすが。

それにしても、オーデュポンの祈りから、もう15年なんだねー。
早いわー。これからも期待してまっせ!

⭐︎

月魚/三浦しをん

2016-02-05 | 読書
古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。
二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきた―。
瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、
その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は
兄弟のように育ったのだ。
しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変っていき…。
透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。
月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。
(「BOOK」データベースより)

=======================================
新たな箱を開けるたびに軽い驚きをもたらしてくれる、三浦しをん。
素晴らしい作家です。
本作は、ひっじょーーーに好きでした

古書という特殊な環境の中で進む、静寂な世界観。
主人公の男性2人の甘く背徳的な関係を表現する美しい文章。
そう、やらしくない!いつだってボーイズラブは美しいのだっ
お互いの過去に罪を感じている2人が、古書の買取に向かった
とある山奥の村での事件を通じ、柔らかく心がほぐれていく様子も
いとをかし

--------------------------------------------------------
道なりに夜のほうへ進むと「無窮堂」はある。
背後に名残の夕日を従えて、地面に這う自分の長い影を見ながら
暗がりに向かって歩く。
--------------------------------------------------------

「夜のほうへ進む」なんて表現!!
どうやったらこういう美しく完璧な文章が書けるんだろう…。
読んだ途端に、もう自分がすっぽりその薄暗くなってきた路地に
立っている感覚。
本当に素晴らしい





震える牛/相場英雄

2016-02-05 | 読書
警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から二年が経ち
未解決となっている「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。
当時の捜査本部は、殺害された二人に面識がなかったことなどから、
犯人を「金目当ての不良外国人」に絞り込んで いた。
しかし「メモ魔」の異名を持つ田川は関係者の証言を再度積み重ねることで
新たな容疑者をあぶり出す。
事件には、大手ショッピングセンターの地方進出に伴う地元商店街の苦境、
加工食品の安全が大きく関連していた。
現代日本の矛盾を暴露した危険きわまりないミステリー。
(「BOOK」データベースより)

======================================
面白かった一気に読んでしまいました。

少し前もCoCo壱番屋のカツが発端となった廃棄食品の横流しがニュースを
賑わせていましたが、いつになっても無くならない食品偽装問題。
大手メーカーから下請け業者まで…
普通に考えれば、そんなことしたら結果的にどうなるか明らかなのに、
やっぱり同じ事やっちゃうんだね。
目先の利益にしか考えの及ばない経営陣の悲しさね。

「経済的な事由が、国民の健康上の事由に優先され、
 道徳上や倫理上の意味合いではなく、財政上の、あるいは官僚的、政治的な
 意味合いを最重要視する」

いつの世も変わらないかな…
自分達が口に入れるものは、きちんと選びたいよね。

大手企業、オックスマートの不正を暴こうとする女性記者と、
未解決殺人事件の再捜査を任された燻し銀刑事。
2つのストーリーがじわじわと繋がってくる構成も素晴らしいし、
エピローグまで読み終わって初めて意味が分かる、プロローグも面白い。

最後、刑事が女性記者を自宅のすき焼きに誘うくだりで、モヤモヤが
スッキリにも変わって言うことなし!

秀逸なストーリー構成に、

GOSICK/桜庭一樹

2016-02-05 | 読書
前世紀初頭、ヨーロッパの小国ソヴュール。
極東の島国から留学した久城一弥は、聖マルグリット学園の図書館塔で
奇妙な美少女・ヴィクトリカと出会った。
彼女の頭脳は学園の難事件を次々解決してゆくが、ある日ヴィクトリカと一弥は
豪華客船に招待され、そこで本物の殺人事件に遭遇してしまう。
やがて彼ら自身に危機が迫ったとき、ヴィクトリカは―!?
直木賞作家が贈る、キュートでダークなミステリ・シリーズ。
(「BOOK」データベースより)

===============================================
少し前から、今までならあまり選ばないタイプの本を読んでいますが
Kindleです
セールで100円とかになってると「それなら試しに買ってみるか」と
ついポチッとやっちゃいます。
食わず嫌いで今まで読んでなかった作家発掘のチャンスかもしれんし

で、ゴシックはシリーズものなんですね。
ライトノベルっていうと失礼なのかもしれないけど、
「謎解きはディナーのあとで」のような、キャラクター先行の
ユーモアミステリーのような感じ。

エリートだけどシャイで真面目な久城青年と、クールで頭のキレる謎の美少女
ヴィクトリカとの会話が、軽妙でいかにもドラマ化前提みたいな。。
暇つぶしにはもってこいのタイプの楽しい小説です(おい!
可もなく不可もなく(もう、やめろ。

桜庭一樹は嫌いではありませんが、ゴシックシリーズはもう結構で
ございます。
いや、でも、面白かったですよ。ほんと。


⭐⭐