ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

実験4号/伊坂幸太郎

2014-10-29 | 読書
舞台は今から100年後、温暖化のため火星移住計画の進んだ地球―。
火星へ消えたギタリストの帰りを待つバンドメンバーの
絆の物語(伊坂幸太郎『後藤を待ちながら』)と、
火星へ旅立つ親友を見送る小学生たちの最後の2日間
(山下敦弘『It’s a small world』)が、いま爽やかに交錯する。
熱狂的人気を誇る二人が場所やキャラクターをリンクさせた
奇跡のコラボレーション作品集。
Theピーズの名曲『実験4号』に捧げる、青春と友情と感動の物語。
(「BOOK」データベースより)

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疲れたから、ちょっと文則はお休み

久しぶりに伊坂でも読もうかな~。と、何も知らずに手に取った本作、
読み終えてから、何とも不思議な作品だーーと調べたところ、
小説と映画のコラボだったんですね。
「Theピーズの名曲『実験4号』に捧げる、青春と友情と感動の物語!」
と言われても・・・
Theピーズ、を知らないんですけど…
有名なの?

小説自体は、中篇(むしろ短編?)で、伊坂らしいポップな読み口。
バンドマンの青春です。
火星への移住が進み、地球が過疎化しているっていう設定も奇妙で
面白かったよ。


☆☆

息抜きには物足りないので、もういっちょ伊坂でいっとくか!



レンタネコ

2014-10-28 | 映画
サヨコ(市川実日子)は、都会の片隅にある平屋の一軒家で
数えきれないほどの猫たちと一緒に暮らしている。
幼いころから人間よりも猫に好かれる子どもだった彼女の状況は
今も変わらず、サヨコは占い師などの数ある肩書とは別に
ある仕事をやっていた。
それは寂しい人に猫を貸し出す「レンタネコ」という
一風変わった商売で……。
(Yahoo!映画あらすじより)

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荻上ワールド全開ですね!
ほのぼの、のんびり、心温まる作品です。

ここまでくると、ファンタジー色も強いような気がしますが
(こんなこと日常じゃありえないでしょー!)
休日の昼下がりに、ワインでも飲みながら見るとよいでしょう

市川実日子は本当に不思議な魅力のある女優さんですね。
特にこういう、ほのぼの映画でコミカルな演技をするとドハマリ。
衣装もカラフルで楽しかった!


最後の命/中村文則

2014-10-22 | 読書
最後に会ってから七年。
ある事件がきっかけで疎遠になっていた幼馴染みの冴木。
彼から「お前に会っておきたい」と唐突に連絡が入った。
しかしその直後、私の部屋で一人の女が死んでいるのが
発見される。疑われる私。部屋から検出される指紋。
それは「指名手配中の容疑者」である。
冴木のものだと告げられ―。
(「BOOK」データベースより)

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おぇーー。重すぎる
ここまでくると、なんつーか、苦しすぎて、もぉええわ!って感じです
「罪」と「罰」の追及ですね。文則くんの永遠のテーマ。
何が罪なのか、それに見合う罰などあり得るのか。
・・・こうなっちゃ、神の領域です。

異常な性癖に苦悩しながらも、その背徳感に溺れていく自分を
しっかりと見つめる、その自己分析力は、ぐるっと一周して
実は正常な人間なんじゃないかと思わせるような冷静さ。
すごいです

なんと、柳楽くんで映画化なんですね!
そりゃぁ、心の闇っぷりは半端なく、恐ろしく暗い映画になるやろうねぇ。

それにしても、ちょっと休憩で楽しい小説が読みたくなってきた。
寝る前に読むからね、悪夢にうなされるわ


☆☆


悪意の手記/中村文則

2014-10-10 | 読書
死に至る病に冒されたものの、奇跡的に一命を取り留めた男。
生きる意味を見出せず全ての生を憎悪し、その悪意に飲み込まれ
ついに親友を殺害してしまう。
だが人殺しでありながらもそれを苦悩しない人間の屑として
生きることを決意する―。
人はなぜ人を殺してはいけないのか。
罪を犯した人間に再生は許されるのか。
若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家が究極のテーマに向き合った問題作。
(「BOOK」データベースより)

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大病をした「私」が生きる価値を否定することで、死に向き合う
準備をする。・・・が、アレ?っと回復してしまう。
一旦、自分の中で生死を決定する価値観を変えてしまうと、
すべての事が根底から覆されてしまい、グラグラしてしまうっていう
設定がなかなか稀有で面白かったな。

いやいや、面白いなんて言ってられない、いつもの暗くて重い
文則節なのですが

難しいテーマです。
人を殺すということ。
人を殺すという最大の罪を犯した人間は、生きていけるのか、
ということ。
『悪』とは何か、ということ。

筆者による文庫解説を読むと、このテーマで今後繋がって
いくんですね。
そしてモクモクした悪の最終形が「掏摸」の木崎なんですね。
うーーーーむ、なるほど!

いま、時系列で作品を読んでいるけど、それが正解なのかも。
最初に「掏摸」から入ってしまったけど、
何がきっかけで、どうやって悪が育つのか。
引き続きじっくり読まなくては。

あれほど聡明でかわいらしかった アナキン・スカイウォーカーが
いかにして悪の象徴ダース・ベーダーになることになったのか、
というのと同じテーマですね!!(全然違うか。




土の中の子供/中村文則

2014-10-06 | 読書
27歳のタクシードライバーをいまも脅かすのは、親に捨てられ、
孤児として日常的に虐待された日々の記憶。
理不尽に引きこまれる被虐体験に、生との健全な距離を
見失った「私」は、自身の半生を呪い持てあましながらも、
暴力に乱された精神の暗部にかすかな生の核心をさぐる。
人間の業と希望を正面から追求し、賞賛を集めた新世代の
芥川賞受賞作。著者初の短篇「蜘蛛の声」を併録。
(「BOOK」データベースより)

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読後に光の見えるような、ホッとするような終わり方の
作品ですね。ようやく。
そして、本作が芥川賞受賞作なんですね、でも、ちょっと意外。
何となくね、テイスト的に。

まぁ、とにかく、苦しい作品です。
虐待がテーマだけど、そういう肉体的な外側からの事実を
描写するのではなく、「私」という被虐待者の内面からの視点が
深く人間の業を考えさせるんだろうな。

『死への衝動とすれすれに働いているはずの生への意欲を救い出そうと
 している。』
と、文庫解説にも書かれているとおり、きっとこれは「再生」の物語
なんだと思う。
いや、そうあって欲しい

文庫に併録されている「蜘蛛の声」は、更に深く精神世界を描き出したもので
初の短編ということですが、いやいや、なかなか、これもキツイ
そろそろ、文則、大丈夫かな?と思ってきましたが・・・

こんな感じで、文則祭りは、さすがに精神的にちょっとキツイけど、
でも、その向こうに見えてくる何かがあるのかもしれない!
目を背けてはダメだ!
いけいけ、私。




遮光/中村文則

2014-10-02 | 読書
恋人の美紀の事故死を周囲に隠しながら、彼女は今でも生きていると、
その幸福を語り続ける男。
彼の手元には、黒いビニールに包まれた謎の瓶があった―。
それは純愛か、狂気か。喪失感と行き場のない怒りに覆われた青春を、
悲しみに抵抗する「虚言癖」の青年のうちに描き、
圧倒的な衝撃と賞賛を集めた野間文芸新人賞受賞作。
若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家の初期決定的代表作。
(「BOOK」データベースより)

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えっと…この主人公は、銃を盗んだ人じゃないですよね?

文体も、主人公の人格も「銃」と似すぎていて、立て続けに読んだからかも
しれませんが、「銃」ほどの衝撃はありませんでした。

ただ、テーマは「愛」ですね。というか偏愛?狂気の愛?
きっとこの作品を書いた時点では文則(呼び捨て?)もまだ若く
瑞々しくてヒリヒリするような感性が爆発していますね。

電車の中で瓶を落として、周囲が凍りつく場面で主人公がとった行動は
こちらも息を呑むような臨場感があったし、
最後のシーン、私の頭の中では尾崎豊がI love you~♪と歌っていました

それにしても、怖い小説ですよね。
主人公は常に、演じているんです。
優しい彼氏のふり、怒ったふり、恥ずかしがったふり・・・
この場面ではこうした方が周囲に都合がいいのではないか、と
どこかで考えて行動してしまう。
昨日テレビのドラマで、主人公がこういう台詞を言っていたから、
使ってみる。決して自分の感情や自分の言葉ではない。

確かに、私たちも周りの色々な情報に多かれ少なかれ影響され
実は、日々演じているのかも。
それが過ぎると、人は狂うということになるのか?
そして誰にでも起こりうることなのか?

おぉ、こわ



さてさて、次!


イパネマの娘が振り向いてくれないかなぁ

2014-10-01 | 日記
今月、府中で行われるイベント「JAZZ in FUCHU」に、急遽出演することに
なりました。
いつも出演している、うちのスティールパン・バンドメンバーの代理なのですが
なんと担当が、いつも私が弾いている楽器ではないので…
家に借りてきて、猛練習の日々!!
和室にダブルセコンドは存在感ありすぎだからっ

・・・そりゃワンコも驚くさ。

音階の配列を覚え、リズムと音を確認しながら音源に合わせて練習していると
脳のいつも使っていない部分がフル回転しているのが感じられます。
うん、脳に汗かくってこういう事か!
ボサノバ曲のバッキングなので、リズムもなかなか難しく、
日にちが殆ど無いので、久しぶりの追い込まれ感…

でも、いつもスティールパンで弾くカリプソ曲とは違い、
アントニオ・カルロス・ジョビンはきっと秋風に心地よく響きますな♪
・・・弾けたら、の話だけどね


銃/中村文則

2014-10-01 | 読書
雨が降りしきる河原で大学生の西川が出会った動かなくなっていた男、
その傍らに落ちていた黒い物体。
圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、
「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが…。
TVで流れる事件のニュース、突然の刑事の訪問―次第に追いつめられて行く中
西川が下した決断とは?
新潮新人賞を受賞した衝撃のデビュー作。単行本未収録小説「火」を併録。
(「BOOK」データベースより)

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忙しいけど、文則祭り、開始するよー!
とにかく、デビュー作のこちらです。
うん、重い!

一人称なのに、客観的な記述が特徴の、何ともいえな独特の文体が
主人公の奥底の異常性をじわじわと浮き彫りにしていくのに効果絶大!

銃の美しさに魅了され、狂っていき、自分の奥底に秘められていた
黒い塊がモクモクと昇ってくる感じがすごい。

もちろん銃なんて一生触ることはないんだろうけど(当たり前か。
~自分が銃を撃つのではなく、銃が自分を使って撃たせようとする~
というような描写に、きっとそういう魔力を持っているモノなんだろうな、と
妄想を始める、あたし…

とにかく、心理描写がすごい。
特に、いよいよ人を撃つ…という場面での風景描写、心象描写、
確実にこちらも一緒に心臓バクバクしちゃうよー。

あと、途中で出てくる刑事が良かったな。
良かったというのは、作品の中でのポジショニング(登場タイミング)
と、セリフの素晴らしさ。
「道徳的なことを言うつもりはありませんがね・・・」と始める
老練な刑事だからこその言葉に、グっときましたね。

文庫版を読んだんですが、単行本には未収録の「火」という作品も
入っていて、これがまた 暗い!重い!苦しい!
文則の三重苦はまだまだ続くよー。



さて、次、次!