ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

億男/川村元気

2016-01-16 | 読書
宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男。
浮かれる間もなく不安に襲われた一男は「お金と幸せの答え」を求めて
大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪ねる。
だがその直後、九十九が失踪した―。
ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、
ジョン・ロックフェラー、 ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツ…
数々の偉人たちの“金言”をくぐり抜け、一男の30日間にわたるお金の冒険が始まる。
人間にとってお金とは何か?
「億男」になった一男にとっての幸せとは何か?
九十九が抱える秘密と「お金と幸せの答え」とは?
(「BOOK」データベースより)

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以前、話題になっていたので読んでみました。
普段読まない珍しいタイプの作品でしたが、面白かったな!

ほんと、お金って何でしょうね。困りますね

九十九は言います。
「人間には自分でコントロールできないことが、3つだけある。
 死ぬこと、恋すること、そしてお金だ。」

なるほど。
コントロールできないほどの大金を持ったことないので、いまひとつ
ピンときませんが、やはりお金は魔物なんでしょうね。

怪しげなミリオネア・セミナーの会場で、教祖のような男は言います。
「お金が無限にあったとしたら、あなたは何をしますか?何を手に入れますか?
 何でもいいので、想像力を最大限に働かせて、すべて書き出してください。
 ただし制限時間は3分です。」

!!
さて、私だったら、何かひとつでも書けることがあるだろうか?
・・・あんま、無いかも
やはり強烈な欲求が無いと、大金を持つチャンスも資格もないんだろうな。
欲というものは、悪にもなり、生きる糧にもなる。

一男と九十九の大事なエピソードに「シェルタリング・スカイ」の
いくつかのシーンが引用されていたのも、さらにこの小説を好きになれた
要因かな。
私が好きな映画のひとつ!
ラストシーンで老人の言葉が切なく心に残ります。
「人は自分の死を予知できず、人生を尽きせぬ泉だと思っている。
 だが、あと何回満月を眺めることができるのか?
 せいぜい20回だろう。
 だが人はその機会が無限にあると思い込んでいる。」

生きる意味、生きて行くうえでのお金と幸せの答え、
一見、重いテーマのようですが、小説自体は軽快な語り口で面白かったです!


⭐︎

すべて真夜中の恋人たち/川上未映子

2016-01-16 | 読書
孤独な魂がふれあったとき、切なさが生まれた。
その哀しみはやがて、かけがえのない光となる。
芥川賞作家が描く、人生にちりばめられた、儚いけれど
それだけがあれば生きていける光。『ヘヴン』の衝撃から二年。
恋愛の究極を投げかける、著者渾身の長編小説。
(「BOOK」データベースより)

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素晴らしかった!
川上未映子って、こんなに美しい文章を書くのね。。
そう、本当にその情景が目の前にくっきりと美しく浮かぶのです。

そして…久しぶりに泣いたわ。
こういう柔らかい恋愛小説モノで涙するなんて、本当にこれはもう
文章が美しすぎるからです

ショパンの子守歌を
「まるで夜の呼吸のようです。溶かした光で鳴っているようです。」
ですってよ、奥さん!(笑

校正の仕事はひたすら孤独で、今までの人生もずっと孤独で
人とうまく付き合えず、街を歩いていても、キラキラしているそれは
自分とは全く無関係の作り物のように見える。
気分良く歩いていても、みるみる気持ちがしぼみ、画用紙くらいの
真っ白い紙は、あっという間に手のひらに握り込めるくらい小さく
折り畳まれてしまう。
主人公、冬子の揺れ動く気持ちが、手に取るように描写されていて
読んでるこちらが息苦しくなるー。

出かける前にはお酒を飲まないと、人と会ったり自発的な行動が
できなくなり、酔いが途切れた時の不安で魔法瓶に日本酒を入れて
バックに持ち歩く…。

苦しい、苦しい、苦しい。

そして偶然出会った、高校教師の三束さんとの穏やかな触れ合いで
少しずつ変化していく冬子の感情…。
こんなに美しい言葉で表現できるのね、 日本語って本当に素晴らしい

早速、ほかの作品も読んでみなくては!




人質の朗読会/小川洋子

2016-01-16 | 読書
遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。
紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。
祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと
見張り役の犯人、そして…
しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。
(「BOOK」データベースより)

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もうこれは完全に小川ワールドですね。
すごく良かった

地球の裏側のとある国でのツアー旅行中、反政府ゲリラに人質として
捉えられてしまった8人の日本人が紡ぐ8つの物語。
人質たちは閉じ込められた山小屋で、
「自分の中にしまわれている過去、未来がどうであろうと決して
 損なわれない過去の思い出」を朗読しようと決める。


やまびこビスケット
B談話室
冬眠中のヤマネ
コンソメスープ名人
槍投げの青年
死んだおばあさん
花束

それぞれの人生で、ある日すっぽりと異次元に迷い込んだような
不思議な体験。
自分にも、人生で何かひとつでも語れるような物語があるだろうか。

「冬眠中のヤマネ」は好きだったな~
露店商の老人と、中学生の僕の奇妙な物語。
片眼の老人が路上で売る手作りの縫いぐるみは、どれもガラクタかと見間違うほど
奇妙なものばかり。
アルマジロ、オオアリクイ、疥癬で脱毛したアライグマ、ラクダとアルパカの混血…

どんなに想像力を働かせても、その縫いぐるみ達の造形が浮かばないのは
逆に面白かったな
頭の中で漠然と描いていた、冬眠中のヤマネも、最後に「ボケットの中に」とか
「キーホルダーとして」などと書いてあり、
「え!そんなに小さいモノだったの? 」と一人驚き…(笑

本当にもう、小川さんの創造の世界には凡人の私はついていけません!


⭐︎