ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

夜また夜の深い夜/桐野夏生

2015-07-26 | 読書
どんな罪を犯したのか。本当の名前は何なのか。
整形を繰り返し隠れ暮らす母の秘密を知りたい。
顔を変え続ける母とアジアやヨーロッパの都市を転々とし、
四年前にイタリア・ナポリのスラムに住み着いた。
国籍もIDもなく、父親の名前も、自分のルーツも、わからない。
母と口論し外に飛び出すと、「MANGA CAFE」と書かれたチラシを
手にする男に呼び止められた。絶対に本当の名前を教えてはいけない
という母のOKITEを初めて破って、私は「マイコ」と答えた。
私は何者?
私の居場所は、どこかにあるの?
魂の疾走を描き切った、苛烈な現代サバイバル小説
(「BOOK」データベースより)

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何ともいえない話だゎ~
引き込まれて、スイスイと読んでしまったけど、大きな疑問が残ります。
七海さんって誰
これは多分、読んだ人みんな思ってるんじゃないかなぁ??

内容のほとんどが、主人公の舞子が七海さんに自分の近況や思いを綴る
というストーリーなのにもかかわらず!!
最後まで七海さんが何者なのか分からないのは気持ち悪すぎ!
ほんと、誰か丁寧に教えて!(もうええっちゅーの。

小説としては面白かったけど、桐野さんらしい後味の悪さは無く、
んー、だからと言って何か抜け落ちてるってワケでもなく、
なんていうか…中途半端?
最近の桐野さん、パンチ足りないかもね(笑


☆☆

誰かと暮らすということ/伊藤たかみ

2015-07-22 | 読書
いつになったら、満たされるんだろう。誰に対して怒っているんだろう―…
実社会にしっくりなじめず、自分の居場所をさがしあぐねている人々。
会社で同僚からも距離を置かれている同期の男女、倒産寸前の店を経営する夫婦、
離婚してひとり暮らしを始めた女性…
都会の片隅でちいさな不満やささやかな希望を抱きながら生きる等身大の日常に
やわらかなまなざしを投げかけるハートウォーミング・ストーリー。
(「BOOK」データベースより)

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初・伊藤たかみ。とっても良かった!
他の作品を知らないけど、こういうテイストの作家なのかな?

会社の中ではどちらかというと浮いてる存在の、虫壁さんとセージの2人が
日々の暮らしの中で不器用ながらも徐々にお互いの気持ちに寄り添っていく
連作短編集。
杉並区下井草を舞台にして、この街に住む人々が、街の中で少しずつ繋がり、
すれ違い、日常を送っていく。

何か特別なことが起こるわけではない、当たり前の毎日。
誰かと暮らすということ。
人と人の距離感。

そういう何でもないような事を、改めて気付かせてくれるような、
素敵な小説でした



風が強く吹いている/三浦しをん

2015-07-20 | 読書
箱根駅伝を走りたい…そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。
「駅伝」って何?走るってどういうことなんだ?
十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。
自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく。
風を感じて、走れ!「速く」ではなく「強く」…純度100パーセントの疾走青春小説。
(「BOOK」データベースより)

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私の中で三浦しをんブーム、来ています(おそっ。

本作は…誤解を恐れずに言うなら「こんなのあり得ない話じゃん!」
「つか、ファンタジー小説?」とも言いたくなるような話です。
小説なんだから、そりゃそうでしょ、と言われればそれまでだけど、
箱根駅伝というリアルなテーマだから、ややこしい

陸上経験もない素人が1年やそこら練習したからって、箱根に出られるワケが
ないでしょ?
そんなの分かってるし、呆れちゃうんだけど、もう、読み出したら止まらん
一緒になって練習に苦しみ、結果にドキドキし、どんどんストーリーに
引き込まれていく…
泣いちゃいます!感動しちゃうんです!

床も抜けそうなボロボロの下宿に住む、寛政大学の学生10人。
過去に陸上で故障した灰二(はいじ)は、走(かける)との出会いにより
諦めかけていた「走る」ということをもう一度追求してみようと、決意する。

つくづく、走るって尊いな・・・と感じました。
毎年、箱根駅伝を見ては、涙せずにはいられないのは、きっと多かれ少なかれ
裏にはこういう人間ドラマがあるからこそなのかな。
溢れ出ちゃってんですよ、青春が!
心が汚れて、酒を片手にぬくぬくとTVで見てるだけの私でも、やっぱり感動
しちゃうんですよ!

六区を走るユキは、箱根の山くだりでペースを制御できず、ものすごいスピードが
出てしまう。
顔に降りかかる雪片にも突き刺さるような痛みを感じながら、ふと
このスピードは、走が普段感じているものなのか、と気付く。
「走、おまえはずいぶん、さびしい場所にいるんだね。」と。

この言葉がすごく印象的で、まさに本作を言い表していると思う。
私が担当者(なんの?)だったら、この台詞を帯にします
走るとは孤独。
でもその向こうに見えるものを探したいから、止められない。

単に箱根駅伝を走る話です。
でも、絶対に読まないと分からない、感動があります!
三浦さん、ありがとう。



アイネクライネナハトムジーク/伊坂幸太郎

2015-07-17 | 読書
ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。
奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、
元いじめっこへの復讐を企てるOL…。
情けないけど、愛おしい。そんな登場人物たちが作り出す、数々のサプライズ。
(「BOOK」データベースより)

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6編からなる連作短編集。
連作…と言っていいのかな?
出てくる人全員どっかで繋がってるじゃん!メモしながら読まないと大変!
ってくらい、これでもか感満載でしたが、さすがの伊坂節
面白かったです

そして、あとがきを読んで感動再び
1話目「アイネクライネ」は、斉藤和義さんから歌詞を書いてくれとの依頼が
あったが、歌詞は書けないので小説なら、との誕生秘話。
更に、この小説の文章を使って斉藤和義も「ベリーベリーストロング~アイネクライネ」
という曲を作り、そのシングルカットの付録用に書いたのが、2話目の「ライトヘビー」
という面白い成り行き。
「ライトヘビー」の中に出てくる謎の『斉藤さん』は斉藤和義のことだったのか~!(笑
やっと納得。
占い師めいた斉藤さんが、曲の一部をかけて悩みに答えるというその「お言葉」も
斉藤和義の曲の一部を引用したものなんだね。
これもまた面白い!

恋愛や出会いをテーマにしたものは苦手だけど、どうしても斉藤和義さんと
仕事をしたかったので、依頼のテーマに沿った内容を頑張って考えた、というのも
肯ける作品。
軽快な語り口やオシャレな会話、テンポ良いストーリーなどはいつもの
ままだけど、確かにいつもと少し違う恋愛要素も含まれていて楽しめました



教場/長岡弘樹

2015-07-16 | 読書
君には、警察学校を辞めてもらう。この教官に睨まれたら、終わりだ。
全部見抜かれる。誰も逃げられない。前代未聞の警察小説!
(「BOOK」データベースより)

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風間教官が良かったねぇ~。
何となく、ジョーカー・ゲームの結城中佐を彷彿とさせるキャラクターで

それはそうと、警察学校ってこんな所なの?
生徒同士の恨み、妬み、嫌がらせ。。。
あー怖い、怖い。
こんな陰湿な人達が警察官になるなんて・・・

もちろん小説だからフィクションではあるだろうけど、
警察学校の制度としては取材してるから本当だろうしね。
町を自転車で見回りしているおまわりさん達を見る眼が変わりました

内容自体は、いかにも長岡さんらしい連作短編集で、私は好きでした。
ちょっと強引な話もあったけど、人情ミステリという枠を外れず、
事件(というか、学校内のいざこざ?)を冷静に解決していく風間教官。
最後は何だか強引に爽やかに終わりましたが、こういう世界もあるのか~
と興味深く読めますよ。


☆☆

教団X /中村文則

2015-07-13 | 読書
謎のカルト教団と革命の予感。
自分の元から去った女性は、公安から身を隠すオカルト教団の中へ消えた。
絶対的な悪の教祖と4人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、
この国を根幹から揺さぶり始める。
神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。
著者最長にして圧倒的最高傑作。
(「BOOK」データベースより)

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重すぎて、感想を書くのも力が要る…
ココまで来たか、文則くん。だいぶ世界広がってきたよね。

例えば誰か尊敬してやまない人、例えば自分の確固たる信念、
その対象はどうであれ、何かを信じきるって恐ろしい。
周りが見えなくなり、一線を越えてもそうと気付かず、
自分の信じた世界の中に閉じ込められてしまう。
それを神と呼ぶんだろうか・・・。

ただ、本作は今までの「神」や「悪」の描写とは少し毛色が違ったかな。
ここまで来ると、私は付いていけなかった。
前半は教祖の告白というか説法というか、お話がダラダラと続くのですが、
難解すぎてサッパリ分からない。
仏教、哲学から素粒子理論まで・・
後半は、戦争についての文則くんの持論(であろう)を、登場人物に乗せて
喋りまくる。
うん、言いたいこと分からんでもないけど…

小説としてのストーリー性と、理論や持論の説明とのバランスが悪いし、
あと、宗教=性の解放みたいなのも、いまひとつピンと来ない。
性と欲望なのか、性が欲望なのか、なんなの?

ということで、今回はうーーん、と。

おまけしても☆☆

インターステラー

2015-07-04 | 映画
近未来、地球規模の食糧難と環境変化によって人類の滅亡のカウントダウンが
進んでいた。
そんな状況で、あるミッションの遂行者に元エンジニアの男が大抜擢される。
そのミッションとは、宇宙で新たに発見された未開地へ旅立つというものだった。
地球に残さねばならない家族と人類滅亡の回避、二つの間で葛藤する男。
悩み抜いた果てに、彼は家族に帰還を約束し、前人未到の新天地を目指すことを
決意して宇宙船へと乗り込む。
(Yahoo!映画あらすじより)

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こんなハードSF、久しぶりに観たわー。
量子力学や相対性理論から始まり、ブラックホール、ワームホール、
5次元の世界と、かなりの知識があること前提で話が進む、コシの入った
壮大なSF作品でした。
苦手な人は無理かもね・・・
かくいう私もあまりにハードなのは得意ではないので、途中何度か「?」と
置いてかれましたが、そこはクリストファー・ノーランの演出か、はたまた
マシュー・マコノヒーの演技力か、素晴らしい人間ドラマに、意外にも(笑)
最後は感動して涙しました!

人類存続のため、移住できる惑星を探すという壮大な宇宙開拓計画。
娘に必ず帰ると約束し、地球を旅立つ父。
別の銀河にワープするって。ワームホールって球体なの!?
時間って伸び縮みするの?
ブラックホールの地平線って何よ?
等々、各種難問にツッコミを入れながらもストーリーにはすごく引き込まれた。

難しいけど、SFって結局は「人間とは」を一番考えさせられる分野かも。
人類とは。種とは。
生きるとは何なのか。
何が幸せなのか。
閉ざされた世界で人はどうなるのか。

ネタバレしないように感想書くの難しいけど、本当に心に残る良い作品だと思う!
最後は愛、です。感動しました
※ただ、長いけどね(3時間近くあるよ…)


まほろ駅前多田便利軒/三浦しをん

2015-07-02 | 読書
まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。
駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。
ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.―ありふれた依頼のはずが、
このコンビにかかると何故かきな臭い状況に。
多田・行天の魅力全開の第135回直木賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)

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「舟を編む」が良かったので、今更ですが、基本に立ち返る。
で。やっぱり良かったですー
三浦作品、いいわ。うまく言えないけど。波長が合ってんのかな。
もちろん映画も観てないけど、なるべく瑛太と松田龍平の顔をちらつかせないように
頑張って読みました。
特定の人の顔が浮かぶと、読んでても、その人が台詞しゃべるから、ちょっと違う感じに
なるよね~。

何という事はない、便利屋の日常ですが、心に傷を抱えた人達が不器用に支えあって
日々を過ごしていく。
ユーモアがあり、軽いタッチになるようなストーリー展開が軽快でよかったです。

で、
『まほろ駅前番外地』
の方も勢いで、読んじゃいました

前作に登場する星、曽根田のばあちゃん、由良、岡老人の細君などが
主人公となるスピンアウトストーリー七編を収録。
多田と行天が脇役にまわるといった構成もなかなか面白かったです。

引き続き三浦しをん読みたいなー。