ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

最後の息子/吉田修一

2019-08-21 | 読書
新宿でオカマの「閻魔(えんま)ちゃん」と同棲する「ぼく」。
友だちのオカマがホモ狩りにあって殺された事件を契機に、
気楽なモラトリアム生活がうまくいかなくなってしまう。
家族との関係、元彼女との再会、閻魔ちゃんとの生活……
自分がどうしたいのかわからないまま、ビデオ日記を見返してゆく。
そこに映っていたものは?
文學界新人賞を受賞した表題作の他に、長崎の高校水泳部員たちの
夏の一瞬を爽やかに描いた「Water」、「破片」を収録。

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「おっさんずラブ」や「きのう何食べた?」にハマってからというもの、
BLを暖かい眼差しで見られることから、本作も何だかとてもグッときました。
良かったです

特に「Water」は瑞々しすぎる青春小説で、特に良かったなぁ
歳のせいなのか、以前にも増して青春モノに弱い気がする今日この頃。
眩しいす。眩しすぎる。若いって素晴らしい

「破片」はちょっと独特な雰囲気の短編でした。
早くに妻を亡くし男手一つで息子2人を育てた長崎の田舎の
酒屋のオヤジと、屈折したその息子たち。
ほんの心のかすり傷からでも膿んで大きな病になっていくのか。。
男だけの殺風景なやり取りの中、それでも親子としてのか細い絆のような
ものがあるのか。
他の2作とは違う、少し重めのストーリーでしたが、吉田修一らしくもあったかな。


☆☆

キツツキと雨

2019-08-18 | 映画

小さな山あいの村にやって来たゾンビ映画の撮影隊。
なぜだか手伝うことになった木こりの克彦(役所広司)は、
プレッシャーに弱く使えない新人監督の幸一(小栗旬)にイライラする。
しかし、幸一は克彦との交流で自分を取り戻していき、
二人のいい関係がイマイチかみ合わなかった撮影現場にも
不思議な影響を与え始め……。
(Yahoo!映画あらすじより)

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さすが沖田修一監督!
素敵な映画でしたーーーー!

こういうコミカルな立ち回りさせたら、役所広司の右に出る人はおらんね。
男前だから余計におかしいのかな。
この人の演技力には本当に参っちゃう。

気の弱い監督の幸一にイラつきながらも、お節介なオヤジ根性全開で
あれこれと世話を焼いているうちに皆に溶け込んでいく克彦。

映画の成功祈願で甘いものを絶っている幸一に、克彦が無理やり
あんみつを口に押し込むシーン。
とても良いシーンで、ジーンとしたなぁ
改めて、小栗旬も良い演技する俳優さんですね。

やはり他人に必要とされてこその人生。
認めてもらうことの素晴らしさ。

波打ち際に置かれた、立派な丸太で作られた重すぎるディレクターズチェアで
飾られる最後のシーンもクスリと笑えてよかったな。
あー、ほのぼのした

ジャッジメント/小林由香

2019-08-17 | 読書
大切な人を殺された者は言う。「復讐してやりたい」と。
凶悪な事件が起きると人は言う。「同じ目にあわせてやりたい」と。
犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。目には目を歯には歯を―。
この法律は果たして被害者とその家族を救えるのだろうか!?
第33回小説推理新人賞受賞。大型新人が世に問う、衝撃のデビュー作!!
(「BOOK」データベースより)

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うーん。なんかエグいの読んじゃったな
心情的に訴えたいことは分かるけど。
復讐法かぁ。。
被害者遺族は、旧来の法に基づく判決か、自らの手で犯罪者から受けた被害内容と
同じ形で刑を執行できる復讐法のどちらかを選べる。
言ってみれば近未来SF的な「そんなのあり得ないよ」だけど
内容としては報復殺人と言う意味で全くあり得る話でもあり。。

被害者遺族たちの苦悩、葛藤、よく描かれていると思うけど、どうしても
深く感情移入まではできなかったかな。
自分の大切な人が殺されたら、ここまで出来るだろうか。
でも、そんなの実際にその立場にならないと1ミリも語れないよ

5つの事件を描く短編集のような形式で、「応報監察官」という、復讐法に立ち会う
役人からの目線で語られていく。
こんなやるせない仕事ないよすぐに病んじゃう。

やはり人間は心の生き物。
法律だけで何かが解決するわけではありません。
色々と考えさせられる物語でした。


☆☆

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち/山田詠美

2019-08-15 | 読書
ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。
澄生と真澄の兄妹に創太が弟として加わり、さらにその後、千絵が生まれる。
それは、幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。
しかし、落雷とともに訪れた“ある死”をきっかけに、澄川家の姿は一変する。
母がアルコール依存症となり、家族は散り散りに行き場を失うが―。
突飛で、愉快で、愚かで、たまらなく温かい家族が語りだす。
愛惜のモノローグ、傑作長篇小説。
(「BOOK」データベースより)

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お盆は久しぶりによく本を読んだなー
てか、山田詠美!!まだ書いてたのか!笑
20年ぶりくらいかしら?
若い頃は好きでよく読んでいたけど、途中から体質に合わなくなってきて
多分、読まなくなった頃から彼女もそんなに執筆してないと思うけど、
久しぶりに読んでも、やはり山田詠美らしい文章で、懐かしく心地よかった。

とある家族の物語。
「私」「おれ」「あたし」「皆」と、章ごとにそれぞれの視点から描かれる。
家族って外から見てもその実は分からない特殊な組織だよね。
人が似るのは血の繋がりよりも生活習慣。
同じ食べ物を体に取り入れて、同じ所に身を置いていると魂が似てくる。
そして、全ての家族と唯一血の繋がりを持つ末娘の千絵が
「血って時々すごく濃くて、時々すごく薄い」と言う。
なんか納得!!

とても良い作品でした。

死にぞこないの青/乙一

2019-08-15 | 読書
飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。
先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。
クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現れた。
ホラー界の俊英が放つ、書き下ろし長編小説。
(「BOOK」データベースより)

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続けて乙一。
これも良かったなぁ。
はっきり言って怖かったです。
ある意味ホラーですが、そういう怖さではなくて、結局人間が一番コワイよねってやつ。

いじめの問題。
人の心の弱さ。
洗脳されて心が壊れていく過程ってこういうことなのかな、と、
途中、読むのがちょっと辛かった。
主人公マサオくんの気の弱さにイライラしながらも。

マサオの心の弱さを具現化したような存在のアオと共に
後半、自分を取り戻し生きていこうと決意してからの展開がとても良くて
これまた引き込まれてあっという間に読了。
乙一、なかなかイイかもー



暗いところで待ち合わせ/乙一

2019-08-07 | 読書
視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。
駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。
犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。
他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。
奇妙な同棲生活が始まった―。
(「BOOK」データベースより)

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乙一!!まさかこんなものを書いているとは!
失敗したー
10年以上前と思うけど、初めに読んだ彼の作品が全く合わなかったので
(確か「Zoo」だったと思う)
こういうテイストの人なんだな、と苦手レッテルを貼ってその後新作が出ても
手に取ることもなかったが。
反省、反省。好みも変わるし、色んな味付けだってある。

とにかく、これ良かったわーー。
設定が奇想天外なわりに、すごく引き込まれるストーリーで、さらに後半の急展開!
「え?」となってからは夜中まで一気に読まずにはいられなかったよ。

人間関係を作ることが苦手で心や身体に障害を抱える孤独な二人が
緊張状態の中から自分が次第に変わっていくことを感じる。
サスペンス要素はありながら、やはりこの作品は心温まるヒューマンドラマだと
思う。
人の心は脆くて、でも強くあれる。それは独りでは無し得ない。
ミチルが暗闇から抜け出せる光が見える、とても素敵な物語です。