ペンギンの憂鬱

日々のうだうだ~読書と映画と酒と料理~

最悪/奥田英朗

2015-10-27 | 読書
不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。
銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。
和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。
無縁だった三人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。
比類なき犯罪小説、待望の文庫化。
(「BOOKデータベース」より)

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まさに題名の通り、最悪です!
人生こんな最悪なことばかり続いていいのだろうか
良いことなんか1つもなくて、次から次へと最悪な事態が転がり込んできます。
読んでいて、ほんっと気が重くなるし、ページをめくるのも嫌になるほど。

ここに悪い人なんか一人もいないのに、みんなそれなりに必死に生きているだけ
なのに、ほんのちょっとした事がきっかけで、人生が狂いはじめ、
あれよあれよという間に苦境に追い詰められていく。

それにしても奥田さんに群像劇を描かせると天下一品だね。
占いでいうところの、今日の(いや、今年の)最下位!!みたいな3人が
それぞれ歩いてきた道が、とある事件で一点に交わり、もうそこからの展開は
一気にスピードを増して、終盤に向けてジェットコースター並みの圧倒的な追い込み!
途中で本を閉じるなんて許されません!!

ただ、最悪の中でも、最後の最後で、ほんの少しだけ光が感じられ、
少しホッとして本を閉じられる。かな。
ホントのホントに少しだけどね


⭐︎

オリンピックの身代金/奥田英朗

2015-10-19 | 読書
昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に
変貌を遂げつつある首都・東京。
この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。
そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。
同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた。
しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。
警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。
「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、
エンタテインメント巨編。
(「BOOKデータベース」より)

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めちゃくちゃ面白かった!
5年後に東京オリンピックを控えた今だからこそ、余計に感慨深かった。
「東京オリンピックが見られるなんて、一生に一度だからな」と作中に出てくるけど、
奥田さんもまさか書いた時には、また東京でオリンピックが開催されるなんて
予想もしていなかったでしょう。

戦後のお国復興をかけた世紀のイベントの裏には、貧しい労働者たちの
過酷な現実が隠されている。
東大生である島崎は、自身も人夫としての経験を積むことで、貧富の差、
命の重み、地方格差に疑問を抱き、次第に憤りを覚えていく。

『労働者の命とは、なんと軽いものなのか。
 支配層にとっての人民は、一個の駒として扱われ、国体を維持するための
 生贄にすぎない。
 かつてはそれが戦争であり、今は経済発展だ。
 東京オリンピックは、その錦の御旗だ。』

今は良い時代になったとはいえ、やはり東京一極集中は否めない。
出稼ぎにきていた夫の遺骨を引き取りに、秋田の田舎から出てきた女の
「何もかも豊かで、華やかで、生き生きとしている東京は、
 まるで祝福を独り占めしているようで、同じ国とは思えない。」という
台詞には、50年経った今でも頷ける部分はあるし。

戦後の貧困から立ち上がろうと一番活気に満ち溢れていた時代背景と
その陰で簡単には拭えない貧富の差を、圧倒的な筆致で描いていて、
かなりの長編でしたが、あっという間に読めました。
それに、構成も素晴らしかった
時系列ではなく、行ったり来たりしながら、刑事の視点、島崎の視点、
その他の主要人物たちの視点と切り替わっていき、いよいよラスト
10月10日本番当日の刑事と島崎の攻防戦の、手に汗握るスリリングさったら


もうこれは、間違いなく

ウランバーナの森/奥田英朗

2015-10-16 | 読書
その夏、世紀のポップスター・ジョンは軽井沢で過ごした。
家族との素敵な避暑が、ひどい便秘でぶち壊し。
あまりの苦しさに病院通いをはじめたジョンの元へ、過去からの亡霊が
次々と訪れ始めた…。
大ベストセラー小説『最悪』の著者が贈る、ウイットとユーモア、
そして温かい思いに溢れた喪失と再生の物語。
(「BOOKデータベース」より)

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奥田さんのデビュー作です。
今、奥田さんの初期の作品がマイブームなのですが、ブレイクしてからの
ものよりも、味があって読んでいてついつい奥田作品だということを
忘れてしまう…面白いです

主役のジョンとは、言わずもがなの、あの伝説のロックスターです(笑
フィクションとノンフィクションの中間みたいな作品で、奥田さん自身も
あとがきで言っています。

『ジョンの伝記は数多あるも、1976年から79年までの活動休止期間
「妻と子供と静かな日々を過ごした」という4年間にスポットを当てたものは
 殆ど無い。
 その後発表された最後のアルバムの、愛に満ちた穏やかな曲を聞くにつれ、
 この空白の4年間に一体彼の心にどういう変化があったのか。
 その部分をフィクションで埋めてみたかった。』

あくまでも本作自体はフィクションなので、彼を特定する固有名詞は出さず、
ただのジョンという男の物語として描かれていますが、
過去の自分に傷を抱える男性が、軽井沢という静かな土地で、ゆっくりと
自分自身と向き合っていく、穏やかな再生ストーリーはすごく暖かかった。

ただ、便秘で病院通いというのが、どーも伊良部先生を彷彿とさせて、
すでにこの段階から伊良部構想はあったのかなぁ~と


⭐︎⭐︎

邪魔/奥田英朗

2015-10-16 | 読書
及川恭子、34歳。サラリーマンの夫、子供二人と東京郊外の建売り住宅に住む。
スーパーのパート歴一年。
平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺らぎ始める。
恭子の心に夫への疑惑が兆し、不信は波紋のように広がる。
日常に潜む悪夢、やりきれない思いを疾走するドラマに織りこんだ傑作。
(「BOOKデータベース」より)

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最近、奥田さんの本を遡っているけど、読めば読むほど面白い!
ジャンルを問わず、文体を問わず、すごく柔軟性のある作家なんだなぁ~と
改めてこの人の才能に感服。

本作はね、とにかく切ないんです…
テーマは「孤独」です。
真面目で平凡な主婦、女に溺れた刑事、出来心で不正を働いてしまったサラリーマン、
妻を交通事故で亡くした刑事、
きっと皆んな始めは普通の人。実際に周りにいるような当たり前の人たちが
一旦道を踏み外すとここまで転げ落ちるか。
精神を病み、ある種、清々しいまでの狂気に満ちていく。

サスペンスでもない小説で、ここまでジェットコースター的に読ませる力の
あるものは珍しいかな。途中で本を閉じがたい読ませっぷりでした。

主役の一人である主婦の恭子のパニクりぶりは、かなりやりすぎって感も
ありましたが(笑
でも、普段はおとなしいのに、一旦スイッチ入っちゃうと、人ってここまで暴走
するのかなーって。ほんと、人間って怖いんだね。。


⭐︎

あきらめない夏、食欲の秋

2015-10-08 | 日記
無事にコンサートを終え、わたしの夏がようやく終わりました…。

今年は、神戸100PANがあったので、いつもよりかなり多めにキツかったけど、
なんとか無事に楽しく乗り越えられました。

夏が終わったというか、もう今年が終わったような感慨深さ…
気づけば空高く、ゆず肥ゆる…って、そう!
問題は一向に痩せない我が家の次女!

ドドーーーーン!!
でっぷりした腰とお尻まわり、そしてふてぶてしい態度!!(態度は関係ないか。

避妊手術を控えていて、人間もそうだけど、脂肪が多いと手術がやりにくいし、
麻酔からも覚めにくいので、獣医さんに「あと300gは痩せろ」と言われてるのに。。
餌を変えたり減らしたりして、はや半月。
何故か微動だにしない体重計の数字…

自慢じゃないが、ダイエットとは縁遠い我が家に、初めての試練
お腹空きすぎて、震えてるしっ!(マジかっ!
自分の分をむせながら大急ぎで飲み込み(※カリカリは飲み物ではありません
お姉ちゃんのゴハンを横取りしようと必死の形相。
ほんと、食への執念で狂気を感じるわ。

はぁ~。何とか無事に10月が過ぎますように!