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神社よりシェルターを

2014-10-06 09:04:18 | マスメディア
 好天に恵まれた9月27日、土曜日の正午直前、登山客で賑う御嶽山が噴火しました。まるで被害の大きさを狙ったかのようなタイミングです。もしこれが神の仕業だと考えれば相当悪質であります。そして25人の方が山頂の御嶽神社付近で亡くなっています。立派な神社のわりに御利益はなかったようです。社務所の幅約50cmのひさしの下に避難したという話がありました。恐らく社務所は無情にも入れないように固く閉じられていたのでしょう。

 今回の噴火は予知されませんでした。気象庁の火山噴火予知連絡会は今回の噴火は1979年と同様の水蒸気噴火であるとし、その水蒸気噴火はそもそも予知が困難なものだと説明しました。しかしその弁解は筋が通りません。水蒸気噴火が予想され、その予知が困難であるのなら、その事実をもっと早く公表し、マスコミなどを使って周知させるのが当然です。

 噴火前、気象庁が出していた噴火警戒レベルは「レベル1」、つまり「平常」であり、入山規制もありませんでした。一般の登山者が安全だと考えていたのは無理もありません。噴火後に「実は予知は困難でした」と言われては気象庁の「レベル1」を信じた被害者があまりに気の毒です。予知が困難な場合は噴火警戒レベルの公表をやめるか、それとも「信用できません」と注釈をつける必要がありましょう。

 一方、予知が困難であるならば、多くの登山者のある御嶽山には阿蘇や桜島のようなシェルターを設置するのが当然です(現在10あるいは12の火山に設置されているそうです)。素人の結果論だといわれそうですが、多くの情報を握っている関係者にとっては単なる結果論と切り捨てられないと思います。役立たずの神社を作るくらいなら是非シェルターを作っていただきたいものです。

 さらに気象庁の対応には別の批判があります。2000年の北海道・有珠山の噴火を的中させた岡田弘北大名誉教授は「初動の遅れが惨事を招いた」、水蒸気噴火は最も予知しにくいとされるが、「それは半世紀以上も前からいわれていることで、今回は明らかな前兆があった。十分対策は打てた」と気象庁を厳しく批判しています。いずれにしても気象庁は無罪と言うわけにはいかないでしょう。謝罪するなら朝日のように遅れないほうがいいと思います。

 余談になりますが、一般の登山には高齢者が目立つ中、今回の犠牲者には10代から40代の比較的若い方が多く、いっそう痛ましく感じます。命に軽重はないといいますが、それは建前だけのこと、終末近くの高齢者と比べればその軽重は明らかです。幼い子供をもつ方の命は何人分もの重みがあると思います。命に軽重はないといった単純な建前論が福祉予算の配分に影響を与え、少子化の一因になったとも考えられます。

 また今回の噴火では登山者の撮影による映像が多くありました。9合目で周囲に退避するよう声をかけながら真っ暗になるまで撮影を続けた方もあり、その冷静な行動に感心しました。その一方、たまたまそれより下の8合目付近で紅葉を撮っていたNHKの取材班による噴煙の映像は十数秒だけでした。噴煙で暗くなる映像はなく、早々と退避されたと思われます。その人命尊重(自分だけの?)の精神にも深く「感動」致しました。せっかく高解像度カメラがありながら惜しいですね。

 また山小屋の男性従業員の方たちの適切な誘導が多くの登山者を救ったとも報道されています。山小屋の内部の映像がありましたが、何人かの女性の悲鳴が聞き取れました。冷静に撮影や避難誘導をする男性に対して、悲鳴を上げる女性、このような危機時に於ける男女の差が露わになったように思います。

 むろん目立ったというだけで、そうではない方も多いとは思います。しかし女性が冷静でおっさん達がキャーキャーと悲鳴を上げる場面はちょっと想像しにくいですね。いかに理屈をつけても性差はあるようです。余談が多くなりました。


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