噛みつき評論 ブログ版

マスメディア批評を中心にしたページです。  姉妹ページ 『噛みつき評論』 もどうぞ(左下のBOOKMARKから)。

ワンチームはコロナに弱い

2020-03-22 21:25:25 | マスメディア
 新型コロナウイルスは全世界の脅威となった。健康被害も経済的損失も莫大である。この背景にはグローバル化がある。世界が一体化、つまり「ワンチーム」となっていることだ。グローバル化は経済的には大きい利益をもたらした反面、それは感染に対する大きな脆弱性を与えることとなった。これがもしMARSコロナウイルスのように致死率40~50%で今回のような感染力を持つものであったら世界は滅亡に瀕することになりかねない。そしてその可能性は否定できない。経済効率を優先して進められてきたグローバル化の負の側面にも注意を向ける必要がありそうだ。また今回の感染は生物兵器を持とうという国には有用なデータを提供し、開発意欲を与えることになるだろう。

 感染拡大は北米とヨーロッパで著しい。医療の進んだ先進国で急拡大が起きているのに対し、日本では比較的抑制的である。一体、この差はなぜだろうか。恐らくひとつだけの原因ではないだろう。このウィルスに対する人種的な感受性の差、ウィルスは変異を起こすのでウィルス自体の性質の差、政府の対策の違い、国民の生活習慣の差などいろいろ考えられるが、ひとつにはマスメディアの姿勢の差もあるのではないか。

 3月18日の朝、6時台のNHKラジオ第一放送のニュースでNYダウ平均株価が一時2万ドルを割り込んだと伝えた。これはNYダウ平均株価が大きく下落したという意味に理解するのが自然である。ところが後のニュースによって終値は逆に1千ドルあまり上昇したということがわかった。現在、ニューヨーク株式取引所は日本時間の5時に終るので6時台のニュースには間に合う筈である。そして一時的な下落より終値がずっと重要なのはむろんである。このNHKニュースは誤解を招くもので、全くタチが悪い。無知、見識の低さもあるが読者を不安にするという動機が見える。NHKを例にしたが、このように不安を優先する傾向は他のメディアにも共通する。

 一般的に、安心を与えるニュースより不安を与えるニュースがメディアには歓迎される。不安をあたえるものは視聴者を惹きつけることができるからである。日本のメディアの特徴として不安を煽る報道が得意だということがあげられる。さらに横並び報道、集中報道も得意である。これらの特質が今回は奇しくもよい方に働いたのではないか。つまり感染拡大の比較的初期から不安を煽る報道が多く流されたと思う。

 メディアによって惹起された不安が、マスクや手洗いなど清潔指向の文化をさらに徹底したものしたのではないだろうか。今年、季節性インフルエンザが減少したのはその予防にもなったからだと言われている。反面フランスなどでは危機感が乏しかったようだが、それはメディアの煽りが足りなかったのかもしれない。

 食品添加物、残留農薬、ダイオキシン、環境ホルモン…とメディアは健康問題に不安を投げかけるテーマを次々と取り上げて巨大な報道をしてきた。が、結局、不安を煽っただけで、実際の被害はなく、全て空振り、全く無益なものであった。それが今回、意図せざるものとは言え、結果的に役立ったとすればまことに珍しいケースである。僅かでも視聴率を上げて儲けようとする姑息な利己心がウィルスの感染拡大を抑制したのである。まさに怪我の功名とも言えるが。

 しかし日本のメディアは熱しやすく冷めやすい特性を持つ。事態の動きが止まると報道も止まるのが普通だ。つまり感染拡大が止まれば油断を生む可能性がある。平衡状態であっても危機は終わっていないのである。今回こそはモリカケのようなしつこい報道が望ましい。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿