噛みつき評論 ブログ版

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不景気を増幅するマスコミという装置

2008-11-10 08:49:00 | Weblog
 ついこの間まで米国の証券ビジネスの繁栄の影響を受け、メディアでは「貯蓄から投資へ」(参照)、「お金に働いてもらう」などという言葉が幅を利かせていました。それがリーマンの破綻を境にして急に影を潜め、代わりにメディアを支配したのが、金融資本主義の限界や終焉などという議論です。メディアの論調は一瞬に逆転した観があります。

 リーマン後のメディアはネガティブなニュースで占められています。株価の下落はより大きく、上昇はより小さく報道される傾向があります。銀行間金利が10%程度まで上昇したニュースは大きく報じられ、危機前の水準に戻ったという明るいニュースはあまり目立ちません。受け手の期待もあるのでしょうが、暗いニュースの方が優先されるようで、言わばメディアは色のついた情報のフィルターなのです。

 しかしこのメディアの負の傾斜が人々の心理をいっそう暗くします。経済は心理と密接な関係があります。暗いニュースばかりに接していると必要以上に悲観的になり、企業の投資意欲が低下し、消費にも悪影響が出ます。株も皆が悲観的になり下がると思えば下がります。メディアの報道の偏りが景気の谷をいっそう深くするように働くものと思われます。

 逆にバブルの成長期にはメディアは逆のほうへ傾斜するように思います。日本のバブル絶頂期には、メディアは「財テク」を流行語にし、株価や地価の高騰を報じ、毎週株式投資のシミュレーションを載せたりして、投機・投資を煽り、また高級品の消費を促進する報道をしました。このときはバブルの山を一層高く押し上げるのに大きな役割を果たしたと思います。しかし残念なことに、財テクは富を生まず、国を豊かにするものではないという経済の基本的な認識がメディアには欠如していました。

 今回の金融危機に至るまでに、それを予想する議論がなかったわけではありません。メディアが取り上げなかったのは、それを重要なものとして認識するだけの見識がなかったためでしょう。一例ですが、著名な投資家、ジョージ・ソロスは今春出版された彼の著書で、過剰な信用膨張を「超バブル」と呼び、その崩壊を明確に予想しています。

 著書を読むと、これはソロスの天性の勘というべきものではなく、優れた認識・分析能力によるものであることが感じられます(彼は自由な市場のおかげで1兆3000億円という莫大な財を築きながら、以前から市場経済が本来的に持つ不安定性を指摘し、自由な市場を批判している変わった人物です)。ソロスだけでなく、一部の人は過大な信用膨張がいずれ崩壊するという冷静な認識をもっていたのではないでしょうか。破綻前に莫大な退職金を持って逃げた証券幹部はかなり前から知っていたと思います。

 メディアにそこまでの先見性を求めるのは無理だと思いますが、メディアの偏った報道は経済変動の波をより拡大する方向へと働くことに注意したいと思います。変動の小波を大波に、大波を津波に変えるのがメディアの仕事である、というのは言い過ぎでしょうか。


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2 コメント

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暗い話が好き (okada)
2008-11-10 17:29:43
新聞人は読者のレベルに合わせているというより、自然に合っているのでしょう。優秀な人もいますが、平均値は彼らの高給ほどじゃないでしょうね。

10年ほど前の「国民生活選好度調査」の結果によると、80年代後半以降、
景気のよいときに生活の満足度が低下し、悪いときに上る傾向が見られたそうです。
暗い話が好まれることを裏付けているようです。

もうひとつの習性は人をびっくりさせることですか。
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習性 (やすじ)
2008-11-10 10:09:19
ウワサ噺はやはり アイツはダメだとか どうもネガティブになります。(´Д`)
そうじゃない マスコミも有れば逆に新鮮で売れますね。
しかし ネガティブな話しばかりだと スポンサーも無くなり 自分達が一番先に厳しくなると思いますがねー、
新聞人って良いとこの大学出て優秀なんでしょうが

うーむ て言うか やっぱダメだなー 読者のレベルも低いからこうなるんでしょう

普通の読者は野球の勝敗くらい見てから酒飲んで寝る

あまり 考えて無いかな(-_-#)
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