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10万円給付 無責任な巨大バラマキ

2020-05-24 20:50:42 | マスメディア
 4月7日、安倍首相は次のように述べた。
「今回、緊急事態宣言を全国に広げ、すべての国民に協力をお願いする。長期戦も予想される中でウイルスとの戦いを乗り切るためには、何よりも国民との一体感が大切だ。その思いで、全国すべての国民を対象に、一律に1人当たり10万円の給付を行うことを決断した」

 これが収入が減少した世帯への30万円の給付から方針を転換した理由である。閣議で決定した30万円給付案は評判がよくなかったのが理由のひとつらしい。もうひとつは給付のスピード感と言われているが、「スピード感」ではなく「スピード」という表現する方がよい。受給者に必要なのは「感」よりも実際のスピードなのだから。

 それにしても一律に1人10万円の給付は問題が多い。約13兆円もの巨費が必要になる。財源は赤字国債という。30万円案なら対象は収入が減少した世帯1300万世帯だけであり、約4兆円で済む。しかしこの13兆円という金額は消費税4%でも足りないくらいの大きさである。防衛予算の2年半分にもなる。大まかにいうと差額の約9兆円は必要のない所帯向けであり、あまり意味のない支出となる。

 最大の問題は全所帯数5340万(2015年)所帯のうち1300万を引いた4040万の所帯は収入が減少していないにもかかわらず10万円を受け取ることである。政府債務残高対GDP比が231.13%と世界ランキングで堂々トップの日本がやっていいことなのか。需要喚起を狙った面もあるというが、多くが貯蓄に回る可能性が高い。リーマンのときの1万2千円の一律給付では消費につながったのは25%であとは貯蓄に回ったと言われている。

 閣議で決定した30万円案がひっくり返されたのは連立離脱までちらつかせた公明党のごり押しがあったようだが、それよりも問題なのはほとんどのメディアも野党も反対しなかったことである。圧力に屈した自民党も情けないが、メディアにも野党にも国の財政を長期的に考える頭がないように見える。国民からも目立った反対意見はなかったから、同罪である。増税となれば皆で反対、給付となれば皆で賛成、子供同然である。

 一律10万円となったもうひとつの理由はスピードだが、これも知恵を絞ればいろいろと解決策はある。例えば一律に10万円を給付することにし、所得が一定基準を超える人、あるいは所得が減っていない人には辞退していただくという方法がある。受給者のうち受給基準を超える疑いのある人に対しては税務調査を行い、結果によっては返還を求める。とすれば辞退者は俄然多くなる。誰しも10万円くらいで腹を探られたくないからである。叩いて埃が出ない人は少ない。また公務員は最初から対象から除外してもよい。

 これはメディア、評論家、政治家、政党など国をリードする立場のものがそろって無責任にも赤字国債による巨額のバラマキ、その75%は意味が見いだせないバラマキを支持したということである。国の長期的な財政のことなど真面目に考えるつもりがあるのだろうか。いつも政権批判をしている人たちも目の前の10万円には沈黙のようだ。どさくさに紛れての、この無責任さは歴史に残るかもしれない、衆愚政治の見本として。

 逆に言えば、長期的な視点を欠き、目先のことを重視するメディアや政党の性格が主要国中で最悪の政府債務を築いたのだと言える。債務の膨張はいつまでも続けられるものではない。


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