噛みつき評論 ブログ版

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週刊朝日の「醜い自爆」 その本性とは

2012-10-22 10:06:51 | マスメディア
 腹の黒さを常に露出している人間はいません。普段は衣を纏(まと)い腹の中を隠しています。ところが何かの拍子に腹の中が見えることがあります。週刊朝日の橋下市長批判記事は醜い内部を露出した衣の裂け目といえましょう。

 週刊朝日10月26日号の「ハシシタ 奴の本性」という記事は表題や「この男は裏に回るとどんな陰惨なことでもやるに違いない」といった記述に見られるとおり激しい悪意にあふれたもので、その卑劣さは強い不快感を伴うほどです。これだけのものは例がなく、後述するサンゴ礁事件のように恐らくメディアの歴史に残るものだと思われます。

 記事は橋下氏の政策や政治的な方向性を批判するのではなく、表紙に「橋下徹のDNAをさかのぼり本性をあぶりだす」とあるように、橋下氏の出自を取り上げて批判の材料にするという時代錯誤の手法であり、まるで優生学が支持された時代に逆戻りしたかのようです。

 この背景にあるのは、親などの祖先が問題人物であれば、また被差別出身であれば政治家として問題であるなどという、およそ現代では通用しない考え方であることは明らかでです。しかもこれは一記者の不注意などでなく、いくつかのチェックをパスしたものであるからには組織としての見識を表したものと考えられます。親会社の朝日新聞もこの記事の問題点を重大視せず数日間放置したわけで、週刊朝日と共通した見識があったと見られても仕方がありません。

 一方、橋下氏の週刊朝日に対する反論は次の発言に要約されると思います。

「今回問題視しているのは、自分のルーツ、育てられた記憶もない実父の生き様、当該地域が被差別という話について、それがぼくの人格を否定する根拠として、先祖、実父を徹底的に調査するという考え方を問題視している」
「(これは)血脈主義や民族浄化主義につながる危険な思想」

 これは極めてまっとう、かつ当然の反論で、橋下氏に理があることは明らかです。週刊朝日は謝罪に追い込まれましたが、当然の結果と言えましょう。朝日の意図は近づく総選挙の前に維新の会を中傷することにあったと推定できますが、これでは橋下氏の逆に人気を高めることになりそうです。私は必ずしも橋下氏を支持する者ではありませんが、今回の件で見せた判断の正確さに彼の有能さを改めて感じました。

 逆に、天下に晒されたのはこの程度の結果も読めないという朝日側の無能さです。おまけに卑劣さまで衆目に晒すことになりました。これ以上の恥はありますまい。1995年、文芸春秋発行のマルコポーロという雑誌がナチのホロコーストはなかったという西岡昌紀医師の寄稿文を掲載したことに対し、ユダヤ人団体などの抗議を受け同誌は廃刊、社長は引責辞任となりましたが、今回の記事はそれに勝るとも劣らずであると思います。

 橋下氏と各社記者との会見で、朝日新聞の記者は「朝日新聞と子会社である朝日新聞出版が発行する週刊朝日とは編集が別であり、朝日新聞は関係がない」という意味の発言をしていましたが、こんな形式的な言い訳が通用すると思っているのでしょうか。子会社が事故や事件を起こしたとき、彼らは親会社の責任を追及してこなかったのでしょうか。二枚舌やご都合主義は恥の上塗りと言えるでしょう。

 しかし今回の事件は朝日というメディアを理解する上でのまたとない機会であったと思います。それはメディアという分を超え、選挙に影響を与えようという傲慢な体質と低い判断能力です。これはすでに3年前に"あの"鳩山政権の誕生させたことで十分に実証された筈ですけれどね。

 ここまで書いたとき、朝日新聞広報部のコメントが発表されました。

「当社は、差別や偏見などの人権侵害をなくす報道姿勢を貫いています。当社から2008年に分社化した朝日新聞出版が編集・発行する『週刊朝日』が、連載記事の地区などに関する不適切な記述で橋下市長をはじめ、多くの方々にご迷惑をおかけしたことを深刻に受け止めています」

 文末は「深刻に受け止めています」であり、これでは明確な謝罪文とはいえません。この歯切れが悪さからは、自らの非を認めたくないという「切実」な気持ちが伝わってきます。
「当社は、差別や偏見などの人権侵害をなくす報道姿勢を貫いています」とわざわざ言い訳していますが、今回の週刊朝日の記事を見ると、貫いてきた報道姿勢は「偽善」であったという疑いが濃厚になります。

 なにぶん朝日の過去には大きな実績があります。自分でサンゴ礁に傷をつけながら、その写真を「こんなひどいことをする者がいる」と報じた有名な「サンゴ礁事件」は偽善体質の象徴でありましょう。この事件では一柳東一郎社長が引責辞任となりました。

 ともあれ偽善者の仮面が引き剥がされたのだとすれば、これはまことに喜ばしいことであります。

 まあ今回の事件は、大勢の人間が卑怯な方法を使ってひとりの人間に喧嘩を売ったけれど、情けなくも初戦で敗北して大恥を晒した、というところでしょうか。


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2 コメント

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デキレースではないでしょうか (Unknown)
2012-10-22 14:35:34
いつも拝読いたしております。
今回お書きになった、週刊朝日の件でのご意見に、いつもにはない違和感を感じました。

この騒動の直後、橋下市長は、人権擁護法について意見を述べています。
こんな事がおこってはならないから、必要なのだ、という論調です。

先の大阪ダブル選挙の際、すでに橋下市長の出自についてはあれこれ言及されていました。
にもかかわらず、「今回は」取材拒否という強い姿勢を見せました。
そしてあっさりと朝日側が謝罪し、連載を中止しました。あまりにも「あっさりと」です。
そして、直後の人権擁護法発言です。

これは、民主党政権のうちに「人権委員会設置法案」を通すためのデキレースなのではないかと勘ぐってしまいます。

このような場合、必要なのはメディア規制法であり、無原則な人権法案ではないと思います。

考え過ぎでしょうか。
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デキレースの可能性 (okada)
2012-10-23 10:51:44
ご意見、ありがとうございます。デキレースというのは私にとって予想外の見方でした。

朝日と橋下市長の人権擁護法に対するスタンスとその意欲の強さをあまり知りませんので、断言はできませんが、デキレースというのはちょっと考えすぎのように思います。
今回の事件で朝日の失った信用は大きく、それを犠牲にしてまで人権擁護法を通す意思があるのかどうか。もう一点は最近の朝日が橋下市長を批判する記事をけっこう載せていることです。
詳細を調べたわけではありませんが、デキレースという可能性はかなり低いと思います。
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