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思想と性格の関係

2011-06-20 09:58:32 | マスメディア
「貧しき者は幸いなり」「金持ちが天国の門をくぐるのは、らくだが針の穴を通るよりも難しい」とキリスト教は教えます。金持ち(強者)よりも貧しい者(弱者)の方が幸せであるというわけです。これは価値観の逆転によって弱者を強者に優越させるものであり、その根底には強者に対する弱者のルサンチマン(嫉妬や憎悪の鬱積)があると、嫌われそうなことを言ったのはニーチェであります。

 当時大多数を占めていた貧しき者にキリスト教が広く浸透した理由のひとつは、その教えが貧しき者の立場を価値観の逆転によって積極的に肯定したからでありましょう。

 宗教を例にとりましたが、主義や思想がその人の立場と密接な関係があることはよく経験します。もう過去の話になりつつありますが、資本主義が労働者階級から広く支持されることはなく、共産主義が資本家階級から支持されることは稀でした。

 宗教や思想が選ばれるのは、それを正義や公正の基準に照らしてというよりも、むしろそれが信奉する人の立場を肯定するかどうかによるのではないでしょうか。そうして選ばれた宗教や思想はその人の立場を擁護し、労せずして安心を与えてくれます。人が思想や宗教に魅せられる理由は案外こんなところにあるのかも知れません。

 以上は思想と社会的立場の関係ですが、私は思想と個人の性格にもある程度の関係があるのではないかと思っています。むろん勝手な推測に過ぎませんが。

 例えば、経済学の世界では分配を重視する立場と分配より自由を重視する立場があります。後者は新自由主義、あるいは市場原理主義とも呼ばれるもので、効率を重視する反面、それによって生じる経済格差には「寛大」な傾向が見られます。

 新自由主義では分配が少なくなり、税率も低くなりますから、分配をさせられる側、つまり経済的な強者には有利に、弱者には不利に働きます。したがって比較的高い所得を得ている者は新自由主義を志向する傾向があると思われます。

 しかし、高所得層がすべて新自由主義に賛同するわけではありません。これには個々の人の性格が多少なりとも関係しているのではないでしょうか。

 世の中には同情心に富み他人のことをわが身のことのように心配する人がいる反面、他人を踏み台にしたり不幸に落としても平気な人がいます。人間には利己心と利他心が共存していますが、両者の比率は人によって大きく異なるようです。また共感能力にも大きい差があります。

 利他心に富み共感能力に優れた人は分配を重視し格差の縮小を望む可能性が高く、新自由主義との親和性は低いと思われます。逆に新自由主義を好む人は・・・これ以上言うと嫌われそうなので遠慮することにします。

 もうひとつ言えることは、思想上の対立が個人の性格に由来するものである場合、容易に解消することはないということです。以上は菅首相のような思いつきに過ぎませんが、他の思想や宗教と性格の関係を調べるとおもしろい結果が得られるかも知れません。


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