噛みつき評論 ブログ版

マスメディア批評を中心にしたページです。  姉妹ページ 『噛みつき評論』 もどうぞ(左下のBOOKMARKから)。

65%が裁判に参加の意向・・・信じられない最高裁の姑息なアンケート調査

2008-05-30 09:35:53 | Weblog
 最高裁は4月1日「裁判員制度に関する意識調査」の結果を発表しました。それによると,「20代~60代の約65パーセントの方が参加意向を示している」として、国民の過半数が参加に同意しているかのような印象を与えています(調査結果 P22)。

 この「65%が参加意向」の元となった質問は「裁判員裁判への参加意向」で、その答は以下の5項目からの選択となっています。
1「参加したい」 (4.4%)
2「参加してもよい」(11.1%)
3「あまり参加したくないが義務なら参加せざるを得ない」(44.8%)
4「義務であっても参加したくない」(37.6%)
5「わからない」

 5は可否を問わないので実質的には1~4からの選択です。1,2,3は参加肯定に分類され、参加否定は4だけです。しかも4の「義務であっても参加したくない」は国民としての義務までも拒否するという意味を含みますから選択する人はその分減少します。逆に言うと、この37.6%は強烈な拒否の意向を示しています。

 3の「あまり参加したくないが義務なら参加せざるを得ない」は44.8%と最多ですが、これは参加したくなくても義務感さえ強ければ選択するよう仕組まれています。参加を拒否して、罰を受けたくない人も選択する可能性があります。したがって参加意向が明確なのは1と2の合計15.5%だけです。

 また、2の「参加してもよい」に対応する「参加したくない」が不自然にも省かれていて、可否に対する回答項目の対称性が失われています。

 「参加意向が多数」という結果を引き出すため、ずいぶん無理をしたアンケートであると思います。A新聞は世論調査の設問を工夫する技術に長けて、自社の主張に近い調査結果を得るのが得意である、と言われていますが、最高裁も負けず劣らずです。しかし作為が一目瞭然なのはちょっといただけません。A新聞のように豊かな経験がないからでしょう。

 範を示す立場であり、もっとも公正さが要求される最高裁がこんな姑息な調査をやっていいのでしょうか。姑息なご都合主義は最高裁の信頼度を下げることにつながります。

 ご都合主義というと、つい数年前、最高裁の代表は司法制度改革審議会で「市民に評決権を与えるべきではない、それは間違う危険があるからだ」「陪審は統計的に誤判の率が高い報告がある」と述べたそうです(「世界」6月号)。それがいつ賛成に鞍替えされたのか疑問ですが、それに対する説明はないそうです。

 調査には苦しい作為の跡が歴然としているのに、マスコミがなぜ沈黙しているのか、大変不思議です。朝日の例ではこの20年ほどの間に殺人事件数は増加していないのに殺人事件報道は最大5倍にもなりました(参照)。殺人事件や偽装事件を重視し、大きい紙面を割く報道姿勢の下では、相対的に「面白くない」ニュースは軽視されるのでしょうが、これでは権力の監視という看板が色褪せて見えます。

以下は最新のNHKの調査結果です。

裁判員として参加したい   : 18%
裁判員として参加したくない : 77%
裁判員制度は必要     : 42%
裁判員制度は必要ない : 50%

 この結果と最高裁の結果の差は大きすぎます。裁判員制度が民意に沿うものか、あるいは民意に背くものなのかをはっきりさせるために、マスコミは参加の可否だけでなく、裁判員制度の是非をも含めた調査を改めて実施してはどうでしょうか。最高裁の信頼性も同時に明らかになることでしょう。

 最高裁判所という司法界の頂点に立つ組織が国民を騙すような調査を実施する。そんな国が一流の先進国と見られるでしょうか。


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (っっ)
2008-05-30 17:07:52
「裁判員裁判への参加意向」、確かにひどい質問項目ですね。でも見方を変えればこのアンケート結果、「『あまり参加したくない』または『参加したくない』は併せて82.4%(44.8%+37.6%)である」という結論にもなりますよね。ってなわけでこれからはこう言ってやりましょう。「NHKの調査結果では77%の人が参加したくないと、最高裁自身の調査でも80%以上の人が(あまり)参加したくないという結果が出ました」と。へ?僕ですか。死んでも参加したくないですよ、こんな馬鹿な制度。当たり前じゃないですか
返信する
Unknown (okada)
2008-05-30 23:44:59
コメント、ありがとうございます。確かに「参加したくない」が82.4%とも読めますね。詳しく見る人などいないという判断なのでしょう。司法界の頂点にあるものがこんなに「いい加減」ではどうしようもありませんね。
返信する
自由がなくなる制度ってことなのか・・・ (Unknown)
2008-11-20 17:19:26
私は、こう考えています。

裁判員制度は、全体主義的な考え方の始まりなのではないか・・・・という気がしています。

◇辞退する仕組みが必要な制度であると国民が希望
 制度を導入することに問題がある。
 ⇒組織で動くものの意見か司法に取り込まれる


今朝のNHKでしたでしょうか?裁判員のアンケート結果について、説明していました。
・積極的に参加したい 6%

制度上の仕組みとして必要であるのは、
・辞退することができる制度
・裁判員での活動での給与の保障
というものでした。

◇組織が司法を動かす??
今の、選挙でもそうです。投票を棄権するということは、少数の組織でも、日本をあらぬ方向に進める力をもつということにつながると思います。

裁判員制度も同様です。
国民の350人に1名程度の割合で裁判員になるということですが、仮に、5割が辞退するとしますと・・・・

そう考えると、組織的な活動をする団体の意見が堂々とまかり通る事態になると思います。

成立の経緯から考えても、どうしても、納得できないのです。

・裁判員の意見の中立性は、誰が担保するのか
・裁判員の意見に影響を与えるものがいないと誰が保 証するのか

この制度は、何か根本的
に間違えている気がします。

これって、日本から自由がなくなる「はじまり」の
気がしています。
返信する
Unknown (okada)
2008-11-21 10:04:06
ありがとうございます。
今でも積極的に参加したいは6%ですか。
裁判員制度の導入を進めた人間は司法に民主主義を実現するためだとしていました。
ほとんどの人が参加したくないという制度を実施する場合に国民の意見を改めて聞くのが民主的ではないでしょうかね。
運用面に対する詰めの甘い、理念先行の愚策だと思います。
返信する

コメントを投稿