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石炭火力発電と安全保障

2019-12-15 22:38:36 | マスメディア
 スペインで開かれているCOP25の会場で、NGOのグループが日本に化石賞を贈ったことが大きく報道された。梶山経済産業大臣が「石炭火力発電など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と述べたことを理由にあげているという。

 メディアが大きく報道した背景には、温暖化への懸念もあるだろうが、政府の温暖化対策への消極性を批判したいという気持ちがあったのだろう。梶山大臣は石炭火力発電を残す理由について触れていない(少なくとも報道されなかったと思う)。ここで残す理由を加えておくべきであったと思う。

 主な理由とはエネルギー安全保障である。日本の一次エネルギーの自給率は約10%であり、2010年の20%から大きく減少している。これは原発の稼働率の低下のためであるが(原発は自給と看做す)、主要国中、自給率は断トツの最低ランクである。この中で石炭の割合は26.4%(2018年)と石油の41.3%(同)に次いで大きい。石炭の利点は価格が安くかつ安定していることと、主な輸入国のオーストラリアの政情が安定し、ホルムズ海峡のような不安定な海域を通る必要がないことである。従って石炭は国産エネルギーに準じる安定性がある。

 逆に石油は政情不安定な中東に集中し、途絶するリスクが高い。原発ダメ、石炭もダメということになれば日本のエネルギー安全保障は極めて脆弱なものとなる。ホルムズ海峡封鎖というだけで慌てふためかなければならない。危険を排除するだけの軍事力行使もできないとなれば米国などに頼らざるを得ない。そうなればさらに米国に頭が上がらなくなるのは道理である。原発に反対する人々やメディアは安全保障の問題を考慮してるのだろうか。

 温暖化に関して、日本は対策に消極的な国とみなされているようだが、実績においてはかなり優れている。2016年の国別のCO2排出量は中国がトップで28%、米国15%、インド6.4%、ロシア4.5%、日本は5位の3.5%である。国民一人当たりのCO2排出量も環境先進国のドイツとほぼ同じだ。日本は省エネや発電の熱効率の向上が進んでおり、対策の余地は少ない。逆に中国はエネルギーの約60%を石炭に頼っており、改善の余地は大きい。温暖化は重要なことだが、日本が対策をとったとしても大きな効果は期待できず、現時点ではエネルギー安全保障の方がより重要である。

 軍事的な安全保障はむろん、エネルギー安全保障にも食料安全保障にも国民の関心は薄いように見える。それはメディアの無関心を反映してるに過ぎない。この3つの安全保障を軽視すると、将来、大きな危機を招く危険がある。そしてその時になってから対策をしても間に合わない。例えば外国が軍事的な侵略や威嚇をした場合、すぐに防衛力を強化することはできない。シーレーンの航行が危険になった場合、直ちに食料とエネルギーの供給が途絶える。

 メディアと野党は桜を見る会など、実にどうでもいい問題、優先順位の低い問題ばかりに興味を持っているようである。見識の低さは超一流である。このままメディアが安全保障に十分な理解を持たない状態が続けば日本の平和や独立さえも失う可能性がある。その確率は予測不可能だが首都直下地震の発生確率より高いかもしれない。国際関係の予測は困難である。せめて10年先、20年先程度の展望を持ってほしいものである。


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1 コメント

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Unknown (okada)
2019-12-20 12:44:08
無飼様
せっかくご投稿いただきましたが、内容は本記事に関係があるとは思えません。関係のないコメントはご遠慮願います。
しばらく後に削除しますので、ご了承ください。
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