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医師の女性の胸舐め事件ーわからんものはわからんでよい

2022-06-04 20:30:58 | マスメディア
 もしウクライナの人々が最高裁まで争ったこの事件を知ったら、日本はなんと平和な国なんだと驚くことだろう。

 2016年8月に起きた事件である。手術直後の女性患者の胸を舐めたとして、医師が準強制わいせつ罪に問われ、一審の東京地裁で無罪とされたが、二審東京高裁では懲役2年の有罪判決を受けた。そしてこの2月18日、最高裁は高裁判決を破棄、審理を高裁に差し戻した。主な争点は女性患者が訴えたことが事実か、あるいは術後の麻酔から覚める過程で生じる譫妄(せんもう)によるものかと、乳房から検出された医師のDNAが舐めたことによるものか、あるいは会話や触診などによるものなのか、の2点である。また医師は左手で女性の胸の衣服を持ち上げながらを右手で自慰行為をしたというが、これは控訴審では公訴事実から外された。女性の主張が不自然だと判断されたのだろう。

 検察側、弁護側、判事などの関係者が大勢集まって4回にわたって医師がオッパイを舐めたかどうかを厳密に審理を行うことになった。しかし、大勢の偉い人たちが集まって何年も審理してもわからないことはいくらでもある。それを「あてもの」のように、あるいは勘違いや思い込みのためであっても結論を出すのが裁判所である。当然ながら判決は高い確率で間違いが起こる。証明するのに十分ではない材料だけで結論を出すのだから必然的にそうなってしまう。悪いことに、裁判の判決には権威がつけられているから間違いが正しいことにされてしまう。

 これは大変な制度上の不正義である。いくら調べてもわからないものは世に存在する。それを「わからん」と言えないから、ウソをつかざるを得なくなる。ウソが日常茶飯事の国なら知らないが、日本では裁判のウソは困る。この不条理を改めるには「わからん」という判決を出せるようにすればよいだけのことである。

 「疑わしきは罰せず」あるいは「疑わしきは被告人の利益に」という言葉があるが、これは正しい判断ができない場合を想定した上のことである。そして冤罪を出すよりは被告の逃げ得を許す方がマシという考えでもあるのだろう。検察にとっては聞きたくない言葉だろうけど。

 この裁判に関して医師側にも女性患者側にも支援組織が結成され、事件は科学的な真相解明から離れ、政治的なゲームの様相を帯びている。しかし当事者の医師にとっては影響はまことに深刻である。約6年間、被告のままで、仕事や社会的立場、信用などを大きく毀損することになった。今度の最高裁の差し戻しでさらに苦難の年月を重ねることになった。無罪の判決を出すこともできたと思うが、最高裁は判断から逃げた。裁判の長時間化はどうでもいいらしい。

 対して女性の方はどうか。彼女はDVDや動画に20以上出演していて、いずれも性的刺激が強そうな題名のものばかりであるという。こちらの受けたダメージは医師と比較にならないと思われる。

 わからんことをわかったことにして有罪判決を出せば、冤罪の可能性はとても高くなる。明らかな不正義が権威ある筈の裁判所で行われることになる。ウソをつかざるを得ないシステム、最悪である。

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