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規則を破る条件

2024-07-22 21:14:41 | マスメディア
 体操女子パリ五輪代表で、主将の宮田笙子さん(19)の喫煙、飲酒行為が発覚し、代表を辞退したと報道された。辞退したのではなく辞退させられたのであろう。恐らく何人もの大人がよってたかって19歳の少女に辞退を迫ったのであろう。まことに見苦しい光景である。
 「規則尽くめの杓子定規が日本をダメにしてきたのだ。こんな些細なことで19歳の夢を潰すつもりか!」と激しく憤った猪瀬直樹氏を強く支持したい。
 
 スポーツの世界では種目ごとに競技団体があり、選手の出場の権限を握っている。競技団体はたいていひとつだけであり、選手には他の競技団体などの選択肢はない。経済学で言う独占体制であり、団体は圧倒的に強い立場である。気に入らないと出場を停止したり追放したりする。宮田笙子さんに出場辞退させた結果、一罰百戒で他の選手にはより強い支配が可能になる。

 一方、自動車の検査に不正があったとしてダイハツに続いてトヨタやホンダなども生産の一時停止を求められた。しかし不正な検査の下で生産された販売済みの車は回収されなかった。つまり不正とされる検査体制の下で生産された車は安全だと判断されたのである。例えばトヨタの例では、後方から衝突させる試験で規定では1100kgの物体を衝突させることになっているがトヨタは米国の基準の1800kgの物体を衝突させていたことが規則とは違うと判断されたらしい。より安全な厳しい試験まで否定されたわけである。既に生産された車が安全であると認められる以上、検査の不正は形式的な問題だけだということになる。国交省の目的は安全の確保よりも規則の遵守にあるようである。この事件のために失われた経済的利益は大きいし、ダイハツの場合は経済成長率にまで影響が出たとされる。日本の自動車メーカーの国際的な信用も傷ついた。国交省の権威を示すためとしては犠牲が大きすぎる。
 
 少し古い話だが福島第一原発事故のとき、全交流電源が停止し、炉の冷却機能も停止した。炉内の圧力や温度の表示はバッテリーによっていたのでそれはしばらく表示されていた。しかしバッテリーは徐々に弱ってきて、東電社員のマイカーからバッテリーを外して使いだした。しかしそれも限界がきて、新しいバッテリーの到着が切実な問題となった。そんなとき、新しいバッテリー1000個を積んだトラックが東京を出て高速道路に入ろうとしたとき「大量のバッテリーは危険物であるため高速道路には入れない」と係員に停止させられた。係員は規則を正しく守ったのだが、その結果、圧力や温度を把握できず、原子炉の制御ができなくなり、爆発する可能性すらあった。いつも規則を守ればいいとは限らない。この場合は規則を破るのが正しい判断だっと言える。単純に違反車は通行禁止とするのなら機械でもできる。人間を配置しているのには破る余地があるためだとも言える。
 
 しかし、世の中には頭の硬い人がいるものである。規則を杓子定規に当てはめることが正しいと信じる人が。むろん、規則を無暗に破ることは支持できない。だが、破ることが必要な場合、つまり破ってもなお優先すべきことがある場合は規則を破る、あるいは見ないふりをするなどの適切な判断をすることが必要な場合がある。これを教育に取り入れてはどうだろうか。単純に規則を守れというのに比べると難しいが、意味はある。規則尽くめの杓子定規が行きつく先は北朝鮮であろう。先日、韓国ビデオを見た中学生30人が処刑されたというニュースがあった。