噛みつき評論 ブログ版

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コロナで露呈、日本の統治能力の低さ

2021-04-04 21:01:11 | マスメディア
 政府は3月22日、首都圏に発令されていた緊急事態宣言を解除した。この時期の解除が適切であったか疑問である。新規感染者数は微増状態であり、春の観光シーズンが始まり人出の増加が見込まれる時期であり、さらに感染力が1.7倍とされる変異ウィルスの拡大が予想されていた。つまり感染の増加要因は3つも予想されるのに対し、減少要因はないと考えられた時期なのである。そこに解除が加わるので感染者数の増加は容易に予想することができた。緊急事態宣言解除は常識人にはできない、大変勇気ある決断だと思うが、その後の経過はご存知の通りである。

 ワクチンの遅れについては前回触れたが、接種は遅々として進まず、まだ先進国との差は開いたままである。英国は人口のほぼ半分が少なくとも1回目の接種を終え、感染者数の減少は明確になっている。集団免疫の効果が出てきたのだろう。羨ましいことだが、もう少しで収束が見通せるかもしれない。英米では歯科医や医学生にも接種をさせている。前にも触れたが、英国では素人のボランティアにもさせている。もし日本でやれば医師会が猛反対するだろう。彼らが命を危険に晒すわけにはいかないと言えば、反対はできない国柄である。一方、ワクチン接種が遅れることで何百人・何千人が死んだとしても、それは問題にされることはない。

 米国政府はワクチン開発を促進するため、昨年春に約1兆円を支出したという。早くワクチンが完成したのは生物兵器やテロに対応するための軍事研究の基礎があったからとも言われる。中国やロシアもワクチンを完成させたが、資源の集中投入や、法制上の優先措置などがあったと聞く。日本はGO TOトラベルに総額2.7兆円を予定し、国民給付金に14兆円支出したが、ワクチン開発に支出したのは2千数百億円だけという。ワクチンの遅れは偶然の結果ではなく、日本の政策の当然の帰結であると言える。やはり頭がおかしい。

 ワクチンはまず医療従事者、ついで高齢者、そして一般という順序で接種されることになっている。しかしワクチンの効果を十分に引き出すためには感染者の多い地域を優先するのが合理的だ。4月2日発表の数値だが、10万人あたりの新規感染者数は宮城、沖縄では40人を越え、大阪32.57人、東京18.72人、これに対して熊本、島根、秋田は1人以下である。火事に例えれば、ワクチンは家々に耐火壁を設置するようなものである。火事がほとんど起きていない島根や秋田で耐火壁を作ってもあまり意味がない。火事が頻発している地域で耐火壁を作れば類焼(感染)を効果的に防ぐことができる。一時的に感染者数が多い地域を優先するかどうかは考えなければならいが、常にウィルスの培養地になっている東京や大阪は優先すべき地域だろう。このような方法は誰でも思いつくが、メディアや専門家達がなぜ取り上げないか、不思議である。

 とにかく、日本は先進国とされているにもかかわらず、中国やロシアにまで遅れをとり、国の危機的な状況に対して適切な対応をとることができなかったことは重い事実である。日本学術会議が行ってきた軍事研究の抑制や生物兵器に対する政府の防衛意識の低さがどの程度影響しているか知らないが、日本の安全という国の基幹的な部分において、政府の能力の低さが明らかになったと思う。それは不幸なことだが、自国を信用できないということである。