噛みつき評論 ブログ版

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NHKの動物番組は残酷シーンが大好き

2020-11-22 21:08:55 | マスメディア
 数ヶ月前のNHKの動物番組で、ペンギンの生態をやっていた。海岸からかなり離れた場所に集団の営巣地があり、親たちは餌の魚を求めて海に出かけていく。子供たちは親の帰りを待っている。親たちは魚を採った後、海岸に戻るのだが、水際には多分アザラシだと思られる何頭かの海獣が親たちを待ち受けている。一羽の親が海獣に捕まり、半身が口に入った、と見えたあと、ペンギンは脱出して一旦は逃げたと思われたが、すぐに海獣に飲み込まれてしまう。営巣地には親を待つ子供たちが残される、ということは容易に想像できる。子供に餌を運ぶ親が途中で命を失うのも悲劇だが、残される子供たちにとっても悲劇である。殺される親や残された子供たちの気持ちを考えてしまうのが普通の人の感情である。

 動物番組は子供が観ることが多い。しかしNHKの動物番組には必ずと言っていいほど捕食行動の場面、つまり強い肉食動物が弱い動物を襲って殺す場面が出てくる。恐らく、自然をあるがままに描こうとすると当然そのようなるという考えなのだろう。それが大義名分となるかもしれない。しかし子供が多く含まれる視聴者が相手となると話は別である。子供に残酷シーンやひどいエログロシーンを見せてはならないのはほぼ共通の認識である。弱肉強食の自然を教えてはならない、ということではない。強調し過ぎるのがよくないのである。

 大人にとっても見たくないシーンである。多くの人は殺されて食べられる動物に感情移入するからである。殺して食べる方の強い動物に感情移入して「ああ美味そうだ」と喜んだり、舌なめずりする人は少数であろう。ただ、少数であるが存在することは確かだと思う。

 人間は狩猟で食べ物を得る時代を経験してきた。動物を狩るとき、殺す動物に同情していては生きていけない。同情心が薄い人間もいるだろうし、同情心を覆うほどの残酷な攻撃性を持っている人間もいるだろう。濃淡は様々だがどれも人間が自然に持っている属性である。

 私は長く野良猫の世話をしているが、様々な人間に会う。そのほとんどは好意的であるが、少数の猫嫌いがいる。好き嫌いは変えられないので仕方がないが、文句を言われたり、嫌がらせを受けることがある。理不尽なことを言われた場合、応戦するのだが、たいてい喧嘩になる。恥ずかしいが大声でやって通行人の注目を浴びたりする。しかし良いこともる。派手に喧嘩した相手は二度と私の前に現れない。最も嫌なのは、ごく少数だが動物を遊び心で殺傷する人間である。猫を殺傷する例は身近にないが、シカや水鳥ならある。

 同じ人間に分類されていても中身はさまざまである。優しい人間も残酷な人間もいる。これもあるがままの自然の一部である。ナチスやポルポトが起こした悲劇は残酷な人間が支配した結果だともいえるだろう。自然の弱肉強食を強調して教えたのなら残酷人間をも強調して教えなければならない。動物番組に残酷シーンを登場させたがる人間は少なくとも殺される動物に同情する類の人間ではないだろう。そういう人が教育番組を作っている。捕食の瞬間の映像は撮影が難しく、高い値段が付くに違いない。だが高いからと言って見せるべき映像とは限らない。豊富な受信料収入でそんなものを買ってほしくない。