噛みつき評論 ブログ版

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関電はそれほど悪者か

2019-10-06 21:45:03 | マスメディア
 500万円をもらい、これは受け取れないといって返却する。これを20回繰り返すと1億円もらったこととする。実際は500万円が往復20回行ったり来たりしただけである。これほど極端ではないが、金品を最も多く受け取った鈴木聡常務の場合の実際は以下のようであったようです。
「鈴木聡常務の場合、おととし1年間に合わせて27件に及んでいて、例えば1月の場合、10日に現金500万円を受領し、その日のうちに返していましたが、7日後の17日には再び200万円と金貨5枚を受け取り、当日返却していました。
 27件の金品のうち16件は当日か数日後に返却されていて、受領と返却を繰り返した結果、総額が膨らんでいった状況がうかがえます」 (10月5日 5時02分 NHKニュースより)

 ニュースでは1億2000万円も受け取ったと不届き者のように報道されている。実際とは大違いである。それどころか鈴木聡常務はかなり真面目な人物に見える。メディアはとても許せない、唖然とした、といった最高レベルの非難を浴びせ、街の声も強い非難のものばかり取り上げている。鈴木聡常務らを非難しているメディアの人々は「私なら絶対に受け取らない」と自信あふれる人たちかもしれない。大変ご立派だと尊敬するが、私なら全く自信がない。バレる気づかいがなかったらご厚意をありがたく受け取ったと思う。

 この、多くがすぐに返却されていたという事実がいままで報道されてなかったはなぜだろう。関電側としては是非とも伝えたいことであろうから、隠す理由がない。可能性として考えられるのは、メディアが3億2000万円もの巨額を受け取ったというインパクトを弱めたくないので、故意に消極的な報道にしたということだろうか。よく使う手だけに可能性はあると思う。多分このニュースを後追いするメディアは多くないと思う。だとすると不誠実なことである。

 一方、返されても返されても27回も金品を送り続ける森山栄治元助役はかなり特殊な人物と思われる。通常の付き合いができる人物ではないようだ。ことの発端は元助役が金品の送り先を詳細に記した書類を残し、それが税務調査で明るみに出たことにあるのだと思われる。ずいぶん不注意なことである。関電にとってはまさに青天の霹靂であろう。

 少し気になるのは、資金の流れが逆になっていることである。地元対策で有力者などに電力会社から金品が渡されるのならわかるが、逆の流れは理解できない。なにか裏の事情があるのかもしれない。

 鈴木聡常務以外の方々についてはわからないが、税務調査の前にかなりの部分が返却されていたそうであり、総じて真面目な人たちだという印象である。20人の中にはたったの2万円という方もあり、気の毒な気がする。わたしならそれほど怪しからん人たちだとは思わないが、メディアの方のように、叩いても埃ひとつでない潔白な人にとっては許せないのかもしれない。

 また10月4日、「関電、国税調査後1.6億円返還 問題指摘恐れ、高浜町元助役へ」
という見出しが各メディアに載った。これは共同通信が配信したもので多くのメディアはそのまま載せている。税務調査を受けてすぐ1.6億円を元助役に返還したということであり、バレそうになったので慌てて返したという意味にとれる。ところが税務調査前にも1.2億円が返却されているのにその事実を黙殺している。税務調査前の返還は自主的なものと考えられ、関電関係者にとって悪意を否定する重要な事実である。これを黙殺することは関電は悪者というイメージをつくるためではないか、と疑いたくなる。税務調査前の返還を報じたのは意外にも朝日新聞である。この客観性は評価されていい。

 さらにあきれるのは野党がこの問題を国会に持ち込もうとしていることである。野党は調査能力がないので、週刊誌ネタとワイドショーネタばかり取り上げると言われるが、今回も「前例踏襲」である。それもメディアが小さい問題を大きく報道したことに乗せられたに過ぎない。モリカケ問題同様、国会の貴重な時間を浪費して、憲法や外交、財政、安全保障などの重要問題が議論されなくなるかもしれない。野党はどう見ても益より害の多い存在ではないか。こんな野党はいない方がマシである。