噛みつき評論 ブログ版

マスメディア批評を中心にしたページです。  姉妹ページ 『噛みつき評論』 もどうぞ(左下のBOOKMARKから)。

北朝鮮拉致と沖縄米軍

2017-12-24 23:31:15 | マスメディア
 北朝鮮による日本人拉致問題は依然として解決されず、その目処さえ立っていない。拉致後、数十年が経ち、被害者の肉親は再会の願いも叶わずに亡くなる方がいる。拉致はむろん許せることではないが、他の拉致被害者を返さないばかりか、約束した調査さえも実施しない。悪かったという自覚すらないようで、まさに極悪非道の国である。

 確かにメディアは拉致問題をしばしば取り上げてきた。しかし拉致被害者家族の別離の悲しさや無念さを報道はしても、そこに北朝鮮を非難する調子はなぜか感じられない。まるでどうしようもない天災被害を報じているようにすら感じる。

 一方、沖縄の米軍に関する報道は非難の感情に満たされているように思う。僅か200グラムのプラスチック円筒が落ちてきてもトップニュースになる。本土では民間航空機が大きなパネル落として車に当たったが大騒ぎにはならない。人間にあたれば死亡事故の可能性もあった。また米軍関係者の犯罪は何倍もの大きさで報道される。そして報道には強い非難感情が込められているのが常である。

 沖縄の米軍が周辺国からの攻撃に対する抑止力となっているとされている。あの鳩山元首相でさえ、学ぶにつけ米軍の抑止力の重要さがわかった、という意味のことを述べている。首相になってから学ぶのではちょっと遅いと思うけど。よく言われる話だが、フィリピンのスービック海軍基地とクラーク空軍基地ではフィリピン上院が米比基地協定の延長を否決したために1992年、米軍は撤退した。撤退後、中国はミスチーフ礁に軍事施設を建設し、スカボロー礁の実効支配をもねらっているそうである。

 当然のことだが、沖縄の米軍基地は米国の国益にも叶うわけで、それが日本にとっては抑止力になる。基地は日米の利害が一致するから存在するわけである。このような認識に立てば、米軍に対する感情的な報道には違和感がある。8kgのヘリの窓が落下した時には、沖縄県はすべての航空機の飛行停止を求めたが、ずいぶん過剰な反応だと思う。

 普天間の危険性はかねてから指摘されており、それを避けるために基地の移転計画があるのだが、移転は反対運動のために遅々として進んでいない。窓の落下事故や米軍の航空機事故の報道では米軍に対する非難ばかりで、基地移転の促進を取り上げた報道はなかったように思う。

 害ばかり多い極悪の北朝鮮に甘く、米国の国益があるとは言え、日本の安全保障の多くを依存している米軍には極めて厳しい報道姿勢って、おかしな話である。基地負担が沖縄に集中しているのは迷惑だろうが、それは国内問題である。米軍に矛先を向けるのは筋が違う。米軍に反対する運動が限界を超えれば、フィリピンのように本当に米軍はいなくなるかもしれない。代わりにやってくるのは中国軍かもしれない。国際環境は変化する。全く可能性がないとは言えない。

 拉致問題に関して北朝鮮を非難せず、沖縄の米軍には過剰な反応を示す報道。数十年間つづいたことである。同じ調子が長年続いてきたために、我々はそれに違和感を抱かなくなっている。感覚が鈍磨しているわけだが、それが常識になってしまうと危険である。それにしても北朝鮮、韓国、中国と、まともに話ができない国に対して、日本のメディアはどうしてこんなに暖かいのだろうか。