噛みつき評論 ブログ版

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フェイク新聞

2017-08-21 09:18:46 | マスメディア
 北朝鮮がグアム周辺に4発の弾道ミサイルを打ち込む計画があると発表したのは8月10日。以来、双方とも何をするかわからないと定評のあるトランプと金正恩、米国と北朝鮮間の緊張が高まり、日本も戦争に巻き込まれるのではないかとの懸念が広まった。当然のことながらNHKをはじめ主なメディアはトップ扱いでこれを報道した。

 ところが朝日は独自路線をとったようだ。これをほぼ黙殺、あるいは目立たないように小さく報道した。10日の夕刊1面の左隅に「日本上空を通過 北朝鮮4発計画」と小さく載っただけで、以後16日まで1面にこの関連ニュースが載ることはなかった。10日以後、朝刊1面トップに載った記事は以下の通り。

 11日 「閉会中の審査『ない』尽くし 稲田氏や前次官いない…」
 12日 「(負動産時代)別荘地、投げ売り10万円 1300万円で購入…」
 13日 「御巣鷹、登り続ける 日航機墜落32年、520人を悼む」
 14日 「組み体操中止、中学3割 「安全要請」後、小学校は2割…」
 15日 「中国基地、世界にらむ 海の要衝、行動範囲拡大 東アフリカ…」
 16日 「72年、戦禍忘れない 終戦の日」
     (左端に)「北朝鮮、衝突回避を模索 金正恩氏『米の様子見守る』」
 17日 「トランプ氏、差別容認か 白人至上批判の翌日『両者に非』」

 どれも戦争の危険を孕んだ北朝鮮問題より重要とは思えない。朝日新聞をざっと見ている限り、戦争の気配など全く感じられないように仕組まれている。常に戦争は絶対いけないと声高に主張している新聞が戦争の危険が迫る状況を軽視するのは実に不思議である。

 大きな災厄が予想されるとき、我々はそれに備えるのが普通である。備えの必要度はその災厄の被害の大きさと生起する確率との積であると考えられる。この戦争が起る確率はわからないが、起きれば被害は甚大なものになる可能性がある以上、その確率が無視できるくらいに低いと断定できない限りは備えることが必要になる。朝日だけを読んでいると、戦争の危機を過少に考え、準備の必要性を感じない。それは国民を危険にさらす行為である。

 ここで戦争の危険を知らせると準備、つまり防衛能力の強化などにつながると、朝日は考えたのかもしれない。自衛隊の強化や敵基地攻撃能力の保有は抑止力の強化になると思われるが朝日は常に反対してきた。つまり朝日が恐れる戦争は日本が侵略する戦争に限られるようである。これはほとんど妄想であって、現在は他国の攻撃による戦争の方がずっと現実的である。

 朝日の認識の愚かさにはもう手がつけられないが、問題はそれだけではない。報道機関として当然国民に知らせるべき重要な事実を知らせないことがさらに問題である。民間の報道機関といっても公共性があり、その役割を放棄するのは職業モラルが低いと言わざるを得ない。慰安婦問題のような虚偽報道は積極的なウソであり論外だが、伝えるべき事実を伏せるのも消極的なウソである。読者に誤った認識を与える点で同一であり、どちらも罪が深い。加計学園問題では加戸守行・前愛媛県知事の発言を毎日と共に封じてしまった。元知事の発言は元上司として前川氏の精神構造にまで言及したもので前川側に不利となるものであった。

 朝日には認識の愚かさと、読者を騙すことに良心の呵責を感じないモラルの低さが同居しているように見える。認識がおかしく嘘もつく、人としては最悪レベルである。その底には時代遅れの思想があると思うが、それが集団として数十年間も生き続けることに強い興味をそそられる。まあそれはともかく、発行部数第2位の大新聞がこんな有り様では侵略者をその気にさせて、戦争の危険を増加させかねない。戦前は自国の戦争を煽ったが、今度は侵略者に加勢する、どちらも戦争に導きかねない有害な新聞である。報道機関にとって最も大切な「事実の報道」は常に優先順位が低いようだ。言論の自由は大事だか、副作用も大きい。