噛みつき評論 ブログ版

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バス事故報道への疑問

2016-01-25 09:04:17 | マスメディア
 むろん確証があるわけではないですが、15日に起きた軽井沢のスキーバス転落事故に関する警察発表とその報道にはなにか不自然さを感じます。

 現在のところ事故原因は運転手の操作ミスだと思わせる報道が大半です。変速機がニュートラルになっていたのでエンジンブレーキと排気ブレーキが効かず、フットブレーキだけでは十分な減速が出来なかったために転落したという警察の見解に基づいた説明です。また大型に不慣れな運転手という見方がいつの間にか重要な前提になったような気がします。

 しかしこれは少し疑問です。フットブレーキは十分強力だからです。そうでなければ高速道路で前車が急停止したとき、バスは急に止れずいつも追突することになります。この事故のように、下り坂でカーブを片輪走行するほどのスピードが出れば恐怖を感じ、反射的にフットブレーキを使うはずです。ハンドルはまともに操作しているのにブレーキをちゃんと使わないというのは考えにくいことです。大型バスに不慣れとされますが、こんな場合は大型でも小型でも同じでしょう。

 運転者はエンジンブレーキの操作を誤ったかもしれませんが、フットブレーキが十分に効かず、下り坂を加速していくという恐怖の状況で、ハンドルだけで対応し、ついに転落したと考えるのが自然です。100m手前の右カーブでガードレールに接触するほどの危急時にフットブレーキを使わない人がいるでしょうか。

 もしフットブレーキが正常ならば、運転手がなぜ減速しなかったのでしょうか、その説明は極めて困難です。手は動くけど急に足だけが動かなくなったとか、突然スピード感覚が狂ったとか・・・。

 最大のポイントはフットブレーキですが、異常は見つかっていないと報道されています(ただブレーキライニングやエアー配管などには「目立った」異常がないということで、ブレーキシステム全体としての動作確認をしたわけではないようです)。

 一週間ほどしてから上田市にあるメーカーの工場でバスを調査した結果、ニュートラルの状態であったと発表されましたが、現場からの輸送のとき、前輪だけ浮かせ、後輪は回転させたまま運んだので、そのときニュートラルにした可能性はないのでしょうか。ニュートラルにしないとエンジンブレーキが効いて牽引が難しくなるからです。またそのときには変速機の状態はわかっていた可能性が高い。タコグラフの記録もそうですが、発表までになぜこれほどの時間がかかるのでしょうか。

 メーカーは三菱ふそうですが、なぜかこの名前も、運び込まれた工場の名前も出ることはほとんどなく、不自然な警察発表に疑問をもつ報道もありません。また製造メーカーの工場に運び込み、調査を依頼するという方法も疑問です。そもそもリコール隠しで有名な会社ですから、第三者機関に依頼するのが公正なやり方でしょう。調査は警察が行っているとされていますが、警察にそのような解析能力があるのでしょうか。調査能力が十分でなければ、メーカーの意見に従わざるを得なくなる可能性があります。

 死亡した運転手の操作ミスだとするには可能性の低い、困難な説明が必要となります。従ってもしミスで片付けようとするのなら、フットブレーキが正常に動作していたという第三者機関による強い証明が必要だと思う次第です。運転者の名誉のためにも。