噛みつき評論 ブログ版

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付和雷同

2014-02-23 23:45:16 | マスメディア
 雪のために車が長時間立ち往生し、状況を知りたくてラジオをつけても聞こえてくるのはオリンピックの喧騒ばかり、道路などの情報はなく、不安な状況に長く放置された。こんな経験をされた方は少なくなかっただろうと思います。

 14~16日の大雪による死者は20名を超え、数日間動けなくなった車は千台以上、多数の市町村が孤立した状態であったそうです。しかしこれらをNHKを始めとする全国メディアが大きく取り上げたのはなぜか17日夕~18日になってからでした。情報のないことが余計な不安を招き、さらには救援の遅れにつながった可能性があります。

 食品偽装など、あるテーマの報道にすべての主要メディアが集中するのは先刻承知していましたが、必要な事実を報道しないことまでも横並びだとは驚きました。付和雷同体質がここまで徹底していると、多くのメディアがあっても実質的には単一の独占メディアと同じであり、マスメディア集中排除原則の意味がありません。

 NHKをも含む全部が横並びで遅れたので、遅れたことに気づく人も少なく、ほとんど非難されることもありません。横並びのありがたいところです。

 ここ十数日間、報道はオリンピック一色の観があります。いつものことですが、テレビでは上位に入賞した選手の活躍場面がしつこく繰り返されました。またその選手の生い立ちや過去の苦しい時代が映し出され、感動物語が量産されます。この2週間ほど、日本中が感動だらけになりました。

 メディアは少数の勝者を華やかに映し出し、敗者や暗部にはあまり触れません。オリンピックは明るく楽しいお祭り騒ぎに見えますが、もし多数を占める敗者をも平等に取り上げたなら、オリンピックは決して明るいものにはならないでしょう。強力な編集と演出のおかげで、メディアの映し出すオリンピックは表側の半面に過ぎません。

 韓国の東亜日報日本語版は「練習中の負傷で出場放棄の選手が続出、ソチ五輪」という見出しで、負傷者が多数出ていることを報じました。知る限り日本のメディアはこのような暗い話を報じていません。東亜日報は多くの負傷例を報じていますが、その中に興味深いことが載っていたので要約します。

『スノーボード男子スロープスタイルでは有力な金メダル候補のノルウェーのトシュテン・ホルグモが負傷。ハーフパイプとスロープスタイルに出場して2冠を狙っていた「スノーボード皇帝」ショーン・ホワイト(28、米国)はホルグモが怪我をするのを見て、スロープスタイルの出場を放棄した』

 日本でこのような試合放棄をすれば、メディアはよってたかって非難を浴びせることになるでしょう。64年の東京オリンピックのマラソンで3位に入賞し、次回オリンピックへの期待を背負わされた円谷幸吉氏は「もうすっかり疲れ切ってしまって走れません」と遺書に書き、27歳で自殺しました。自殺に追いやった理由のひとつはメディアによる重圧であると言われています。

 両者の性格の違いと言うこともあるでしょうが、双方のメディアの「必死度」の違いが大きいように思います。アメリカのメディアは日本ほどの重圧を与えていないのではないかと想像できます。だからこそ「たかがオリンピック」として放棄が可能であったのでしょう。

 時には「必死」になることも必要ですが、オリンピックくらいで災害報道を忘れるほど「必死」になるというのはやはりおかしいです。すぐカッカする「軽さ」と「付和雷同」の点では日本のメディアは一流です。もし誰かがこの国を暴走させたいと考えたとき、軽くて付和雷同体質のメディアは頼もしい存在となるでしょう。