噛みつき評論 ブログ版

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卑屈と傲慢・・・朝日新聞の姿勢

2012-04-12 10:43:25 | マスメディア
 また朝日の記事を取り上げますが、それは記事の誤りを云々するためではありません。そこに朝日の姿勢が見えるように思うからです。以下は朝日新聞に連載されている「経済気象台」(4/11)の冒頭部分です。

「2年連続で340万台以上を記録した中国の乗用車販売台数の伸び率が、昨年は5.2%増にとどまった」

 前半で340万台という伸びの絶対数を示し、後半では伸び率を挙げて、通常は比較できないものを比較しています。また伸びの絶対数を伸び率と呼んでいます。もうひとつご紹介します。

「中国でも、価格と性能のバランスや燃費と安全性への信頼感が車を選ぶ基準になりつつある。(中略)これを受けて、中国ブランドはエンジンや変速機の刷新や部品・材料の性能改善に取り組むなど、コスト削減を強化」

 これは中国ブランドの乗用車が外国ブランドに比べ伸びなかったことを受けての文章です。中国の消費者は安さだけでは買わなくなってという意味だと思われますが、それに対してこの筆者は「エンジンや変速機の刷新や部品・材料の性能改善に取り組むなど、コスト削減を強化」と述べ、コスト削減を挙げています。

 「エンジンや変速機の刷新や部品・材料の性能改善」がコスト削減になるということも理解困難であり、また安さだけでは買わなくなってきたことに対してコスト削減で応じるというのもおかしい話です。

 600字程度の短文に問題点が4箇所、ずいぶん「高密度」の文章です。私が気になるのは朝日新聞がなぜこんな読むに耐えないような文章を載せたのかという点です。もし校正があれば、こんな明白な誤りは訂正されていたでしょうから、おそらくこの文章は無校正で掲載されたのではないかと思われます。

 「経済気象台」は第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです、との注釈がありますが、おそらく彼らに配慮した結果なのでしょう。記事を依頼するという立場もあるでしょうが、誤りも指摘できないとはずいぶん卑屈な態度と言えましょう。

 これと対照的なのが一般読者の投書欄「声」です。こちらは編集者によって自在に変えられます。投稿文を材料にして朝日の主張を盛り込むことや、半分ほどを編集者が「創作」したりすることは珍しいことではありません。こちらは依頼しなくてもあり余る投稿があるためか、投稿者の文を尊重する気持ちが乏しく、傲慢な扱いが目につきます。もし編集者に逆らえば「変更をご承知いただけないなら掲載はできません」となります。

 卑屈と傲慢、これは正反対の態度に見えますが、同一の人格に共存します。これは力関係や立場の強弱を敏感に感じとり、強い相手には卑屈に、弱い相手には傲慢に接する態度です。こういった人間は少なくないですが、これは「強きを助け、弱きをくじく」にも通じる、処世術のひとつです。伝統的なものですが、決して格好よくありません。

 この対極に位置するものは公平・公正さを重視する態度でしょう。相手の肩書き・地位や力関係に左右されず、この場合で言えば寄稿・投稿された文章の内容だけを見るものです。

 善かれ悪しかれ、新聞は社会をリードする立場です。そういう新聞であるだけに、権威や力関係を重視する姿はことさら見苦しく感じるわけであります。