噛みつき評論 ブログ版

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支持率報道の副作用・・・政治から長期の展望を奪う

2008-10-30 09:01:52 | Weblog
 メディアは内閣支持率、政党支持率をたびたび調査・報道します。その支持率は民意の動向を表すものとして重視され、それが政治の動向に大きな影響を与えます。民意が政治に反映すること自体は結構なことですが、支持率がはたして重視されるに値するものかという点に注目したいと思います。

 国会議員の任期である4年~6年に対し、支持率は数ヶ月という短期で激しく変動します。支持率はメディア報道の関数と言っていいほど、報道の影響を強く受け、それはメディアが第4権力と言われる理由でもあります。そして報道は政治の失点、つまり負の部分を好んで報道するので、材料があるたびに支持率は下降するという傾向が見られ、それは短期変化の主な原因と思われます。

 政党や内閣の中身がそれほど急に変化することはありませんから、支持率の変化の多くはメディア情報に対する国民の感情的な反応によるものと言えるでしょう。したがって短期間で大きく振れるという支持率のもつ特性は指標としての信頼性に疑問を生じます。

 もうひとつの問題は短期変化する支持率と、長期の方針や計画性を必要とする政治との時間的なミスマッチです。つまり長期的であるべき政治が短期的な支持率に振り回されることです。支持率に一喜一憂するような状況では、政治は減税やばらまきなど目先の人気を重視する傾向が強くなり、長期の計画性を持った政治は望み難くなります。

 さらに支持率は調査主体によって大きく変わります。8月初旬の内閣支持率は朝日の調査が24%であるのに対し読売は41.3%、自民党支持率でも23%に対して35.1%となっています(新聞世論調査の怪)。統計誤差より遥かに大きいと思われるこの大差の原因はわかりませんが、これらの数値があまり信頼できないことは確かです。

 以上のように支持率にはいろいろと問題点があります。長期の継続性を必要とする政治が、不安定で信頼性も低い支持率の影響を受けすぎるのは大きい問題です。支持率の影響によって、増税のように必要であっても現在の痛みを要求する政策を掲げることは難しくなり、目先の人気を狙うバラマキのような政策が優先される傾向を生みます。

 衆議院議員は4年、参議院議員は6年と任期が決められているように政治はその程度の期間を単位とすべきものなのでしょう。戦後の日本の首相の平均寿命は26ヶ月であり、イギリスの58ヶ月、フランスの74ヶ月、ドイツの88ヶ月などに比べて短いのが特徴です。その傾向は最近さらに加速している感がありますが、それはメディアの支持率報道や、負の部分を強調する姿勢と無関係ではないでしょう。

 頻繁な支持率調査を含むメディアの報道姿勢が、図らずも日本の政治から長期的な視点を奪っているように感じます。