21世紀も20年を経過したというのに、わが国の喫煙率は20%を維持している。男性25%、女性15%だそうだ。公共禁煙の条例を制定している自治体は70%。しかし、道路や公園を「公共区域」と定義している条例は数えるほどだ。
このような事態に業を煮やした厚生労働省は、「灰たたき権」なるものの創設に踏み切った。道路や公園などの「公共区域」で喫煙している者に対して、誰でもタバコの灰を叩き潰す権利があることを認めるものだ。
「灰たたき権」を取得するためには、コンビニなどで販売されている「ハエたたき」を1000円で購入する。この「ハエたたき」は、四国のある業者の倉庫に眠っている100万本を国が買い取ったということだ。外務省のODA予算でアフリカの某国に輸出する予定だったものが、ODA予算の行き違いでキャンセルになったものだという。
この「ハエたたき」を「灰たたき権」に活用するというアイディアは中央官庁の役人のものとしては出色のものだ。「ハエたたき」の売上代金1000円から仕入れ原価と販売経費を指し引いた800円が、循環器・呼吸器系統の医療施設の拡充資金として地方自治体に交付されるという。喫煙者の「更正」のために、非喫煙者の協力をも仰ぐというこのユニーク制度は国民に迎えられた。
「ハエたたき」を購入した者は誰でも、道路や公園などの「公共区域」で喫煙している者のタバコめがけて「ハエたたき」を打ちふるうことができる。
ところが、喫煙者から訴訟が提起された。「ハエたたきでタバコを払われたが、ヤケドする危険があった。」というのがその提起理由だ。
それに対して裁判所が下した判決は、「原告がハエたたきを浴びたためにヤケドする危険を感じたのは事実でしょう。しかし、考えてください。原告が公共区域で喫煙している時には、いつも、第三者にタバコの火を押し付ける危険を冒しているのです。その点を考えれば、非喫煙者の灰たたき権は当然の権利として認められるべきです。」 ・・・これをもって「大岡裁き」というのであろう。
以上は、2020年の未来物語でした。 (2011/9)