静聴雨読

歴史文化を読み解く

自由が丘の将棋道場・3

2010-07-16 02:12:03 | 将棋二段、やりくり算段
自由が丘の「高柳道場」は、ほかの将棋道場とは雰囲気が違いました。猛烈な早指しをする客は少なかったし、煙草を吸う人もいなかったようです。客の身だしなみも良かったように記憶しています。そのような雰囲気が私を引き付けたのだと思いました。席主の高柳夫人の客あしらいもさわやかなものでした。

自由が丘の「高柳道場」には、当時プロになったばかりの田中寅彦四段(現九段)や大島映二四段(現七段)が詰めていました。

田中氏は、アマチュア相手に平手(ハンディキャップなし)で指してくれました。指し始めて40手か50手で、形勢がはっきりします。そこで対局を止めて、「感想戦」(対局を振り返って、どこがおかしかったか、そこでどう指せばよかったか、などを検討すること)に移行するのが、田中氏の指導方法でした。

このように懇切丁寧に指導してくれるプロ棋士はなかなかいないと思います。田中氏の指導のおかげで、「感想戦」の大切さを体得しました。

その後判ったのですが、「感想戦」に取り組む姿勢で、アマチュアの棋力をほぼ判定できるのです。

・「感想戦」を行うには、棋譜を再現する必要がありますが、棋譜を再現できれば、棋力は二段以上です。
・勝負のポイントを的確に指摘できれば、三段以上です。
・自分の指した手に感想が終始する人は初段以下です。
・感想戦に興味を示さない人は一級以下の級位者です。

「感想戦」は将棋の上達のために欠かせない手段です。特に、下位者は、感想戦で上位者の意見を聞くことが参考になります。

さて、自由が丘の「高柳道場」は今はありません。いつ閉鎖されたか、記憶に残っていません。そういえば、渋谷の「高柳道場」もなくなったようです。時代の変化は争いようがありません。 (終わる。2010/7)