静聴雨読

歴史文化を読み解く

定額給付金の行方

2009-01-09 23:58:37 | 社会斜め読み
「定額給付金」をめぐって国が混乱している。

もともと、定額給付金の発想は公明党から出てきたものだ。

公明党は、共産党と並んで、都市部の下層生活者を主たる基盤とする政党だ。だから、都市部の下層生活者の生活を支える「社会政策」の一環として公明党が提案し、連立政権を組む自民党を説き伏せたものだ。だが、公明党と自民党との協議が進むに連れ、「景気刺激対策」の面が自民党から押し出され、公明党がそれに妥協する形で、「社会政策」と「景気刺激対策」の両面を追求する政策となり、その名も「定額給付金」に落ち着いた。

しかし、「二兎を追うものは一兎をも得ず」の例えがあるように、政策のあいまい性が民主党などの格好の餌食となってしまった。

公明党がその支持基盤である都市部の下層生活者を考えた施策を展開するのであれば、例えば、「年収300万円未満の世帯に、向こう1年間にわたり、月3万円の給付を行う」という方が、はるかにわかりやすいだろう。

ところが、この考え方は、すでに民主党にとられてしまい、公明党の出る幕はなくなってしまった。

世論調査によると、「定額給付金」への反対は70%に上るらしい。それだけの原資があれば、「派遣切り」などに苦しむ人たちに厚く給付すべきだ、という理由のようだ。わが国の国民は、いつの間に、これほど賢くなってしまったのだろう。わずか4年前に、「郵政解散」という名目の総選挙で舞い上がった同じ国民が、ポピュリズム的な政治にはっきり「ノー。」というほど、成熟していたとは。

今週発売の「週刊文春」に、次の総選挙の議席予測が載っている。驚くことに、定数480議席のうち、民主党が280議席で単独過半数を獲得するという。自民党は議席を半減させ、公明党も議席を4割減らす、という。

今こそ、各政党は、誰のためにどのような政策を打ち出すのかを国民に示す必要に迫られているのではないか。そうでないと、上の議席予測のような史上まれに見る地殻変動に見舞われることも覚悟せねばならない。  (2009/1)