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静かなパラダイス

村上さん その1…

2006年05月19日 | Weblog
村上ファンドじゃないですよ、春樹さんの方。
私はどうも彼の小説は面白いとは思わない。
初期の頃は日本でもこういう作家がいるんだ、と
追いかけていたのですが(学生時代)、
どういうわけか、だんだんと馴染めなくなった。
エッセイや旅行記は楽しくて上手いなぁと思うんですが。

しかし、彼はもう一つの顔を持っている。
“翻訳家”としての顔である。
こちらは文句なしに良い仕事をしていると思う。
フィッツジェラルドにカポーティ、サリンジャー…
アメリカ文学の美味しい所をとても丁寧に上手に翻訳している。
レイモンド・カーバーやポール・セロー、
ジョン・アービング、ティム・オブライエンなど
今まで読んだことのなかった優れた作家を
紹介してくれるのはたいへんありがたい。



●レイモンド・カーバー(1938-1988)
自ら長編を書く根気がないと言っているように短編作家である。
早くに結婚し、さまざまな仕事をしながら文章を書いていた経緯があり、
長いものが書けないという理由もうなずける。
とても簡単で簡潔な文章だが、
素朴で絶妙な味わいがあり、読後になんとも形容しがたい余韻が残る。
ストーリーはひねりが効いていて、ハッとさせられる結末もある。
ロバート・アルトマン監督が「ショート・カッツ」(1993年)で映画化しましたが、
短編をどうやって映画にするんだろう?と思っていたところ、
9つの短編と1つの詩を繋げて一本の物語を作り上げた。
そんなムチャな!とかなりの強引さにビックリしましたが、
観てみるとこれはこれで面白かった。さすがにアルトマンですね。



●ポール・セロー(1941-)
映画「モスキート・コースト」(1986年 ピーター・ウィアー監督)が
興味深い内容だったので原作者のセローの事が知りたいと思っていた時に
ちょうど「ワールズ・エンド(世界の果て)」という短編集の翻訳が出た。
いいんですね、これが。
特に表題になっている「ワールズ・エンド」がとても良かった。
今まで知らなかった世界というか、こういうのありだなぁ~、としみじみと感じた。
セローは欧米では旅行作家として有名だそうで、
「大地中海旅行」という本がNTT出版より出ている。
まだ読んでいないので、取り寄せてみようと思う。
陸路にこだわって自宅(ボストン)から南米大陸のパタゴニアまでを
旅したときの様子を軽妙なタッチで綴った旅行記だそうです。
面白そうですね。

村上さんはもう一つ、ジャズ・マニアとしての顔も持っている。
これはまたの機会にでも。
ピーター・ウィアー監督についてもまたの機会に。
「ピクニック at ハンギンロック」の監督ですぞ!